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第九十一景：長かったブロードバンドへの道 |
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先日、有線ブロードネットワークスの設置工事が無事終わり、我が家にもようやくFTTHがやってくることになった。実は筆者は、つい1年前までずっとフレッツ・ISDNでインターネットに接続していた。それしか選択肢がなかったからだ。いわゆる「ブロードバンド難民」というやつである。 ■ フレッツ・ISDNの移動に半年待ち 念願の常時接続環境を手に入れたのは、2000年7月。当時、東京都杉並区に住んでいた筆者は、フレッツ・ISDNサービスの受付が始まるとすぐに申し込み、数日後にはNTTから連絡が来て、サービス開始当初から利用できることになった。その年の11月。横浜の賃貸マンションへ引っ越すことになり、引っ越し日が決まると、すぐに電話回線の移転手続きを行なった。ところが、この手続きはあまりスムーズに進まなかった。「お客様が新しくお住まいになるエリアは“特殊な回線”なので、こちらではお受けできません」と言われ、別の窓口を案内されたのだ。この「特殊な回線」が、その後のインターネット環境に大きな影響を及ぼすことになるのだが、この時はまだ知るよしもない。 それよりも痛かったのは、引っ越し先でフレッツ・ISDNがすぐに利用できないことだった。横浜でもフレッツ・ISDNサービスは始まっていたが、申し込みが殺到して設備増強が間に合わず、今申し込んでも工事は半年後になるとのこと。常時接続の快適さをおぼえてしまった筆者にとって、テレホーダイ生活への逆戻りがかなりのストレスだったのはいうまでもない。 ■ 「光収容」の宣告 それから3カ月後、予定より早くフレッツ・ISDNが開通。その頃には、イーアクセスやNTTでADSLサービスが始まっていた。当然ADSLに対する関心はあったが、ISDN回線との干渉の問題や、自宅がNTTの基地局から2kmという微妙な距離にあり、どうするかはまだ決めかねていた。ようやくADSLサービスを申し込んだのは、月額2,280円（プロバイダー料込み）という安さで「Yahoo！BB」のADSL接続サービスがスタートした頃のこと。 しかし、申し込みから約10日後。メールでもたらされたのは、「お客様の設備が光回線のために提供することができません」という“宣告”だった。電話の移転手続きの際に聞いた「特殊な回線」とは、このことだったのか！ いまさら気づいても後の祭り。結局、メタル回線への収容換えも不可とのことで、ADSLへの道は完全に断たれてしまった。 ■ ブロードバンド難民からの脱出を目指すが…… ADSLが利用できないショックは大きかったが、気をとりなおして、ほかのブロードバンドサービスを模索してみた。しかし、ケーブルテレビのインターネット回線はマンションのオーナーの許可が下りずに導入不可。NTTの「Bフレッツ」は、マンションで人数が集まらなかったようで見送り。有線ブロードネットワークスに資料を請求したところ、「さっそく詳しい資料を送らせていただきます」と自動返送のメールが届いただけで、なしのつぶて。マンションの管理会社にも相談してみたが、「オーナー様がパソコンやインターネットというものには興味がおありにならないので」という、つれない返事がかえってくるばかり。ブロードバンド難民生活の終着点は見えなかった。 この頃になると、Webサイトは目に見えて重くなり、表示されるまでの待ち時間が長くなっていた。筆者はテレビドラマが好きで、各テレビ局のドラマサイトをよく見るのだが、そのトップページに重いFlashコンテンツが使われていることが多く、ただ次回予告を見るだけのためにずいぶん待たされた。Flashと浅からず関わってきた筆者が言うのもナンだが、この時だけはちょっぴりFlashが嫌いになった。 仕事にも影響が出始めた。ちらほらではあるが、ブロードバンドに関する原稿依頼が来るようになったのだ。しかし「ADSL・FTTHのトラブルシューティングについて書いてください」と言われても、検証する環境がない以上、軽々にお引き受けるわけにはいかない。事情を話して別の記事の担当に替えてもらったり、どうしても無理な場合は泣く泣くお断りするはめに。こんなことが続くと、チャンスをどんどんのがしているような気がして、本当にあせった。 ■ 無線インターネットの可能性 そんな中でようやく見つけたのが、スピードネット株式会社（当時。現在は東京電力）の無線インターネットサービスだった。このサービスは、電柱に設置した無線基地局と、ベランダに取り付けた小型アンテナ（受信機）を無線でつなぐもので、伝送速度1.5Mbpsのベストエフォートタイプ。電話線を使わないので、アナログ回線かISDN回線かを問われることはなく、光収容の影響もない。マンションのオーナーに許可を取る必要もない。回線速度だって、ISDNと比べればかなり速い。当時は無料体験デモサービスがあったので、さっそく申し込んでみることにした（注：無料体験デモサービスは、2003年10月末に廃止されている）。 数日後、スピードネットの営業さんが、無線機を持ってやってきた。営業さんによると、最寄りの基地局までの距離は約100m。距離としては可能な範囲だが、間に5階建てマンションがあり、基地局は目視できない。電波が届くかどうかは微妙な状態だという。無線機には、受信レベルを示すLO（Low）・MED（Medium）・HI（High）という3つのランプがついていて、電波が強ければ3つとも点灯、弱ければLOランプしか付かない。電波状況をチェックして、MEDランプがつけばサービス提供可能、Lランプしかつかなければサービス提供不可となる。 そして、期待と祈りを込めた電波チェックの結果は、無情にもLOランプが点灯しただけだった……。またしても超えられないブロードバンドへの高すぎるハードル。せめてもの救いは、時期は未定ながら、近いうちに基地局を増設する予定があるということだった。
