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第8回:座談会「Second Lifeやメタバースを取り巻くあれこれ」
[2007/10/22]
第7回:彼氏彼女とどこに行く? ~Second Lifeのデートスポット~
[2007/10/15]
第6回:一攫千金も夢じゃない!? Second Life内のセレブ紹介
[2007/10/09]
第5回:合コンだってできる! Second Lifeでイベントを楽しもう
[2007/10/01]
第4回:Second Lifeだけじゃない!! 海外のバーチャルワールド事情
[2007/09/25]
第3回:飛んでみる? それとも踊る? Second Lifeの行動あれこれ
[2007/09/18]
第2回:イケてる場所ってどこ? 「セカンドライフの名所案内」
[2007/09/10]
第1回:Second Lifeってどこがイケてるの?
[2007/09/03]

第8回:座談会「Second Lifeやメタバースを取り巻くあれこれ」


 皆さまこんにちは、ゆっきぃです。Dr.ジクこと竺振宇さんとのこの短期集中連載もいよいよ最終回。今回はSecond Lifeやメタバースの最新動向や今後に関する話題を座談会形式でお届けします。





ゆっきぃ:Dr.ジク、こんにちは。今日はゲストの方がいらっしゃると伺っていたのですが・・・。

Dr.ジク:こんにちは。今日は、「できるポケット+ セカンドライフで『見る・遊ぶ』を体験する本」を一緒に執筆した、まっちゃんこと松本淳さんに来ていただきました。

まっちゃん:はじめまして。今日はよろしくお願いします。

ゆっきぃ:それでは本日はこの3人でSecond Lifeや、メタバースを取り巻くあれこれについて、お届けします!





Second Lifeを取り巻く流れが大きく変わる

Dr.ジクこと竺振宇さん
ゆっきぃ:Second Lifeの連載もいよいよこれで最後になりました。Dr.ジク、7回終えてどうですか?

Dr.ジク:とても変化に富んだ2カ月でした。短い間のように見えてSecond Lifeに関する話題が多く登場しましたし、私個人としてもバーチャルワールド「HiPiHi」への投資など、さまざまな成果がこの時期に重なりました。まっちゃんと最初に本を出そうと話していた時と今では、Second Lifeを取り巻く状況がまったく違いますね。

まっちゃん:最初に本を出そうと話してからもう1年くらい経ちましたね。

ゆっきぃ:1年でDr.ジクを取り巻く状況が目まぐるしく変わったのでは? 特に連載をしていたこの2カ月の間、どんどん話題の方になって、あっという間に雲の上の人になって!

Dr.ジク:それはないですよ(苦笑)。ただ、飛行機に乗る回数はものすごく増えましたね。そういう意味では雲の上の人かもしれません(笑)。

ゆっきぃ:確かに!第4回でも海外を飛び回っているお話を伺いましたが、その後も、何度も飛行機で世界中を飛び回っていましたものね。

Dr.ジク:とにかく、バーチャルワールドやメタバースと言うものを、みんな真剣に受け止めてくれた。「時が来た」のかな、というのを一番感じましたね。

ゆっきぃ:この連載のことを友達に教えたら、読んだ人は大抵Second Lifeをダウンロードしたって言っていました。ただ、自分のパソコンのスペック的にできないと、そこであきらめちゃうんですけど……。

まっちゃん:それは今回の座談会の1つのテーマでもありますね。私は現在、東京大学大学院で情報学・社会学などを学んでいるのですが、その観点からも興味深く思っていることもあります。





「2ちゃんねると似ている?」 Second Lifeと日本のコミュニティの違い

「できるポケット+ セカンドライフで『見る・遊ぶ』を体験する本」を共同で執筆した松本淳さん
ゆっきぃ:日本のコミュニティと、Second Lifeのようなメタバースでの違いについて何か感じていることはありますか?

