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iPhone 3Gのネットワーク機能をチェック

 7月11日、HSDPA通信をサポートした3G版iPhone「iPhone 3G」がソフトバンクモバイルの端末として発売された。無線LAN機能を搭載した「iPod touch」と比較しながら、iPhone 3Gのネットワーク機能をレポートする。


3G通信をサポートし移動中の通信が可能に

iPhone
 iPhoneは、本体前面にタッチパネル液晶を搭載し、指による直感操作を特徴とした携帯電話端末。音楽や動画、静止画再生といったマルチメディア機能に加え、Mac OSで搭載されているブラウザ「Safari」やGmailに対応したメール機能、YouTube対応、Google マップ機能など、インターネット関連機能も豊富にサポートしている。

 2007年6月に米国で発売された初代iPhoneはGSMのみの対応だったが、2008年6月にアップルが開催した開発者向けカンファレンス「WWDC」では、HSDPA通信をサポートし、新たにGPS機能を搭載した「iPhone 3G」を発表、同時に日本でもソフトバンクが7月11日に発売することが明らかにされた。

 タッチパネル操作やSafariなどの機能を備えた端末としては、すでにiPod touchが国内でも発売されているが、iPhone 3Gの特徴は音声通話に加え、HSDPAのデータ通信をサポートしたことだろう。iPod touchでは無線LANエリアのみでしか利用できなかったインターネット機能が、外出先や移動中などでも自由に利用できるようになり、利便性が向上。また、初代iPhoneから搭載されているカメラに加え、GPSも新たに搭載したことで、ブログやSNSでの画像投稿やGPSナビなど、ネットを利用した機能の幅も広がっている。


背面。左上に200万画素のカメラを搭載 左側面にボリュームとマナーモードスイッチ

前面上部にスピーカー 上部に電源ボタンとイヤフォンジャック

iPhone(左)とiPod touch(右)
 外観をiPod touchと比較すると、前面は下部のHOMEボタンとタッチパネル液晶のみという構成はiPod touchとほぼ同様だが、iPod touchと比べて本体はやや厚みがある。また、背面には左上にカメラが搭載され、本体下部にあったイヤフォンジャックは本体上部に移動。本体上部の電源ボタンはiPod touchでは左側だったが、iPhone 3Gでは右側に移動している。

 初回起動時にはiPod touchと同様、PCとのアクティベーションが必要。iTunesを最新の「7.7」にアップデートし、インターネットに接続したPCと接続することでiPhone 3Gの全機能が利用可能になる。

 なお、発売当日は窓口が混雑したなどの事情もあり、電話機能を開通する前にiPhoneを手渡されているユーザーもいる。その場合、緊急通話以外の機能は一切利用できず、iTunes認証を行うことで電話を含めた機能が利用可能になる。

 画面のインターフェイスもiPod touchとほぼ同様で、アイコンをタップして機能を選択し、画面の拡大や縮小などは指2本を使ったピンチ操作などで行う。ブラウザなどでは画面を2回タップすると最適な大きさに拡大・縮小し、指を使ったドラッグ操作も可能だ。

 iPod touchと比べて大きく変わったのは日本語入力の面。iPod touchではQWERTY型のソフトキーボードと予測変換の組み合わせで日本語を入力していたが、iPhone 3Gでは携帯電話型のテンキー型ソフトキーボードを搭載。携帯電話のように同じボタンを何度も押すことで「あ→い→う→え→お」と入力できるほか、同じボタンを押し続けると同じ行の他の文字を表示し、指を移動することで入力可能。指が大きい人でも打ちやすいように考えられている。


iPhone(左)とiPod touch(右)。本体サイズはiPhoneがやや大きい 背面。iPod touch(左)は金属加工だがiPhone(右)は樹脂製

iPod touchに比べてiPhoneはやや厚みがある 初期状態のメニュー画面。中央がiPhone、右がiPod touch

QWERTY型のソフトキーボード iPhoneで新たに搭載されたテンキー型キーボード ボタンを押し続けると同じ行の他の文字が選択できる

iPhoneの文字入力イメージ

ソフトバンク専用メールアドレスでプッシュ通知

iPhoneのメニュー
 機能面ではiPod touchにも搭載されているメールやブラウザ、YouTube、地図機能などに加えて、新たにカメラと電話、SMS機能を搭載。また、iPhone 3GやiPod touch向けのソフトウェアを配信する「App Store」にも対応した。

