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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
JAXA、155Mbpsで通信できるインターネット衛星「WINDS」を公開

WINDS(イメージ)
 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は26日、筑波宇宙センターにて超高速インターネット衛星「WINDS(ウインズ)」の概要説明会を実施。打ち上げ前のWINDSを公開した

WINDSを利用して地上通信が不便な地域でも高速なインターネット接続が可能に

 WINDSは、政府IT戦略本部の重点計画に基づき、静止衛星が持つ広域性、同報性、耐災害性の特徴を活かして、地上インフラとの相互補完ネットワークの構築を実証するために打ち上げられる人工衛星。独立行政法人情報通信研究機構(NICT)との協力により技術開発や実証実験を実施する予定だ。なお、WINDSの総開発費は、JAXAでは打ち上げに関わる費用なども含めて約465億円、NICTでは全体で約60億円としている。

 実証実験は、WINDSを打ち上げた後に東経143度、高度36,000kmの位置に静止させ、Ka帯(20~30GHz)を利用し、一般家庭での利用を想定した送信1.5Mbps、受信155Mbpsでの通信技術や、法人利用を想定した1.2Gbpsでの通信を行う。また、日本国内のほか東南アジアや太平洋地域を含む広域での高速通信技術の検証、利用開拓に必要な通信網システムの整備なども行うとしている。

 JAXAでは、WINDSによって地上での通信が不便な地域でも高速なインターネット接続が可能になると説明。利用方法としては、災害などによって重大なアクセスラインが切断された場合のバックアップ、災害時の情報配信や臨時回線の設置、日本国内の離島や東南アジア地域などブロードバンド環境が整備されていない、あるいは整備できない地域のデジタルデバイド解消などを想定している。また、WINDSは機器内に交換機を持つため、従来の静止軌道では不可能であったメッシュ型のマルチキャスト通信も可能で、多地点での遠隔授業や映像配信なども行なえるとしている。


WINDSによる通信のイメージ WINDSの模型 JAXA筑波宇宙センター

(左から)NICT新世代ワイヤレス研究センターの高橋卓氏、JAXA宇宙利用推進本部の中村安雄氏 WINDS打ち上げプロジェクトの目的 WINDSの概要

WINDSの全体システム構成 WINDSの通信能力 WINDSの開発・利用体制

WINDSの打ち上げは2007年度後半を予定

公開されたWINDS。黒い多層断熱材で覆われている
 WINDSの概要は、本体の大きさが打ち上げ時には2×3×8m、軌道上では22×5×8mとなり、質量は約2,700kg。本体側面には太陽電池パドルを2基装備し、宇宙空間で展開した場合で5,200W以上の電力を発生させることができる。設計寿命は、打ち上げ後5年を目標としている。

 通信機器では、日本や近隣国向けのマルチビームアンテナを1基、東南アジア向けのマルチビームアンテナを1基装備、8台の増幅器を並列利用するマルチポートアンプを利用することで、アンテナ直径が45cmと小型でありながら、155Mbpsでの送信が可能となったという。このほか、電子走査型のアクティブフェーズドアレイアンテナ(APAA)を1基装備。APSSは利得が低いため地上側で大型アンテナを用意する必要はあるが、電波を送出する方向を需要のある任意の地域に対して2ミリ秒間隔で切り替えられるとしている。

 また、Ka帯は降雨に弱いという欠点があるため、降雨地域への送信電波は出力を高め、送信電力を多く消費する必要がある。WINDSに搭載されるマルチポートアンプは、電波送信地域の天候を自動識別し、天候に応じて電波出力および送信電力を柔軟に増減させることができる機能も搭載している。このほか、本体には復調機を3台、変調機を3台、交換機を冗長も含めて2台搭載。変調方式はQPSKを、誤り訂正符号はリード・ソロモンを、プロトコルはATMを採用する。

 現在は、WINDSのプロトフライトモデルのシステム試験を行っており、電気的や通信的に性能を満たす実験のほか、宇宙空間での利用を想定した熱真空実験、宇宙空間を疑似的に再現した「スペースチェンバー」での実験などを終えているという。今後、打ち上げ時のロケットによる振動などへの耐久性を検証する機械環境実験を行なった後に、2007年秋頃には鹿児島県の種子島宇宙センターに移送。最終組み立てと試験を経て、2007年度後半には打ち上げを行なう予定だ。なお、JAXAでは8月26日までWINDSの愛称を公募している。


WINDS上部のマルチビームアンテナ。打ち上げ後は展開され、アンテナ面を地球に向けて静止する。マルチビームアンテナの裏面にはAPAAを装備する WINDSの太陽電池パドル(右側面)。パドルは打ち上げ後に展開される。左側面には交換機を太陽光から保護する鏡を装備。上部の銀色の箱はAPAAを保護している 本体下部にはバッテリーと、打ち上げ後から静止まで使用するアポエンジンを装備。静止後の軌道修正は本体内蔵のホイールを回転させて行なうという

WINDSの特徴(マルチポートアンプ) WINDSの特徴(マルチビームアンテナ) WINDSの特徴(APAA)

関連情報

URL
  独立行政法人宇宙航空研究開発機構
  http://www.jaxa.jp/
  WINDS
  http://www.jaxa.jp/projects/sat/winds/index_j.html
  ニュースリリース(WINDS愛称公募)
  http://www.jaxa.jp/press/2007/06/20070626_winds_j.html


(大久保有規彦)
2007/06/26 19:54
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