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■ 日本テレコムとイー・アクセス提携発表会レポート ■

 発表会には日本テレコム社長の村上春雄氏、イー・アクセス社長の千本倖生氏のほか、9月のイー・アクセス増資に出資する投資会社カーライルとゴールドマン・サックスのマネージングディレクターも出席した。


「結婚相手は1人でいい」

日本テレコム代表取締役社長 朝倉陽保氏

 発表会ではまず日本テレコムの村上社長が、「日本テレコムではようやくODNの加入が170万を超えたところだ。ODNの場合、1回線あたりの売上高は業界内で比較的高いといわれており、そうしたユーザー層に逃げられないためには、できるだけ早くサービスの増速をしなくてはならない。しかしODNではADSLサービスを3月から始めたばかりなので、ノウハウなども含め、すでにADSLサービスをやっているところと手を組むのが一番効率的だ。日本テレコムでは、これまでなんでも自力構成でやってきたが、もうそうしたやり方では間に合わない」として、提携の背景を述べた。続けてなぜイー・アクセスかという点では、「イー・アクセスさんはDSLサービスを日本でもっとも早い時期に始めており、DSLサービスのノウハウを持っていること、また、ISPなどへの回線ホールセールの販売先をすでに30社近く持っていることなどから、イー・アクセスさんとの提携を決めた。日本テレコムでは高速光ファイバのバックボーンを持っており、お互いによい形で補い合える提携だと思う」と述べた。

 イー・アクセスの千本社長は、「イー・アクセスはDSLサービスの先駆者ではあるが、ベンチャー企業なので投資効率を第一に考えて、東京・名古屋・大阪を中心に大規模な設備投資を行なってきた。日本テレコムさんは全国規模のサービス展開を行なっているし、光ファイバのバックボーンも構築されている。お互いに補完する形になり、ネットワークインフラを利用しあうメリットは大きい。また、DSL以外では、メトロポリタンネットワーク(都市部のイーサネットによる足回り回線)は、ベンチャーであるイー・アクセスの方が身軽な分、早く手をつけているので、そちらでも協力していけるだろう」と述べ、キャリアとADSLベンチャーという、それぞれ違う得意分野を持つ提携だからこそ、相互にメリットが大きいことを強調。ほかのキャリアとの提携は、との質問には「結婚相手は1人でいい。日本テレコムさんだけ。伴侶は2人いらない」とユーモアを交えて応えた。


イー・アクセスは第三者増資で90~100億円を調達

イー・アクセス代表取締役社長 千本倖生氏

 提携と合わせて、イー・アクセスの第三者増資についても発表された。9月払い込みで、90~100億円を調達する見込み。詳細についてはまだ払い込みが確定していないため、払い込み後にあらためて発表するとしているが、日本テレコムが40億円の割当を引き受け、増資後は約15%のシェアで単独筆頭株主となる。イー・アクセスの増資は2000年2月の45億円、今年2月の50億円に続いて3回目。今回の第三者割当増資後のイー・アクセスの資本金は100億円となり、「独立系ベンチャーとしては最も資金量豊富といえるだろう」と千本社長はコメントした。

 今回初めて日本で本格的投資を行なうカーライルのマネージングディレクターの朝倉氏は「情報通信に対する市場のニーズは増大しており、いまの市場は少し悲観的になりすぎではないかという気もする」と前置きした上で、「イー・アクセスへの投資を決めたのは、マネージメントに対する評価が高かったからだ。今回日本テレコムとの提携が決まり、さらに磐石になったと考えている」と述べた。また、ADSL市場についての日米の違いについても触れ「米国に比べ日本は人口が密集しており、設備投資に対する資産効率がいい。また、日本は実際の回線(カッパーワイヤー)をNTTが引くが、米国ではサービス開始当初から2年ほどADSLベンチャーが自力で回線を引いていた。この違いは大きい」。

 日米の事情については、さらにイー・アクセス社長の千本氏が補足。「ADSL信号は距離により減衰する。このため、DSLサービスは日本やアジアなど、人口密度が高いところに向いたサービスだ。また、米国では事業基盤のしっかりしていないISPが多く、どんどん倒産した。DSL事業者はISPからの資金回収ができなくなって苦しくなる、ということがあった。これに比べ日本は、@nifty、BIGLOBE、Hi-HO、so-netなど、ISPは大手メーカーの1事業として行なわれているなど、体力のある企業がISPサービスを行なっている例が多い。この点、ISPの財務から見た健全度が日米ではまったく違う」。

 なお、カーライルの出資額は30億円弱の見込みで、増資後比率は日本テレコムに次ぐ11.3%、従来に引き続き今回も出資するゴールドマン・サックスと同じになる予定だ。2002年と噂される株式公開について千本社長は「イー・アクセス設立当初から、株式公開を目指しておりその考えは変わっていない。ただし、時期については未定」とコメントした。


Yahoo! BBの影響

 質疑応答で、Yahoo! BBサービスの影響について問われた千本社長は、「Yahoo! BBの発表から、価格が急速に下がったが、ADSL市場の活性化や普及促進という面では、歓迎すべきことだったと思う。実際当社も値下げしてから、すごい勢いで申込みが増えている。ちなみに、ADSLの価格はすでにギリギリの線まできており、米国や韓国に比べても安くなっている。ここまで急速に価格が下落したのは、世界でも例がないのではないか」と述べた。さらに今後の価格競争については「これ以上安くというのは、基本的には難しいと考えている。それよりも今後は、注文をいただいたらなるべく早く引く、というようなきちんとしたサービスをしていくことが、最大の差別化になるのではないか」と、そろそろ価格も下げ止まり、サービスの質で選択する段階に進むとの見方を示した。


□ニュースリリース(日本テレコム)
http://www.japan-telecom.co.jp/newsrelease/nr010830_c.html
□ニュースリリース(イー・アクセス)
http://www.eaccess.net/jp/info/pr010830-3.html

工藤ひろえ
2001/08/30 21:52

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