ICレコーダーをアナログ音源のデジタル化にも活用!
三洋電機「ICR-PS501RM」


 今回はICレコーダーを紹介したい。同じサウンドデータを扱う機器ではあるが、ポータブルミュージックプレーヤーに比べると、今ひとつ地味な存在かもしれない。しかし、機能的には注目すべき点が多い魅力的なアイテムなのである。

 ICレコーダーの主な用途は、会議や講演などでの録音のほか、語学学習や音声メモといったところだろう。今回取り上げる三洋電機の「ICR-PS501RM」は、こうした録音機能に加えて、高品質な音楽の録音や再生などにも威力を発揮する多目的な利用が可能な製品だ。

 数多くの用途が考えられる中、実際に筆者が購入するにあたって特に注目したのがアナログ音源のデジタル化として利用だ。カセットテープに録音された音をPCやポータブルミュージックプレーヤーで聴けるようにする、アナログデジタルコンバーターとしての使用法である。

PCを使わずにアナログ音源をデジタル化

三洋電機の「ICR-PS501RM」。軽量コンパクトなボディに高音質と多機能が魅力のICレコーダーである。実売価格は1万4800円前後だ

 アナログ音源のデジタル化自体はそれほど難しくない。プレーヤーの出力をPCの外部入力端子やマイク入力端子につなぎさえすれば、音声データ作成と同じ手順で簡単に作業が進められる。音にこだわるのであれば、USBポートを装備したカセットデッキやプレーヤー、あるいはサウンドプロセッサーなどを利用すれば良いだろう。

 筆者も以前からこういった方法をとっていた。しかし、アナログ音源のデジタル化はサウンドデータのコピーやエンコードとは異なり、通常の再生と同じだけの時間が必要となる。基本的には放置しておくだけなので問題はないのだが、音源の数が多いとそうもいっていられない。これだけのためにPCを動かし続けるのはムダなのではないかという気がしていたのだ。

 そこで試してみようと思い立ったのが、ICレコーダーで録音するという方法だ。これならダビングと同じ要領でカセットデッキなどと直結し、テープを再生するだけである。ノイズの発生源となるPCや家電製品などから離れた場所で作業できるため、音質の面でも多少は有利になるだろう。

 録音したデータをそのまま編集できるのも大きなメリットだ。ICレコーダーならではのキメ細かい再生機能を活かし、ファイルの分割や不要部分のカットなどが素早く効率的に進められるのである。ひと通りの作業がすんだらデータをPCに転送。あとはポータブルプレーヤーに転送するなり、光メディアなどに書き込んで保存するなり、好きなように処理できるというわけである。

 筆者がデジタル化用として、数あるICレコーダーの中から「ICR-PS501RM」に興味を持った理由はいくつかある。まず、リニアPCM録音が可能という点。少々古びたカセットテープの音質ならMP3形式で十分すぎるほどではあるが、思い入れがある音源は非圧縮のWAV形式で保存しておきたかったからだ。

 もう1つは大容量に対応したメモリーカードスロットを備えている点。ある程度まとまった量のアナログ音源を録りためておき、折を見て一気にPCへと転送できれば効率的だと考えたのである。

 「ICR-PS501RM」は、PCとの接続が非常に簡単である点も特徴だ。本体にUSBプラグを内蔵しており、裏にあるツマミをスライドさせることで下部から飛び出してくる。そして、そのままPCのUSBポートに挿し込みさえすれば良いのだ。内蔵メモリはUSBフラッシュメモリと同じように扱えるし、microSDHC対応のカードスロットはメモリーカードリーダーとしても役立ってくれるのはありがたい。


カセットデッキのライン出力を「ICR-PS501RM」のライン入力に接続。ケーブル1本をつなぐだけなので、まったく手間はかからないいつでもどこでもデジタル化できるよう、昔愛用していたポータブルカセットプレーヤーを現役復帰させてみたディスプレイは対角約3cmと小さいが、各所にわかりやすいグラフィカル表示を採用。音声ガイダンス機能も搭載する

右側面には小さなボタンが並んでいる。爪を立てるようにして押すことになるが、操作性は悪くない裏のツマミを動かすとUSBプラグが飛び出してくる。このままPCに挿し込むことができるし、付属の延長ケーブルを使用しても良いmicroSDHC対応カードスロットを搭載。動作確認済みカードは製品サポートページに記載されている

