アナログ音源に加えて、ネットラジオも録音可能!
プリンストン「デジ造 音楽版」
「デジ造 音楽版(PCA-ACUI)」製品パッケージ。メーカー直販サイトでの価格は3480円 |
プリンストンテクノロジーの「デジ造 音楽版(PCA-ACUI)」は、アナログ音源をPCに取り込むためのオーディオキャプチャユニットだ。カセットデッキやレコードプレーヤー、MDプレーヤーなどを本製品に繋ぎ、USBケーブルで接続したPCで録音・加工して、iTunesなどに取り込むことができる。アナログ資産のデジタル化にぴったりの製品だ。
また、もう1つの特徴として、インターネットラジオ番組を録音して自動分割し、さらに曲名やアーティスト名を自動的を付加して保存できる機能がある。前出のアナログ機器からの録音機能は、プリンストンが以前より展開する「デジ造」シリーズに共通する部分となるため、製品ラインナップ的にはこちらの機能が本命とも言える。直販サイトの価格は3480円。
製品は「ユニット」と呼ばれる本体と、付属ソフトウェアで構成される。本体は片方がアナログ接続用のRCA端子およびステレオミニプラグ、もう一方がUSBコネクタという構成である。前者はカセットデッキやレコードプレーヤー、MDプレーヤーとの接続に利用するためのもので、複数ある端子の中から機器に合ったものを使用する。後者は言うまでもなくPCとの接続に用いる。
■外部アナログソースからの録音が可能。曲自動分割には非対応
まず最初に、カセットやMDといった外部アナログソースの録音手順を説明しよう。添付の音楽編集ソフト「5star Audio Studio LE」をPCにインストールして起動すると、メイン画面が表示される。外部アナログ機器を録音する場合には、メイン画面の左側メニューから「外部機器からの録音」を選択すれば良い。
「デジ造 音楽版(PCA-ACUI)」の本体外観。対応OSはWindows Vista/XP SP2以降 | カセットデッキを接続した例。端子は製品の形状に合ったものを利用する |
次に、デバイス設定欄でキャプチャデバイスに「USB PnP Audio Device」が指定されているのを確認した上で、接続済みの外部アナログ機器を再生する。画面に波形が表示されれば、PC側にきちんとサウンドが出力されていることになる。音量に関しては、ビジュアライゼーションで波形がはみ出さないよう、外部アナログ機器側で調節する。
続いて出力形式を設定する。保存したファイル形式とビットレートを選び、保存先のフォルダを選択する。また、iTunesに登録するのであれば「iTunesライブラリに追加する」にチェックを入れる。
設定が終わったら、アナログ機器での再生を改めてスタートさせ、同時に画面右下の「開始」ボタンをクリックする。録音が完了すればマイミュージックフォルダに「新規ファイル.mp3」という名前のファイルができているので、きちんと録音できているか確認する。
録音画面。キャプチャ中は曲を聴くことができないため、メイン画面の波形を手がかりに音量を調整する。指定時刻に録音する機能も備えているので、ラジオなどを接続して録音もできる | 指定部分の無音化やフェードイン・フェードアウトといった波形編集メニューもある。イコライザで音質を変更したり、ノーマライズで音量を統一することも可能だ |
以上で録音作業は完了だが、アナログ機器からの録音時には曲の自動分割機能がないため、取り込まれた音源は1つの大きなファイルになってしまう。本製品の上位モデル「デジ造音楽版 匠」や他社の同等製品では、自動分割機能を備える場合が多いだけに、今後の進化を望みたいところだ。
このため、現状では本製品の添付ソフトは曲の一括取り込みにだけ用い、あとは無音部分ごとに曲を自動分割するフリーソフト「presplit」などを用いて曲を分割するのが最良の選択だと思われる。
ちなみに「5star Audio Studio LE」では、手動による曲分割は可能だ。ただし、「録音時間の長いファイルから範囲を指定して書き出す」方式ではなく、「必要のない範囲を切り取ってファイルを作成する」という方式をとっているため、非常に手間がかかる。
具体的に説明すると、1-2-3-4-5-6と計6曲が繋がったMP3ファイルがあった場合、1曲目を取り出すためには2-3-4-5-6を削除して別名で保存。また、2曲目を取り出すためには再度オリジナルファイルを開き、1と3-4-5-6を削除して別名で保存、という作業を繰り返す必要がある。実際やってみるとわかるが、これは手間のかかる作業だ。せっかくiTunesへの自動登録機能がありながら、少々もったいないと感じる。
■インターネットラジオの聴取・録音、自動タグ付けに対応
インターネットラジオの画面。膨大な数のラジオ局がプリセットされている。外部のサーバーへ定期的にリストを取得しているようで、時間帯によって表示される局の数が異なる |
