「けいおん!」の制服や「ガンダム」ジーンズに大注目!
コスパティオ(後編)


“本物”を作るために品質を徹底的に追求

 マニアの心を忘れない商品作りを心がけているコスパだが、その姿勢は商品自体のクオリティの高さにも表れている。上質な生地を使ったり、縫製の確かさや美しさを追求したりと、品質にはかなりこだわっている。

 「Tシャツ1枚にしても、もっと安いボディ(本体)を使えば価格も安く作れるのでしょうが、たとえば好きな作品のTシャツを1シーズンで捨てるなんて嫌じゃないですか。となると、やはり厚めの丈夫なボディを使って、プリントも1年くらいで割れてしまうようなものではなくて、きちんと手入れすれば5年でも10年でも着られるような商品を提供する必要があります。私自身、弊社の商品で10年以上着ているTシャツもありますよ。」

細部までこだわった作りボタンのような小物まで商品化

 「コスチュームに関して言えば、レプリカを作るというよりも“本物”を作る、2Dの作品を3Dに置き換えたらどうなるのかという考え方で作ります。たとえば、『けいおん!』のように学校の制服を作るとしたら、『この生地は制服としてありえるのだろうか』ということをよく考えます。縫製工場も学生服を縫っている工場に頼みますね。やはり、そういう工場のほうが得意ですから。」

 「『本当にその商品が実在したらどうなるのか』を考えて作るので、もし微妙な色合いだったら生地を染めるところから始めますし、版権元様に監修していただく場合などは、細かい部分について5回でも6回でもやり直しをしながら、細部の出来を追求していきます。たとえばチェックのスカートを作る場合でも、『ゲーム画面で見る生地のパターンがそれとは違う』のであれば、生地の“織り”から始めるんですね。」

 「いいかげんな商品を作ってしまうと、そのコスチュームはファンにとって“違うもの”になってしまいます。お客さまのイメージ以上のものを作り上げないと、納得してはいただけません。そのためにも、われわれの持っている技術をギリギリまで引っ張り出して投入して、版権元様の持っているこだわりを反映させて作り上げることが大切になります。」(田原さん)



パーティーグッズの「トラントリップ」で手軽にコスプレ

 コスパは海外の工場のラインも持っているが、国内工場を使うことが圧倒的に多いそうだ。

 「海外だからといって品質が落ちるわけではないのですが、縫製工場と細かいやりとりをする必要があるので、言葉の問題でチェックがかからない可能性があるんです。だから品質にこだわった『コスパティオ』ブランドの製品については、どうしても国内の工場で作ることが多くなります。どこも長く付き合っている縫製工場さんばかりで、おたがいに無茶なことを言い合いながら作り上げていきます。」

 「現在の品質を維持しようと思うと、コストはどうしても高くなってしまいます。たとえば学生ボタン1つでも、もしそのデザイン画があるのであれば、本物はそのデザインなんだから再現をします。さすがに無茶なものもあることはありますが、基本的に再現可能な部分はギリギリまで突き詰めることにしています。だから弊社は品質の面では一番高いと自負していますし、実際にそういう評価もいただいてます。」

 ちなみにコスパはクオリティにこだわったブランド「コスパティオ」のほかに、パーティーグッズを扱う「トラントリップ」というブランドも持っている。こちらは海外の工場も使って安価に提供しているそうだ。

 「トラントリップについても、海外で生産しているからといって“安かろう悪かろう”かというと、そうでもなくて、『安い中でもこだわれるところはこだわろう』という姿勢でやっています。同価格帯のコスチュームの中では、ハイクオリティを保てていると思いますよ。」(田原さん)

「トラントリップ」のトップページ最近はオリジナルのウィッグも発売した



マニアによってコスプレの楽しみ方はいろいろ

 品質の高さに定評のあるコスパだが、もちろんユーザーからのクレームがまったく無いわけではない。ときにはマニアならではの要望を受けることもある。

 「店内に飾ってある服だとだれかが触っているかもしれないので、まだだれも触っていない完全な美品が欲しい、というお客さまもいらっしゃいます。私たちもアニメやゲームが好きなので、そういう方の気持ちもわかるんですよ。そのようなマニアのこだわりには、できるだけ応えたいと思っていますね。」(田原さん)

 同じコスチュームを買うという行為にしても、どのような使い方をするのかは人によって違う。マニアの楽しみ方は千差万別だ。

 「たとえば、男性が好きな女性キャラクターが着ているコスチュームを買う場合に、自分は着ないけどキャラクターの設定はMサイズになっているので、Mサイズのコスチュームを買って家に飾るだけという方もいらっしゃいますし、ご自分で着用できるサイズを買う方もいらっしゃいます。もちろん女性の方も購入されますので、楽しみ方はいろいろですね。」

 「コレクターズ・アイテムとして見れば、どれだけ本物に近付けられるかがポイントになりますし、コスチュームとして着るのであれば、着やすさや洗濯できるかどうかが大切になります。実はコスパの商品は、ほとんどすべてクリーニングが可能なんですよ。全部に洗濯表示が付いていますので、クリーニング店に持っていけばきちんとケアできます。見栄えのためにクリーニングに向かない商品を作ってしまうと、あとで困りますからね。そこはずっとこだわり続けている点です。」(田原さん)



