JVC・ケンウッド、映像/音楽/ラジオを楽しめる新製品「RYOMA」

地上/BS/CS、BD、HDD、FM/AMチューナーを搭載


 JVC・ケンウッド・ホールディングスは30日、映像や音楽、ラジオを1台で楽しめ、ネットワーク機能も持った新製品「RYOMA(リョーマ)」を2010年春に商品化すると発表した。合わせて、同製品と連携するネットワークサービス「M-LinX(エム-リンクス)」の提供も開始する。

テレビやラジオ、音楽を1台で楽しめる「RYOMA」

RYOMA

 JVC・ケンウッド・ホールディングス(以下、JVC・ケンウッドHD)は、2008年10月の日本ビクターとケンウッドの経営統合に伴って設立され、「カタ破りをカタチに。」を企業ビジョンに新たな商品やサービス開発に取り組んできた。

 JVC・ケンウッドHDでは、今回発表した「RYOMA」は「デジタルネットワーク時代の新しいライフスタイルを提案するとともに、今後の新しい事業領域を構築する新商品群の第1弾」とし、「オーディオ、ビデオ、通信を融合した『Home AVC(Audio, Visual and Communication)』」を位置づけている。なお、今回の発表では製品概要のみが明かされ、詳細な仕様に関しては今後改めて発表される。

 「RYOMA」には、地上/BS/110度CSデジタルチューナーを2基、Blu-ray Disc(BD)ドライブ、HDDに加え、FM/AMラジオチューナーやデジタルアンプを搭載。これにより、テレビやBD、DVDなどの映像コンテンツ、ラジオやCDなどの音楽コンテンツの再生、ラジオを含めた番組の録画・録音が1台で利用できる。また、デジタルアンプにはビクターとケンウッドがピュアオーディオ分野で培ったデジタルアンプ技術を取り入れた。

 本体には、映像や音楽、ラジオなどを直感的に操作できるというユーザーインターフェイスデザインを採用。付属のリモコンは、映像メニューを呼び出す「V」ボタン、オーディオメニューを呼び出す「A」ボタンを備え、1ボタンで各メニューを切り替えられる。


製品コンセプト映像・オーディオを操作できるユーザーインターフェイスを採用リモコンの試作機。「A」「V」ボタンが備わっている

ラジオをネット経由で配信する「M-LinX」

M-LinXの画面イメージ

 ネットワーク機能では、同時に発表したネットワークサービス「M-LinX」と連携。「M-LinX」はラジオ放送をインターネット経由で配信することで、電波障害による難聴取地域においてもクリアな音声でのラジオ聴取を可能とするもの。また、独自開発した「放送サービス地域特定技術」によって、ユーザーが利用する地域で聴取可能なラジオ放送のみを配信するという。

 加えて、映像やテキスト情報などを付加して配信する技術仕様を盛り込む方針。また、インターネットを利用した双方向機能を活用して、リスナーの趣味嗜好や番組内容に連動した広告展開も想定している。なお、本サービスに対応するラジオ局は現時点で未発表だが、JVC・ケンウッドHDでは数社と交渉を進めているとした。

 ネットワーク機能ではまた、アクトビラの映像配信サービス「アクトビラ ビデオ」にも対応する予定。DLNAやDTCP-IPへの対応は未定という。

 このほかJVC・ケンウッドHDは、「M-LinX」を利用できるFM/AMラジオチューナー「M-LinX Tuner Box」も発売する予定。本体サイズは115×77×25mm(幅×奥行×高)の小型筐体を採用し、インターフェイスとしてHDMI×1やコンポジット出力×1を搭載する。


番組に連動して動画などの付加情報を配信する通常のラジオ受信時の画面「M-LinX Tuner Box」の外観

前田常務「『RYOMA』は人々に欠乏感を与えられる製品」

JVC・ケンウッドHDの前田氏

 JVC・ケンウッドHDが30日に開催した発表会では、同社執行役員常務で新事業開発センター長を務める前田悟氏が「RYOMA」や「M-LinX」の概要を説明。なお、前田氏はかつてソニーに所属し、外出先から自宅のテレビや録画番組をインターネット経由で視聴できる「ロケーションフリー」を手がけていた。

 前田氏は冒頭、「家電業界は厳しい環境にあり、価格競争やコモディティ化によって『AV機器』は『AV危機』とも言える状態」と述べた。一方で「iPodやゲーム機など、手頃な価格で欲しいと思う製品に対してはお金を出してくれる消費者はいるが、だからといって同じ製品を作ってはいけない」と自身の考えを示した。

 その上で、「商品企画に知恵を絞って、消費者が欲しいと感じる欠乏感をもたらす商品を作りだすことが、日本の家電業界に課せられた大きな命題である」と述べた。前田氏は「現在はテレビはテレビ、オーディオはオーディオと製品ごとに分かれているが、これはユーザー目線ではない」と指摘。「『RYOMA』はBDレコーダやオーディオ、ラジオ、ネットワークサービスを1台で楽しめる製品であり、人々に欠乏感を与えられる製品」と語った。

 インターネット経由でラジオを配信する「M-LinX」に関しては、「ユーザーから見れば、電波でもインターネット経由でも関係のないこと」と述べ、「『M-LinX』では本当にクリアな音質でラジオを楽しめるようになる」とした。また、「M-LinX」を通じて得られた広告収入などを放送局と分け合うことで、「売り切りビジネスから脱却して、継続的な収益確保も可能になる」と述べた。なお、「M-LinX」の技術に関しては、競合企業を含めてライセンス提供する考えという。

 このほか発表会には、エフエム東京の黒坂修常務取締役が登壇。「以前と比べると、家庭の中からラジオを聴ける機器がなくなりつつある」と述べ、ラジオ機能も備えた「RYOMA」や「M-LinX」サービスへの期待感を示し、「TOKYO FMとしても『M-LinX』への対応を検討していきたい」と語った。


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(村松 健至)
2009/9/30 17:01