カセットテープやMDなどのアナログ資産を取り込むのがベーシックな機能とすれば、インターネットラジオの音源を録音する機能は、本製品ならではのユニークな機能と言えるだろう。結論から言うと、これだけで買う価値は十分あると感じられるほどの秀逸な機能だ。
インターネットラジオの受信・録音には、アナログ録音でも利用した「5star Audio Studio LE」を利用する。カセットデッキなどの外部アナログ機器を接続するわけではなく、ソフト単体での受信・録音が可能だ。
手順としては、(1)プリセットされたリストの中からインターネットラジオ局を選択し、(2)録音ボタンを押す、これだけだ。また、インターネットラジオ局はリスト選択に加えて、手動でURLを指定することも可能だ。
好みのインターネットラジオ局を検索することも可能だ | URLを指定してインターネットラジオ局を検索することもできる |
録音した曲に関しては、インターネットラジオ局が曲とともに配信しているタグ情報をもとに、曲名やアーティスト名などのタグが自動的につけられて保存される。録音ボタンを押したまま数時間ほど放置しておけば、指定のフォルダ(デフォルトではマイドキュメント内の「マイミュージック」フォルダ)に、アーティスト別にフォルダ分けされた大量のMP3ファイルが、自動的に生成される。なお、タグ情報が配信されていない場合は、この機能は利用できない。
インターネットラジオを聴くだけであれば、iTunesやWindows Media Player、さらにフリーのソフトでも数多く対応しているが、録音機能をもったソフトというのは多くはない。さらに本製品の場合、曲の自動分割、曲名やアーティスト名の自動タグ付けといった付加価値を持つなど、インターネットラジオのヘビーユーザーにはたまらない機能を持っている。ラジオ局のリストは国内・海外ともに豊富であり、知識がなくともインターネットラジオを手軽に楽しむことができるため、初心者の入門用にも適しているだろう。
録音機能に関しては、時間指定やタイマー録音などに対応するほか、アーティスト名などによる条件指定録音にも対応するため、ニーズに応じたきめこまかな録音が可能だ。ちなみに録音途中で局を切り替えても録音は継続されるほか、複数の局を同時に録音することもできる(同時録音できる局の件数は、ネットワーク帯域などの条件に依存)。以上のように、このソフトだけでも他にあまり類を見ない、非常に価値のある製品だ。
設定画面。保存時のタイトルのフォーマットなどが設定できる。ディスクの作成は有料版のみのメニューだ | フィルタ条件を指定しておけば、合致する曲のみを録音することができる | スケジュール設定による録音も可能 |
敢えて難をあげるとすれば、インターフェイス画面があまり直感的でないことだろうか。お気に入りのインターネットラジオ局を登録できる「マイリスト」機能は、インターネットラジオ局単体をブックマークとして登録するのではなく、例えば「邦楽」「洋楽」といったジャンル別、もしくは「仕事用」「リラックスしたい時用」といったシチュエーション別にリストを作って保存し、そこに登録していく方式となるため、直感的に使いにくい。また、ラジオ局を絞り込み検索するための画面が別ウィンドウ構成となるなど、ユーザビリティ面はいまひとつだ。
また、これは本製品側の問題ではないが、タグ情報をもとにインターネットラジオを録音する場合、局によっては曲が開始位置から5~10秒程度前にずれた状態で自動カットされてしまう場合があるので、局のプロパティにあるファイル分割の項目で手動調整してやる必要がある。現状では、これがあまりわかりやすいインターフェイスとは言えないので、表記面での改善が施されれば、製品の価値はさらに増すことだろう。
■アナログからデジタルへの移行のパスポートとなる製品
以上、本製品が持つ2つの大きな機能を紹介したが、核になるのはやはりインターネットラジオの録音機能だろう。すでにインターネットラジオの魅力にハマっている人はもちろん、初心者ユーザーの入門用としてもぴったりの製品だ。アナログ資産のデジタル化が完了したあとで、本製品を引き続き使い続けられるという意味でも、この機能の存在は大きい。
一方、アナログ資産のデジタル化のみが目的であるならば、曲の自動分割に対応していない点は念頭に置いておくべきだろう。自動分割が必須ということであれば、本製品の上位モデル「デジ造音楽版 匠」や他社の同等製品を選択するという方法もある。
ともあれ、実売価格が3000円台とリーズナブルで、前者の機能だけを目当てに購入したとしても、お買い得感は高い。既存のアナログ資産をデジタル化した上で、インターネットラジオもたっぷりと満喫できる、欲張りな製品と言えそうだ。
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