ハードウェア暗号化機能など全部入り!

バッファローのポータブルHDD「HD-PXU2シリーズ」


製品パッケージ。3色×3容量の全9ラインナップ。標準価格は250GBモデルが1万2075円、320GBモデルが1万3125円、500GBモデルが1万8690円

 今回紹介するバッファローの「HD-PXU2シリーズ」は、2.5インチのHDDを採用したポータブルHDDだ。本稿執筆時点では250GB、320GB、500GBモデルの3種類がラインナップされ、カラーはルビーレッドとクリスタルブラック、パールホワイトが用意されている。

 大容量データを手軽に持ち運べるポータブルHDDは、PC周辺機器売り場では定番とも言える製品だ。HDDの容量が少ないノートPCと組み合わせて利用することを目的としており、昨今のネットブックブームもあってこのところ販売数を伸ばしていると聞く。

 一方、個人情報保護法の施行もあって、ポータブルHDDやUSBメモリなどの外部記憶媒体は、企業ユースでは厳密なセキュリティ機能を要求されるようになりつつある。本製品は、パスワード認証とハードウェア暗号化という2つのセキュリティ機能を備えつつ、さらにポータブルHDDを便利に使うためのさまざまな工夫を取り入れた、“全部入り”ともいえるポータブルHDDだ。

光沢仕上げで美しい外装。USBケーブルは外周に沿って収納可能

製品本体。右上の角が丸くなったデザイン

 まずはハードウェア面から見ていこう。最近は1.8インチドライブの採用でさらに本体の小型化を図った製品もあるが、本製品は2.5インチドライブ内蔵の製品であり、フットプリント、厚みともに際立った特徴はない。

 表面は、ピアノ調の光沢がある天板を採用しており、高級感を醸し出している。光沢仕上げということで指紋がつきやすそうに思えるが、なんらかの特殊な加工が施されているらしく、驚くほど目立たない。手で触る機会が多い製品だけに、この点は評価したい。一方、実際に試したわけではないが、キズにはあまり強くなさそうなのが懸念点といったところだろうか。

 表面上部には、電源ランプとロックランプが備えられている。前者は電源状態とアクセス状況の通知、後者はロック状態を通知する。このランプは外部に露出しているわけではなく、保護パネルの裏側から光るようになっているので、消灯状態はランプの存在を意識させず、すっきりとしたデザインを印象付けるのに一役買っている。


手に持ったところ。2.5インチのHDD搭載製品としては標準的なサイズUSBケーブルは直付け式で、本体に巻き付けて収納する。長さは約18cmノートPCに接続したところ。ランプは表面にレイアウトされている。廉価なポータブルHDDではこうしたランプは省略されがちなだけに好印象だ

 裏面は、スリップ防止のためのラバーが付属している。4つのゴム足が両面テープで取り付けられている製品では、段差があるとスリップ防止の役割を果たさなかったり、使っているうちにゴム足が外れてしまう場合も少なくないが、本製品は一体成型されたリング状のパーツを滑り止めに採用しているため、このような危険性も少ない。このあたりもよく使い勝手を研究していると感じる。

 USBケーブルは直付けとなっており、本体の外周に沿って巻きつけて収納する。長さは約18cm(付け根からUSBコネクタの先端まで)とかなり短いが、ノートPCの真横に置いて使うぶんには問題ない。デスクトップPCに接続する場合は、添付の延長ケーブル(約50cm)を使用すると良いだろう。

 今回は本体の分解まではしていないのだが、内部には衝撃吸収クッションが備えられており、不意の落下からデータを守る構造になっている。ちなみに耐衝撃HDDのセールスポイントとしてよく謳われる「高さ何cmからの落下に耐えられる」という数値は、本製品においては非公表のようだ。


裏面はスリップ防止のラバー(赤い部分)が付属ネットブックの天板に乗せて傾けたところ。スリップ防止のラバーはかなりの効き目がある約50cmの延長ケーブルが付属する

ハードウェア暗号化に対応。パスワード自動認証も設定可能

接続時にオートランで起動するドライブナビゲータの画面。左下からパスワード認証のダイアログを起動できるのだが、やや気付きにくい

 続いて、セキュリティ機能について見ていこう。本製品にはハードウェア暗号化機能が搭載されており、データ書き込み時にハードウェア側で自動的に暗号化してくれるため、ユーザー側は手間をかけずに高度なセキュリティの恩恵にあずかれるという利点がある。

 ハードウェア暗号化の前提になるのがパスワード認証だ。本製品はデータ領域とは別に内部にROM領域を備えており、PCに接続するとまずこのROM領域からパスワード認証のためのダイアログが起動する。ここで正しいパスワードを入力すれば、データ領域へのアクセスが可能になるというわけだ。ちなみに自動認証の設定もできるので、自分のPCに接続した時はパスワード認証をスキップし、他のPCに接続した時のみパスワードの入力を必須にするといった設定も可能だ。

