Broadband Watch logo
最新ニュース
「動画や音楽機能の拡充も準備」ミクシィ笠原社長に聞くmixiの展開

 600万以上のユーザー集めて日本最大のSNSとなった「mixi」を運営し、9月には上場も果たしたミクシィ。mixiの現状と今後の展開について、代表取締役社長の笠原健治氏に伺った。





ユーザー数は660万人。ログイン率はサービス開始時から70%を維持

代表取締役社長の笠原健治氏
――本日はよろしくお願いします。はじめに、mixiのユーザー数やPVについて教えて下さい。

広報:mixiのユーザー数は11月12日時点で660万人です。月間PVは10月の実績値でPCサイトが75.0億PV、携帯電話向けサイトのPVが月間17.9億PVです。

 1人あたりのPVはネットレイティングスの9月度データで月間604PVで、サイトの月間滞在時間は3時間35分。3日以内にmixiにログインしているアクティブ率は70%となっています。

――ログイン率が70%とのことですが、mixiに入会した時期によってログイン率に違いはあるのでしょうか。そうしたID属性によるユーザー数のデータは。

笠原:IDを基準としたログイン率については数字を公開していません。ただ、mixiを始めた当初からログイン率は70%で、今も70%という数字は続いていますので、この70%という数字は1つの黄金率のようなものかとも思っています。いずれIDによるログイン状況なども公開できる時期が来れば考えたいと思います。





携帯電話での登録はサービス開始当初から対応を検討

現在はプレミアム会員のみ利用できる携帯電話からのメッセージ送受信機能。12月からは一般会員も利用可能になる
――12月1日より携帯電話メッセージ送受信が一般に公開され、12月4日からは携帯からの登録が可能になりますが、こうした携帯電話への機能公開に踏み切った理由は。

笠原:携帯電話による登録は以前から対応するべきだとは考えていました。招待したい相手の携帯電話のメールアドレスは知っていてもPCのアドレスは知らないとか、PCよりも携帯電話をメインに使っている人もいますし、学生はPCよりも携帯電話が中心でしょう。そういった意味ではできるだけ早く携帯電話には対応すべきと準備を進めてきましたが、予定よりだいぶ遅れてのリリースになりました。

――実際に携帯電話での招待機能を実装しようと考えた時期は。

笠原:携帯電話からの招待機能は、初期段階から構想はありました。携帯電話からメールで日記を投稿できる機能は2004年3月に、携帯電話から閲覧や書き込みができる「mixiモバイル」も2004年9月から提供していましたので、mixiとしての携帯電話への対応は比較的早かったと思います。

 ただ、mixiを始めた当初は、携帯電話のユーザーとPCのユーザーでははっきり違いがあるのではないか、という空気感があり、携帯電話からの登録機能の実装については意見が分かれていました。最近では、携帯電話経由で使っているユーザーが増え、携帯ユーザーとPCユーザーが混在している状況でもユーザー層として違いも感じられず、特に違和感のある状況ではなかったため今回の実装につながりました。

――携帯電話から気軽に登録できるようになることで、mixiの雰囲気が荒れるのでは、という心配はありませんか。

笠原:18歳未満は利用できないという方針は続けますし、認証に関しても複数のメールアドレスが簡単に取得できるPCと比べて、携帯電話のアドレスを使ったほうが認証の度合いは高まると考えています。

――認証という意味では、携帯電話事業者との提携などは考えていますか。

笠原:相手のあるお話なので、今の段階でお話できることはありません。ただ、認証という意味では非常に魅力的なことだと思います。

――グリーはauと提携して「EZ GREE」を始めています。

笠原:携帯のユーザー数や利用時間は今後間違いなく拡大していくでしょうし、携帯電話ならではの機能も強化していきたいとは思います。キャリアとの提携に関しては相手のある話でもありますし、もし実現するならお互いメリットのある形で、とは思いますが、一方で独自にサービスを提供しているからこそ、ユーザーだけを見てサービスを拡張していけるのではないか、とも考えています。





携帯電話間でのマイミク登録機能も予定。プレミアム会員の機能も拡充

月額315円の有料プラン「mixiプレミアム」の会員は「Premium」のアイコンが表示。フォトアルバム機能や日記容量の拡張などが一般会員と異なる
――携帯電話から招待が可能になるということで、携帯電話同士でお互いをマイミク登録できる機能などは考えているでしょうか。