 メール機能はiPod touchで対応していたYahoo!、Gmail、AOLのほか、.Macから機能拡充してサービス名称も変更した「MobileMe」、Microsoft Exchangeにも対応。なお、MobileMeに関してはiPhone 3Gだけの機能ではなく、WindowsやMacと共有できるオンラインストレージ的機能も持っているため、MobileMeについては別途レポートする予定だ。

 メール機能でiPod touchともっとも違うのが、ソフトバンクモバイルの「@i.softbank.jp」形式のメールアドレスを利用できる点だ。Gmailなどはメール機能を起動しない限り受信できないが、ソフトバンクのメールアドレスであればメールを受信すると自動で受信を通知、その後メールを受信することで閲覧できる。

 ただし、「@i.softbank.jp」形式のメールアドレスはIMAP形式であり、メールを本体にダウンロードすることができず、受信したメールはサーバーに蓄積される。また、サーバーの保存期間は30日間のため、それ以上経過すると過去のメールが閲覧できなくなってしまう。ソフトバンクでは「@i.softbank.jp」のメールを保存したい場合は転送を行うか、PCなどでメールを受信しておくよう呼びかけているが、「@i.softbank.jp」形式のメールアドレスを一般の携帯電話のような感覚でメールを使うことはできないことを注意しておこう。

Eメール(i) | SoftBank
http://mb.softbank.jp/mb/iphone/mail/email_i.html

 なお、初期化などでソフトバンクのメールアドレスが消えた場合は、契約時の書類に記載されたメールアドレスやID、パスワードを「その他」から追加。「SSLで接続できない」というアラートが2回表示されるが、2回とも「はい」と答えることで再設定できる。

【7月14日追記】
 「@i.softbank.jp」形式のメールは通常の携帯電話メールと異なりダウンロードできないため、メールの仕様に関する詳細を追記しました。


対応メールサービス 「@i.softbank.jp」形式のメールは受信するとメッセージで通知 メール表示画面

3G通信速度は1Mbps程度を計測

ブラウザでBB Watchを表示
 ブラウザの機能はiPod touchと同等で、Flashには非対応なものの、Google マップやGmailなど、閲覧できるサイトは幅広い。なお、mixiに関してはソフトバンクモバイルの携帯電話ではあるものの、7月11日時点ではモバイルページにアクセスしてもPCと認識され、PC版で閲覧する必要があった。

 本体を横にするだけで自動的に横表示に切り替わる機能や、ピンチ操作での拡大・縮小、ダブルタップで最適な画面サイズにする機能なども搭載。文字入力に関してはテンキーが加わったことで、iPod touchよりも入力が楽になった。ただし、あくまで個人的な体感ではあるが携帯電話と比べると文字入力の反応速度は通常かやや遅く感じたほか、文字入力ウィンドウより長いサイズの文章を入力すると画面に表示されない、変換が予測変換のためカタカナ変換が煩雑など、携帯電話に慣れているとやや不便に感じる場面もあった。

 iPhone最大の特徴でもある3G通信もテスト。実際にImpress Watchのある市ヶ谷で電波の良い場所を探し、無線LANの速度と比較。iPhoneのブラウザはFlash非対応のため、BNRスピードテストの画像読み込み版で速度を計測したところ、無線LANでは4~5Mbps程度を計測したのに対し、3Gでは800kbps~1.5Mbps程度となった。HSDPAの下り理論値が3.6Mbpsであることを考えればまずますのスピードが出ているといえるだろう。

 なお、Impress Watch社内はソフトバンクモバイルの電波状態が非常に悪く、窓際によってもiPhoneの電波アンテナ5本のうち1~2本が立つ程度。会社付近も1~2本程度の場所が多く、5本すべてが立つ場所はオフィスから10m以上離れた公園だった。


ダブルタップで最適な文字幅に表示 最大サイズまで拡大 本体を傾けると自動的に横表示になる

Gmailは専用画面で表示 Google マップも表示可能 7月11日現在、mixiモバイルにはアクセスできない

アプリで簡単に機能拡張できる「App Store」

App Store
 コンテンツのダウンロード機能は、楽曲を購入できる「iTunes Wi-Fi Music Store」に加え、アプリケーションを追加できる「App Store」が新たに利用可能になった。なお、App Storeに関してはiPod touchでも今後公開される予定の新ファームウェアを適用することで利用可能になる予定だ。

