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第370回:インターネット経由でアクセス可能なNAS
フリービット「ServersMan@CAS」


 フリービットの「ServersMan@CAS」は、ローカルでの利用に加えて、インターネット経由でのファイル共有が可能なストレージだ。今回は、フリービットが「CAS(Cloud Attached Server)」と名付けた本製品の実力を検証してみよう。

「ServersMan」をNASに搭載

「ServersMan@CAS」を搭載したプラネックスの「MZK-NAS01SGS」

 「ServersMan@CAS」は、フリービットがさまざまな機器向けに展開している「ServersMan」のテクノロジーをNASに搭載した製品だ。「ServersMan」は、あらゆる機器をサーバー化することができるソリューションで、すでにiPhoneやWindows Mobile、本コラムでも紹介した小型Webビデオカメラ「ServersMan Scooop by EXEMODE」などに搭載されている。

 その仕組みを簡単に説明すると、機器に割り当てたIPv6のアドレスを利用して通常のインターネットのIPv4ネットワーク上にVPNを構築する。この際、「Emotion Link」というフリービットのVPNサービスを利用している。そして、「ServersMan SuperNode」と呼ばれるゲートウェイを介して、外出先のPCからのIPv4通信と「ServersMan」が動作するIPv6の機器を中継するようになっている。

 フリービットでは、このネットワークを「クラウド」と呼んでおり、ここに接続するストレージであることから「Cloud Attached Server」、すなわち「CAS」と名付けられているわけだ。もちろん、製品を利用する上で、IPv6などを意識する必要はまったくなく、ユーザーは機器上で「ServersMan」を動作させるだけで手軽に外出先からのアクセスができる。

 これまでのiPhoneやビデオカメラへの搭載は、どちらかというと手軽に情報発信をしたい個人ユーザーをターゲットとしていたが、今回の「ServersMan@CAS」ではそのプラットフォームがNASとなったことで、中小企業での拠点間接やSOHOでのリモートアクセスなど、「ServersMan」のテクノロジーを法人向けにも広げたことになる。

ハードウェアはプラネックスが提供

 それでは、実際の製品を見ていこう。「ServersMan@CAS」は前述したように、法人向けにも展開されており、初期費用+月額料金という形態でも提供されているのだが、今回利用したのは個人向けモデルとしてオンライン販売されている1TB容量モデルの「MZK-NAS01SGS」で、価格は2万6040円だ。

 個人向けには加えて、1TB容量のHDDを2台搭載する2TBモデル「MZK-NAS02SGS」も販売されている(価格は4万1790円)。いずれのモデルもハードウェアの購入費用のみで「ServersMan@CAS」の利用が可能となっており、月額費用は発生しない。

 「ServersMan」での接続先URLとして独自ドメインを利用したい場合は、フリービットグループのISP「ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)」が提供する独自ドメインサービス「UbicName」の契約が必要で、ドメイン取得費用は1800円からで、月額料金は無料。なお、DTI会員以外が「UbicName」を利用する場合には、月額210円の「Ubicプラン」に加入する必要がある。ただし、本製品の購入者には「Ubicプラン」を1年間無料で利用できる特典が付与されている。

 個人向けサービスの場合、独自ドメインを利用しなければサービスに対する課金は基本的にされないので、感覚としては「ServersMan」対応のNASを買うという感覚に近い印象だ。


1TBモデル「MZK-NAS01SGS」の前面 側面

背面にはHDDベイ、LANポート×2、USBポートを搭載 背面のベイを引き出すとHDDが登場する。今回のモデルではWestern Digital製のHDDが搭載されていた

 ハードウェアは、プラネックスコミュニケーションズが開発しており、個人向けモデルの販売も同社が担当している。製品自体は、プラネックスが2008年1月に発表した「MZK-NAS01/02SGシリーズ」と共通のプラットフォームを利用している。

 このうち、2ドライブ構成のベースモデルである「MZK-NAS02SG」に関しては、発売当初に個人的に購入した製品が手元にあるのだが、底面のファンの音が耳につく印象で、最近の静音性に配慮したNASに比べると、若干動作音が大きい印象があった。これに対して、今回購入した1ドライブ構成の「MZK-NAS01SGS」は、ファンの音は聞こえるものの、極端にうるさいという印象はない。

 とは言え、最近のNASは2.5インチHDDを採用しファンレスにするなど、静音性はかなり高いレベルにあるため、それらと比べると静音性に関してはじゃっかん不利だ。


底面にファンを搭載。静かな部屋だとファンの音がじゃっかん気になる 製品情報サイトなどに掲載される外観は付属のステッカーを貼り付けたもの。個人的には貼らない方がシンプルで良いと感じた

 一方、パフォーマンスに関しては、実用上は問題ないといったレベルだ。共有フォルダをネットワークドライブとして接続後、「Crystarl Disk Mark 2.2」を使って速度をテストしたのが以下の画面だ。


 シーケンシャルリードで20MB/sを超えたものの、他の値は20MB/s以下となっており、1000BASE-T対応のNASとしては実用上は問題ないものの、決して高くない値だ。普通にファイルを読み書きする分には問題はないのだが、他社製品などと比べると不利だ。機能的にはBitTorrentやiTunesサーバー機能、DLNAサーバー機能と充実しているが、ハードウェアに関してはベースモデルが2008年1月に発表された製品ということもあって、一世代前の製品という印象が否めないところだ。

