■電源も画面も無線化は無理かァ……
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四方八方へと伸びるケーブルは邪魔だし見栄えが悪いし気持ちも悪い!!
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年末年始の大掃除における拙者はイマイチ感のカタマリであった。掃除をしつつ、そうだこの機会に部屋のレイアウトをチェーンジ!!
と思い立って、機器類を使いやすい位置にもってこようと奮闘。ところが、どーにもこーにも気持ち良くいかない。詳細は省くが、結局、ケーブルの取り回しがうまくいかないのであった。
いろーんなハードウェアを使っている拙者だけに、コンピュータを中心に四方八方へと接続ケーブルが延びる。そして各ハードウェアからは太かったり硬かったりする電源ケーブルや、デカかったりゴロついたりするACアダプタがつながる。あーもう邪魔だし見栄えが悪いし気持ちも悪い!! くわッ!! アッタマ来たからこのカッターナイフで切……ると元も子もないので四苦八苦して徹底的に合理化・コンパクト化を進めていく。
しかし結局は [コンピュータ]──[周辺機器]──[電源ケーブル] という接続の図式からは逃れられない。工夫して配線するしかないが、工夫しても頭打ちする。また、例えばTAとかルータなんかの周辺は悲惨。電源ケーブルはもちろん、電話線やイーサネットケーブルが多数つながってるモンだから、位置は動かしづらいしケーブルのかさばりと重みで本体が傾くわで、レイアウトチェンジどころではない。あー結局パソコンなんちゅーモンを使ってる限り、このケーブル類の不快感からは逃れられな……いや、そうでもないぞ!?
無線化すればいいのだ。コンピュータと各周辺機器を無線でつないで、ケーブルレス化するのダ!! そうだ全ワイヤレス化!! これでケーブルのシガラミから逃れる!! これだ!! これをやっていきたい!! てなわけでケーブルの呪縛を解いてくれそーな周辺機器を大物色!!
その結論から言えば、拙者の糞忌々しいケーブル地獄をスコッと解消してくれるよーな製品はほとんどなかった。電源を無線化するような夢の製品は完璧になく、太くてしょうがねえディスプレイケーブルを無線化する実用的製品もほぼ皆無。根本的な解決にはならない感じ。って結論が早く出過ぎ>俺!! でも、いろいろ見ていくうちに少々おもしろそーな無線LAN系製品を発見したので、それらを試してみることに。
■プリンタを無線化
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Net Hawk RF-USB |
まず試してみたのは、プリンタを無線化する機器。プリントサーバを始めとしてちょいと他にはなさげなユニークな接続系機器で知られる新潟キヤノテックのNet Hawkシリーズ。ネットワーク機器なら何でも無線化しちまうキカイとか、2台のプリンタを接続可能な無線式プリントサーバとか、無線系機器でもおもしろいモノがけっこー出ている。
それら製品のうち、興味が出たのがNet Hawk RF-USBだ。詳細は製品紹介ページをご覧いただきたいが、要はキヤノンのBJシリーズやレーザーショットシリーズ等のUSB接続プリンタを、無線接続のネットワークプリンタに変身させるという機器。
Net Hawk RF-USB、モノとしてはPDA程度のサイズで、プリントサーバとしての機能を持つ。この箱に付属のLANカードを挿し、USB接続プリンタをつなげば、無線LANで共有使用できるプリントサーバとなる。プリントサーバとしてのコンピュータが要らないゆえ省スペース&省コスト&省エネであり、かつ、無線でつながるのでケーブルのウザさもない。この箱だけで単なるUSBプリンタがネットワークプリンタに……しかも無線接続!! こりゃなーんか良さそうですヨ!!
