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無線LAN経由でiTunesと同期できる! 「Wireless Dock for iPod」


 サイレックス・テクノロジーの「Wireless Dock for iPod(SX-DAD002)」は、無線LANを利用してiTunesとのシンクロが行なえる無線ドックだ。無線LANの電波の届く範囲であれば、家庭内のどこに設置してもiTunesとの同期(シンクロ)が行なえるという製品である。


パソコンと離れた場所からでもiTunesと同期できる

サイレックスの「Wireless Dock」。11月25日から同社直販サイトで発売され、価格は19,800円
 「Wireless Dock」という製品名だけでは何ができる製品なのか、イマイチわかりにくいかもしれないが、簡単に言えば「無線LANを経由してiPodとiTunesを同期できる製品」である。通常、iPodとiTunesを同期するためには、USBケーブルを用いてiTunesをインストールしたパソコンと接続する必要がある。しかし、本製品を利用すれば同期作業を直接接続ではなくネットワーク経由、それも無線LAN経由で行なうことができるわけだ。

 つまりこれは、iPodの置き場所が必ずしもパソコンの周辺でなくても良いことを意味する。もし、iTunesをインストールしたパソコンがリビングルームにあったとしても、本製品を接続したiPodを枕元に置いて同期できるわけだ。枕元に限らず、無線LANの電波が届く範囲であれば、家の中のどこでも構わない。

 最近はiPodをセットして使用するスピーカーが人気を集めているが、これらはiPod内の楽曲をスピーカーで再生する機能しかなく、iTunesと同期する機能は搭載されていない。従って、普段はこれらのスピーカーで楽曲を再生していたとしても、iTunesと同期させる場合は、ケーブルでパソコンと直結する必要があったわけである。

 その点、本製品はAUDIO OUT端子にスピーカーを接続することで楽曲の再生も行なえ、無線LAN経由でiTunesとの同期も行なえる。楽曲再生と同期は排他利用となるため、同期しながらの再生はできないが、それでもパソコンから離れた場所でiTunesとの同期が行なえるのは大きなメリットだろう。「カユいところに手が届く」を地でいく製品である。


製品本体。純正のUniversal Dockと比較して、二回りほど大きい印象だ iPodをセットしたところ。製品には各iPod用のアダプタが付属する

本体前面。左端にある黒い部分は赤外線のレシーバーで、Apple Remoteを利用できる 背面には電源コネクタ・有線LANポートのほか、S映像端子やAUDIO OUT端子を搭載する。ここにテレビやスピーカーをつなげば映像や音声を出力できる

Windows Connect Nowを応用した無線LANの自動設定方式を採用

初期設定はiPod経由もしくは有線LAN経由のいずれかで行なう

無線LANの設定画面。セキュリティはWPA2まで対応する
 製品のセットアップには、いくつかのステップを踏む必要がある。まず、iPodとパソコンを接続した状態で、付属のCD-ROMから無線LAN設定のウィザードを起動する。SSIDや暗号化キーといった設定情報を入力し、iPodのディスク領域にテキストファイルとして保存する。これが第1段階である。

 次に、設定ファイルを書き込んだiPodをパソコンから取り外し、本製品に接続した上で電源を投入する。すると、本製品がiPod内の設定ファイルを読み込み、自動的に無線LAN設定が完了するという寸法だ。

 上記のプロセスを見てピンとくる方もいるだろうが、これはUSBメモリを利用したマイクロソフトの無線LAN設定機能「Windows Connect Now」と同じ手順である。サイレックスでは、「SX-2000WG」でも同様の方式を採用していたが、本製品ではUSBメモリではなく、iPodのディスク領域を利用することで、「Windows Connect Now」と同等の無線LANの自動設定を実現しているのである。

 試しにiPodのディスク領域をエクスプローラから表示して見ると、Windows Connect Nowと同様、無線LANの設定内容を記したテキストファイルが保存されていた。既存の技術を組み合わせて無線LANの自動設定を実現したアイディアは、なかなか秀逸だと言えるだろう。


iPod経由の設定を選んだ場合は、無線LANの設定情報を記したテキストファイル「config.txt」がiPod内のディスク領域に書き出される 「config.txt」には、Windows Connect Nowを用いた場合と同様、無線LANの設定情報が記されている。ただし、接続先のパソコン名が含まれるなど、仕様は独自に拡張されているようだ

付属ユーティリティ「SX Virtual Link」。パソコン側からWireless Dockを認識することができる
 さて、上記の手順はあくまで無線LANを設定するためのもの。パソコン側から本製品を認識させるためには、専用ユーティリティ「SX Virtual Link」をパソコン側にインストールする必要がある。

 「SX Virtual Link」は、同社USBデバイスサーバーにも添付されているソフトで、ネットワーク経由で接続されたデバイスとパソコンが1対1で通信するためのユーティリティだ。インストール後に本ユーティリティを起動すると、デバイス一覧画面にiPodが表示されるので、iPodを選択して「接続」をクリックする。これにより、パソコンがiPodを認識し、直結時と同様にiTunesのウィンドウにiPodが表示されるようになる。