笠原:ニックネームでのユーザー検索やID番号での登録も携帯電話からはなかなか大変ですので、QRコードを読み込むとボタン1つで相手をマイミク登録できるような機能は考えています。

――今までプレミアム会員のみに提供された携帯電話のメッセージ送受信が全会員に提供されることで、プレミアム会員のメリットが薄れる点もあると思いますが、プレミアム会員と一般会員の差別化は。

笠原:モバイルメッセージ送受信が使えるからプレミアムを使っていた、という人もいらっしゃったとは思いますが、今まではプレミアム会員なら携帯でもメッセージを確認してくれそう、という期待が持てるのに対し、普通のユーザーはPCでないと見えないために読んでもらえているかがわからないという点がありました。モバイルメッセージ機能の全体公開は、プレミアム会員にもメリットがあると思います。

 一方、プレミアム会員は日記の容量を300MBから1GBに拡張しますし、メッセージ検索機能も実装します。今までメッセージは無制限に保存できるが検索はできませんでした。この検索機能でプレミアム会員のメリットも向上すると思います。

――メッセージだけでなく日記の検索機能も導入する予定は。

笠原:検索は非常にシステム負荷がかかります。メッセージ検索も思われている以上に負荷がかかっています。日記の検索も少なくとも提供する方向にはありますが、いきなり全体に公開というのは難しい。日記の検索機能がプレミアム会員限定になるかどうかはまだ決まっていませんが、当初はプレミアム会員から機能を提供する、ということになると思います。





公開範囲設定機能は今後も拡充。日記の公開範囲設定も視野に

すでに実装されているグループ機能。現状はグループ分類のみで日記の公開範囲を設定することはできない
――プロフィールの本名や性別の公開範囲も設定できるようになります。

笠原:自分の情報を自分でコントロールできるほうがいいだろう、という考えで実装を決めました。600万人までユーザーが増える中で、名前や性別が選択制になることに対して要望が非常に多かったわけではありませんが、全体的な状況を見て変えるべき部分は変えたほうがいい、と判断しました。

 現実社会に近い空間をネット上に作りたい、それがmixiでありたいというのが我々の目指すものです。確かにサービス開始当初でユーザー数が数万程度の時は、名前を公開していることも自然だと考えていました。一方で現実社会、たとえば会社で考えた場合、元々知っている人の前では自分の名札をつけていてもいいが、会社を出ても全員が名札をつけているほうがいいかというと、実際につけている人はいないでしょう。

 お互いがどういう人かをわかって初めて名前は交換される、それが現実社会に近い姿でしょうし、それであれば名前の公開制も変えていくべきだと思います。

――公開範囲の制限は日記やプロフィールなど範囲を広げていくのでしょうか。現実社会に即すという考えであれば、友達同士の日記の内容を会社の人に知られたくないという、グループごと公開範囲を設定したいニーズもあると思いますが。

笠原:そうした機能も検討は進めています。ただ、機能が複雑でユーザーにわかりにくくなる可能性や、同じマイミク間でも不公平感が出てしまう可能性もあるので、そうしたデメリットを調整しながらだとは思います。

 また、公開範囲の制御はシステム的なコストもきわめて高いのです。例えば日記の公開範囲を制御する機能を導入するには、日記で利用するサーバーの何倍ものサーバーが必要です。システム的にも大きな変更になるだけに十分な検討が必要ですが、そうした情報量のカスタマイズ機能は実現できればとは考えています。





動画共有機能は2006年度中にリリース

8月に行なわれた動画投稿コンテスト
――音楽機能を特徴としたMySpaceが日本に上陸しました。

笠原:我々としては(他のSNSを)意識しすぎることなくやっていきたいと思います。元々携帯電話や音楽といった展開もやっていきたかった方向性ですし、それに対するユーザーニーズがどれだけあるのかを把握しながら、ミクシィはミクシィとして展開していきます。

――mixiミュージックの機能拡張は。

笠原:現状もiTunesで取り扱っている楽曲は購入や試聴ができるようになっています。今後は試聴できる楽曲数を増やすことはもちろん、自分が聴きたい曲や、友達が聴いている曲を聴けるような仕組みも用意していきたいと思います。

 mixiミュージック上で音楽を聴ける機能も、弊社だけで決められる話ではありませんが、やっていきたい方向ではあります。実現するならば、ユーザーにとってもレーベルや権利を持っている人たちにもメリットのある形にしていきたいと思います。