メールアドレスを登録すればすぐに使える

 続いて、「ServersMan」の機能について見ていこう。まずは、サインアップして「ServersMan」を有効化する。Webブラウザを使って設定画面にアクセス後、メールアドレスを入力すると、セットアップ用の「サインアップキー」がメールで送られてくる。このキーを設定画面に入力し、パスワードを設定する。

 このメールアドレスとパスワードがサービス利用時のIDとパスワードになるので、再び設定画面を開いて、メールアドレスとパスワード、ノード名を入力して「ServersMan」を有効にすれば設定が完了となる。これで「http://serversman.net/ノード名」として、インターネット上から自宅に設置した「MZK-NAS01SGS」へのアクセスが可能となるわけだ。


メールアドレスを入力してサインアップ開始 メールで送られてきたキーを入力後、ノード名などを設定してサービスを有効にする。メールアドレスがIDとなる

 実際に外出先からアクセスする方法は大きく3種類に分けられる。1つは「ServersMan」のサイト経由でアクセスする方法だ。この場合は、外出先のPCから「http://serversman.com」にアクセス後、サインアップ時に登録したメールアドレスとパスワードを入力すると、Webブラウザベースの「FileManager」が表示され、ここから共有フォルダにアクセスできる。


「ServersMan」のサイトからログインする方法。メールアドレスがIDとなる 個人用の「MyStorage」と共有用の「Public_html/Share」の両方にアクセス可能

 2番目は、直接URLを指定する方法だ。「http://serversman.net/ノード名/Share」とノード名に続けて共有フォルダの名前を指定すると、Webブラウザの認証ダイアログが表示される。ここで、1番目の方法と同様にメールアドレスとパスワードでログインすれば「FileManager」を利用できる。

 最後の方法はWebDAVを利用する方法だが、Windows Vistaでは更新プログラムを別途インストールする必要があるなど、Windows XP以外ではうまくつながらないケースもあり、少々手間がかかる。エクスプローラからシームレスに扱える魅力はあるが、手軽さという点ではWebブラウザから「FileManager」を使った方が良さそうだ。

 なお、共有フォルダは標準で「MyStorage」と「Share」の2つが作成済みとなっている。「MyStorage」は自分用のファイルを保管しておく場所で、「Share」は他のユーザーと共有可能な領域だ。

 このうち、「Share」に関しては「ServersMan」の共有設定でユーザーを登録しておくことで、第三者からのアクセスを受け付けることもできる。例えば、「Guestxxx」などのアカウントを登録しおけば、「http://serversman.net/ノード名/Share」にアクセスし、このアカウントを入力すれば、外部の人も共有フォルダにアクセスできる。社外とのデータのやり取りなどに便利だろう。


共有フォルダを直接指定してアクセス。ポップアップ画面でユーザー名とパスワードを指定してログイン ServersManにアカウントを登録すれば外部の人とのファイル共有も可能

アカウント管理はNASとは別

ローカルのアカウントはServersManとは別に管理される。しっかり理解しておかないと、ログインできないなどのトラブルになりやすい

 ただし、少々面倒なのは、前述したように追加した「ServersMan」のアカウントはローカルのアカウント、つまりNASの共有フォルダにアクセスするためのアカウントとは別に管理されているという点だ。このため、ローカルにアカウントが登録されていたとしても、そのアカウントでは外出先から「ServersMan」にアクセスできないことになる。

 これはデメリットでもあり、メリットでもあるだろう。そもそも最初に利用するユーザーに違いがわかりにくい上、ユーザーの二重管理になるため、パスワードの整合性がとれなくなったり、たくさんのアカウントを管理しなければならなくなったときに混乱してしまう。これがデメリットだ。

 一方、メリットはというと、アクセス権が切り離されているため、外部のユーザーに「ServersMan」のアカウントを与えていたとしても、それでローカルのアクセス権が設定されたNASの共有フォルダにアクセスすることはできない点にある。セキュリティを考慮すれば、外部に公開するフォルダとアカウントが個別に管理されている方が安心だろう。こういった点は、他のNASのリモートアクセス機能とは異なる特徴とも言える。

物足りないのはわかりやすさ

 以上、「ServersMan@CAS」を搭載したプラネックスの「MZK-NAS01SGS」を実際に使ってみたが、IPv6を使うなど非常に凝った仕組みの製品となっており、自宅や社内のリソースを手軽にどこからでも利用できる利便性の高さは評価できる製品だ。

 しかしながら、その一方で、どうしてもわかりやすさに欠ける印象がある。仕組みが凝りすぎているせいもあるかもしれないが、初期セットアップはまだ良いとして、複数あるアクセスの方法、アカウントの管理方法など、世界観が独特で理解するまでに時間がかかる。

 これまでにNASを使っていたり、リモートアクセスやWebDAVなどの機能を使った経験があるユーザーであれば何とかなるかもしれないが、初心者には少々難易度の高い製品だ。現時点でオンライン販売のみという点からも、まだ実験的な意味合いの強い製品であることは理解できるのだが、ハードウェアの改善も含め、あらゆる面でもう一段の改善が望まれる製品と言えるだろう。


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2009/12/8 06:00  

清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ

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