初の萌えグッズ“猫耳イヤフォン”が大人気
サンコーレアモノショップ(前編)


 今回紹介するのは、他店では売っていないユニークな商品を販売している「サンコーレアモノショップ」。ペン型のカードリーダーやボタン型のCCDカメラなどのレアなアイテムに加えて、最近では初の萌えグッズ「猫耳イヤフォン」も発売して人気を集めている。

 独自に企画したオリジナル商品も数多くリリースしている「サンコーレアモノショップ」だが、その商品企画力の秘密は何なのだろうか。運営会社であるサンコーのマネージャー、萩澤茂雄さんに話をお聞きした。

サンコーレアモノショップ
http://www.thanko.jp/


アルバイトが提案した初の萌えグッズ「猫耳イヤフォン」

 萌えグッズの定番といえば、ご存じ“猫耳カチューシャ”。しかし「サンコーレアモノショップ」が発売した“猫耳”は、ただの飾りではない。なんとヘッドフォンとして使える立派なAV機器なのだ。

 「猫耳イヤフォン」と名付けられたこの商品は、簡単にいえばカナル式のイヤフォンが内蔵されたカチューシャだ。イヤフォンから伸びるコードを携帯メディアプレーヤーに接続するだけで、猫耳を付けながら音楽が楽しめる。このユニークな商品は、「サンコーレアモノショップ」を運営するサンコーとしては初めてとなる“萌えグッズ”。サンコーのスタッフが企画して製造した完全オリジナル商品だ。

 「猫耳イヤフォンを企画したのは、当社のアルバイトスタッフです。これまでサンコーとしては、女性でも買えるような“萌えグッズ”はまったく扱っていませんでした。そんなとき、スタッフの1人が『猫耳は売らないんですかね?』と言い出して。『ただの猫耳を売ってもしょうがないだろ』とだれかがツッコミを入れたら、『じゃあイヤフォンを付けましょう』という話になったんです。」

 「ふつうの猫耳カチューシャだと買うのに躊躇してしまう人がいるかもしれないけど、イヤフォンを付ければ音楽を聴くための道具になりますから、『イヤフォンを買うんですよ、本当は』という風に言い訳ができると(笑)。そんな感じにみんなで話していくうちに盛り上がって商品化につながったんです。」(萩澤さん)

 猫耳イヤフォンの商品紹介ページにアクセスすると、「ネコ耳を付ける理由ができました」と大きく書かれたキャッチコピーがいきなり目に入ってくる。猫耳は欲しいけど、なんとなく恥ずかしくて買えない。でも「イヤフォンを買う」という大義名分があれば敷居は一気に低くなる。そんな微妙な消費者心理をくすぐる一文である。このような演出効果もあり、「猫耳イヤフォン」は発売以来、好調な売れ行きを見せている。

「猫耳イヤフォン」のページ初回ロットはすぐに売り切れた


社内ネットワークの掲示板で自由にアイディアを議論

 「猫耳イヤフォン」のように大手メーカーでは思いつかないような企画をすぐに実現化してしまうのは、サンコーならではだ。アルバイトも社員も分け隔てなく、自由にアイディアを提案できる雰囲気がサンコーにはある。

マネージャーの萩澤茂雄さん

 「当社では社内ネットワーク上にアイディアを出すための掲示板を作っていて、なにか企画を思いついたら、そこに書き込んでみんなでコメントを出し合っています。アルバイトとか社員とか、そういうところで変に敷居を作っちゃうと、出るアイディアも出ません。だれかが案を書き込んだら、『そんなのいらないよ』とか、『おれは絶対に欲しい!』とかみんなで自由に書き込んでいます。」

 「コメントが集まって盛り上がってくると、社長が出てきて、『それじゃ、そういう商品を探してみます』とか、『オリジナル商品として作ってみます』という話になります。そこからさらに、『アイディアはいいけど、コストはいくらかかるの?』といった風に具体的な話になって、どんどん煮詰めていくわけですね。」(萩澤さん)

 社内ネットワーク上でいつでも気軽にアイディアを話し合える雰囲気になっているので、実際に顔と顔を突き合わせる企画会議は、隔週に一度と頻度はそれほど多くない。

 「企画会議が行われるときも、『いつまでにいくつのアイディアを持ってくるように』とか、そんな風に縛っているわけでもありませんし、とにかくスタッフ同士が仲が良いので一体感があります。」(萩澤さん)



