Broadband Watch logo
バックナンバー

「日記、コミュニティに並ぶ新機能を予定」mixiの笠原健治氏
[2006/01/13]
「個人ユーザーがSNSを作れるASP展開を」paperboy&co.の家入一真氏
[2005/12/02]
世界で通用する日本初のサービスを~写真共有サービスの「フォト蔵」
[2005/10/28]
「情報の海を快適に航海できるツールを」レッドクルーズの船木信宏氏
[2005/09/30]
RSSリーダーを超えた情報プラットフォームを目指す「glucose」
[2005/08/26]
ブログの文章から評判や話題を抽出できるブログ検索「blogWatcher」
[2005/07/29]
「RSSで個人が発言力を持てるメディアを支援」MyRSS.jpの赤松洋介氏
[2005/07/01]
「コミュニケーションと情報発信がブログの魅力」ドリコムの内藤裕紀氏
[2005/06/10]
「85%が女性のブログ」かわいさと使いやすさにこだわる「ヤプログ!」
[2005/05/20]
「ユーザーの情報発信をうまく調節する役割に」グリーの田中良和氏
[2005/04/28]
「ショッピング・ブログ・アフィリエイトを連動」楽天広場の大島薫氏
[2005/03/25]
「“インターネットはまずブログから”が目標」ライブドアの有賀之和氏
[2005/02/25]
「ソーシャルソフトウェアが2005年の鍵に」Bulkfeedsの宮川達彦氏
[2005/02/04]
「ブログはインターネット全体を変える存在」ニフティの清田一郎氏
[2005/01/14]
「良いサービスを作ることがサービスの発展に」はてな代表の近藤淳也氏
[2004/12/17]
「使う人が便利なツールを」FeedBackやAmazletを開発した伊藤直也氏
[2004/12/03]
「シンプルで使いやすいRSSリーダーがモットー」InfoMakerの大倉貴之氏
[2004/11/19]
ブログの“つながるきっかけ”を応援する「BlogPeople」
[2004/11/05]
「こうさぎ」「Rabbit Ticker」の生みの親、ワークアットの工藤友資氏
[2004/10/22]

「ソーシャルソフトウェアが2005年の鍵に」Bulkfeedsの宮川達彦氏


 ブログの特長であるトラックバックにちなみ、ブログ関連サービスに携わる方を次々に紹介していただき、ブログの世界をつないでいくインタビュー連載です。第7回は、RSS検索「Bulkfeeds」運営やブログ解説書「Blog Hacks」執筆を担当、現在はSix Apartに所属する宮川達彦氏です。

宮川達彦(みやがわ たつひこ)
 シックスアパート チーフエンジニア(米Six Apart Ltd. Vice President of Partner Engineering)。ブログ解説書「Blog Hacks」執筆に携わるほか、RSS検索サイト「Bulkfeeds」、ニュースコンテンツのメール/RSS配信を行なう「Bulknews」を運営。自身のブログは「blog.bulknews.net」。

□blog.bulknews.net
http://blog.bulknews.net/mt/





「自分が欲しい」サービスを自分で開発

Bulknews
http://bulknews.net/

ニュースサイトを30分ごとに巡回し、更新状況を通知するサービス。更新状況はメールやRSSで配信されるほか、携帯電話からも閲覧できる
――本日はよろしくお願いします。まずはじめに、Bulknewsを開発したきっかけを教えてください。

宮川氏:Bulknewsを始めたのは2000年10月頃ですね。その頃は、管理者が面白いと思ったニュースを見出しとURLで紹介する、いわゆる「個人ニュースサイト」はありましたが、それとは異なる、ニュースサイトの情報を自動で取得するようなサービスを自分が欲しかった、というのが大きな理由です。当時はまだRSSリーダーが無かったので、メールアドレスで登録しておくと、指定した頻度で更新結果をメールで通知する形式でした。