■ 突然目の前に現われた「救世主」 それから半年ほど経ったある日。洗濯物を干すためにベランダに出ると、すぐ近くの電柱にスピードネットの基地局らしいアンテナが立っていた。増設予定と聞かされていたのとは別の場所で、しかも、あまりの近さにびっくり。あわてて電柱の下まで行くと、「speednet」と書かれたボックスが設置されていた。間違いない！ 基地局からベランダまでの距離は、15メートル前後。ベランダから完全に見通せる状態で、障害物は何もない。こういう言い方が許されるなら、まるで私のための基地局じゃないかと思えるほどの好条件。ずっと電柱をチェックしていたのに、そこに「とんがり帽」の電柱があることすら気づかなかったのは、距離が近すぎたせいだろうか。 この新しい基地局が開通したのは、さらに3カ月後のこと。あらためて電波状況をチェックしてもらうと、無線機のランプは最高レベルの「HI」（High）まで点灯。その場で即申し込みとなった。10日後の設置工事では、小型アンテナがベランダの格子に設置され、ベランダを横切る形で同軸ケーブルを配線。エアコンダクトを通して、室内の無線機と接続する作業が行なわれた。エアコンダクトがあったので、壁に穴をあける必要もなく、設置工事は30分あまりで完了。これでようやく64kbpsの世界から卒業することができたのだった。 受信条件が良かったせいか、スピードネットの無線サービスは思った以上に快適だった。スループットはつねに2Mbps前後あり、サイト閲覧時のストレスもかなり軽減された。天候や設置状況によって多少不安定になる場合もあると聞いていたが、筆者の環境では特に問題はなかった。もし提供エリアに住んでいて、ほかのブロードバンドサービスが利用できない場合、この無線インターネットサービスが救世主となる可能性は十分にあると思われる。 注意すべき点は、月間5GBのデータ伝送量制限（プラン1の場合。プラン2では10GB）と、最低利用期間の長さ（1年）だ。また、接続においては、無線機とパソコンを直結する以外の方法はサポートされていない。ルータの使用は禁止ではないが、あくまで自己責任となる。筆者の場合、どうしても複数台のパソコンからインターネットに接続する必要があったので、メーカー側で動作可能推定機種となっていた「BLR3-TX4L」（株式会社バッファロー）を購入し、無事接続することができた。これからスピードネットの無線インターネットサービスでルータを使用したいと考えている人は、さまざまな情報を集めた上で機種を選ぶことをおすすめする。
■ さて、これから何をしようか 今年になってから、有線ブロードネットワークスの「BROAD-GATE01」が利用できるようになった。これも突然のことだった。マンション内の誰かががんばったのか、それとも有線ブロードネットワークスの営業さんががんばったのか、詳しい事情はわからない。先日、スピードネットの最低利用期間が終了するのを待って「BROAD-GATE01」への加入手続きを行ない、高速インターネット環境を手に入れることができた。思えば長い道のりだった。「BROAD-GATE01」を導入して1週間。通常のWebサイトを閲覧している限りでは、回線速度が劇的に向上したという感じはない。計測サイトで計ると、最大スループット70Mbpsというものすごい数値が出たが、あまりに数値が大きすぎて逆にピンとこない。ただ、メール受信がとても速くなったのと、FlashコンテンツやQuickTimeムービーが軽くなったように感じるのは確かだ。 せっかくだから何か始めてみようと思ったが、いったい何をすればいいのやら。なにしろナローバンドの時代が長く、無線インターネットの時も伝送量制限があったために、極力「重たそうなコンテンツ」には関わらないようにしてきた。インターネット中継だって見ないようにしていたし、動画チャットだってやったことがない。 そんなわけで、せっかくの高速回線も、いまのところはまだ猫に小判の状態だ。ただモノカキとしては、ようやくブロードバンドがらみの記事を書けたことが素直にうれしい。とりあえず、BROAD-GATE01会員専用コンテンツで「冬のソナタ」を見るところから始めてみようかなあ。
■ 参考データ
■ ＵＲＬ 有線ブロードネットワークス「BROAD-GATE01」 http://www.gate01.com/ スピードネット http://www.speednet.co.jp/ 2004/08/12 11:13
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