自分の歌い方をまねて「初音ミク」が歌唱、ヤマハと産総研が開発
ヤマハと独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)は、歌声合成ソフトウェア「VOCALOID」へのデータ入力支援へ応用できる技術「VocaListener(ボーカリスナー、略称「ぼかりす」)」の共同研究を進めている。その第1弾として、インターネット上で同技術を利用できるサービス「Netぼかりす」のα版を開発し、28日から試用結果のコンテンツを公開すると発表した。
「VocaListener」は、VOCALOIDに歌わせたい目標歌唱を録音した音声ファイルからVOCALOID専用のパラメータを自動推定できる技術。従来、VOCALOIDで人間らしい自然な歌声を合成しようとすると、その細かいニュアンスを表現するために、楽譜と歌詞を入力した後に、歌声合成パラメータをユーザーが調整する必要があった。「楽譜入力と調整がVocaListenerにより自動化されることで、その調整時間が大幅に減少し、調整に関する知識を持たないユーザーでも高品質な歌声合成結果を得ることが容易になる」という。
「Netぼかりす」は、「VocaListener」をWebサービスとして利用できるもので、現在、基本技術の一部を備えたα版を開発している。α版では、「VocaListener」から一般向けサービスにとって有用と思われる機能のみを簡略化し、独自の拡張を加えたもの。具体的な機能としては、アップロードされた目標歌唱の音声ファイルと、それに対応する歌詞テキストファイルをサーバー上で解析し、指定されたバーチャルシンガーで最適な合成結果が得られるようにVOCALOID用の歌声合成パラメータファイル(VSQファイル)を出力する。
「Netぼかりす」は現在、一部のクリエイターがモニターとして試用しており、28日から順次、試用結果のコンテンツを公開するという。公開先は、ヤマハの技術を事業者向けにWebAPIで公開するプロジェクト「Y2 PROJECT」のサイトで告知する。さらに、クリエイターからの意見や、公開コンテンツに対する一般リスナーからの感想を今後の開発に反映。より発展した試用版については、今後モニターを公募する予定だ。また、Webブラウザ上でVOCALOID楽曲を作成・編集できる「NetVOCALOID」 との連携も検討。その他のプラットフォームでの応用も提案していくという。
なお、「VocaListener」は、産総研の情報技術研究部門が開発し、ヤマハがライセンスを受けて一般向けサービスの実用化に向け共同開発を行っている。開発の背景についてはヤマハは、「『初音ミク』や『がくっぽいど』などを使用した楽曲が話題になり、歌声合成ソフトウェアの認知が急速に高まる中で、さらにリアルな歌声を合成させたい、もっと手軽に歌声を合成してみたいというユーザーが増えている」と説明。今回の技術によりユーザーは、「合成された歌声によってどのような表現をしたいのか、どのようなメッセージを伝えたいのかに、より注力して歌声を合成できるようになる」としている。
VocaListenerの概略 |