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NTTのインフラ(4)
光ファイバがやってくる


 光ファイバの実用化から20年経つが、これを長いと見るか短いと見るかは、人それぞれだろう。中継線がすでに90%の光化を終えているのに対し、一般家庭の加入者線においては、延々と普及率ゼロを更新し続けるばかりというのが、これまでの光ファイバの現状だったのだ。

 8月1日、NTT東西は、都内5区と大阪市の一部で、光ファイバを使ったインターネット接続サービス「Bフレッツ」を正式にスタートした。単なるフライングか普及の予兆なのかは今後の動向次第だが、すべての家庭に光ファイバがやってくる日は、確実に近づきつつある。

2015年、2010年、2005年……ゴールはいつ?!

 北海道旭川から九州鹿児島にいたる太平洋側の主要都市が、光ファイバケーブルで結ばれたのは、実用化からわずか5年後の1985年のことである。1989年には、光ファイバを使ったISDNサービス「INSネット1500」が始まり、前年の「INSネット64」とともに、いわゆるN-ISDN(Narrowband ISDN〜狭帯域ISDN)によるデジタル通信が本格的に始動する。

 翌1990年、NTTはB-ISDN(Broadband ISDN〜広帯域ISDN)をベースとした21世紀の新しい通信サービス構想「VI&P(Visual, Intelligent and Personal Communication Service)」を発表。「2015年まで」にすべてのオフィスや家庭を大容量光ファイバで結ぶという遠大な計画が明らかにされ、1991年にはN-ISDNを使った総合実験が、1993年にはB-ISDNを使った総合実験がスタートしている。

 が、まだ時期尚早だったのか、当時はたいした話題にもならず、国をあげてIT化を唱えるようになるのは、1993年に米国のゴア副大統領が提唱した「情報スーパーハイウェイ」以降のことである。

 1994年、政府は「高度情報通信社会推進本部」を設立し、翌年2月に「高度情報通信社会に向けた基本方針」を決定。「2010年」を念頭においた光ファイバ網の全国整備がその中で唱えられている。この基本方針は1998年に改訂。光ファイバ網全国整備の努力目標として「2005年」が掲げられた。もちろん、ここでいう光ファイバ網は、NTTだけをターゲットとしたものではないが、NTTがかなりのウェイトを占めることはいうまでもない。

 主要都市における現在の進捗状況に関しては、東西NTTの「光ファイバインフォメーション」で見ることができるが、政令指定都市や県庁所在地級の都市に関しては、すでに主要エリアの90〜95%以上をカバーできる体制が整っているという。全国的には、まだまだ整備が行き届いていないところも多く、平均すると40〜50%といったところだろうか。が、2010年の光化完了(94年発表の光化整備目標による)を目指し、計画が着々と進んでいることは確かなようだ。


□高度情報通信社会に向けた基本方針(1995年2月21日)
http://www.kantei.go.jp/jp/it/990422ho-7.html
□高度情報通信社会推進に向けた基本方針(1998年11月9日)
http://www.kantei.go.jp/jp/it/981110kihon.html
□光ファイバインフォメーション(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/hikarika/
□光ファイバインフォメーション(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/hikarika/


早く芽を出せ光ファイバ

 加入者系の光ファイバ網は、物理的には従来のメタルケーブルをそのまま光ファイバケーブルに置き換えたものと考えればよい。NTTのインフラ第1回「モジュラージャックの向こう側(http://bb.watch.impress.co.jp/column/infra/2001/08/01/)」でお話ししたのとまったく同じ経路(局〜地下ケーブル〜き線点〜架空ケーブル)をたどって加入者宅に引き込まれるわけだ。では、実際のところはどうなっているのだろうか。さすがにBフレッツなご近所というのはまだいないが、NTTの敷設状況を見る限り、うちの近所もそこかしこに種だけはまかれているハズ。そこで早速、光ケーブルの探索に乗り出してみた。

 灰色の端子函と青いケーブルが顔を出したき線点を目指して「いざご出陣」だったのだが、電柱の端子函もき線点のケーブルも、見渡す限りの黒、黒、黒。メタルケーブル用ばかりである。

 実は、光ファイバインフォメーションに見る現在の進捗状況や、2010年に100%のカバー率で完了するハズの光化計画は、いずれもき線点までのお話し。肝心の光ファイバケーブルは地中に埋もれたままで、なかなか顔を出してはくれないのである。ようやく見つけた光ケーブルも、先を追跡してみると分岐することもなくそのまま電柱を伝い、端子函1個で加入者宅(といっても学校や工場だが)に引き込まれていたりする。筆者宅周辺では、地上ではまだ全然「網」になってない状態なのである。「いや、うちの近所の端子函は3個に1個が光ファイバ用だぜ」なんてところがあったら、ぜひともご紹介願いたい。

 NTTの話では、Bフレッツの契約を機に末端をどんどん広げていきたいと意欲的なのだが、電柱を見るたびに「それって凄く大変なことじゃないか」と思ってしまう。今申し込むと、ひょっとするとあなたのためだけに地下からケーブルを引き出し、延々と引っ張ってきてくれるのかもしれないのだ。

 もちろんいつかは、そうやって最初の1本を敷かなければFTTHの扉はいつまでたっても開かない。が、めでたくケーブルが地上に出てきた後にも、まだまだ大きな難関が待っている。わが国は、世界でも有数の集合住宅国であり、4421万世帯の37.7%が集合住宅に居住。東京や大阪などの都市部にいたっては、半分以上の世帯が集合住宅暮らしという。金銭的なことだけでなく、構造上や権利上の諸問題がからみ、導入を難しくする集合住宅。この難関を越えて、すべての家庭に光ファイバがやってくる日となると、ゴールはますます見当がつかなくなってしまう。