 App Storeからのコンテンツ導入はiPhone 3Gから直接行うか、iTunesを介してPCから転送する方法の2通りがある。iPhoneからダウンロードする場合はメニュー画面の「App Store」を選択し、好きなアプリケーションを見つけたら、有料の場合は値段をクリックし「今すぐ購入」してiTunesのパスワードを入力、無料の場合は「インストール」を押すだけで自動でインストールされる。

 iTunesからApp Storeを利用する場合は、iTunesを最新版の7.7にアップデートし、「編集」「設定」の「一般」タブ」から「アプリケーション」にチェックを入れることで利用できる。ただし、App Storeのソフトウェアはファイルサイズもそれほど大きくなく、iPhone 3G自体もパケット定額が必須契約のため、基本はiPhone 3Gでダウンロードし、目当てのソフトを探す場合はPCで、などと使い分けるといいだろう。

 アプリケーションは有料、無料含めて非常に種類が豊富。無料アプリケーションでは同一ネットワーク内のiTunesやアップルTVをiPhone 3Gでリモコン操作できる「Remote」のほか、マイスペースやfacebook、Twitterのクライアントなども提供されている。有料はゲームが多いが、セガの「スーパーモンキーボール」、ハドソンの「ボンバーマン」などが購入可能だ。


アプリケーションの紹介画面。値段のアイコンからインストールできる 有料アプリケーションはID認証が必要 ジャンル表示や検索機能なども搭載

天気アプリケーション facebookアプリ Twitterクライアント「Twitterrific」

カメラ機能やGPS機能も搭載

カメラ機能は撮影のみでシンプル
 iPod touchには無いiPhone 3Gの機能としては、200万画素のカメラ機能やGPS機能も挙げられる。機能は非常にシンプルで、iPhone 3G本体の向きに合わせて横と縦を自動に切り替える以外の機能は搭載しておらず、オートフォーカスやホワイトバランス調整機能なども用意されていない。撮影した画像は「写真」の「カメラロール」に自動で保存され、メールに添付して送ることもできる。

 GPSを搭載したことで、Google マップも現在位置を表示できるようになった。iPod touchでもGoogle マップおよび無線LANによる位置検出機能は搭載されていたが、この無線LAN位置検索は米Skyhook Wirelessのデータベースを利用しており、日本では位置が検索できないことも多かった。これも3Gによる通信が可能になったことで、移動中に現在地を調べることが可能になり、利便性が広がっている。

 カメラとGPSの組み合わせも可能で、位置情報をカメラに埋め込むことができる。また、App StoreのアプリケーションでもGPSを利用しているものがあり、Twitterクライアントの「Twitterrific」では位置情報を付与してメッセージを投稿できる。


GPS搭載で現在地情報も写真に付与できる 横撮影も可能 iPhoneの撮影サンプル。リンク先は無加工

iPod touchの機能+どこでも通信できるメリット

 以上、iPod touchをベースとしして、iPhone 3Gの機能をチェックした。基本的な機能は無線LANのみを搭載したiPod touchと共通する部分が多く、iPhone 3Gのメリットは音声通話機能、3Gによるデータ定額通信、カメラ、GPS、「@i.softbank.jp」形式のメールアドレスによるプッシュ受信が違いといえるだろう。

 日本の無線LAN環境は「どこでも使える」という状況にはなく、その点で速度こそ落ちるものの移動中などでもデータ通信が可能なiPhone 3Gは利便性が高い。携帯電話として見たときも日本語入力がやや煩雑ではあるものの、GPSやカメラなどの付加機能も備えており、SafariやGmail、YouTubeなどがモバイル用ではなくほぼフル機能で利用できるのも魅力的だ。

 一方で、移動中の通信機能や音声通話などが不要であれば、iPod touchでもほぼ同等の機能を持っており、新たに公開されたiPod touchの新ファームウェアを適用すればApp Storeも利用可能になる。携帯電話の機能や移動中のデータ通信といったメリットを持つiPhone 3Gを取るか、無線LAN環境のみではあるが月額費用の負担が発生しないiPod touchを取るかは一長一短で、ユーザーの利用スタイル次第に応じて選択するとよいだろう。






URL
  iPhone
  http://www.apple.com/jp/iphone/

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(甲斐祐樹)
2008/07/11 23:26
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