――夏には動画機能を使ったコンテストが行なわれていましたが、動画投稿機能の実装は。

笠原:8月に行なった動画のコンテストは、動画投稿と閲覧のニーズや社内のシステム負荷などのデータを取るためのものでしたが、いずれもいい結果でした。動画はコミュニケーション分野において表現も豊かで非常に大きいツールですし、2006年度中には動画機能を実装したいと考えています。

――現実社会をネットに持ち込む、という観点では、Second Lifeをどう見ておられますか。

笠原:ネット上で1つの経済圏ができるというのはサービスとしてのインパクトも大きいですし、非常に魅力的です。そこであまり価値のないものが発生したり、詐欺が横行するようでは良くないですが、一方で自分が作ったものがきちんと評価され、その結果として対価がもらえるという好循環ができるのであれば、やってみたいとは思います。
Second Life:インターネット上の仮想空間「Second Life」の中で自分のキャラクターを作成し、他ユーザーとコミュニケーションできるサービス。自由度の高さが特徴で、仮想空間の中で家やアイテムを作成できるだけでなく、現金に交換できる仮想通貨「マイクロ通貨」でのアイテム売買も可能。日本語版サービスも予定されている。

Second Life
http://secondlife.com/world/jp/





「世の中をひっくりかえす」ような新しいサービスを手がけたい

mixi内に用意された利用上の注意事項
――報道などでmixiの日記や画像が使われている件について、利用上の注意事項では「ミクシィとして画像提供することはない」との発表がありました。そうした無断利用された画像については、ミクシィとしてどのように対応しているのでしょうか。

笠原:報道各社に対しては、事前に問い合わせがあった場合はお断りしていますし、事後であっても削除等のお願いはしています。テレビで一度放映されてしまったものでも、お願いして以降の番組では使わないようにしてもらう、というケースはあります。

――日記も友達のみ公開にしていれば、そうした無断利用を防ぐ効果もあると思います。全体に公開している人には何らかの形で一度アラームを出すなど、日記の公開範囲の見直しを促すような機能面での対応は考えていますか。

笠原:人と交流することを目的にしたサービスで、安全性を第一にして何事もない世界を作ろうとするならば、究極的には何もしないことが一番となってしまうでしょう。制限を設けてしまうことで、全体としての盛り上がり感が薄れていくというデメリットもあるとは思います。

――友達に招待されて知らず知らずのうちに日記を全体公開にしているユーザーも少なくないと思います。ウィザード方式にするなど、自分の意志で公開範囲を設定しているということを認識してもらうような機能も必要では(注:mixiの入会時、日記の公開範囲はデフォルトで「全体に公開」に設定されている)。

笠原:日記の利用については利用上の注意事項を随時アップデートしていきますし、できるだけ多くの人に見ていただけるよう、ログイン後の画面上部で表示しています。そうした少しずつの積み重ねはこれからも行なっていきますし、公開範囲についても今後検討していきたいと思います。

――WPC EXPOの基調講演で、「世界で通用するサービス」という発言がありましたが、それはmixiの世界展開でしょうか。それとも別のサービスになるのでしょうか。

笠原:あくまで将来の話で、いまの時点で具体的に決まったものがあるわけではありませんが、その両方の可能性があると思います。世界だけでなく日本においても、mixiやFind Job!とは違う新しいサービスを提供したいと考えています。

――新しいサービスとして興味のあるジャンルは。

笠原:特に気になるジャンルというのはありませんが、ジャンルを問わず世の中をひっくり返すような新しいサービスができないか、とは考えています。今あるものを改善しただけではなかなか面白みもないし、ユーザーにも使ってもらえないでしょう。革新的な何かがあるサービスであれば世の中にもインパクトがあるし、作る側としても非常にエキサイティングで楽しいと思います。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  ミクシィ
  http://mixi.co.jp/
  mixi
  http://mixi.jp/

関連記事
mixi、利用時の注意事項を更新。プロフィール公開範囲の機能拡張も予定
mixi、モバイルメッセージ機能を全会員に提供。携帯電話での入会も対応
【WPC TOKYO 2006】
ミクシィ笠原氏「mixiはYahoo!と並ぶ存在に」。世界展開も視野



(甲斐祐樹)
2006/11/30 11:11
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.