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第99回:Windows XP Service Pack2 RC1の
ブロードバンド機能をチェックする その2


 前回に引き続き、Windows XP Service Pack2 RC1の検証する。前回はICFと自動更新について解説したが、今回は強化されたワイヤレスネットワークとIEの機能を中心に話を進めていく。





標準でWPAに対応した無線LAN機能

 セキュリティの強化という観点でみると、今回のSP2では、無線LANも改善された機能の1つと言って良いだろう。SP1以前では、標準ではWEPによる暗号化しかサポートされておらず、WPAに対応するためには、別途、「Windows XP Wireless Protected Access サポート修正プログラム」をダウンロードして適用する必要があった。

 これに対して、SP2の無線LAN設定機能では、WPAが標準でサポートされるようになった。すでに多くの無線LAN機器がWPAに対応していることを考えれば、これでようやくWPAを手軽に使える環境が整ったことになる。

 また、同時にインターフェイスも一新された。以前は、「利用できるワイヤレスネットワーク」の画面にアクセスポイントのリストが文字で表示されるだけだったが、SP2ではグラフィカルなインターフェイスに変更され、各アクセスポイントの電波状況やセキュリティの設定状況(WEPのオン/オフやWPAが利用されているかどうか)も表示されるようになった。


見やすくなったユーザーインターフェイス。アクセスポイントの一覧で電波状態やセキュリティ対策の有無を確認可能。WPAにも標準で対応した

 接続の手順もわかりやすくなり、リストからアクセスポイントをダブルクリックして接続しようとすると、暗号キーの入力画面が表示され、そこにWEPキーやWPAのPSKを入力するという流れに変更されている。もちろん、従来のようにプロパティから暗号化方式や暗号キーを設定することも可能だが、こちらの方が初心者にはわかりやすいだろう。

 さらに、新たに「ワイヤレスネットワークのセットアップ」という機能も追加された。これは、無線LANの設定を手軽に行なうためのものだ。機能を実行すると、PCに登録されている無線LANの設定情報(ESS-IDや暗号キーなど)をUSBなどのフラッシュディスクに保存し、それをアクセスポイント(現状サポートするアクセスポイントはない)や別のPCに転送することで、手軽にワイヤレスネットワークの設定を適用することが可能となる。


新たに追加された「ワイヤレスネットワークのセットアップ」。フラッシュディスクを利用して、PCやアクセスポイントに簡単に設定を適用できる。ただし、筆者宅ではうまく動作しなかった

 仕組みとしては単純で、フラッシュディスクに「Autorun.inf」と設定情報(\SMRTNTKY\WSETTING.WFC)を書き込み、それが装着されたPCで自動的に起動すると適用されるというものだ。残念ながら、筆者宅の環境では正常に動作しなかったのだが(オートランがうまく動作せず、設定も適用されない)、この機能がきちんと使えるようになれば、複数台のPCでワイヤレスネットワークの設定をすることも手軽になるだろう。


設定を書き込んだフラッシュディスクの内容。オートランで設定ファイルを自動的に適用するしくみとなっている

 しかしながら、これらの機能の搭載によって、無線LANを安全に使えるようになるかというと、また話は別だ。現状、無線LANが抱えている問題点は、暗号化などのセキュリティ機能をユーザーが使わないという点にある。つまり、いくらSP2でWPAをサポートし、それを使いやすくしたとしても、ユーザーが設定しなければ何の問題も解決されないだろう。

 先日、JEITAが発表した「無線LANセキュリティに関するガイドライン」でも触れられている通り、暗号化機能が有効になっていないアクセスポイントに接続する場合は、その危険性をきちんと訴えなければならないのは明白だ(WEPの義務化は機器ベンダーのタスク)。前回紹介したセキュリティセンターでは、ユーザーにセキュリティ上の注意を与える工夫があれだけなされていたのだから、ワイヤレスネットワークでもしつこいくらいの注意をユーザーに与えてもいいのではないだろうか? このあたりは、少々、物足りない印象だ。