 RSSの存在を知ったのは、Bulknewsを始めた半年後のことです。当時はNetscapeのポータルサイトでニュースを配信するための技術としてRSSが使われていましたが、Windows向けのクライアントソフトはまだ無かったと記憶しています。「RSSを使って何かをする」というよりも、「とりあえず対応してみました」といった感覚で、Bulknewsにも実装しました。

□関連記事:Netscape、自分専用のスタートページでクリッピングサービス[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/1999/0316/mnn.htm


Bulkfeeds
http://bulkfeeds.net/

日本国内を対象としたRSS検索エンジン。ブログの記事URLから似た記事を探す機能、検索対象のブログのデータベース統計情報なども用意されている。
――かなり早い時期からRSSに対応していたんですね。Bulkfeedsはこれをきっかけに始めることになるのでしょうか。

宮川氏:2002年の夏頃からMovable Typeを使って「blog.bulknews.net」というブログを始めていて、「ブログは面白い」という実感はありました。ただ、ブログを検索する方法が当時はそれほど多くはありませんでしたし、ブログの普及につれて、ブログ以外のニュースサイトもRSSを出力するようになってくると、どのサイトがRSSに対応しているか確認するのが難しくなります。それらをまとめて検索できるようにしたいと考えていました。

 すでに海外では、「feedster」や「Technorati」といったRSS検索サービスもありましたが、僕としては、日本語が正しく使えることに加えて、あくまで日本のサイトを対象にしたRSS検索サービスを、との考えでBulkfeedsを作りました。それが2003年秋くらいで、ライブドアがまだオン・ザ・エッヂだった頃です。

※feedster、Technorati:米国のブログ/RSS検索サービス。Technoratiは日本でのサービス提供も予定する。

□関連記事:デジタルガレージ、Technoratiと提携して日本版ブログ検索サイトを開設
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/7946.html





個人で開発したノウハウを会社に還元

――オン・ザ・エッヂにはいつ頃入社されたのですか。

宮川氏:立ち上げ時からのメンバーではなくて、オン・ザ・エッヂの上場直前にアルバイトで入社しました。大学に行きながら1年くらい働いていたのですが、最初は大学がメインだったのが、いつのまにかアルバイトの比重が大きくなっていきましたね。大学卒業後は院に進もうかとも考えていたのですが、研究よりも、実際に世の中に出しているサービスを作ったりする方が向いていると思ったので、そのまま仕事を続けた、といった感じです。

――オン・ザ・エッヂからライブドアにかけて、宮川さんが担当していたことを教えてください。

宮川氏:1つの担当というよりも、いろいろな仕事に関わっていました。最初の頃は企業のWebサイトやバックエンドシステムを開発する部署のテクニカルマネージャで、その後に部署全体のマネージャを1年半ほど務めました。

 オン・ザ・エッヂがライブドアをM&Aした頃には、僕が担当していた組織は80人くらいの人数にふくれあがっていて、それと同時期に組織を分割することになり、僕も担当から離れました。ライブドアに勤めていた最後の1年は、Chief Technology Architect という肩書きで、具体的に1つのプロジェクトに関わるということはありませんでしたね。

 Bulkfeedsも、サービスそのものがライブドアに直接関係しているわけではありませんが、RSSのような新しいものを自分でチェックして、それをライブドアの中でどう活かしていけるか、という点では繋がりがあります。実際にサービス開発に携わっていると、そういった新しいものに触れる時間や機会も少なくなってくるので、僕のほうで面白そうなものをフィルタした上で、社内へ伝えるといった感じの仕事をしていました。

 もともとライブドアは、個人が開発したとかいうことはあまり関係なかったんですね。BulknewsにしてもBulkfeedsにしても個人の範囲でやっていて、そこから得られたノウハウを会社に提供して、という形で運営していました。