 なお、設定ユーティリティはWindows XP/2000に加えて、Mac OS X版も用意されている。


本体動作はもたつく場合も。パソコン直結時との転送速度の違いにも注意

本製品をリンクモードに切り替えると、iTunesがiPodを認識するまでの間、ポップアップウィンドウが立ち上がる

iTunesの画面からは、iPodが直接接続されているのか、Wireless Dockを経由して接続しているのかは分からない
 インストールが終わったところで、実際の使い勝手や気になるポイントを見ていこう。

 本製品の動作モードは、「再生モード」と「リンクモード」の2種類が用意されている。前者はiPodの再生を行なうスタンドアロンなモードで、後者はiTunesとの同期に用いるモードだ。これらは本体右上面にあるボタンを長押しすることで、切り替えられる仕組みになっている。

 実は筆者が本製品を試用したときに1番戸惑ったのが、このモード切り替えである。リンクモードに切り替えてもすぐにパソコン側にレスポンスを返すとは限らず、iTunesがiPodを認識するまで場合によっては十数分かかることもあった。また、上記の「SX Virtual Link」をマニュアルで操作しなければiPodを認識しないケースもあったほか、パソコン自体がハングアップすることもあった。

 今回は時間の制限もあって、これらの原因を特定するまでは至らなかった。もちろん、筆者のテスト環境に依存している可能性も否定できないが、不安定さはともかく、USBでの直結時に比べると動作がもたつく場合があるという印象だ。この点は、あらかじめ理解しておきたいところだ。

 それ以外に気になった点は、曲の転送速度である。筆者の環境で測定したところ、1曲を新規にiPodへ転送するのに約10秒かかった。USB接続での転送時間は1曲あたり約1~2秒なので、およそ数倍の時間がかかった計算になる。

 USB 2.0とIEEE 802.11gの転送速度は理論値ベースで約10倍ほどの開きがあるので、これだけの速度差がつくのもある意味やむを得ない。ただ、アルバム単位で楽曲をひんぱんに入れ替えたり、動画ファイルを転送するといった運用ベースで考えると、やや難があると言わざるを得ない。従って、本製品を利用するのは日々の充電プラス再生回数やレートの同期、もしくはプレイリストだけの転送といった用途に限定し、アルバム単位での楽曲データの入れ替えは従来通りUSB接続を利用するのが現実的ではないかと思う。

 ちなみに上記の「再生モード」「リンクモード」は、本体前面の白色LEDの点灯・点滅で見分けるのだが、可能であれば各モードを別のLEDで表示するか、LEDの色が変わるようにして欲しかった。また、この白色LEDがレーザービームかのように明るく、暗い寝室などでは非常に気になった。ファームアップで輝度調整機能の実装を望みたいところだ。

 なお、本製品はスピーカーを内蔵しているわけではないので、前述の通り、単体で楽曲を再生する場合は背面のAUDIO OUTにスピーカーを接続する必要がある。このAUDIO OUTから出力される音量は一定で、ボリュームを変更することはできない。本製品はApple Remoteと組み合わせて利用することも可能なのだが、その場合もボリュームの調整は無効となるので、注意が必要だ。音量を変更したい場合は、組み合わせるスピーカーの側で調整することになる。


付加価値のあるドックとしてお勧め。将来的な価格引き下げにも期待

AUDIO OUT端子にスピーカーを接続して楽曲の再生が行なえる。前述の通り、Apple Remoteによるリモコン操作も可能
 第5世代のiPod以降、ドックは本体に同梱されず別売りとなっている。そのため、純正のドックを購入するのであれば、こうした付加価値製品を購入するのも悪くはないだろう。動作のもたつき感やセットアップ時の手間を差し引いても、iPodを家庭内のどこからでもiTunesと同期できるメリットは大きい。

 なお、本稿では取り上げなかったが、無線LAN以外に有線LANでの接続もサポートしているので、無線LANアクセスポイントが家庭内にない環境でも利用できる。

 1つ気になる点があるとすれば価格だ。価格が19,800円と、iPod本体の価格を考えると割高感があるの否めない。無線LANのモジュールを内蔵しており、れっきとしたサーバー製品であるというハードウェア的な事情はさておき、純正のUniversal Dockが5,000円以下で購入できることを考えると、付加価値をつけても1万円台半ばがユーザーが購入する際の価格ラインとしてギリギリのようにも思える。

 本製品については、コレガからも協業製品として11月29日に発売が予定されている(標準価格19,740円)。今後ロットを重ねることで、両製品の実売ベースでの価格が引き下げられることを期待したいところだ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.silex.jp/japan/products/network/wirelessdock/
  サイレックス・テクノロジー
  http://www.silex.jp/

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(kizuki)
2006/11/22 10:59
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