さて、6月になっちまいました。何を隠そう、アタシは6月が1年で1番イヤな月なんです。とにかく梅雨でジメジメしてて、おまけに祝日が1日も無いときた。たとえ雨が降ってなくても雨が降らないかどうかソワソワして、念のため傘を持って家を出て、挙句の果てにパチンコ屋かどっかに置き忘れる。最悪ですね、ホント。

　何よりもアタシの場合、手が塞がっているという状況がダメなんですよ。手提げのカバンと傘を片手にそれぞれ持ったら、駅で改札通るとき、どうやって切符持てばいいんだ!!　なんてバカなこと考えちまう。だから遊びにでかけることも極端に減りますねえ、この時期は。暑いの嫌いだし。

　そんな6月限定ヒッキーのアタシは家で何をしてるかというと、ひたすら映画のビデオを観ることにしています。まあ某雑誌でインチキな映画評を連載しているアタシにとって、映画鑑賞は仕事の一貫とも言えるんですが、難点が1つあります。長いんですよね、映画って。2時間超の作品なんかザラだし、インド映画を借りようもんなら3時間くらいかかる。

　アタシの家にはしょぼいAVシアタールームが一応あるんですが、ここには電話をひいてないんです。「この部屋は非日常空間だ!!」と女房に大見得を切ってこんな風にしたんだけど、鑑賞してる間は外界からの情報はまったく入ってこないわけです。仕事の合間にちょこっとビデオ見よ、ということができないんで、余裕がないと鑑賞の時間が作れないんですね。

　でも、やっぱりちょっとした息抜きに映画見た～い、というフラストレーションが溜まるときもあるわけで、この欲求を何とか解消したいと長年思ってたんです。で、最近になってそんな悩みを解決するためのイイ情報を知りました。そう、ブロードバンドでのショートフィルム配信です。

■ 充実してきたブロードバンド・ショートフィルム

　ショートフィルムと横文字を使ってますけど、要は短編映画のことです。大金を投じて作る長編映画に比べて低予算で作れるから、無名な監督でも、たくさんの映画を作れる。その中から、思わぬ秀作が登場する確立も高いわけです。無名監督のメジャーへの登竜門みたいなもんですね。

　ブロードバンド時代になって、映画の本編や予告編が見られるサイトが増えてきているので、「せっかくなら大作を見たい!!」と思う人もいるかもしれませんけど、それならレンタルビデオを借りた方が映像もきれいだし、テレビの大画面で見られますよね。ショートフィルムの優秀作品って、色々な映画祭とかでも見ることは可能だけど、ロードショー公開してる映画館はほとんどないから、いつでも見られるってわけじゃない。だけど、ネットなら多くの人が気軽に鑑賞できますよね。

　そもそも映画って、モーションカメラが登場したばかりの初期のころは、短編が中心だったから、ショートフィルムこそ映画の元祖と言えなくもない。たとえば小説にも「ショートショート」というジャンルがあるけど、長編小説よりも書くのが簡単かというとそんなこともない。短いからこそ、素晴らしい作品として仕上げるのは難しかったりします。実際、これから紹介するサイトの作品を見てもらうと分かりますが、かなりのクオリティに仕上がっている作品ばかりで、なかなか侮れませんぞ。

■ あの名優がネットに登場

　最初に紹介するのはコレ。「Yahoo! ムービー」のショートフィルムコーナーです。アタシが観たときは、「男の子はみんな飛行機が好き」という作品を流していたんですが、とにかく観てください。

　三浦友和が殺し屋風の一匹狼を演じてる映画で、なかなか見応えのあるアクション作品です。激しい銃撃戦の中にギャグが織り交ぜてあって、約14分と短いながらも、作品世界に引きずり込まれてしまう。最後のオチには大笑いしました。飛行機オタの友だちにここのURL、思わずメールしちゃいましたよ。

　この作品、実は「TYO」という映像制作会社が制作したものなんですが、シナリオ・カメラワーク・演出ともに非凡なものを感じますね。転送速度も4段階から選べるし、「Yahoo! JAPAN」のブロードバンドサイトだけあってスムーズに観られます。なんかタダで観せてもらうのが申し訳ないな、と思っちまいました。次回作にも期待したいですね。

■ 「アイデア1本勝負」の良さ

「shockwave.com」。月額500円で見放題。

　さあどんどん行きましょう。次はコレ。ネットを使っている方なら知らない人はいない「shockwave.com」の中にあるショートフィルムサイトです。基本的には有料なんですが、無料視聴可能なコーナー「スポット・ショート」があって、ここでは2週間に1回の更新で、色々なショートフィルムが観られるようになってます。

　アタシが見たときは「ガール・ミーツ・ボーイ」という作品だったんですが、これ、なんと時間が2分きっかり。説明を読むと、UCLAの学生が「2分間」「セリフは5行以内」という課題で取り組んだ作品だそうです。わずか4時間で撮り終えたということだけど、なかなかアクション映画として良く仕上がっています。いわゆる一発ギャグ的なネタですね。なんせ2分間だから、作品に奥行きはないけれど、見た後に不思議な爽快感がありました。

　15分の作品もあれば、2分の作品もある。ここらへんがショートフィルムというジャンルの良さというか、自由なところですね。「アイディア1本勝負」の作品ってのはスケールの大小に関わらず、大きな感動が味わえる。もしかしたら映画っていうのは短ければ短いほど、そういう感動が得られる確立が高いのかもしれません。

　あ、念のため言っときますが、もちろんここのサイトはShockwaveで観るわけじゃなく、RealPlayerやWindows Media Playerなどのストリーミングソフトで見られます。画質も結構イイっすよ。

■ ショートフィルムの恐るべき「罠」

　最後に、アタシの一番のお気に入りサイトをご覧あれ。「ショートブレイク」というサイトです。これはフジテレビジョンとパルコが共同制作した映像配信サイトなんですが、さすが映像のプロが手を組んだだけあって、メチャ面白い作品が揃ってます。有料サイトなので、アタシも月額500円を支払っているんですが、それだけの価値は十分にある!!　と太鼓判を押しちゃいましょう。

　アタシが1番気に入ってるのは、5月に公開していた「午前7時のユーウツ」という作品かな。ベルギーの映画なんですが、午前7時に必ず起きなきゃいけない男が、いかにして起きるかを描いてます。アタシはこれを見ている間中ずっと笑ってて、腹が痛くなったほどです。

　あと、「ワンダーズ 不思議な女たち」というドキュメンタリー映画もイイ。大卒でストリッパーになった女の子の心理をスルドク追求した作品で、これまた高水準の出来。このサイトはアニメからコメディ、ドキュメンタリーとすごくラインナップが幅広いんですね。

　こういう4分～8分くらいのショートフィルムって、大画面のテレビやプロジェクターで見るよりも、パソコンのモニターでひっそりと見る方が味わい深いかも。逆に言えば、パソコンのモニターで映画を見るなら、これくらいの時間が限界かな、という気もします。でも、実は1本1本は短くても、ハシゴをすれば結局は長くなってしまうという落とし穴もあったりして。なんたって500円払えばあとは見放題ですからね。

　仕事の合間に息抜きで見始めようものなら、アレもコレもと色々見たくなる。この原稿書くときも、結構時間かかりましたよ。「ちょっと1本」と思ってたのに、いつのまにか長い映画鑑賞タイムになってしまうという罠。アナタも、そんなアブナイ魅力を持つショートフィルムの罠に、ハマってみませんか？