□関連記事:ライブドアが民事再生法を申請
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/10/31/livedoor.htm


livedoor Blog
――livedoor Blogの立ち上げには関わったのでしょうか。

宮川氏:コードを書いたりといった実際の開発作業はほとんどノータッチで、実際にはライブドアの有賀くんをメインプロデューサーにして、あとはエンジニア3、4人で開発を進めていました。ただ、ブログのプロジェクトが進んでいるのは知っていたので、時々使ってみて「こういう機能を付けたら」というアドバイスはしていましたし、トラックバックやAtom APIといった機能実装は、スタンダードなものとあまりかけ離れてはいけないので、僕が実際に手を入れたり、仕様をチェックしたりした部分もあります。

――Bulkfeedsは未来検索 livedoorでも使われていますね。

宮川氏:実際のところは、Bulkfeedsを使っていると言うほどのものではないんです。未来検索の立ち上げ時には、Bulkfeedsをベースにしてデータベースやフロントエンドなどを書き直したためにソースコードが同じ部分もあったので、未来検索にも「powered by Bulkfeeds」と表示していました。

 ただし、Bulkfeeds は個人運営ということもあり、速度やスケーラビリティといった点を安定させることよりも、面白い機能を追加したり、先進的ユーザーに使ってもらい、そのフィードバックをもらう、といった部分を重点に置いて開発・運営していました。それに比べて、ライブドアでは未来検索のエンジンをベースに、ブログ以外にもディレクトリや他のサービスの検索にも使っていこうという方針です。目的もBulkfeedsとは全然違いますし、エンジン自体も途中でまったくといっていいほど変わってきたので、今は「powered by」の表記を外してもらっています。今の未来検索には、(Bulkfeedsのコードは)かけらも残っていないんじゃないでしょうか。





Bulkfeedsは「会社では実現できない実験の場」

Similarity Search
http://bulkfeeds.net/app/similar

Bulkfeedsの機能。ブログの固定リンクから特徴的な単語を抽出、似たブログを検索できる。Similarity Searchを使い、自分のブログに似た記事をサイドバーに表示することも可能
――個人運営のBulkfeedsは、今後どのように展開していく予定ですか。

宮川氏:具体的な考えはまだないですが、個人でやっているほうがやりやすいこともありますし、Six Apartに入社したからSix Apartで同じようなサービスを、ということはあまり考えていません。会社とかでは実現しにくいことを実験的にやっていける場にしていけたら、と思っています。

――最近では米MSN SearchもRSSに対応しました。

宮川氏:MSN Searchの場合、今のところRSSは検索結果だけで、RSSを検索できるわけではないですよね。Yahoo!は動画の検索をRSSベースにしているので、そういう形で使ってくるのかなとは思います。

 ただ、いずれにしろブログやRSSの検索は個人のコンテンツをベースにしているので、検索結果の速度は速い代わりに、情報のクオリティは低い面があります。今でも実際にブログ検索をスパム的に利用しているサイトはたくさんあるので、そういったフィルタリングをどうすべきか。他にも理由はあるかもしれませんが、大手が参入しないのはそういう点も理由の1つだと思います。

 RSS検索はアルゴリズムがないので、時系列に表示するとスパムしやすいということですね。今流行の単語ばかりを入力しておいて、あとは内容の関係ないサイトなどが最新の情報として上位に表示されてしまう。僕としては、先進的なユーザーにユーザー登録をしてもらって、サイトのスパム判定をしてフィルタしていく、といった形で検索を最適化できればいいかなと考えています。このあたりは時間があれば試してみたいですね。

――Bulkfeedsで今後考えている機能やサービスはありますか。

宮川氏:やりたいと思っていることはあるんですが、考えているうちにBloglinesやTechnoratiなどに先を越されることも多くて。ただ、サービス自体は米国にあっても、日本では提供されていないサービスもまだまだありますので、いろいろ挑戦してみたいですね。直近ではSimilarity Searchを使って何かできないかなと思っています。まだアイディアベースなので具体的な話はありませんが、ブログユーザーに面白いことができるんじゃないかな、と考えています。

□関連記事:米Yahoo!が動画検索のベータ版開始、独自RSS規格による新サービスも視野に[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/12/16/5839.html
□関連記事:米MSN Search Betaで検索結果のRSS出力をテスト中[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/01/13/6045.html