まっちゃん:コミュニティの形成に日米の違いを感じますね。米国ではフロンティアスピリッツというか、何も無いところから自己表現することが得意だと思います。米国発のSNS「MySpace」なんかはまさにそうですよね。

 それに比べて日本人の場合、ある程度決められたテンプレートがあるほうが安心する。同じテンプレートに必要な情報を埋め込みながら、その中で自分なりの違いを出していくというのが日本的ではないでしょうか。mixiはまさにその代表例ですね。

 このMySpaceとmixiの違いというのが、Second Lifeと日本型、もしくは日本で受け入れられるメタバースとの違いというところに反映されるのではないかと思います。

ゆっきぃ:日本ではmixiだけでなく「2ちゃんねる」も人気ですよね。

まっちゃん:2ちゃんねるとSecond Lifeって、一見すると似ていないようですが、実は「管理されてない」という点で共通していると思います。2ちゃんねるは、本当に犯罪性が高い場合などはもちろん対応しますが、基本はもう自由にいろんなことを書く。Second Lifeも、リンデンラボがコンテンツ自体には原則として介入しないという考え方を持っている点で、両者には共通項が多いと思います。もちろんそれも良し悪しで、メリットもデメリットもあると思いますが。

 一方、先ほどもお話したmixiは、基本的に管理されているコミュニティであって、これも大きな違いでしょう。自由ではないことで離れていくユーザーがいる一方、安心できることで居続けるユーザーも必ずいますから、善し悪しがありますね。





Second Lifeの成長にはインターフェイスが重要

ゆっきぃ:先程、自分のパソコンでSecond Lifeが使えない友達の話をしましたが、ほかにもSecond Lifeの問題点っていくつかありますよね。私は最近やっと、1人でSecond Lifeにログインできるようになったのですが(汗)、それでも、ログイン後はやっぱり友達にお薦めスポットに呼んでもらったり、一緒にチャットしながらの方が楽しいので、今だとSecond Lifeにログインする前にメッセンジャーやSkypeを使って友達に「今(Second Lifeに)いる?」って呼びかけているんです。最初から友達がいるかどうかわかればいいのに、ってよく思います。

まっちゃん:Second Lifeはもっと軽いクライアントも用意して、気軽に始められるようにすべきだと思います。Second Life用のブラウザについても、単純に楽しみたい、クリエイションしないで、あちこち歩き回りたいという人にとっては、機能が盛り込まれすぎていてちょっと冗長な感じがしています。

ゆっきぃ:メッセンジャー感覚で気軽に使えたらいいのに。今誰がログインしているのかがわかれば、それだけで会いに行こうっていう気になりそう。

まっちゃん:もう1つ、僕が指摘しておきたいのは、操作インターフェイスの改善ですね。デバイスなどハードウェアのインターフェイスを開発しているメーカーがメタバースの開発に加われば、また新たな進化が生まれると思います。

 3D空間に対するインターフェイスとして考えると、プレイステーション3(PS3)やWiiのリモコンのようなものがベストかというと、それはまだ十分ではないと思うんですが、少なくともキーボードとマウスよりは優れているのではないでしょうか。インターフェイスがもっと直感的になれば、デジタル・ディバイドの3D版みたいな状態も避けられるのではないかと思います。

ゆっきぃ:今のSecond Lifeはいろいろと操作を覚えるのが大変です。もっと、ユーザーフレンドリーになったらいいなぁと思います。個人的にはアバターが生々しいのではなくて、もっとかわいかったらいいのにって思います!

まっちゃん:あと、「仕事に使えるか?」も切り離せない要素ですね。多くの人が1日の大半を会社で過ごしていることを考えると、メタバースの普及は職場に浸透してこそではないかと思うんです。メールやチャットと同じように、仕事のやりとりもできるようになって、初めてそこで生活してるってことになるでしょう。そういう意味でも、常駐できて仕事にも使えそうな軽いクライアントの登場に期待しているんです。

Dr.ジク:実は、今月アメリカで開催された「Virtual Worlds Conference and Expo」の初日には、「Movable Life」というサービスも発表しました。


Virtual Worlds Conference and Expoでのプレス発表の様子

Dr.ジク: これはWebブラウザからSecond Lifeにアクセスできるサービスで、Google MapsのAPIを使った地図や、チャット、インスタントメッセージ機能、テレポート、フレンドやグループの管理機能が使えますよ。将来的には携帯電話からもアクセスできるようにしようと考えていて、実はここからは、先週「バーチャルワールドサミット2007」の最終日には、既に携帯上で動いている様子を披露しました。


バーチャルワールドサミット2007で3Dインターネット戦略についてスピーチを行うngi group CEO小池 聡氏


ゆっきぃ:それって、Second Lifeを携帯できちゃうってこと!?

