高校野球は地方大会からチェック!
巨大データベースでもっと楽しむ「asahi.com 高校野球コーナー」


朝日新聞社 デジタルメディア本部・編成セクション 高校野球担当デスク 夏目和幸氏

 今年で第91回となる夏の全国高等学校野球選手権大会。この時期は白球がバットに当たる甲高い金属音を思い出してソワソワする人も多いと思うが、そんな人に欠かせないWebサイトがasahi.comの高校野球コーナー(http://www2.asahi.com/koshien/)だ。

 夏の高校野球を主催する朝日新聞社が、自社のニュースサイト「asahi.com」に高校野球の速報を新設したのは1996年、もう13年前のことになる。以来、毎年進化を続けて、いまや高校野球関連のデータベースとしては突出した存在となっている。

 今回は全国大会の情報配信の舞台裏を探るべく、朝日新聞社のデジタルメディア本部・編成セクションの高校野球担当デスク夏目和幸氏に話をうかがった。

地方大会の試合結果を網羅した巨大データベース

 意外と思われるかもしれないが、実は予選となる地方大会はもうすでに始まっている。北海道や沖縄などの一部地域では6月20日に地方大会が開幕しており、ほかの地域でも梅雨が明ける7月初旬から中旬にかけて、次々と開幕となる。

 「地方大会のピークは、だいたい7月10日か11日ぐらいですね。7月中旬には全国で1日あたり200から300試合行われて、ピーク時は1日に400試合超にもなります。」(夏目氏)

 asahi.comでは、これら、膨大な数にのぼる地方大会の試合結果をすべてWeb上に掲載している。試合を取材するのは、全国に散らばる朝日新聞の記者だ。地方大会の期間中は、各地方総局でかなりの人数の記者が高校野球の担当に回り、取材やスコアを付けて回る。アルバイトなど臨時のスタッフも動員して万全の体制を整える。

asahi.com高校野球コーナー。朝日新聞主催の全国高校野球選手権大会は今年で第91回を迎える。3年前に大幅に強化した際に、過去の記録を古い新聞から収集するなどしてデータ化を行ったというお話を伺った会議スペースにも高校野球のポスターが。ポスターの絵とコピーは、毎年高校生を対象に公募を行ない、選出される

 「全国で同時多発的に行われる地方大会の結果が、東京本社のデジタルメディア本部に集中して送られてくるわけです。もちろん一定のフォーマットに従って、現地や地方総局からサーバにアクセスしてデータを入力してもらうわけですが、試合数が多いためにこの確認だけでも大変な作業となります。」(夏目氏)

 今年からは、地方大会のイニング速報だけでなく、試合ごとの選手別打撃・投手成績も見られるようになった。ただし試合数が多すぎるためにリアルタイムの速報は難しく、試合日の夜中に更新される。

 当然ながらスタッフは夜遅くまで残っての作業となる。東京本社では大学生のアルバイトを20名ほど動員して、試合経過のデータ入力状況や、高野連から発表される公式スコアとの整合性をチェックしている。社員スタッフは夏目氏を含めて3~5人だが、高校野球開催中は「休みなし」だという。

 「ページビューも、全国大会のときより地方大会の時期のほうが多いです。昨年は試合数がピークになった7月中旬、多くのアクセスがありました。読者のみなさんが一番気になるのは、やはり母校とか、地元の地区代表校の結果なんです。地方から上京している人は郷里の新聞は読めないわけですから、どこからでも読めるインターネットは重宝されているのだと思います。そういう意味では、高校野球はネットとの親和性が非常に高いコンテンツと言えますね。」(夏目氏)

 たとえ地方大会の1回戦で敗退したとしても試合結果のデータは残る。膨大な数の試合をすべて網羅している点がasahi.comのスゴいところなのだ。特定の学校のページだけをチェックするだけでは気付かないかもしれないが、全体を見渡すと実はかなり巨大なデータベースなのである。

地方大会の試合結果出場校一覧


4000校もの情報を収録した学校検索

 地方大会の試合結果とともに人気なのが「学校検索」という機能だ。これは参加する高校の過去のデータを検索できるデータベースで、選手権および選抜の出場回数および優勝回数、プロフィール、最新の試合結果、全国大会の戦績、全国大会の試合結果一覧などさまざまな情報を確認できる。

 参加する高校の数は、1つの県で数十校、多いところは100校を超える。その数は合計で4,000校以上にものぼり、地方大会の試合結果と同様、情報量は膨大だ。

 「学校検索は、紙メディアでの提供が難しいネット独自のコンテンツとして好評です。各学校の戦績は、過去の朝日新聞紙面なども参考して、有効に活用しています。」(夏目氏)

