■企業ユースには回線の常時監視が必須
2001年12月に自分の会社が千代田区のとあるビルに引越してから、はや1年。会社のインターネット接続環境も自宅のインターネット接続環境も、かなりの変化があった。やはりこの1年間は、ネット接続環境の大きな転換点だったように思う。
私のいる会社は、いわゆるIT系の企業で、社内では常時15人程度がインターネット接続をしている。当然のことながらオフィスを引越す際にはインターネット接続環境が整っていることが必須条件のひとつとなる。現在入居しているビルは、9階建てでフロアもきちんと底上げされ、LAN配線がされた立派な作りで、ビルにはNTTの光終端が設置されているということだった。
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社内ではサーバー管理のほか、社員が常時15名ほどでインターネット接続している
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選んだオフィスはLAN配線やサーバー用のラックも設置してあるブロードバンド対応のビル
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引っ越したばかりの頃は、東京めたりっくのDSL接続サービスである「Bizサービス(Biz1600)」を利用していたのだが、サービス開始当初は不安定な時期もあって、モデムをよくリセットしていたことを覚えている。
そうした不安定さもあって、翌2002年の3月には通信事業者のアイ・ピー・レボルーション(以下IPR)と契約し、光接続環境へ移行することになった。最初の話通り、ビルに光終端装置があるという確認もNTTに取れ、工事は簡単に終わるかと思いきや、いざ工事をするためにIPRに来てもらうと実はそのビルには光終端が入っておらず、工事はふりだしに戻ってしまった。
紆余曲折はあったが、IPRは無事開通。契約したプランは「100Mゴールド」で、月額19万8000円。安くはないが回線品質は良く、本当はビルでシェアする回線プランなのだが現在はビルの中でうちの事務所の専用線状態のため、月額98万円のプラチナライトと同じ環境だとも言える。
また、この回線が常時監視されている点が選択の大きな理由のひとつだった。以前ほかの通信事業者の光接続環境を利用して提供していたマンション向けのサービスが突然アクセスできなくなったのだが、その原因が通信事業者の回線が落ちていたためだった。このときのトラブルの解決に時間がかかり、そのサービスが常時監視されていないことが判明したのだ。
弊社では業務で集合住宅のためのグループウェアを運営している。このサーバー管理をしている以上、常時監視されていない回線は使えない。いまのところ、IPRは大きなトラブルもなく安定している。
IPRが開通してからしばらくは東京めたりっくと併用していたが、IPRが安定してきたので東京めたりっくは解約。念のため、予備でフレッツ・ADSLの8Mbpsをinfosphereの「Biz ADSL8」で契約し、トラブルに備えてはいるが、幸いまだ使ったことはない。
このビルでは、IPRの通常の回線速度は30Mbps前後で、速いときには60Mbps前後出ることもある。管理しているサーバーのストレージエリアも作っているのだが、これだけ速度が出れば十分だ。また、この速度になって実感したのは、相手のサーバーの速さもあるので、普通にWebブラウズする分には、スループットで2~3Mbps出ていればそれ以上の速さと比べてもあまり差はないということだ。
というのは、自宅の常時接続環境は、バージョンアップするたびに速くなったことを体感してきた。特に64kbpsのISDNをYahoo!BBに変えて1Mbps近く出るようになったときや、そのYahoo!BBをアッカ・ネットワークスのADSL 8M+@niftyに変更して下り2.5Mbpsになったときは、はっきり差がわかったほどだ。
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会社で管理しているマンションのグループウェアのためのサーバー機の1台
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中央左に入っている水色の線がIPRの回線。トラブルの際の緊急用としてADSLの8Mも用意している
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■直線距離が1km。しかし線路距離長2.5km
1980年代後半に、当時のNifty-Serve(現@nifty)が登場してすぐパソコン通信を始め、14.4kbps→28.8kbps→33kbps→56kbpsとお約束のモデムスピードバージョンアップを経て、ISDN 64kbpsを利用。この環境は比較的長く使っていた。「インターネットは会社でやればいいや」と割り切って、しばらくは自宅ではパソコン通信のみを利用していたのだが、ブロードバンド環境が値下がりし、利用しやすくなったころ、自宅のマンションがUSENの光ケーブルのサービスエリアに入りったためすぐに申し込んだ。しかし、サービス開始当初で申し込みが殺到したためか、近所で申し込みがまとまらなかったためか理由は不明だが、その後連絡もなくあきらめた。