てなわけで早速使ってみた。マニュアルが微妙に不親切っぽいゆえ設定に少々戸惑ったりしたが、使い始めるとなるほど快適。ていうかですね、部屋の端に置いたプリンタ+Net Hawk RF-USBにですね、いきなり印刷物が出現!! あら不思議!! そして室内モバイルスタイルすなわちLANへ無線接続可能なノートパソコンからだと、室内のどこにいても、部屋のあっちの向こうの端のプリンタに印刷物が出現!! 不思議でありかつかなり実用的じゃんイイじゃん便利じゃん!! と。
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Net Hawk RF-USBに付属するソフトウェア類。このなかのNet Hawk Utilityを使ってプリントサーバの細かな設定を行っていく |
USB接続プリンタを無線接続のネットワークプリントサーバとして設定したところ。Apple TalkプロトコルをインストールすればMacOSからも使えるプリントサーバになる |
しかし、んーむ、冷静に考えてみると、かなり小規模なLAN環境すなわち拙宅的環境では、あーんまり有意義なモンではないような印象。
Net Hawk RF-USBと対応USBプリンタだけで、プリントサーバができるってのはイイ。LANケーブルのコトを忘れられるのもイイ。のだが、それらはやはりある程度の規模のオフィスで意味があるコトだ。多人数で1台のプリンタを使い倒すためのプリンタサーバであり、そのサーバへの柔軟にアクセスできるようにしつつサーバの位置的問題を解消するための無線接続。安価なUSBプリンタとメーカー価格32,800円のNet Hawk RF-USBで、そこまでデキるよーになるのはかな~りリーズナブルだ。
だが個人では32,800円という価格がネックになる。個人使用では、まずプリントサーバなんて必要ないし、無線化の意味もあまり大きくない。毎日何度もプリントアウト、てな人が何人かいるならプリントサーバの意味は大きいが、週に何度かちょこっと印刷する程度の拙者環境には不要。無線化によりプリンタを部屋の隅に追いやれるのは便利だが、プリンタケーブル(USBケーブル)を1本なくすためにプリントサーバにして無線化するってのは、行為として少々偏執狂っぽい!? と思ったりもする。やはり、個人にとって「その程度の利便」に対して3万ナンボは払えない感じである。
ただ、小規模以上の事務所なんかには便利な製品だと思う。スタッフ全員のデスクにプリンタ置くより安いし、もちろんプリントサーバを立てるとかそういう機能を持つ業務用プリンタを導入するよりコストを抑えられる。スペースも取らない。アクセス性も抜群。オフィスの片隅に、プリンタ+Net Hawk RF-USB+両機のACアダプタを置けばいいので、レイアウトフリーという側面からも魅力があると思う。
■無線化可能なMPEG-4ビデオサーバ
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BROAD STREAM TSR-MS4 |
次に試したのは、アイ・オー・データ機器の「BROAD STREAM TSR-MS4」だ。詳細はメーカーの製品紹介ページをご覧いただきたいわけであり、また清水理史氏の連載記事ことイニシャルBにて詳しい解説が読める。
で、このキカイ、どういうモンかと言えば“単体でビデオ配信サーバーとして使えるインテリジェントなWebカメラ”てな感じの製品。本体のCMOSカメラ部(10万画素)で撮影した動画をリアルタイムでMPEG-4動画へと変換し、そのままLANやインターネットを経由してストリーム配信することができる。
本体にはCFカードスロットがあり、そこにメモリカードを挿せば録画も可能で、無線LANカードを挿せば無線接続のWebカメラとして使えて、PHSデータ通信カード等を挿せばBROAD STREAM←→パソコンという感じでピアツーピアで動画を受信できたりもする。
外観的にはWebカメラっぽいBROAD STREAMだが、まあカメラではあるのだが、実際はMPEG-4など動画配信に特化したサーバーだ。なので、例えばLANに接続し、他のパソコンからアクセスすればLAN接続の監視カメラとして使える。単体でADSLモデムに接続したり、あるいはルータ経由でバーチャルサーバーとして(インターネット上に)公開すれば、LAN内からはもちろん、インターネット上からアクセスできる動画配信サーバーとして使えるのだ。同時アクセス数は5セッションまでとやや少ないが、グループで使うためのWebカメラ&配信サーバーとして考えればけっこー使いでがありそうだ。
さておき、早速試用してみた。設定はかなりラクで、まず本体とパソコンをイーサネットケーブルで接続し、各種設定を行なう。で、そのままケーブル接続で使うか、あるいはさらに設定・接続等を行って無線LAN接続するか、もしくはPHSデータカードをつないで……と目的・スタイルに応じて使い進めていく。が、最初だけはパソコンとイーサーネットでつなげての設定が必要になるというわけだ。
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動画のクオリティやビットレートが調整可能。これら各種設定はBROAD STREAM内のWebページで行なう |
