「けいおん!」制服や「ガンダム」ジーンズに大注目!
コスパティオ(前編)


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 今や世界中から注目されている日本発の文化、“コスプレ”。これを支えているのが、数多く存在するコスプレショップだ。中でも、質の高いコスプレ衣装やキャラクターグッズを販売する店として人気なのが、コスプレ衣装やキャラクターグッズのメーカーであるコスパが運営する「コスパティオ」である。

 運営元のコスパは、コスチュームのメーカーとしては草分け的な存在であり、品質の高い商品を販売することでマニアからの評価も高い。「コスパティオ」のほかにも商品ジャンルごとにさまざまなブランドを持つコスパだが、コスチュームやグッズをインターネット上で販売する上で、どのようなこだわりを持っているのだろうか。

 コスパのグループ会社であり、インターネット通販や実店舗の運営を担当しているタブリエ・マーケティング株式会社の販売部リーダー、田原 聡郎さんに話をうかがった。


アニメやゲームのマニアから音楽ファンまで幅広くカバー

コスパティオ渋谷本店の店内

 コスパはグループ内に「コスパティオ渋谷本店」や「ジーストア・アキバ」、「ジーストア大阪」など、全国各地に直営店を7店、そしてインターネット上で通販サイトをブランド別に展開している。

 「コスパティオ」はコスプレ衣装およびサポート品のブランドだ。このほか、Tシャツやジーンズなどのキャラクターアパレルおよびグッズを扱う「コスパ」や、美少女二次元キャラクターグッズを扱う「二次元コスパ」、フィギュアやドール関連の「レジーニャ!」、パーティーコスチュームの「トラントリップ」、キャラクタードール服の「シーゾーン」、音楽バンド・アーティスト系グッズの「コスパラヴィット」と、計7種類のブランドを用意している。

 ライトなアニメファンから濃いマニア、そして音楽ファンまでと幅広い層をカバーするラインナップだ。また、コスパの直販サイトとは別に、タブリエ・マーケティングが運営している「Gee!STORE」の通販サイトも用意している。


この夏一番のヒット商品は『けいおん!』の制服コスチューム

販売部リーダーの田原 聡郎さん

 この夏、「コスパティオ」で大人気となったのが、アニメ「けいおん!」のコスチュームだ。高校の軽音楽部を舞台にした作品で、コスチュームはもちろん学生服である。

 「今年の春に放送されたアニメなんですが、キャラクターソングがオリコンを席巻したりと、かなり話題になりました。夏はこの作品のコスチュームが一番売れてましたね。」と田原さん。アニメのコスチュームは作品の人気と連動しており、作品の人気がほぼイコール商品の人気となる。

 「もちろん服単体でのかわいさで売れることもありますが、『けいおん!』に関してはまちがいなく一番の話題作ですし、その話題作の商品をいちはやく商品化できたことが良かったのだと思います。作品の人気が出たことで、市場が広がったということですね。」(田原さん)

 アニメのコスチュームの場合、「○○風」と題して版権を取らずに制作して販売する業者も存在するが、コスパの商品はすべて版権を取った上で制作・販売する。当然ながら商品化までには数多くの手続きがあり、時間もかかる。

 「企画申請が通ってサンプルを作って、版権元様からOKをいただいて受注開始して、製造して店頭に並ぶまでには、早くて3カ月はかかります。ところがアニメというのはワンクール、つまり3カ月でひと区切りとなるものが多いので、人気が出てから動いたのでは、商品化したころにはすでに作品の放送が終わってしまいます。そうなるとお客さまが一番盛り上がっている時期に商品がないという事態になるんですね。」

 「そこで弊社の場合、版権元様から企画段階で事前に情報をいただくなどして、早めに商品化のために動いています。コスパの創業は1996年ですが、当時から版権元様やメーカー様とはお付き合いがあり、事前に企画進行をさせて頂くことでプロモーションや各種イベントでご活用いただけるなど、おたがいに信頼関係ができています。今も、一緒に協力してやっていただける版権元様はどんどん増えつつあります。」

 「ただし、やはりアニメが始まったその月にリリースするというのはなかなか難しいですね。放送が始まって少ししてから――だいたい1カ月後、ちょうどお客さまも番組を認識したころに商品を発売したり、予約の受付を開始したりと、そのような状況を作るのがベストだと考えています。」(田原さん)

アニメ「けいおん!」のコスチュームコスチュームのほかに関連グッズも取り扱っている



新作アニメの情報を事前に入手して早めに商品化

店舗での接客によってユーザーのニーズをリサーチ

 事前に情報を入手することで、新作のコスチュームをいちはやくリリースしているコスパだが、それだけにどんな作品がヒットするのかを事前に見極めることが重要となってくる。