猫耳の角度が変!? 完成までのさまざまな苦労

 アルバイトスタッフが提案したアイディアを元に作ったという「猫耳イヤフォン」だが、完成までにはさまざまな苦労もあった。オリジナル商品を作る場合、まず工場に「このような商品を作ってほしい」と発注して、サンプルを作ってもらう。発注先は海外の工場、とくに中国が多いのだが、そこには色々なトラブルがつきまとう。

 「『猫耳イヤフォン』の場合は、サンプルを5回くらい作り直しましたね。こちらで設計図を書いて渡すわけではないので、たとえば猫耳の角度が変な風に付けられちゃって、『それじゃ鬼の角でしょ!』みたいにツッコミを入れたくなるときもありました(笑)。」

 「色にしても、『なんでこんな色になっちゃうの?』と首をかしげたくなるような変な色になってしまったりして。最終的にはコストとの兼ね合いもあるんですが、『これならいけるかな』というポイントを見極めてゴーサインを出します。」

 「海外の工場については、品質の問題を色々と指摘されたりもしますが、一方でいいところもあるんです。それは、ロットが少なくても仕事を請け負ってくれる点です。国内の工場で作って採算を取ろうとすると、万単位で発注しなければなりませんが、それに比べると、当社が作る“レアモノ”は生産量がかなり少なくなります。少数生産でも採算が取れるところが中国の工場の良さですね。」(萩澤さん)

 以前は多かった不良品の比率も、最近はかなり減ってきたという。信頼できる工場の情報が蓄積されてきたことや、検品のノウハウが向上してきたためだ。

秋葉原には実店舗が2店ある。こちらは秋葉原2号店


サンコーでしか手に入らないオリジナル商品の数々

 「サンコーレアモノショップ」が店をオープンしたのは、2003年のこと。オープン以来、インターネット通販でユニークなレアモノグッズを次々とリリースして、ガジェット好きの心をつかんでいった。現在は秋葉原や日本橋にも実店舗を持つが、今でも売り上げの比率はインターネット通販のほうが多い。

 扱う商品はUSBハブやカードリーダー、モニターアームなどのPC周辺機器や、イヤフォンなどのオーディオ機器、小型カメラなどのビジュアル製品やセキュリティグッズなど幅広い。

 8月下旬に「サンコーレアモノショップ」のサイトにアクセスしたところ、売れ筋TOP10の1位は「ボタン型ビデオカメラ」で、2位が「VONIA骨伝導イヤフォン」、3位が「ポケットムービーHDV」、4位が「USBデンタルマイクロスコープ」だった。このほかにも、通販サイト上には他店では見かけないようなレアな商品ばかりが並ぶ。

 ちなみにこのときのランキングの5位にランクインした「ゴロ寝DEスク COOL2」という商品は、かつて同社が企画したオリジナル商品。脚の部分が自由な角度に折れ曲がるようになっていて、寝ても座っても使える小型のPCデスクだ。発売以来、かなりの人気を誇っている。

 「『ゴロ寝DEスク』については、今では同じような商品があちこちで売ってますけど、最初に出したのは当社なんですよ。当社では基本的にサンコーの製品しか置いてません。なにか面白い商品を探してきて、当社で輸入して販売したり、自分たちで作ったオリジナル商品を販売したりするのであって、他社の後追いはしないのがポリシーです。」(萩澤さん)

 オリジナル商品の比率は、サンコー全体で扱っている商品の中の4割を占める。ただ、その中には「猫耳イヤフォン」のような完全オリジナルだけではなく、他店でも扱っているが、サンコー向けに仕様をカスタマイズした商品なども含まれる。

 「たとえば携帯オーディオプレーヤーで、他社だと英語表記のまま売っているのを、当社ではきちんと日本語が通るように改造してもらったりしています。あと、特定のフォーマットを再生可能なように改造してもらったりすることもありますね。また、モニターアームについても、お客さまのニーズに合うように長さを調節してもらうなど、実質的に当社でしか扱っていない商品もけっこうあります。」(萩澤さん)

 「猫耳イヤフォン」のようなインパクトのあるユニークグッズだけでなく、再生フォーマットを増やしたりと、細かい点にこだわった商品も扱っているサンコー。後編では、萩澤さん自身が企画した商品や、その他のレアモノグッズについて紹介しよう。

(明日の後編につづく)

大ヒットした「ゴロ寝DEスク COOL2」豊富なサイズが揃ったモニターアーム

関連情報
2009/9/3 11:00  
碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース・コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。