 高校野球関連のニュース記事をテーマ別に分けた「テーマ別記事」というコーナーもある。「この夏の主役たち」「憧れの舞台を目指して」「球児を支える仲間たち」といったテーマに加えて、今年は「誓いを胸に」というテーマも加わった。

 「記事の中には、読んでいて目頭が熱くなってしまうようなものもあって、そういった記事を広く伝えたいと思って作ったのが『誓いを胸に』というコーナーです。選手の『やるぞ!』といった意気込みだけでなく、胸の内に秘めた誓いとか、家族や友人への誓いの言葉など、いろいろですね。」(夏目氏)

 Webならではのコンテンツとしてもう1つ見逃せないのが、読者からの応援メッセージだ。昨年、全国から寄せられたメッセージの数は1万5千通で、すでに今年のメッセージの掲載も始まっている。ユーザーは老若男女さまざまで、「がんばれ」「おつかれさま」といったメッセージがびっしりと書き込まれている。

 「中には中学生からのメッセージもあります。『ぼくは中学生ですが、○○高校に入って先輩たちと一緒に野球がしたいです』とか、ほのぼのとしたメッセージが来たりしますね。昨年では、思わずホロッとするようなメッセージを、逆に朝日新聞紙上に応援メッセージとして載せたという例もあります。」(夏目氏)

 投稿された応援メッセージは、チェック後に公開される。メッセージの内容をチェックするのもスタッフの大事な仕事だが、ほとんどは好意的な声ばかりだという。応援メッセージは過去のアーカイブにストックされており、昨年のメッセージも読めるようになっている。

学校検索学校別のデータ


全国大会は第1回からの歴代データを収録

 地方大会だけでなく、全国大会の情報も充実している。試合ごとに一球速報をリアルタイムで配信しているほか、ハイライト動画の配信も行っている。また、都道府県ごとに甲子園での戦績データも収録しており、「過去の戦績一覧」「勝利数ランキング」「出場回数ランキング」の3つのテーマにおける選抜と選手権の両方のデータが見られる。

 全国大会のデータベースは、朝日新聞の記事や大会主催者が発行する年史などを元に手入力で構築されたもので、第1回大会から昨年までの歴代データを収録している。
 
 「朝日新聞社の社内では、高校野球の"無敵データベース"なんて呼んでます(笑)。とにかく扱う情報の量が膨大で運営の労力は大変ですが、それだけにアクセス数も多く、やりがいがありますね。」(夏目氏)

 過酷な仕事だけに、部内では不人気かと思いきや、意外と人気があるという高校野球コーナー。新卒の採用試験でも、朝日新聞社が夏の全国大会を主催していることを志望動機に挙げる学生は少なくないそうで、高校野球の根強い人気を改めて思い知らされる。

 このほか、ブログパーツもリリースされている。応援する都道府県を指定してからブログに貼ると、都道府県ごとに貼られた回数がカウントされてランキングが出る。どの県の応援が熱心なのかがわかって面白い。

 また、地方大会の決勝戦では各地で号外が配られるが、このPDFファイルも朝日新聞の無料会員サービス「アスパラクラブ」(http://aspara.asahi.com/)からダウンロード可能だ。

 さらに携帯ニュースサイトの「朝日・日刊スポーツ」では、全国大会の一球速報が今年から3キャリアに対応するなど、高校野球情報のデジタル配信は年々進化している。

全国大会の戦績一覧


先人たちが積み上げてきた珠玉のデータベース

 今後の課題は、「大量のデータをいかに少ない労力で効率よく運営していくか」という点に尽きるという。そのためにもシステムも含めた改良は毎年欠かせない。

 「地方大会の選手別の打撃成績などについては、大会期間の通算成績などもわかるようになると便利だと思うのですが、今はまだシステムの構築がそこまで追いついていなくて、来年度以降の課題だと考えています。」(夏目氏)

 写真についても、地区ごとにまとめるとかなりの手間になるので、現在は「地方大会フォトギャラリー」というコーナーで、テーマごとにまとめて写真を掲示している。本当は学校ごとに分けて写真が用意されていると、どんな学校なのかイメージしやすくなると思うのだが、やはりマンパワーの問題で簡単には行かないようだ。

 「まだいろいろと課題はありますが、先人たちが1つ1つ積み上げてきたデータベースが現在のasahi.comの高校野球コーナーとして形となっているわけで、これからもさらに改良を重ねていきたいと思います。」(夏目氏)

 マイナーチェンジを繰り返しながら、毎年進化し続けるasahi.comの高校野球コーナー。この夏はasahi.comで豊富なデータをチェックしながら、高校野球の醍醐味をじっくり味わってみてはいかがだろうか。

地方大会フォトギャラリー

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(碓氷 貫)
2009/6/26 11:00