光ファイバ用の端子函
 
き線点から出てきた光ファイバー(青いケーブル)

光アクセスラインの構成

メタルのMDFに相当する光ファイバの配線盤「FTM」
光ファイバ用の収容装置「SLT」
 光ファイバを使ったインターネットアクセスについて、もう少し詳しく見てみよう。Bフレッツのサービスには、最大100Mbpsの「ベーシックタイプ」、最大10Mbpsの「ファミリータイプ」、100Mbpsを集合住宅内で共用する「マンションタイプ」の3タイプがある。いずれも、最終的には前回お話した各都道府県単位の地域IP網を経てプロバイダーに接続し、そこからインターネットに接続するスタイルだが、加入者線側のスタイルが大きく異なる。

 先ほど、メタルケーブルをそのまま光ファイバに置き換えたものと申し上げたが、これにそのまま当てはまるのがベーシックタイプである。このサービスでは、加入者宅と収容局が1本の光ファイバで直結される形になる。メタルケーブルと同様の1対1の配線だ。加入者宅には、端子函から引き出された光ファイバがそのまま引き込まれ(落雷の心配がないので保安器はない)、ONU(Optical Network Unit)という装置に接続される。このONUは、ISDNでいうDSU(Digital Service Unit)やADSLのモデム(見た目はこちらに近い)に相当する光加入者線用の終端装置で、光ファイバ上の光信号と、ユーザー側の端末が使用する電気信号との相互変換を行なう。

 将来的には、ここに電話などが多重化される可能性もあると思うが、現状ではユーザー側のインターフェイスはイーサネット(10BASE-T/100BASE-TX)のみというのが一般的である。局側の設備もメタルケーブルに準じた構成になっており、メタルのMDF(Main Distribution Frame)に相当する配線盤「FTM(Fiber Termination Module)」を経て、SLT(Subscriber Line Terminal)と呼ばれる収容装置に収容。Bフレッツの場合は、他のフレッツファミリ同様、その先が地域IP網へと続くことになる。

 「マンションタイプ」は、システム的にはこの「ベーシックタイプ」をそのまま集合住宅に引き込んだもので、局と1対1で接続された光ケーブルを集合住宅全体で共有するスタイルになる。もし棟内にイーサネットが配線されているのであれば、既設のLANをそのまま使って回線を共有すればよいし、LAN配線がない集合住宅の場合には、HomePNA(Home Phoneline Networking Alliance)を使って各戸を結ぶ手段が提供される。

 HomePNAは、電話用の屋内配線をそのまま使い、帯域分割によって通常の電話と共用する形でLANのメディアに応用する技術である。この規格には、最初に策定された1MbpsのVer.1.0と、10MbpsにスピードアップしたVer.2.0があるが、NTTでは後者の高速版のほうを採用。棟内では、ONU→HomePNA親機→電話線→HomePNA子機と配線される。

 残る「ファミリータイプ」は、他の2つとは異なる構成を採る。収容局と加入者宅を1対1でストレートに接続する方法を、シングルスター(Single Star[SS])といい、ベーシックタイプやマンションタイプはこのSS方式である。これに対し、1本のケーブルに複数のユーザーの信号を多重化して乗せる、ダブルスター(Double Star[DS])と呼ばれる方式がある。機能的には、複数のチャンネルが使えるISDNと同じだが、DS方式は各チャンネルを電柱上などで分岐し(*1)、この分岐点と加入者宅とを1対1で接続していく。この2段構成のDS方式を使うのが、ファミリータイプなのだ。もっとも、加入者の絶対数が少ない現状では、町内会一同で申し込むようなことでもなければ、当面はSS接続という形になるのかもしれない。

*1 光カプラなどのパッシブ素子を使うタイプをPDS(Passive Double Star)、電気的に分岐するタイプをADS(Active Double Star)という。

 お届けしてきたNTTのインフラ編は、今回で最終回。最後は、通信の未来形を描く際には欠かせない光ケーブルで締めくくってみたが、既設と新設の狭間にモロに置かれたFTTH計画は、まだまだ前途洋々というわけにはいかないようだ。が、高価といわれていた光ケーブルのコストは(システムも含めて)、すでにかなり抑えられており、新設という部分ではメタルも光もコストはトントン。設備の効率性や保守まで考慮すれば、もはやメタルは高価という時代に突入しようとしている。

 ADSLのようなメタルケーブルを使ったサービスを目の当たりにすると、まだまだメタルも捨てたもんじゃないと感じはするが、条件の折り合いさえつけば、物理層そのものがベストエフォートなADSLよりも、堅実な光を選びたいというのが筆者の気持ちである。だが同時に、集合住宅に暮らす身としては、その条件の折り合いがなかなか付かないところに、現在のFTTHの本質的な問題を感じるのである。本当に、早く芽を出せ光ファイバなのだが、さあ、そこからどうする光ファイバでもあったりするから複雑だ。


□NTT東日本
http://www.ntt-east.co.jp/

鈴木直美
幅広い技術的知識と深い洞察力をベースとした読み応えのある記事には定評がある。現在、PC Watchで「PC Watch先週のキーワード」を連載中。
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