東芝、チューナー15台内蔵の液晶テレビ最上位機「CELL レグザ」


 東芝は5日、液晶テレビ新製品「CELL レグザ 55X1」を発表した。家庭用ゲーム機「PlayStation 3(PS3)」のメインプロセッサとして知られる「Cell Broadband Engine」を世界で初めてテレビに採用した製品で、12月上旬の発売を予定する。オープンプライスで、店頭実売価格は100万円前後の見込み。

デジタルチューナー14個、HDD容量は3TBのハイスペック液晶テレビ

東芝の「CELL レグザ 55X1」。店頭実売価格は100万円前後の見込み

 「55X1」は、55V型サイズのフルHD(解像度1920×1080ドット)液晶テレビ。液晶モニタ部とチューナー部がそれぞれ独立した分離式構造となっている。最大の特徴は、「Cell Broadband Engine」を核とした映像処理プラットフォーム「CELL プラットフォーム」が導入されていること。これにより、従来モデル「ZX8000」と比べて143倍の演算処理能力を実現した。

 高スペック化によって、映像解像度を向上させて美しい映像を再現する「超解像」の処理能力もより高まったという。東芝では、「CELLプラットフォーム」の採用に合わせ、高輝度LEDバックライトを搭載した液晶パネル「メガLEDパネル」も新開発した。

 録画用内蔵HDDの容量は3TB。このうち、2TB容量を、地上デジタル放送を最大8チャンネル分、約26時間にわたって連続録画する「タイムシフトマシン」機能に割り当てた。チューナー数に関しては、「タイムシフトマシン」用の地上デジタルチューナーが8台、通常録画用に地上デジタルチューナーおよびBS・110度CSチューナーを各2台ずつを搭載。このほか、視聴用の地上デジタル、BS・110度チューナーを含めて、14台のデジタルチューナーを内蔵する。なお、地上アナログチューナーも1台備えており、チューナー数は合計15台になる。

 多数のデジタルチューナーを搭載したことにより、最大8番組を1画面でマルチ表示することが可能になった。また、地上デジタル放送8チャンネル分の映像を常時受信しているため、チャンネル選局時の切り替え待ち時間も大幅に緩和されたという。加えて、地上デジタル放送の電子番組表表示中でも各チャンネルの映像をサムネイル表示することもできる。


チューナー部14個のデジタルチューナーを内蔵する

8画面同時表示に対応番組表表示中でも各チャンネルのミニサイズ動画を表示できる

バージョンアップで「Opera」も追加。YouTubeも「超解像」で

「Opera」でYouTube映像を視聴できる

 ネットワーク面では、発売当初の段階からアクトビラの映像配信サービス「アクトビラ ビデオ・フル」や、ヤフーの「テレビ版Yahoo! JAPAN」をサポート。また、2010年1月末に予定されている本体のファームウェア更新で、Webブラウザ機能が追加される。これにともなって、「YouTube」の視聴も可能になる予定だ。

 Webブラウザは、東芝がOpera Softwareと共同開発したフルHD表示対応版の「Opera」。Flash表示やJavaScriptにも対応しているため、いわゆるAjax的なWebサイトを利用することも可能という。5日に開かれた発表会では、実際にGoogleのトップページなどを表示。画面の遷移速度も、一般的なPC向けWebブラウザと比較して遜色ないレベルであることが伺えた。

 YouTubeの視聴についても専用ソフトを使用せずに、すべてWebブラウザ上で表示する形式。TBSのニュース映像配信サイト「News i」を実際に表示するデモにおいても、ページ内に埋め込まれたミニサイズのニュース動画が問題なく視聴できていた。ただし、「55X1」はWindows Media Videoなどの映像コーデックをサポートしていないため、Webブラウザ上から視聴できる映像はほぼFlash形式のみとなる。

 また、YouTubeの映像を全画面表示する際には、「超解像」が適用される。ネット上の動画は解像度が低いものが大半で、フルHD画面で表示する場合は荒さがきわめて目立つ傾向にある。このため「55X1」では、映像を解析することによってまずブロックノイズの除去を試みる。その上で「超解像」の処理を施すし、より美しい映像を表示させるという。

 なお、インターネット配信される映像の「超解像」処理は現在も開発中で、未定の要素もいくつかあるという。例えば、Webページ内に埋め込まれたFlash映像については、「超解像」処理は適用されない見込みだが、ブロックノイズの処理は実施する計画だ。

 DLNAクライアント機能もサポートしており、LAN内にあるDLNAサーバーに保存された映像や写真、音声ファイルの再生が可能だ。

 このほか、製品付属のリモコンにはタッチパッドが搭載されており、ノートPC風のカーソル操作や、手書き文字入力にも対応。USB接続のキーボードも別途接続できる。なお、タッチパッド機能についても、Operaが追加される2009年1月末のバージョンアップに合わせて利用が可能になる予定だ。また、さらにNTTぷららの映像配信サービス「ひかりTV」への対応も同時に実施される。

 本体サイズはモニタ部が133.3×40.2×96.3cm(幅×奥行×高)で、重量は44.0kg(卓上スタンド含む)。チューナー部は、43.6×38.7×10.9cmで、重量は10.5kg。


「Googleニュース」を表示したところCELL レグザ専用リモコン

CELL レグザのラインアップ拡大も示唆

東芝 デジタルメディアネットワーク社の大角正明社長(中央)

 「CELL レグザ」の発表会は、6日から幕張メッセで開幕するIT・電子機器展示会「CEATEC JAPAN」の東芝ブースを臨時オープンして実施された。

 東芝 デジタルメディアネットワーク社の大角正明社長は、「開発構想から約4年、一昨年あたりから『出るぞ、出るぞ』と申し上げてきたCELL レグザをついに発表できた」とその喜びを語った。そして「モンスター級」とまで表現する高性能プロセッサによる新機能を具体的に例示しながら、「視覚・聴覚の“二感”ではなく、“五感”すべてを震わせるテレビ」「革命的なテレビ」「カラーテレビ登場時の興奮と感動を再び味わってもらえる」とその位置づけを強調した。

 液晶テレビは低価格化および製品普及が急激なペースで進んでいる分野だが、将来に向けての技術開発もまた必要になってくる。大角社長は、東芝の得意分野であるソフトウェア機能と半導体技術を追求し、「CELL レグザ」で培った技術をスタンダードモデルに応用していくことが重要だと説明。Cell搭載テレビのラインアップを拡大させる方向性を示した。

 また質疑応答の際には、プレゼンテーション中には触れなかったCELL レグザの価格に言及。「最終的なコストをつかみ切れていない」と今後変動する可能性を伺わせつつも、約100万円前後と、かなりの高額商品になることを明かした。このほか、今後1年程度をめどに、中級機的なCell搭載モデルを投入することが市場戦略的にも重要だと回答している。


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(森田 秀一)
2009/10/5 21:17