ペンの使用感がそのままマウスに! エレコム「SCOPE NODE」


 エレコムの「SCOPE NODE(M-SN1ULシリーズ)」は、3ボタン式のレーザーマウスだ。センサー部を前方に配置することで、ペンを持つのに近い操作感を追求したほか、鎧をまとったようなシャープかつ未来的なフォルムが目を引く製品だ。

 エレコムでは1990年代前半のボールマウス全盛時代に、親指と人差し指が当たる位置にボールをレイアウトしたマウス「graio」シリーズをラインナップしている。ペンに近い操作感を謳う本製品のコンセプトは、その流れをくむものである。また、直線と曲線を組み合わせた未来的なデザインラインは、やはり過去にラインナップしていた士郎正宗デザインマウス「M-MAPP1SMシリーズ」を彷彿とさせる。

 なお、SCOPE NODEには有線モデル「M-SN1ULシリーズ」と無線モデル「M-SN2ULシリーズ」がラインナップされているが、外見およびスペックは基本的に同一だ。今回は、先に発売された有線モデルについて見ていきたい。


「SCOPE NODE」製品パッケージ。カラーバリエーションはブラック、光沢シルバー、マットシルバーの3色を用意パッケージ背面にもイメージカットが使われるなど、こだわりが見て取れる

一般的な3ボタンのレーザーマウス。デザインへのこだわりが目を引く

今回試用したのはマットシルバー「M-SN1ULSV2」。標準価格は6300円

 まずは基本機能から見ていこう。スタイリッシュな外見に目がいく本製品だが、マウスとしては至ってスタンダードな3ボタン方式の製品であり、拡張ボタンの類は備えていない。昨今のマウスの流行である、カウント数切替ボタンなども存在しない。

 特徴的な左側面の半円形の出っ張りについても、何らかのギミックが備わっているわけではなく、通電時に赤く点灯するだけだ。底面にセンサーを備えた、この半円形のパーツについては詳しく後述する。

 ホイールは回転させる際に手応えのあるタイプ。ホイール直径は27mmと、一般的なマウスのホイールに比べて大きく、操作がしやすくなっている。チルト機能については装備されていない。

 分解能は1600dpiと非常に高い。センサー部が指先にあることも相まって、少し動かしただけでポインタが敏感に反応する。こうした部分はペンライクな操作感を実現するという本製品のコンセプトと一貫しており、高精細な液晶との組み合わせで威力を発揮するだろう。個人的には、カウント数をマウス側で容易に切り替えられる仕組みがあれば便利だったかもしれないと感じた。

 このほか、普通のマウスでは軽視されがちなUSBコネクタについても、新規にデザインが起こされているなど、こだわりが見て取れる。本体カラーバリエーションもシルバーだけで2色(光沢シルバーとマットシルバー)が用意されるなど、ラインナップ面でも妥協はない。ことデザイン面においては、市販のマウスでは本製品にかなう製品はないのではないだろうか。


正面から見たところ。左右ボタンの全長が異なる点が目を引く側面から見たところ。右手専用のデザイン上から見たところ。シルバーとブラックのツートン

車輪ライクな直径27mmの大型ホイール。一般的なホイールに比べると幅はやや狭め製品名「SCOPE NODE」がシルク印字されている。線の細いフォントが製品のデザインにマッチしているUSBコネクタのデザインにもこだわりの跡が見られる

評価が難しい「ペンライクな」操作感

 マウスの良し悪しの見分け方の1つとして、センサー部がどれだけ前方についているかという点が挙げられる。マウスの握り方は人それぞれであっても、操作の際に手首側が支点になるのは万国共通であり、センサー部はそこからなるべく遠い位置にあるほうが、細かい操作が行いやすいというのがその理由だ。

 本製品では、左側面に突き出た半円形のパーツの底面にレーザーセンサーが備わっている。本稿ではこの出っ張りを「半円部」と呼称するが、通常の持ち方ではこの半円部の側面に親指がくる形になる。このため、マウスを握った際のセンサー部の位置がペンを持った際のペン先の位置とちょうど等しくなり、結果としてペンに近い操作感を実現しているというわけだ。


左側につき出た半円部は、底面にレーザーセンサー部を持つ。ボタンなどのギミックは特にない底面。レーザーセンサーの位置がよくわかる。無線モデルではこの底面中央に超小型レシーバを収納できるようになっている半円部の底面にレーザーセンサー部を備える

左後方から見たところ。前方から見たシャープさに比べ、後方から見ると曲線が多用されていることからイメージがかなり異なるロジクールのVX Nano(左)との比較。半円部を除けば、サイズはあまり変わらない意外と高さがないことがわかる

 もっとも、この状態では親指こそペンを握った場合と同じ位置にあるのだが、人差し指に関しては、ホイール操作することもあるので左ボタンの上に置かなければならず、親指とはやや離れた位置がホームポジションとなってしまう。かといって、親指と人差し指で半円部をつつむようにホールドすると、確かにペンを持ったような感覚でポインタを動かせるものの、今度は左クリックおよびホイールの操作に支障をきたす。

 思い切って、親指と人差し指で半円部をつつむようにホールドしたまま、左クリックとホイール操作を中指で行う方法も考えられるが、そうなると一般的なマウスの操作方法と違ってくるので、ますます違和感を感じるようになる。現状では、このあたりの最適解がいまいちわかりにくく、評価が難しいという印象を持った。

 また、本製品では半円部の左側を親指で支える形で握るため、手がかなり大きくないと、マウスを包むように持つことができない。写真で見るとモバイルタイプのマウスとあまり変わらないサイズに見えるが、実際に握った感覚ではデスクトップ用の大型マウスのそれに近い。購入前には店頭で実際に展示機を握ってみるなりして、自分の手にフィットするかを確認したほうが良いだろう。


普通の持ち方(左)だと、人差し指と親指の間が離れていて、ペンの持ち方には程遠い。親指と人差し指で半円部を包み込むようにすると(中央)、ペンライクな持ち方は実現できるが、左ボタンおよびホイールの操作がしにくくなる。思い切って左ボタンおよびホイールの操作に中指を割り当てるという方法もあるが(右)、そうなるとマウスの持ち方そのものが一般的でなくなってしまう

さらなる操作感の追求と多機能化に期待

手でホールドしたところ。半円部が左にせり出しているため、そこそこ大きな手でないと持ちにくい

 1週間ほどメインのマウスとして利用してみたが、このまま使い続けるには「あとひと押し」が足りないというのが、試用した上での率直な感想だ。ペンライクな握り心地を実現するというコンセプト自体は秀逸だが、そのコンセプトが製品の使い勝手にどの程度落とし込まれているかというと、やや疑問が残る。ホイールの快適さなど、ほかのマウスにない特徴だけにもったいない印象だ。

 デザインから企画が立ち上がった士郎正宗デザインマウスほどではないが、外見にカッコ良さを求めるユーザーに向いた製品、というのが現時点での位置づけだろうか。純粋な3ボタンマウスであり、継続利用のモチベーションとなる独自機能がない点も、ややマイナスと言える。現状は有線/無線タイプで各3色ずつのバリエーション展開だが、ペンライクな使い勝手のさらなる追求や、多ボタン化など機能面のプラスアルファにも期待したい。


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(山口 真弘)
2009/6/10 11:00