弁当男子必見! 厳選食材で“愛ある料理”を
「三浦半島まるかじり クックアンドダイン」(前編)


 今回紹介するのは、神奈川県の三浦半島をはじめ全国の食材を販売する「クックアンドダイン」。新鮮な魚貝や肉のほか、朝に収穫した野菜を即日で配達するなどユニークなサービスも行っている。また、食への造詣が深い店長が企画したオリジナルの調理器具など、ほかでは手に入らない商品にも注目だ。グルメ通販が好きな人はぜひお見逃しなく!

三浦半島発! 安くておいしい新鮮食材がギッシリ

「クックアンドダイン」のトップページ

 全国各地の産直品を扱う通販サイトは数多くあるが、神奈川県、それも“三浦半島”という極めて限定されたエリアを看板に掲げる「クックアンドダイン」のような店は珍しい。ただし“三浦半島”の名を冠してはいるものの、扱っているのはそれだけではない。トップページを見ると、山形のぬか床や甲州ワインビーフ、富山の漁港から揚がったブリなど、全国から取り寄せた厳選食材が数多く並んでいる。これらの商品は、すべて「クックアンドダイン」の代表である山口壮一さんが自分の舌を頼りに選んだものばかりだ。

 山口さんが楽天市場に「クックアンドダイン」をオープンしたのは2001年のこと。社会に出てからデパートに入社して、14年ほど経ってからの独立だった。

 「“なんでもかんでも全国の旨いものを”と大風呂敷を広げるよりも、最初はエリアをピンポイントに絞って個性を出したほうがいいんじゃないかと思いました。そこで、あえて神奈川でもなく、もっと狭くニッチに行こうということで、店名に“三浦半島まるかじり”という一文を入れたんですね。」

 「昔は横浜に住んでいたのですが、結婚してからはしばらく東京に住んで、それからまた横浜に戻りました。もともとおいしいものを探すのが好きなので、横浜に戻ってからは三浦半島のうまい魚や野菜をよく探しに行きました。一般的には三浦半島というと大根くらいしか知られていないし、スーパーや量販店に行っても三浦半島を売りにしたものはほとんどありませんでした。こんなに安くておいしいものがあるのに、それはもったいないということで、三浦半島を前面に出すことにしたのです。」(山口さん)



獲れたての魚の配送サービスが大人気に

代表の山口壮一さん

 「クックアンドダイン」のサイトを見ると、店名の左に「愛ある料理と食卓と。」というキャッチコピーの入ったマークが入っているが、このマークはグラフィックデザインで有名なJLDSノルドのアートディレクター、齋正隆男さんがデザインしたものだ。デパート時代の縁で2人は親交があったそうだが、このマークは山口さんが独立するにあたって齋正さんからプレゼントされたものだという。

 多くの通販サイトがそうであるように、立ち上げ当初は売り上げが思うように伸びなかった「クックアンドダイン」だったが、あることがきっかけで注目を集めるようになる。それは、三浦半島の漁港から揚がった鮮魚を直送するサービスを、テレビ番組で紹介されたことだった。朝に獲れた鮮魚をメールマガジンで配信して、獲れたての魚をすぐに配送するというこのサービスは、当時ではかなり珍しかった

 「インターネットの双方向性とリアルタイム性を活かすサービスってなんだろう、と考えたんですね。たとえばデパートとかで商品のチラシを作るとしたら、何ヶ月も前に写真を撮影する必要があるけど、インターネットなら朝獲れた魚をそのまま写真で見せて売れるんじゃないか、と気付いたんです。もしそういうサービスがあったら、自分がお客の立場だったらめちゃくちゃ楽しいだろうな、と思ったんですね。」

 「もうひとつ伝えたかったのは、魚を自分でさばいたり調理したりすることの楽しさです。漁港に行くと、新鮮な魚がザルに山盛りになって安く売っています。鮮度は最高だし絶対においしいのに、自分の手でさばけないというだけで、みなさん買わない。それはものすごくもったいないことなんです。それなら価格が安ければ気軽にさばいたりできるだろうということで、値段も1セット2000円くらいで安く提供することにしました。」(山口さん)

 メールマガジンには、「今朝はこの魚が獲れました。おすすめの料理法はこれ」などと調理法についてもガイドした。この魚は刺身にして、別の魚は唐揚げ、あまった切り身は醤油に漬けるとおいしい、といった具体的な解説を見て、魚を調理することの楽しさを知ったお客が徐々に増えていった。仮にさばくのに失敗して無駄が出ても、ダシに使ったりして再利用すればいい。そんな裏技も好評だった。