軽量コンパクトなボディに便利な機能を満載

本体に3つのマイクを内蔵。用途によってモノラル、ステレオ、ステレオワイドと3種類のモードが使い分けられる

 もちろん、通常のICレコーダーとして見た場合も利用価値が高い。特に便利だと感じたのは録音時のシーンセレクトだ。マイクのモードや記録するファイル形式、ビットレートなどの組み合わせを、用途に合わせてワンタッチで切り替えられる機能である。

 口述や会議、講義、音楽といったプリセットに加え、ユーザー設定を3つまで登録可能。切り替えはディスプレイ下のボタンを押してシーンを選ぶだけである。どのような状況でも素早く最適な録音設定が素早く呼び出せる実用性の高い機能だ。

 本体上部に計3本のマイクを内蔵しており、モノラル、ステレオ、ステレオワイドと3種類のモードが使い分けられる。それぞれマイクの指向性が変わるので、講演やプレゼンテーションなどでは発言者に狙いを絞り、周囲の雑音を低減させることができるし、会議の席などではテーブルの中央に置いて全員の声を拾うことも可能だろう。ディスプレイには、マイクの指向性をグラフィカルに表示してくれるため、用途に合わせた素早いセッティングが可能だ。


シーンセレクトは記録ファイル形式、ビットレート、マイクのモードなどの設定を一括して呼び出せる便利な機能だ講義用のシーンではモノラルのズームマイクモードに切り替わる。回りの雑音をカットし、発言者の声に狙いを絞って録音できる会議用は周囲の音を余さず記録する無指向性モード。どのシーンを選んでいるかはわかりやすいグラフィックで表示される

 ICR-PS501RMでは、音楽CDと同じ16bit/44.1KHzリニアPCM録音のほか、ビットレートを32kbpsから320kbpsまで5段階で調整できるMP3形式による録音も選択できる。2GB容量の内蔵メモリにはリニアPCMで約3時間、32kbpsのMP3であれば約136時間分の音声が記録可能だ。さらに8GBまでのmicroSD、microSDHCが使用できるカードスロットを搭載。ストレージ容量の不安は一切ない。

 再生はWAV形式とMP3形式に加え、WMA形式にも対応する。音質面でも音声だけでなく音楽を強く意識しているように思われる。実際、ロックやジャズ、ポップスなどの再生に合わせたプリセット機能付きの5バンドグラフィックイコライザーを搭載するほか、プレイリストの利用にも対応。PCなどに保存されている楽曲データを転送し、ポータブルミュージックプレーヤーとしても活用できるのだ。ICレコーダー本来の速度調整、スキップ、AB間リピートとといった多彩な再生機能を活かせば、楽器演奏の練習などにも力を発揮するだろう。

 電源には単4形アルカリ乾電池、または三洋電機のニッケル水素充電池「eneloop」を使用する。動作時間は条件にもよるが、電池1本で最大約26時間。USBバスパワーによる給電も可能で、別売のアダプタを使用すればAC電源が利用できる。

 本体サイズは35.4×103×13.9mm(幅×奥行×厚)で、重量は約53g(乾電池含む)。この軽量コンパクトな本体に出力80mWのスピーカーまで内蔵しているのだから感心してしまう。


裏には出力80mWのスピーカーを搭載。大きな音は出せないが消費電力が抑えられているらしく、長時間の連続再生が可能なのは有り難い単4形アルカリ乾電池、またはeneloop1本で最大約26時間の動作が可能。PCのUSBポートなどから電源を供給することもできる

リーズナブルな価格で幅広く活躍

 「ICR-PS501RM」の本体色は、透明感のあるホワイト。製品にはステレオイヤフォンやUSB延長ケーブル、単4形アルカリ乾電池1本が付属する。筆者が実際に購入してから日は浅いが、普段は会議やミーティングの記録用として、余暇には趣味の音楽に、空いた時間はアナログ音源のデジタル化と、ほとんど休む間のない活躍ぶりである。

 もし、より大きなストレージ容量が必要な場合には、内蔵メモリが4GBで実売価格が1万8000円前後の「ICR-PS503RM」を選ぶと良いだろう。なお、10月中には内蔵メモリやUSBプラグを省いた点以外は同等機能のエントリーモデル「ICR-PS004M」も1万円前後で販売される予定だ。こちらもリーズナブルな価格と高性能を両立させた製品として期待できそうだ。


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(斉藤 成樹)
2009/10/14 11:00