ヤフー、実験的サービスの公開サイト「Yahoo!ラボ」を開設


 ヤフーは10日、Yahoo! JAPANの実験的なプロダクトを公開する「Yahoo!ラボ」を公開した。

 Yahoo!ラボは、Yahoo! JAPANのエンジニアが主導となって、新規性のある技術やコンセプト、機能などを実装したプロトタイプを紹介するサービス。各プロダクトには、ユーザーが5段階の評価やコメントを投稿できるようになっており、ヤフーではこれらのフィードバックをもとに正式サービスへの可能性を探っていく。

類似画像検索や、検索結果の再ランク機能など公開

Yahoo!ラボ

 Yahoo!ラボ開設時点で公開されているプロダクトは、選択した画像から類似画像を検索する「VisualSeeker」、検索キーワードを都道府県別・性別・年代別などの割合で見ることができる「サーチのなかみ」、キーワード検索結果の結果から気になる単語を選択することで表示順位を変えられる「Rerank.jp」など。また、ヤフーの地図実験サイト「Lat Long Lab」のプロダクトも紹介されている。

 「VisualSeeker」は、あらかじめ登録されている約100万点の画像から、ある画像に類似している別の画像を検索できる技術。ランダムに表示されている画像から1点を選ぶと、その画像に類似する画像が次々に表示されていくモードのほか、ユーザーが描いた絵やアップロードした画像に類似する画像を検索する機能も備える。

 また、色の要素を無視して形状だけで類似画像を検索する機能や、複数の画像を選択して特徴を併せ持つ画像を検索する機能など、多様な検索機能を備える。

 「サーチのなかみ」は、個々の検索キーワードをYahoo! JAPAN IDのプロフィール情報などと組み合わせ、検索したユーザー層の都道府県別・性別・年代別・職業別・時間帯別などの傾向を表示するツール。Yahoo!検索の注目キーワードランキング上位のキーワードや、担当者が選ぶ興味深い傾向を示すキーワードなどについて、それぞれの傾向を見ることができる。

 「Rerank.jp」は、京都大学情報学研究科の田中克己教授らのグループとの共同開発により、検索結果ページからユーザーが気になる単語を指定することで、検索結果の表示順序を変化させられるサービスだ。キーワード検索の結果画面で、ユーザーが気になる単語を選択すると上下の矢印ボタンが表示され、その単語を含む結果を上位にしたい場合には上矢印を、下位にしたい場合には下矢印をクリックすることで、検索結果の表示順位を変えることができる。

 例えば「豚肉 ナス」といったフレーズで検索すると、通常の検索結果に加えて、検索結果に頻出する単語がタグクラウドとして表示される。ここからユーザーが「『味噌』は含む」「『ニンニク』は含まない」といった指定をすることで、検索結果の表示順位が変化していく。単語の指定はタグクラウドのほか、画面中の単語をマウスでドラッグすることでも行える。

 「Rerank.jp」はもともと京都大学田中研究室のグループが、文部科学省の「情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究」の特定領域研究として研究していた技術だ。今回の共同開発は、大学側ではヤフーとの協力により多数のユーザーが参加する実証が可能となり、ヤフー側ではRerank.jpによりユーザーのクエリー数や滞在時間の増加が期待できるというメリットがあることから、協力に至ったという。

類似画像を検索する「VisualSeeker」検索結果の表示順位を選択したキーワードにより並べ替えられる「Rerank.jp」

「ヤフーは技術も強い会社」、ユーザーの評価をサービス化の参考に

(左から)京都大学の中村聡史氏、山本岳洋氏、ヤフーの竹内淑子氏、岡島ひとみ氏、山本健一氏

 Yahoo!ラボ企画担当の竹内淑子氏は、開設の目的を「ヤフーは技術も強い会社だということをユーザーに認識していただくため」と説明。社員から出てきたアイディアや、他社と比べて競争力のアイディアなど、ヤフーが「サービスの種」と呼んでいる要素技術を紹介していき、ユーザーからのフィードバックを得てサービス化への参考にしていきたいと語る。

 Yahoo!ラボで紹介する各プロダクトは、日本で開発した技術やサービスで、検索だけでなく地図やソーシャルネットワークなどヤフーの各種プロダクトを掲載していくという。また、プロダクトの完成度も、そのままサービスとして公開できそうなものから、サービスの形をなしていない単機能の技術をデモとして紹介するものまで、様々な種類が掲載される予定だ。また、京都大学との共同開発「Rerank.jp」のような、外部の教育機関などとの連携による研究開発も進めていく予定だという。

 公開時点で、Yahoo!ラボでは9個のプロダクトが紹介されている。今後について竹内氏は、「候補となっているプロダクトはいろいろあるが、数をたくさん増やすよりも、ユーザーの反応を見たい」という。

 実験的なサービスや機能を公開する「ラボ」は、Googleやgooなど他社も開設しているが、Yahoo!ラボの特徴はユーザーによる評価機能を設けた点にある。竹内氏は、「評価はサービス化に向けての参考として、コメントは自分たちが気付かなかった面白い意見が出ることに期待したい」と語った。


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(三柳 英樹)
2009/6/10 20:00