ポップアップブロックとアドオンの管理を搭載したIE

 このほか、SP2で機能が強化されたものとしては、Internet Explorer(IE)の存在も忘れてはならないだろう。新たにポップアップブロックの機能が追加され、アドオンの管理も楽になった。

 ポップアップブロックは、IEに組み込んで利用するツールバーなどで採用されているものと、ほぼ同等の機能だ。IEで表示したサイトで別ウィンドウがポップアップしようとすると、その表示がブロックされ、その旨が画面上部に表示される。これによって、強制的に表示される広告や簡単なブラウザクラッシャーなどに対抗できるようになったわけだ。もちろん、画面上部に表示されたメッセージをクリックすれば、ブロックされたポップアップウィンドウを表示することもでき、サイトごとに表示するかしないかを選択することも可能だ。


IEに追加されたポップアップブロック機能。標準でオンになっており、ポップアップ広告などを遮断できる

ポップアップウィンドウを検知すると、それがブロックされ、画面上部にメッセージが表示される。ウィンドウの表示、遮断などをサイトごとに設定可能

 この機能がIEに標準搭載された影響はかなり大きい。確かに、ユーザーの視点に立てば、ポップアップ広告は迷惑な存在でしかない。しかし、特に広告系のポップアップは、良くも悪くも、インターネット上のサイトを運営する収入源としての役割も持っている。ポップアップブロックによって、この広告モデルが否定されれば、中には運営自体を考え直さなければならないサイトも出てくるかもしれない。

 やりすぎた存在のポップアップ広告が排除されるのはまだいい。危惧されるのは、同様にバナー広告などまでも排除される方向に向かってしまうことだ(実際、セキュリティ対策ソフトの中にはバナー広告を排除する機能を持ったものも存在する)。このようにインターネット上の広告機能を否定する方向へと向かえば、インターネット上のサイトはやがて立ちゆかなくなる可能性も出てきてしまう。個人的には、そういった行き過ぎた対策に至らないことを祈りたいところだ。

 一方、アドオンの管理は良くできたものと言える。IEには、知らず知らずのうちにさまざまなアドオンが組み込まれていることが多いが、SP2のIEからは、これらを一覧で表示し、必要に応じて有効化、無効化することが可能となった。特定のアドオンによって、IEの安定性が失なわれるといったトラブルも回避できるようになることだろう。このほか、インターネット上のサイトからファイルをダウンロードする際のダイアログなどもセキュリティを強く意識させるデザインに変更された。


IEに組み込まれているアドオンを検知し、有効/無効を設定できる。不要なアドオンを無効にしたい場合などに便利

ファイルなどをダウンロードするときのダイアログも変更された。比較的、強い意味合いのメッセージが表示されるため、初心者などはダウンロードに躊躇する可能性もある




Windows XPは安心して使えるOSになるのか?

 以上、2回にわたってWindows XP Service Pack2プレビュープログラム(RC1)の機能を検証してみたが、全体的には、かなり完成度の高いアップデートになっていると感じられた。もちろん、SP2によって、セキュリティ対策が万全になると言い切ることはできないが、セキュリティに対するユーザーの意識を改善する1つの起爆剤にはなりそうだ。

 ただし、その一方で、SP2によって引き起こされる混乱もあると予想される。ICFによって業務アプリケーションなどが動作しなくなってしまう可能性もある。また、広告以外の目的でポップアップウィンドウを利用していたサイト(たとえばシマンテックのセキュリティチェックサイトなど)は、その表示方法を変更せざるを得なくなってしまうこともあるだろう。

 SP2の実際のリリースはまだ先で、メーカー製のPCにプリインストールされるようになるにはのは、またさらに先の夏以降になると予想されるが、それまでにいかにSP2の存在や優位性をアピールでき、企業や各サイトが対応できるかが重要なポイントになりそうだ。


関連情報

URL
  Windows XP Service Pack 2 プレビュープログラム
  http://www.microsoft.com/japan/technet/prodtechnol/winxppro/sp2preview.mspx
  関連記事:マイクロソフト、Windows XP SP2 RC1をリリース[INTERNET Watch]
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/03/30/2604.html

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2004/04/27 11:00

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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