BROAD STREAMには音声と映像の外部入力端子がある。そこにビデオデッキやビデオカメラなどをつなげば、それら機器からの動画をMPEG-4変換・リアルタイムでの配信ができる |
設定を済ませれば、即、動画配信を受けられる。LAN内からならブラウザでBROAD STREAMのIPアドレスめがけてアクセスすればBROAD STREAMの設定ページが開き、その[リアルタイム動画]メニューで動画を見られる。で、動画の質はどーんな感じかといえば、これは設定によって少々異なる。設定で動画の画面サイズ、ビットレート、画質などを選べるが、結論から言えばビットレートが高いほーがキレイ。そして撮影現場が明るいほーがキレイ。……ってまあそりゃ当然ですな。ただし、画面サイズが大きいと、画面自体はキレイなものの、動画的滑らかさが微妙に失われる感じ。
ちなみに、その“キレイさ”は、MPEG-4におけるキレイさだ。例えば今時のデジカメで撮影したMPEG-1やMotionJPEGなどの動画とか、ブロードバンド向けの動画コンテンツと比べちゃうと、粗いし、ややカクカクしがちだし、音声なんかもいまひとつクリアではない。内蔵カメラの性能もあると思うが、10万画素ってことで、まあこんなモンだろうなという気がする。また、ネット配信向け(つまりストリームデータサイズの小ささを重視したMPEG-4動画)ってことで、画質にはあまり期待しちゃイカンのである。
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ビットレート64kbps、解像度QCIFのMPEG-4動画を配信したところ。画質も動きも物足りないが、何がどう動いているかはしっかりわかる。音声もまずまずしっかり聞き取れるレベルだ |
解像度をCIFに上げたもの。精細さはグッと良くなるが、動きはあまり滑らかにならない(むしろやや鈍くなる印象)。ちなみに、リアルタイム動画にはなるが、MPEG-4エンコードに時間がかかっているのか、実際の動きから5秒程度遅れた状況が映る(LAN経由配信の場合) |
BROAD STREAMのMPEG-44動画のビットレートは、32kbps~768kbpsまで細かく設定できる。低ビットレートの動画配信が可能なので、例えばISDN回線やPHS回線でも十分(速度的には)快適にストリーム受信ができる。設置・運用開始のイージーさと合わせて、低ビットレートで(=通信環境を選ばない)実用的な動画配信ができるってことが、BROAD STREAMの真骨頂だろう。
■フツーの個人向けじゃないですな
ところでBROAD STREAMって実際何に使うの? とか一瞬思ってしまった。コレを買うだけで、動画のリアルタイムストリーム配信ができるのはスゴい。目的はとりあえずないものの、ハードウェア的おもしろみだけで「おおっ!!」とか思うには思う。が、メーカー価格で65,800円。おもしろみだけで買うにはかなりお高いハードウェアだ。でもコレだけで動画配信サーバーになりやがるんだよなァ……手を出してみたいフィーリング!!
ということで、いつものアレ、“手段のためには目的を選ばず”なモードで、何か良さそうな目的を見繕ってみる俺。そうだ家で使ってネットワーク型監視カメラとして置き……んーむそれならCCDカメラを数台と専用モニタ買った方が安い!? じゃあわかったアレだ、スタパトロニクスTVのプライベートバージョンを配信していくんだよ超低予算インターネットテレビを放……あーそうかMPEG-4だとは言ってもある程度視聴者が多ければサーバに負担が……というよりもむしろBROAD STREAMだと同時に5人の視聴者しか見られないのかぁ。ならばアレだ親戚とか友達へメッセージ動画配信をやっ……そーゆーコトこそFOMAのテレビ電話端末でヤレばいいのかナ!?
やはりパーソナルユースでは、どーにも手を出しにくいハードウェアであり、そのお値段なのであった。だいたい、個人の立場では“リアルタイム”で“配信”したいような動画っちゅーモンがそーそーないのだ。BROAD STREAMに対するほんの少し&たま~にの必要性はあるが、年に何度かのわずかな必要性のために……と考えると、手が引っ込んでしまう。……ただ、個人じゃ意味ねーよってわけでもない。ある場所の状況を遠隔地から何度もチェックしたい監視したいって使い方には向く。部屋のペットの様子、赤ちゃん&ベビーシッターの行動、病人の様子、そーゆー状況を会社等出先からチェック(!?)するには実に意味のある製品となるだろう。
前述のNet Hawk RF-USBにしても、このBROAD STREAM TSR-MS4にしても、ハードウェア的には非常におもしろく、強力でもある。けれど、やっぱり結局はグループや企業、あるいはかなり特殊な用途を持った個人向けの製品なのであった。でもまあ、必要な人々にとってはかなりお手軽でお安くて実用的でイケてる製品になるのだろう。
□スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
(2003/01/22)
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