次にYahoo!BBのサービスが開始されたのでこちらを申し込んでみた。すると、申し込み後モデムがすぐ到着。回線の開通もすぐだろうと思い、ISDN回線を解約して開通を待ったのだが、実際の開通まではそこから1カ月がかかった。この1カ月間はダイヤルアップのアナログ56kbpsの接続環境に逆戻りして苦しんだため、ほとんどメールしか見ていなかった。
そうこうしてなんとかYahoo!BBが開通したのだが、スループットは1Mbps程度。それでもISDNの64kbpsとのスピードの差に感動した。しかしすぐにYahoo!BBの中では決して速くない方なのだと知る。
自宅は5階建てで30世帯ぐらいの入ったマンションの一室で、事務所として使われている部屋も多いため、そのISDN回線が影響して伝送損失は大きいだろうと想像していた。NTTの線路情報を見ると、実際の伝送損失は予想通り42dBと大きめだったのだが、むしろ線路距離長の方に驚いた。NTTの局まではどう考えても直線距離で1km程度しかないのに、公表された線路距離長は2.5km。どうやら自宅マンションとNTTの局の間にある、幹線道路の環状八号線を横切る際に、ずいぶん遠回りをしているようだ。これではスピードが出なくても仕方ないかもしれない。
しかし数カ月使った後、やはり1Mbpsしか出ないことが不満で、乗り換えを決意。アッカ・ネットワークスのADSL 8Mのサービスを、最初にパソコン通信をはじめてからのつきあいである@niftyで契約することにした。
前回ISDNからYahoo!BBに乗り換えるとき1カ月間のブランクが発生して苦しんだので、その失敗をふまえて今回は自宅にある2回線のうちYahoo!BBで使っていなかった方をアッカ・ネットワークスに申請。実際にアッカ・ネットワークスが開通したことを確認してからYahoo!BBを解約した。
■パソコン通信時代からの@niftyが解約できないワケ
アッカ・ネットワークスを@niftyで申し込んだのには理由があった。当時契約していたプロバイダーは、Asahiネットと@niftyとYahoo!BBの3つ。Asahiネットは旅行でよく行くアメリカでのローミングが安いため、@niftyはパソコン通信時代からのコンテンツを巡回するため、それぞれどうしても解約できなかったのだ。結局これを整理するために、Asahiネットをメールだけの利用にし、@niftyをメインに使い、Yahoo!BBを解約する、という解決方法を選んだわけだ。
私は旅行好きで、海外でも比較的早くから通信をしていた。300bpsのカプラーも使ったし、COMPU-SERVEがうまくつながらなくて苦しむという経験もした。航空会社のチケットやホテル、レンタカーを直接予約や変更ができる「アクセストラベラーズ」というシステムを頻繁に利用する。これは、JALの予約のためのホストコンピュータで、個人利用するにはTelnetでログインし、コマンドで利用する必要がある。自分の知る限りプロバイダーでTelnetできる所は少なく、@niftyはそれができる数少ないプロバイダーのひとつなのだ。
こうして開通したアッカ・ネットワークスはスループットで下り2.5Mbps。自宅で使う分にはおおむね満足している。ただ、上りは900kbpsで、会社のサーバーへFTPする際に、上りのスピードがもう少し出ればいいなと思う。会社で利用しているIPRも安定しているため変更の予定はない。最速で60Mbpsは現状の光ケーブル接続では十分のスペックが出ていると思う。ギガビットの専用線まで入れれば違うと思うが、そのギガビットが一般的になるまでは必要ないと思っている。
ブロードバンドの接続環境は、最新の規格にいくらでも乗り換えることができる。しかし、結局は以前から利用しているコンテンツや、ましてやTelnetなどの枯れたシステムに影響されてしまうというのは皮肉なものだ。あたりまえのことだが、やはりパソコンも接続環境も、目的の作業ができなければ意味がないのだ。今後も、ローテクのサービスと最新のサービスの折り合いをうまくつけながら、接続環境を改善していきたいと思う。
(取材・執筆:荒田淳子 [ウインディ]、2002/12/12)
■参考データ
居住地区 | 東京都千代田区(オフィス) | 東京都世田谷区 |
線路距離長 | 非公開 | 2420m |
伝送損失 | 非公開 | 42dB |
接続事業者 | IPR | アッカ・ネットワークス 8M |
プロバイダー | IPR | @nifty |
スループット | 30~60Mbps | 2.5Mbps |
□IP REVOLUTION
http://www.iprevolution.ne.jp/
□アッカ・ネットワークス
http://www.acca.ne.jp/
□@nifty
http://www.nifty.com/
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