 「どんなアニメが受けるのかというリサーチは常に行っています。たとえばマンガ原作の作品であれば、事前にマンガを読んで、その作品の人気が出そうなポイントや、“萌える”ポイントはどこなのかを掘り下げます。単に『キャラクターが着ている服を作ればいいんでしょ』で終わらせるのではなく、ファンの方が本当に欲しがっているもの、ファンの心の琴線に触れるものを作らなければいけないと考えています。」

 「私どものお客さまはマニアの方が多いですから、売る側としてもユーザーの心を忘れないように、マニアと同じ感覚で商品を作らないと、すぐに見向きもされなくなってしまいます。やはり『この作品ならこのグッズを作らないとダメだよね』といったところを押さえて、『さすがコスパはわかっているな』と評価していただけるとうれしいですね。」

 「残念ながら安直に作られているメーカーもたくさんありますが、そういう会社の商品はなかなか売れないですね。私どもはメーカーであるとともに、グループ会社で販売も行っているので、常にお客さまの声をリサーチできます。たとえば今までになかった新しい商品を提案する場合でも、販売の現場から聞こえてきたユーザーの意見が、製造している人間にきちんと届くという強みがあります。」(田原さん)

 常にユーザーからの声に耳を傾けて、その意見を商品作りに活かしているというコスパ。そのリサーチ方法はどのようなものなのだろうか。

 「インターネット通販では問い合わせメールを入念にチェックしていますし、店頭であればお客さまとの会話の中から、できるだけ本音のご意見を引き出せるように心がけています。」

 「通販でも実店舗でも、お客さまとのコミュニケーションを深めるためには、やはり作品を知っている必要があります。通販スタッフや店頭スタッフも、まずはさまざまなアニメ作品を観て、その上でお客さまに提案して、会話の中で『こういうものが欲しい』とか『こういうデザインは良いですね』といった意見を細かく拾い上げて傾向を読み取り、それを企画会議などで『こういう意見があった』とフィードバックしていきます。」(田原さん)



マニアの心を忘れないスタッフが集まった会社

Webサイト上でイベントの告知なども行われる

 ユーザーの声をリサーチする場としては、ほかに「コミケ(コミックマーケット)」をはじめとしたイベントがある。コスパはイベントへの出店も積極的に行っており、その際は企画開発スタッフも総出で物販を手伝うそうだ。

 「イベントに参加すると、デザイナーが直にお客さまの反応を見ることできます。自分が苦労してデザインしたコスチュームをお客さまが喜んで着ている姿を見るというのは、パワーにもなりますし、お客さまの生の声を聞ける重要な機会でもあります。」

 もちろんイベントへの参加は仕事としてだけではなく、スタッフ自身の楽しみでもある。コスパはアニメやゲームを大好きな人が集まっている会社なのだ。

 「新卒で入社する方は、キャラクター作りや物作りが好きだというだけでなく、なによりもコスパのユーザーだった人が多いですね。店でコスチュームやグッズをよく買っていて、コスパを知っていて、その上で『私も商品作りに携わりたい』ということで入社を希望する人が多いです。」

 「デザイナーの場合は、アマチュアで服を作っていたという人もいますし、ふつうの服のデザインをしていて、コスパで仕事をしているうちに、アニメやゲームに目覚めてしまったという人もいますね。なにしろ会社の中はアニメやゲームの雑誌がたくさんありますから。『最初はこんな人じゃなかったのに!』とみんなから言われたりと、コスパに入ったことで良い意味で一皮も二皮もむけてしまった人は多いです(笑)。」

 「『好きだからがんばれる』というエネルギーで仕事の厳しさを乗り越えていこうと考えている人が多いし、そういう思いが商品に滲み出るものだと思います。やはり『どうでもいい』と思っている人が作るデザインは魅力的なものにはならないし、そこは大事だと思いますね。」

 「通販や実店舗のスタッフも同じで、アニメやゲームを好きな人たちが『この作品が好きだから知ってほしい』という気持ちでディスプレイしたり、Webサイトを作ったりすることで、お客さまの心に響くのだと思います。」

 「ただ、マニアの気持ちを持ち続けるのも大切ですが、一方では冷静に仕事に取り組むことも必要です。ものすごく熱い心を持ちながらも、その商品が本当にお客さまから求められているのかを判断できる人間でないと、ひとりよがりで自己満足な商品になってしまいますからね。」(田原さん)

 マニアの心を大切にしつつも売れる商品作りを追求する、その絶妙なバランスを取りながらコスパは成長してきた。後編では、商品作りへのこだわりやコスチューム以外の商品、コスチュームのオーダーメイド製作などについて紹介しよう。


関連情報
2009/9/17 11:00  
碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース・コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。