【CEATEC JAPAN 2009】
アクトビラ木村社長講演、「2011年までに600万接続を目指す」


 CEATEC JAPAN 2009で9日、株式会社アクトビラの木村純代表取締役社長による基調講演が行われた。「アクトビラの事業戦略と今後の展開」と題し、デジタルテレビ向けの情報・オンデマンド映像配信サービス「アクトビラ」の現状および将来展望を語った。

機器ID認証・会費不要で“使いやすいサービス”に

アクトビラ 代表取締役社長の木村純氏

 木村氏はまず、ブロードバンドを活用したテレビ向け映像配信サービスの現状について、NTT系の「ひかりTV」やUSENの「GyaO NEXT」、KDDIの「ひかりone」などの事業者が参入している現状を説明。その中でアクトビラは、「インターネット接続事業者のネットワークに依存しない、オープンインターネット向けサービスであり、専用セットトップボックスを用意せずにテレビ単体で利用できる点が大きな特徴」とし、より多くのユーザーにとって利用しやすいサービスであると強調した。

 木村氏によれば、アクトビラに対応したテレビの出荷台数も順調に伸びており、各種統計資料をもとにした推計では、2009年上期に市場に出荷されたテレビのうち、約40%がアクトビラに対応するという。木村氏は、「当初は一部の上位機種にのみ対応していたが、現在では普及価格帯の製品にも対応が広がった点が台数拡大に寄与している」と分析した。また、2011年上期には80%程度にまで増加する見込みも示された。

 実際にアクトビラに接続された機器の台数は、10月7日時点で約130万台。これは画像やテキストで情報を提供する「アクトビラ ベーシック」にのみ対応する機器を含めた数値で、映像配信サービス「アクトビラ ビデオ」に対応する機器はこのうち約62万台だ。なお、「アクトビラ ビデオ」対応機器は、合計10社から119機種が販売されている。

 アクトビラのビジネスは、デジタルテレビメーカーと一般顧客をつなぐプラットフォームおよびポータルの構築に特化。コンテンツプロバイダーから提供された映像や情報の配信代行、課金処理、著作権保護などを担っている。

 その中でも重要になってくるのが「機器認証」だ。木村氏は「テレビにはキーボードがついていないこともあって、PCで一般的なID・パスワードによる認証はしていない。機器に内蔵されたIDをベースに、リモコン1つで簡単・安全に利用できるための仕組みを整えた」と説明した。

 また、入会金や月会費を不要にし、コンテンツを見た分だけ料金を支払うという制度についても「参入のハードルを下げて、とにかく利用しやすくした」とその狙いを語った。技術面では、海外で採用例の多い著作権保護技術「Marlin」を導入するなど、業界標準技術の利用やオープン性の確保を重視したという。


アクトビラ対応機の普及予測アクトビラの特徴。ISPやテレビメーカーに依存せずに使えるサービスであることを強調した

ARPUは1300円~ユニークユーザー増加が今後の課題

 アクトビラの映像配信サービスは、高画質映像を表示できるデジタルテレビを対象にしたものだ。このため、配信映像の画質には気を配っており、HD画質で映像を楽しめる「アクトビラ ビデオ・フル」を用意する。また、2008年12月にスタートした録画機向けのダウンロードサービス「アクトビラ ビデオ ダウンロード」では、ビットレートが平均6Mbpsの「アクトビラ ビデオ・フル」と比べて、最大20Mbpsと画質を向上させたという。

 また、テレビ向けサービスという特性上、利用者層も一般的なインターネットユーザー層と異なるという。木村氏は「35~49歳の利用者が59%、既婚率67%と、明らかにネットよりも年齢層が高い」とコメント。「これまでアクトビラ搭載機は高価格帯のモデルが中心で結果的に高所得者層が多かった影響もあるようだ」と述べ、「現在は小型テレビでもアクトビラ採用が進んでいるので、もう少し低年齢化するかもしれない」と予測した。このほか、「アクトビラ」を利用する68%前後のユーザーがFTTH回線を利用している点も紹介された。

 コンテンツの購入傾向もまた独特だ。全ビデオラインアップのうち、HD画質コンテンツが占めるタイトル数は15%にとどまるものの、売上金額ベースでは50%を占める。ユーザーの間で高画質なコンテンツを求める傾向が顕著な例と言えるだろう。加えて、「NHKオンデマンド」やカラオケサービスなど、月額料金制サービスの退会率がほぼ1%以下と低いのも特徴という。

 木村氏は「アクトビラのARPU(1利用者あたりの月間売上高)は1300円。レンタルビデオ店の貸出本数が1人あたり1.3~1.5本程度と言われるから金額なら500円前後。アクトビラなら連続ドラマやアニメシリーズを“貸し出し中”の心配なくパックで楽しめるし、月額サービスの退会率の低さも影響しているだろう」と、ネットサービスならではの例を示した。

 また、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」シリーズの一部モデルで搭載する電子マネー「Edy」による決済機能の利用者が増えていることも紹介。「クレジットカード番号の入力に抵抗がある人は少なからずいるので、決済手段を増やしていくことも重要だ」とも述べている。


アクトビラの利用者像コンテンツ販売の傾向。HD映像に人気が集まっている

 サービスを展開する上で直近の課題になりそうなのが利用者数だ。「アクトビラへの接続台数は130万台だが、月1回以上利用しているユニークユーザー数は25万人とまだまだ少ない」と木村氏は明かし、アクトビラ対応機器の拡販と、潜在ユーザーの掘り起こしの双方を重視していきたいと語った。アナログ放送が終了する2011年に600万接続、200万ユニークユーザーを達成するのが大きな目標という。

 サービス自体の強化策としては、国内テレビ番組や邦画ラインアップの充実をあげる。現在、ハリウッド映画などと比較してタイトル数などが不足しているため、テレビ局とも協力して積極的に増加させる方針を示した。このほか他社との連携、具体的には共通ポイント制度の導入、携帯電話やカーナビなど異なるプラットフォームとの協業なども重要な事案とした。イベントのライブ中継やデジタルサイネージなど法人向けビジネスへの応用も検討していく。

 木村氏は「これまで家電向けのサービスといえば、メーカーごとに仕様の異なるケースが多かった」と述べた上で、「アクトビラは『デジタルテレビ向け共通プラットフォーム』という位置づけを活かし、家の中のさまざまな機器を接続し、アクトビラから利用できるようにするのが目標。テレビを買い替えても使い続けられる利便性の高いサービスを提供したい」と語った。このため、一般顧客はもちろん、インターネット接続事業者やコンテンツプロバイダー、テレビメーカーと積極的に協力していきたいと述べ、講演を締めくくった。


アクトビラ接続数だけでなく、ユニークユーザーを増やしていくことが大きな課題将来のサービス展望についても説明した

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(森田 秀一)
2009/10/9 16:01