 速度面については、ハードウェア暗号化をオンにした状態とオフにした状態で、読み書き速度を比較してみたが、ほとんど違いのないレベルであった。セキュリティ機能を常にオンにした状態でストレスなく使えるメリットは大きいと感じる。

 なお、この暗号化機能はWindowsのみ対応で、Macでは利用できない。Macでデータを読み取れるようにするためには、暗号化機能をオフにする必要がある。ちなみに暗号化のオンオフにあたってはデータを移動させるような手間は必要なく、設定ソフトのみで切り替えが可能だ。


暗号化モードの設定画面。Macで使用する場合は「いいえ」を選択するパスワード認証のダイアログここでパスワードを入力することで、ドライブがエクスプローラに表示される

FirefoxやThunderbirdを内蔵

 添付ソフトについても見ていこう。本製品にはWebブラウザソフト「Firefox」とメールソフト「Thunderbird」を内蔵しており、本製品から各ソフトを直接起動して利用することができる。本製品のみを持ち歩いてPCは出先で借用する、あるいはネットカフェを利用するといった場合には便利に使えそうだ。これらのソフトはタスクトレイに表示される「モバイルランチャー」からすばやく起動することが可能だ。

 また、データ転送を高速化するバッファロー独自の「TurboUSB」機能にも対応しており、大容量のデータの読み書きに威力を発揮する。本製品の場合では、暗号化ありの状態で最大18%ほどの転送速度の向上が確認できた。大量のデータを書き込んでは消し、といった用途には重宝するだろう。


タスクトレイに「モバイルランチャー」を表示し、内蔵のFirefoxやThunderbirdをすばやく起動することができる転送速度を向上する「TurboUSB」にも対応

CrystalDiskMarkにて読み書き速度を測定した結果(CPU:Core2Duo 2.13GHz、メモリ:2GB、OS:Windows XP Professional SP3)。TurboUSBを有効にすることで、最大で約18%ほど転送速度が向上した

 このほか、自動でHDDの回転を落とす省電力ソフト「ecoマネージャ」や画像管理ソフト「Picasa」、バックアップソフトなども付属している。利用環境に応じてこれらのソフトを用いることにより、さらに快適に本製品を利用できるようになるだろう。

多機能ながら迷わず使える、万人向けの製品

 実際に使ってみた限りでは、非常に洗練された製品という印象を持った。こうしたセキュリティ機能を持った製品は使い勝手が犠牲になっていることも少なくないが、本製品はハードウェア暗号化に加えてパスワードの自動認証機能を備えるなど、ユーザーが好みに応じてセキュリティと使い勝手の折り合いをうまくつけられるようになっているのは高評価だ。

 また、発熱量が低いこともメリットとして挙げられる。この手の製品は、使っているうちに手で触れないほどの熱を帯びてくることも珍しくないが、本製品は長時間にわたって読み書きのテストをしていても、それほど熱くなることはなかった。使い終わった直後にバッグの中に入れて、ほかの荷物に影響を与えないか心配しなくても済む。

 敢えて気になる点を挙げるとすれば、1つはケーブルの長さだろう。携帯性を重要視したのは理解できるが、さすがにデフォルトの約18cmというのは少々短い気がしないでもない。本体の外周に沿って巻きつけるこのケーブルだが、現在は半周分の長さしかない。せめてあと1/4周分は長くても良いのではと感じた。

 もう1点は、パスワード認証のダイアログのわかりにくさも少々気になる。本製品を初めて利用するPCに接続した際、「ドライブナビゲータ」の画面が表示されるのだが、パスワード認証のダイアログを表示させるためにはこの画面内にある「製品のパスワード入力」というボタンをクリックしなくてはならない。

 しかし、この画面はユーティリティをインストールするためのメニュー画面といった体裁で(実際にその役割も兼ねている)、パスワード認証の画面へ進めることを見落としてしまいがちだ。実際、筆者も暗号化設定をオンにした本製品をほかのPCに接続した際、パスワード認証ダイアログが表示されないことを不審に思う一方、自動起動する「ドライブナビゲータ」の画面は常にクリックして閉じてしまっていた。このあたりの挙動はPCのオートラン設定によっても変わってくると思われるが、初心者にはややわかりにくいように感じた。パスワード認証ダイアログは単体で自動表示されるほうが親切かもしれない。

 もっとも、全体的には細かい配慮が行き届いており、買って損をすることはないだろう。メーカーサイトでは携帯向けのデコレーションを天板に施した写真も掲載されるなど、これまでにないユーザー層を念頭に置いた製品であることがわかる。多機能ながら迷いにくいという意味で、初心者からヘビーユーザーまで、幅広い層が安心して使える製品だと言えそうだ。


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(山口 真弘)
2009/7/29 11:00