NTTBP、複数の通信回線に対応した小型無線ルータを開発


 NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)は15日、複数の無線方式から最適な無線方式を自動選択できる「ポータブルコグニティブ無線ルータ『Personal Wireless Router』」を開発したと発表した。2009年8月からフィールドトライアルを実施し、2009年内の製品化を予定する。

最適な通信回線に自動接続する「Personal Wireless Router」

「Personal Wireless Router」。画面には利用中の通信方式や接続機器台数などが表示される

 「Personal Wireless Router」は、WAN側にHSDPAに対応した通信モジュールと、IEEE 802.11b/gの無線LANモジュールを搭載し、利用場所に応じて最適な通信方式を自動選択してインターネット接続が可能な製品。LAN側には、IEEE 802.11b/gの無線LANモジュールを備え、無線LAN機能を持つPCやスマートフォン、携帯型ゲーム機などを複数台接続できる。

 製品にはLANポート搭載のクレードルとイーサネット変換ケーブルが同梱。これらを使って、自宅やホテル、オフィスなどの有線ネットワークをWAN回線として追加が可能だ。WAN側ネットワークの優先順位は、現時点で有線LAN、無線LAN、HSDPAの順。このうち、無線LAN接続に関しては、複数の公衆無線LANサービスが利用できる場合、各サービスの電波状況またはユーザーが事前に設定した接続順位に応じて通信先が選択される。

 NTTBPによれば、WAN側の回線切り替えに要する時間は最短で約2秒ほど。接続中のネットワークに関しては、本体前面に備えたモノクロ液晶ディスプレイで確認が可能で、無線LANの場合はSSIDも表示する。液晶ディスプレイでは、本体に接続する無線LAN機器の台数も確認できる。

 機能面では、本体に利用する通信サービスの認証情報を登録できる自動認証機能を用意。NTT東西がそれぞれ提供する「フレッツ・スポット」などの利用時に必要な、PPPoE接続にも対応する。また、無線LAN設定システム「WPS」の利用が可能で、今後はバッファローの「AOSS」にも対応する予定。無線LANセキュリティは、WEPおよびWPAをサポートする。このほか、本体メニュー画面内にWebサイトをお気に入り登録できる「ブックマーク」機能も用意した。

 本体サイズは60×17.4×95mm(幅×奥行×高)、重量は約120gで、縦横サイズは名刺大の大きさ。本体はバッテリー駆動が可能で、2009年内を予定する製品化時には連続通信時間で最大6時間、連続待受時間で最大20時間の目標値を掲げている。トライアル機に関しても、同程度の動作時間を目指して調整を進めているという。主な付属品はクレードルやイーサネット変換ケーブル、ACアダプタ、USBケーブル、ソフトケースなど。


本体色はブラックとホワイトの2種類本体底面にはUSBポートと平型コネクタ右側面には電源とWPSボタンを備える

本体正面。SIMカードスロットを備えるほか、左端にはストラップホールもiPhone 3GSとの比較クレードル背面には有線LANポート

 フィールドトライアルは、2009年8月下旬から10月31日までの期間を予定し、抽選で500名程度に対してルータ本体のほか、NTTドコモのデータ通信サービスおよび対応プロバイダー契約、公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」および対応プロバイダーの契約アカウントを無償で貸与する。

 トライアルに応募できるのは、NTT東西の「フレッツ 光ネクスト」「Bフレッツ」またはNTT西日本の「フレッツ・光プレミアム」のいずれかのユーザー、もしくは7月31日までに利用開始予定のユーザー。また、外出先でも利用できる無線LAN機器の所有や、2回程度の実施を予定するアンケートに回答できることなどが条件になる。


利用イメージ主な機能フィールドトライアル概要

小林社長「将来的には次世代通信サービスにも対応したい」

NTTブロードバンドプラットフォームの小林社長

 NTTブロードバンドプラットフォームの小林忠男代表取締役社長は、「外出先で利用できるモバイルルータは各社から登場しているが、『Personal Wireless Router』では複数のネットワーク回線に接続できることが最大の特徴」と説明。また、接続にあたっては「ユーザーが意識することなく、その場にあった最適な回線を選択して、自動的に接続できる」と述べた。

 今回のフィールドトライアルで利用する携帯電話回線はHSDPA網になるが、小林社長は「EDGEやGRPSにも対応しており、海外キャリアにも販売できれば」とコメント。将来的にはLTEなどの次世代通信サービスにも対応を検討するが、現時点でモバイルWiMAXへの対応予定はないという。このほか、無線LANに関しては、IEEE 802.11b/gに加え、IEEE 802.11aやIEEE 802.11nへの対応も検討する。

 NTTBPでは、フィールドトライアルを通じて寄せられた要望などを反映させた上で、2009年内に製品化を予定する。ただし、具体的な販売方法や価格は未定となり、NTTBPでは通信キャリアやメーカーなどと交渉を進めながら、製品化時の展開スキームを決定する考えだ。

 なお、サーバーと連携して、周囲の電波状況に応じて最適な通信方式を選択する規格「IEEE 1900.4」に関しては、本製品は単体で通信方式を切り替えるため、現時点で未対応。NTTアクセスサービスシステム研究所の北條博史主席研究員は、「将来的にはサーバー側とも連携して、IEEE 1900.4への対応も考えたい」と述べた。

 このほかNTTBPでは、アーティストでジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏と連携して、「Personal Wireless Router」の利用シーンを紹介する「Moritterプロジェクト」を実施する。モーリー・ロバートソン氏は「現在、TwitterやYouTubeなどのソーシャルメディアが広がりつつあり、各サービスでの相乗効果も見えてきている」と述べ、「日本中を巡りながら、『Personal Wireless Router』を利用した動画生中継やソーシャルメディアの活用を通じて、いろいろな人とコミュニケーションしていきたい」と抱負を語った。


ライフスタイル別の利用シーン例今後の機能強化例ロードマップ

発表会場では試作機(写真左)も展示されたモーリー・ロバートソン氏と協力したプロジェクトも展開する

関連情報


(村松 健至)
2009/7/15 19:21