アナログ音源を手軽にデジタル化! USBカセットテーププレーヤー

ノバック「CASSETTE to DIGITAL」


ノバックの「CASSETTE to DIGITAL」。数十年前のラジオと言っても通りそうな重厚でクラシカルなデザインだ。店頭実売価格は7980円前後

 ノバックの「CASSETTE to DIGITAL(NV-CM001U)」は、USBポートを備えたカセットテーププレーヤーである。専用サウンドツールをインストールしたPCと接続し、カセットテープの音を転送してデジタル化、MP3やWMAといったファイル形式で保存できるというアイテムだ。

 本体にはカセットテーププレーヤーのほか、出力1.5Wのオーディオアンプと大口径スピーカーを内蔵。モノラルながら単体でカセットテープの再生を楽しんだり、外部入力端子にポータブルオーディオプレーヤーなどを接続し、外部スピーカーとしても利用できる。録り貯めたカセットテープを処分しきれずにいるユーザーだけでなく、現役でカセットテープを使い続ける愛好家にとっても気になる製品ではないだろうか。

 「CASSETTE to DIGITAL」の本体サイズは165×135×143mm(幅×奥行×高)で、重さは約1.4kg。シンプルなキューブ形のボディに、外装はなんとダークブラウンの木目調である。しかもスピーカーボックスなどに使われる木製の圧縮合板を採用しているらしく、どっしりとした重量感があるのだ。パッケージには吸湿剤の小袋が同梱されているし、開封すると木製家具と同じ香りが漂ってくるのには少々驚かされた。

 ボリューム調整には、アルミ削り出し風の大きな回転式ツマミを採用。これはスイッチを兼ねていて、最小まで回し切るとカチッと音がし、電源が切れる。ACアダプタはなく、本体から壁のコンセントに挿し込む電源ケーブルが直出しされているあたりもレトロ感満載である。過去のものになりつつあるカセットテーププレーヤーとは言え、時代を遡りすぎという気がしないでもないが、プラスチック製のボディにはない重厚な雰囲気は魅力的だ。PC周辺機器としては非常にユニークな存在と言えるだろう。


ボディはダークブラウン。ローズウッドのような木目が見える。オーディオ用のスピーカーボックスなどと同じ圧縮合板を採用しているようであるUSBポートと、入出力を兼ねたRCAジャックは上向きに配置されている。片手で抜き挿しできるので、意外なほど使い勝手が良い

 カセットテープの挿入スロットは、上面パネルに配置されている。カセットテープを横に倒し、スロットの中へ押し込むようにセットする方式だ。横にある大きなイジェクトボタンを奥まで押し込むとカセットテープが排出される。その手前まで軽く押すとロックされ、テープの早送り、もう1度押すと通常再生に戻る。停止ボタンなどは装備していないため、再生途中でテープを取り出したい場合は電源を切り、動作を止めてからイジェクトしなければならないので注意が必要だ。

 上面パネルにはカセットテープスロットのほか、PCと接続するUSBポート、それにアナログ入出力用のRCAジャックが並んでいる。どちらも垂直に取り付けられており、プラグを挿し込むとケーブルが上に向かって伸びる形になる。珍しい配置だが、片手で抜き挿しできるので使い勝手は意外に良い。


カセットテープは横に倒し、スロットの中に押し込むようにセットする。ガチャンという機械的な音が懐かしい(笑)カセットプレーヤーユニットはオートリバースなし、巻き戻しもなしというシンプルなもの。早送りはできるので、実用上の問題はなかった

 カセットプレーヤー部は再生のみの対応だ。オートリバースなし、巻き戻し機能もなしという非常にシンプルなユニットである。基本的にはノーマルテープ用らしく、マニュアルなどには「高性能カセットテープなど、テープ本来の性能を発揮することを保証するものではありません」と記載されている。しかし、ハイポジテープ、メタルテープ、いずれも再生自体は可能だ。ノイズリダクション機能なども見あたらないので、テープ本来のサウンドを忠実に再現するのは難しいかもしれないが、筆者個人としては十分満足のいく音質だった。

 スピーカーは正面に1つだけ。つまり、モノラル再生ではあるが、低音域から高音域まで余裕のある音質だ。口径の大きなスピーカーと頑丈で重量のある圧縮合板製ボディとの相乗効果だろう。カセットテープの再生だけでなく、ポータブルオーディオプレーヤーやノートPCなどの音声出力をアナログ入力端子に接続し、大きな音量で再生するのも良いのではないだろうか。


大きなボリュームつまみを囲むリング状のインジケータランプ。クラシカルなデザインの中、この部分とUSBポートだけが現代を感じさせてくれる(笑)中に真空管でも入っているのではないかと思わせるレトロな雰囲気。長さ1.5mのUSBケーブルとRCAプラグ付きのオーディオケーブルが付属する

 「CASSETTE to DIGITAL」で再生した音は、付属の録音・編集ソフトウェア「Cassette Mate」でデジタル化、PCにファイルとして保存できる。録音ファイル形式はMP3/WMA/WAVの3種類。MP3とWMAのビットレートは32kbpsから320kbpsまで5段階に設定できる。カセットテープだけでなく、外部入力からの録音も可能なので、アナログ音源用のエンコーダとしての用途も考えられる。

 「Cassette Mate」最大の特徴は、多彩なファイル分割機能を搭載している点だ。曲と曲との間の無音部分を自動的に検出し、1曲を独立したファイルとして分割してくれるのである。しかも無音レベルを細かく調整できるので、バックグラウンドノイズの多い音源や録音状態が良くない音源にも対応できる。カセットテープをデジタル化するときの手間を大幅に省いてくれるのである。もちろん、区切りたい部分でトラックボタンをクリックするマニュアル分割機能が利用できるし、会議などの録音には指定した時間が経過するごとに分割を行う機能も用意されている。

 録音ファイルには、自動的にトラック番号や日時を組み合わせたファイル名が付けられるほか、ID3タグを埋め込むこともできる。再生機能はシンプルではあるが、速度を0.5倍から1.5倍の範囲で調整可能。語学学習や会議記録のテキスト起こしなどに便利だ。


付属の「Cassette Mate」。アナログ音源の録音に便利なファイル分割機能を搭載した録音・編集ソフトウェアだ録音ファイル形式はMP3、WMA、WAVの3種類に対応。ビットレートは32kbpsから320kbpsまで5段階に設定できる

録音ファイルにはタイトル、アルバム名、アーティスト名、ジャンルといった付加情報を埋め込むことができる速度を0.5倍から1.5倍まで変えられる再生機能を搭載。語学学習をはじめ、会話やトークなどをはっきり聴き取りたい場合に威力を発揮する

 カセットテープの寿命については、さまざまな意見があるようである。再生を繰り返すことでテープが劣化していくので、デジタル化した方が有利だという話があれば、保存に気を付けさえすれば長期間にわたって高い音質を維持できるという話もある。古くなったからと言ってカセットテープを見捨ててしまうのは早計なのかもしれない。

 しかし、デジタル化されたサウンドデータなら収納に気を使うこともなく、編集、加工、ダビングといった処理での音質低下が抑えられるのは事実だ。普段はPCにサウンドライブラリとして保存しておき、聴きたくなったらポータブルオーディオプレーヤーなどに転送するというフットワークの軽さもデジタルならではだろう。

 「CASSETTE to DIGITAL」の店頭実売価格は7980円前後。対応はWindows Vista/XP。ついしまい込みがちになるカセットテープを有効に活用するためなら決して高くない価格なのではないだろうか。


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(斉藤 成樹)
2009/5/13 10:46