レノボ、「ThinkPad T400s」WiMAX内蔵モデルの特徴を説明
レノボ・ジャパンは28日、ノートPC「ThinkPad T400s」にWiMAX通信モジュールを内蔵したモデル「2808A12」に関する説明会を開催した。製品は7月22日に販売を開始しており、直販サイトの価格は21万円。
■インテル製無線モジュール採用のWiMAX内蔵モデル
レノボ・ジャパンの藤井氏 |
WiMAX内蔵モデル「2808A12」は、インテルの無線モジュール「WiMAX/WiFi Link 5150」を搭載し、WiMAXと無線LANを切り替えて利用できるノートPC。WiMAXの通信速度は理論値で下り最大13Mbps、上り最大3Mbpsで、無線LANはIEEE 802.11n ドラフト2.0およびIEEE 802.11a/b/gに準拠する。OSには、Windows XP Professional SP3(Windows Vista Businessダウングレード権を使用)を採用する。
神奈川県大和市にあるレノボ・ジャパンの大和事業所で、ノートブック開発研究所サブシステム開発技術無線通信技術担当部長を務める藤井一男氏は、WiMAX内蔵モデルのアンテナ技術について「WiMAXや無線LAN、ワイヤレスWAN、GPSなど6種類の無線技術に対応するために、7つのアンテナを内蔵している」と説明。いずれも液晶ディスプレイの上部に搭載されており、このうち2つがWiMAXと無線LANの共用アンテナになる。
また、液晶ディスプレイのカバー部には「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」を、アンテナ部周辺には非伝導性の「ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)」を採用。これにより、複数の周波数帯に対応するWiMAXや無線LANで、液晶ディスプレイのカバー素材に影響を受けないアンテナ性能を確保したという。また、カバー自体も継ぎ目のないフラットなデザインを実現している。
「ThinkPad T400s」のWiMAX内蔵モデル | インテルの通信モジュール「WiMAX/WiFi Link 5150」 | WiMAX内蔵モデルではハーフミニカード型を本体底面に搭載する |
液晶ディスプレイ上面にアンテナを備える | アンテナデザイン図。合計で7個のアンテナを持つ | 液晶ディスプレイのカバーについて |
■内蔵アンテナによるWiMAX通信性能をアピール
藤井氏は、WiMAXアンテナのゲインを3D表示したシミュレーション図を紹介して、「2つアンテナを同時に使用することで、球状でゲインの良い放射パターンを実現できた」と説明。同様にUSB接続型WiMAXアダプタのシミュレーション結果を示し、「電界強度自体はアンテナ周辺に強く出ているが、3Dゲインを見ると背面部が液晶ディスプレイの影響でゲインが落ちている」と述べた。その上で、「シミュレーションでは、内蔵アンテナのゲインは、USBアダプタと比べて3.5dB良い結果を得られた」と説明した。
WiMAXアンテナの電界強度分布 | 3Dゲインパターン | USBアダプタ(右)とのシミュレーション比較 |
説明会では、大和事業所でのWiMAX接続を実験した結果も紹介された。大和事業所はUQコミュニケーションズのサービス提供エリアとしては圏外になるとのことだが、5階の窓際からは接続が可能だという。実験では内蔵モデルとUSBアダプタを装着した「ThinkPad T400s」を利用して、WiMAXへの接続およびYouTubeの動画視聴状態をテストした。
藤井氏によれば、接続までの所要時間は内蔵モデルが15秒程度だったのに対し、USBアダプタは1分から3分程度。また、YouTubeの視聴に関しては、USBアダプタは途中で途切れてしまったという。加えて、窓から2m離れた場所での接続を試みたが、内蔵モデルは窓際と同様に接続およびYouTube視聴が可能だったものの、USBアダプタでは圏外表示で接続できなかったとした。
WiMAX接続のテスト結果も紹介 | 内蔵モデルとUSBアダプタとの比較結果 | 独自ユーティリティで、WiMAX接続もサポート |
また、レノボ独自の通信ユーティリティ「Access Connections」の機能も紹介。「ThinkPad T400s」のWiMAX内蔵モデルでは、WiMAXの接続をサポートした「Ver 5.3」をインストールしており、WiMAXの接続が切断された場合に、無線LANに自動で切り替わり、事前設定した無線LANアクセスポイントへ接続できる。また、PCがスリープまたは休止状態から復帰した場合には、周囲の無線LANとWiMAXの電波状況を確認してから接続処理する機能も備える。
藤井氏は、内蔵アンテナによる通信性能やレノボ独自の通信ユーティリティに加えて、「WiMAXモジュールを内蔵することで、USBアダプタなど外付け機器で発生する機械的なダメージも発生しない」と述べたほか、「アダプタを別途管理する必要がなく、盗難・紛失を心配する必要がない」と、実利用時のメリットを説明した。
このほか藤井氏は、WiMAXサービスについて、「公衆無線LANサービスと同様にユーザー登録や料金体系がシンプルで、今後は3Gデータ通信サービスと同様にサービス提供エリアが広がって欲しい」と、無線LANと3Gデータ通信の長所を併せ持つサービスに育つことに期待を示した。