個人のデータと友達のネットワークをソーシャルソフトウェアで融合

――Six Apartに転職した理由をお聞かせください。

宮川氏:いろいろ声をかけていただいた中でSix Apartに決めたのは、今非常に伸びている点に加えて、人数の面ではまだ小さな会社だということ。何千人という社員がいる大企業よりも、数十人規模の会社のほうが僕にとってはやりやすいんです。また、日本、アメリカ、フランスにオフィスがある点も重要でした。日本だけに留まらないサービスやプロダクトを作っていきたい、というのが僕の考えでもあるので。こういった条件にぴったりマッチしたのが、Six Apartを選んだ理由ですね。

――Six Apartで担当する業務の内容は。

宮川氏:Six ApartではVP, Partner Engineeringという肩書きをもらっています。Six Apartは、アメリカ本社やヨーロッパでも数多くの企業とパートナーシップを結んでいますし、日本でもTypePadのライセンスパートナーがいます。こういった企業との提携を活かし、Webサービス技術などを用いた新たなサービス開発の分野で活動していくことになるかと思います。

 これは関(シックス・アパート代表取締役)も言っていることですすが、今はブログを含めたソーシャルソフトウェアが注目を浴びていて、2005年にはそれが鍵になるでしょう。ソーシャルネットワークサービス(SNS)もそうですし、Flickr、Last.FM、del.icio.usといったサービスも含みます。

 ユーザーが普段見たり感じたりしていることを、ブログではテキストベースで表現しますが、それが写真や音楽、ブックマークであってもいい。個人のデータと友達のネットワークをうまく組み合わせるソーシャルソフトウェアが今年鍵になる中で、ブログは依然として重要なプラットフォームだと思います。

□関連記事:シックス・アパート、創業者を迎えたラウンドテーブルを開催
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/8396.html

※Flickr:SNS機能を持ったオンラインアルバム。画像につけたタグを利用して他のユーザーとも連携できる

□Flickr
http://www.flickr.com/


※Last.FM:音楽管理ソフト「iTunes」のプレイリストを利用して、自分以外のユーザーのプレイリストにある楽曲をインターネット経由でストリーミング再生できるサービス

□Last.FM
http://last.fm/


※del.icio.us:インターネット上でブックマークを共有するサービス。ブックマークにつけたタグ情報を使って他のユーザーと連携できる

□del.icio.us
http://del.icio.us/


――2005年はソーシャルソフトウェアがどういう展開を見せるでしょうか。

宮川氏:2004年はいろいろなISPやポータルがブログを始めましたが、ソーシャルソフトウェアという思想はまだ伝わりにくいのかなと思います。先ほど上げたFlickrなどのサービスも、日本のユーザーにそのままの形で果たして受け入れられるのかといえば、なかなか難しいでしょう。日本で大衆に広まるサービスという意味では、日本のユーザーにふさわしい形のコンセプトや見せ方が必要だと思います。

 ただ、SNSで言えばGREEやmixiが実際にユーザーを集めていますし、僕の高校時代の友人でそれほどIT業界に詳しくない人でもmixiを知っていたりします。2005年はソーシャルソフトウェアのコンセプトを持ったサービスがたくさん登場し、それをユーザーが好きなように使うなかで、使いやすくて面白いサービスが残っていく。その繰り返しになるのではと思います。

――本日はありがとうございました。

 次回は、ブログサービス「livedoor Blog」を運営するライブドアの有賀之和氏にお話をお伺いします。

□livedoor Blog
http://blog.livedoor.com/


関連情報

URL
  Bulkfeeds
  http://bulkfeeds.net/
  シックス・アパート
  http://www.sixapart.jp/

関連記事
iPodとiTunesを使い倒そう! イベント「iPod&iTunes Hacks」が開催
ブログ解説書「Blog Hacks」発売記念イベント「Blog Hacks Conference」


(甲斐祐樹)
2005/02/04 11:25
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.