ガンダムが3年間はいていたようなジーンズ

 コスプレショップとしての王道を追求している「コスパティオ」だが、一方で社名を冠した「コスパ」ブランドでは、ユニークなアパレル商品やキャラクターグッズを提供している。中でも注目なのが「機動戦士ガンダム RX-78専用ジーンズ」だ。

 この商品のコンセプトは、なんと「ガンダムが3年間はいていたようなジーンズ」。フロントポケットおよびヒップポケットには、ガンダムの腰に付いている四角いパーツを微妙なスレ加減で再現し、プラモデルで定番の「CAUTION」マークのプリントが入っている。さらにガンダムの型番を示す「78」もマーキングしてある。

 メインステッチは白、カンヌキ部分は赤にしてガンダムカラーを再現。さらに膝上から足首にかけてのガンダムのパーツを、デニムのスレの色落ちで表現してある。一見するとふつうのジーンズだが、細かい部分を見るとガンダムファンが喜びそうなデザインが随所に施されている商品で、大人でもはけるこだわりの逸品だ。

 「ガンダムのジーンズは、岡山県にあるジーンズの老舗メーカーにお願いして、職人の技を駆使して作りました。このようなアパレル商品というのは、コスパが創業して間もないころ、『新世紀エヴァンゲリオン』の版権で作った、使徒の『サキエルTシャツ』が最初だと思います。」

 「当時は大人向けのアニメTシャツはほとんど市場に無くて、売れるかどうかというよりも、『好きだから作ってしまった』という感じですね。『エヴァのTシャツが欲しいから版権が取りたいな』というところからスタートして、『こんなTシャツがあったら買いたい!』という思いを具現化したと。そうしてエヴァの商品を作ったあとで、今度はガンダムを始める機会があったわけです。」(田原さん)

機動戦士ガンダム RX-78専用ジーンズ根強い人気を誇るエヴァ関連Tシャツ

 今でこそアニメ関連のアパレル商品はファッションとして認知されるようになったが、コスパはそのような流れを作った草分け的な存在なのだ。

 このほか過去にヒットしたアパレル商品というと、ガンダムに登場するモビルスーツ「ドム」のフルジップパーカーが挙げられる。ジップを全部締めるとドムになるというユニークなデザインで、残念ながら今は売り切れとなってしまったが、リリース当時は大人気だったという。

 「ドムのパーカーは提案型を通り越して“ネタ”ですね。品薄のあまりに、サイズが合わなくても買う人がいたりと、かなり売れました。」(田原さん)

 コスパの企画会議には、販売や広報、経理など開発部門以外のスタッフが参加して『こういう商品を作りたい』と意見を出すことが可能だという。ドムのパーカーのようなユニークな商品が生まれるのも、アニメやゲームが好きなスタッフが自由に意見を出し合える土壌があるからこそだ。



衣装のオーダーメイドにも対応可能

 コスパでは、既製品ではなく衣装のオーダーメイドも受け付けている。衣装製作代行はコスパの根幹とも言える事業であり、版権元との関係も、この事業を通じて深めていったという経緯がある。

 「版権元様のキャンペーンなどで使う衣装の製作については、ありがたいことに引く手あまたで、毎月のようにいろいろなイベントで弊社の制作した衣装をご利用いただいています。もちろん個人の方からの注文も大歓迎です。それこそテレビなどで使われるような衣装を手がけるデザイナーが、お客さまの希望通りの衣装を作りますので、品質は保障します。」(田原さん)

 実は田原さん自身も、もともとは衣装製作のデザイナーだった。オーダーメイドの作品は印象深いものばかりで、中には衣装ではなく着ぐるみのようなものを作る場合もある。かつてアニメロボット「天元突破グレンラガン」の着ぐるみの注文を受けたときは、身長2.5mの巨大な作品となったそうだ。顔にCCDカメラを付けて、中に入った人はそれで視界を確保するという懲った作りにした。

 「オーダーメイドでは、お客さま1人1人のこだわりを引き出して、それを具現化することが大切です。専門スタッフがお客さまの希望や予算を聞いた上で、しっかりと対応します。」(田原さん)

 オーダーメイドは店頭でのみの受け付けとなるが、通販サイトにもコスパのこのようなこだわりはしっかり反映されている。

 「商品のカタログ的な三面写真だけではなく、コスチュームを着たらどんな感じになるのか、というイメージを伝えるためにモデルさんの着用写真を掲載したり、商品によっては細部を拡大して見せたりと、こだわっている部分を積極的に見せるようにしています。店頭ならお客さまに言葉で直接伝えられますが、Webだと画面の情報がすべてなので、店頭のPOP以上に丁寧にアピールするようにしています。」

 「サイズ違いが起きた場合は、使用前なら交換することも可能です。コスチュームはデザイン重視なので、デザイン上タイトであれば、同じサイズでも仕上がり寸法が小さくなってしまう場合もあります。そうなると足が入らなかったり、着たときに体型にシルエットがそぐわなかったりと、いろいろな問題が出てきます。そのような場合も基本的には返品対応します。」(田原さん)

 商品そのものの品質だけでなく、売り方にもこだわっているコスパ。ディープなマニアだけでなく、アニメやゲームを気軽に楽しみたいライトなファンも、ぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか?

Webに掲載されているオーダーメイドの製作例

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2009/9/18 11:00  
碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース・コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。