 山口さんはヤマハ発動機がボートやヨットのオーナー向けに発行している雑誌「キャプテンズ・ワールド」で、季節の海の食材を紹介するコラムを毎号執筆している。魚貝の魅力を伝えているという点においては、インターネット通販の運営も記事の執筆も同じ。そこには海の食材の美味しさや料理する楽しさを広く伝えたいという思いが込められている。

魚のおろし方を解説したページおすすめレシピ


富山の氷見漁港で獲れる天然のブリも好評

 そんな風に好評を得ていた鮮魚の配送サービスだったが、近年は魚が当時より獲れなくなってきたこともあり、現在はサービスを中止している。その代わり、三崎港に集まったマグロや、佐島漁港の干物、長井漁港のめかぶなどを扱っている。

 当初は三浦半島に限った商品展開だったが、オープンして1年が過ぎてからは、ほかのエリアのものも扱い始めた。お客を飽きさせず、手を変え品を変えながら、いいものを常に提供し続けるためには、三浦半島にこだわらず幅広い商品を扱う必要があると考えたからだ。

 たとえば魚では、富山県の氷見漁港から揚がったブリを扱っている。氷見漁港は、天然の寒ブリが揚がる漁港として有名だ。天然のブリは、養殖のブリと違って脂が乗っていてもしつこくなくさっぱりしている。エサの臭みも無いので、魚にこだわる人には大人気だ。

 「朝、漁港から電話をもらって、その情報をメールマガジンに流しています。天然なので安いものではなく、養殖の値段の4倍くらいしますが、養殖との味の差を知っているお客さまはけっこういらっしゃって、入荷してすぐに売り切れてしまうこともありますよ。」(山口さん)

 氷見漁港では冬はブリが楽しめる一方で、夏はマグロが揚がる。本マグロが定置網にかかるそうで、とても珍しいそうだ。これもメールマガジンで告知すると、かなりの人気を呼ぶという。どうやら天然の魚の味というのは、一度体験すると人によっては病みつきになる魅力を秘めているようだ。

氷見漁港の天然の寒ブリ天然本まぐろが入った朝どり鮮魚セット


朝獲れた野菜を関東一円に即日配達

 ただし天然ならではの悩み事もある。「クックアンドダイン」では、ある離島で獲れる天然の魚貝を毎年提供していたのだが、今年に限って取りやめることにした。理由は、今年獲れたものの質が著しく落ちていたこと。山口さんが試食してみたところ、例年の味を100%とするなら、今年は60%ほどに感じたのだという。

「いつもより少し味が落ちる程度ならまだましですが、今年のは許容範囲を超えていたので、泣く泣く販売を取りやめました。自分もいつもの味を知っているので、我慢できなかったんですね。こういうことは、天然ものなら当たり前のことなんです。単に瞬間的に売上高を上げるためなら、味が落ちても売ってしまえばいいのでしょうが、一度それをやってしまうと、来年また100%の味に戻っても信用してもらえなくなってしまう。それではぼくらみたいな店の存在価値が無くなってしまいますから。」(山口さん)

 味が落ちた商品はあえて売らない。そんなところに「クックアンドダイン」の信条が垣間見える。それは、うまさや新鮮さにとことんこだわり、キャッチコピーのような“愛ある料理と食卓”を提供したいという思いだ。その一貫として最近始めたサービスが、新鮮野菜の配送サービスである。これは朝に収穫した野菜を、関東一円に即日で配達するサービスだ。

「キャベツやほうれん草、小松菜など葉っぱものの野菜の場合、朝獲れたものをその日に食べると、スーパーで買う野菜と味がまったく違うのがわかります。ほうれん草なんか、そのまま食べても甘いくらい。とうもろこしや枝豆なんかも、収穫してすぐに食べると本当においしいです。」

「このサービスで提供する野菜は、業務用の野菜を卸している店から仕入れています。イタリアンに使うハーブなど、特殊な野菜も扱っている店なので、プロユースの珍しい野菜もあります。『たまには少し変わった野菜を食べたい!』と思っている方にもおすすめですね。週替わりで野菜をセットにして送るので、毎週なにが届くのか楽しみになりますよ。」(山口さん)

 まだ開始して間もないため、今ひとつお客には浸透していないが、獲れたての野菜を即日で食べられるサービスというのはけっこう珍しい。このようにほかの店とはひと味違うサービスを提供している点が「クックアンドダイン」の魅力なのだ。

朝採り野菜セット

(明日の後編につづく)


関連情報
2009/8/6 11:00  
碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース・コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。