Dr.ジク:そうです。

ゆっきぃ:すごいですね。これってまさに軽いクライアントの第一歩では!?それで、日本語版も既にできていたりするんですか?

Dr.ジク:まだ英語版だけですが、なるべく早く日本語化したいです(笑)

ゆっきぃ:まだなんですね…。でもこうやって、少しずつSecond Lifeの課題も解決されているんですね。出会いのチャンスも増えるかも!

Dr.ジク:(笑)そうですね、Second Lifeが持つ課題を単に否定や批判と捉えるのではなく、それを解決したらより向上するんだ、と考えています。まだまだ進化は始まったばかりですから。





メタバースがインターネットの歴史を再現

「Jin-sei」を使った「ミクシィ・リクルーティングオフィス(仮称)」のイメージ
Dr.ジク:1つ昔話をしましょう。1995年のビル・ゲイツの話ですが、実はその当時、「Windows95」をリリースしたMicrosoft CEOであった彼ですら、インターネットは本当にビジネスになるのかどうかと迷いを見せていたそうです。歴史の再現かもしれませんが、今のメタバースも同じ局面に、同じポイントにいるのかもしれません。

Second Lifeだけでなく、日本発の3Dコミュニケーションプラットフォームである「Splume」、東京をリアルに再現した「meet-me」、中国発のメタバース「HiPiHi」、そしてPS3上で動く「Home」など、様々なメタバースがどうなるか…。

まっちゃん:UNIXもある中、DOSがWindowsになって、Apple OSも根強い支持がある中、OS2も出てきてNTへ繋がっていく・・・といったOSの進化の歴史にもなぞらえることもできそうですね。

Dr.ジク:今までのインターネットの歴史になぞらえるならば、まず標準化の動きが出てきて、1つの大きなプラットフォームができあがり、その上にさまざまなバーチャルワールドに対応した汎用ブラウザ的なものが登場する。そしてその上に、今のGoogleやeBayなどが誕生した時のように、さらに大きな産業が生まれてくるのでは……、そんなことも期待できますね。

ゆっきぃ:十数年前のインターネット革命のようなことが、今度はメタバースの世界で起こるかもしれない、ってことですね。

Dr.ジク:私の会社3Diでも、先日「Jin-sei」というサービスを始めました。これはリンデンラボが公開しているオープンソースを利用して、企業が自社ブランドの独立した仮想空間を構築できるサービスです。そして、その第1弾としてミクシィさんに採用していただいています。

日本では企業のオープンソースプログラムへの参加は非常に少ないようですが、オープンソースを使うことで開発コミュニティへのよい刺激にもなりますし、標準化しやすい環境ができる。そういう意味で、将来的にバーチャルワールドの標準化に貢献できるのではないかと思っています。

ゆっきぃ:うう……、最終回は私にはちょっと難しい話も多かったけど、まだまだこれから楽しくなるってことはよく分かりました!引き続きこの新しい(出会いの)場を楽しんで行きたいと思います。お二方どうもありがとうございました!

 Second Lifeについてもっと詳しく知りたい方は、Dr.ジクこと竺振宇さんが執筆した「できるポケット+ セカンドライフで『見る・遊ぶ』を体験する本」もご参考ください。

できるポケット+(プラス)シリーズ
できるポケット+ セカンドライフで「見る・遊ぶ」を体験する本

2007/07/03発売
定価:819円(本体 780円+税)


2007/10/22 12:26

竺 振宇(じく としたか)
上海交通大学船舶海洋工程専攻・横浜国立大学建築専攻工学博士。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。2000年から3次元に特化したシステムの開発に従事。建築、フライトシミュレーション、景観シミュレーション、3次元CADなどのプロジェクトリーダーを務め、幅広い開発者のネットワークを築く。2007年、バーチャルワールドの設計・構築・運営をてがけるジクラボを設立。同年、ngi group執行役および3D利用のインターネットサービスを企画・統括する新会社3Di代表取締役副社長CTOに就任。
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