ドラクエやスーパーマリオなど名作ゲームに注目!
「ファミコンデパート」(後編)


趣味だったレトロゲームで店をオープン

 ファミコンデパートがオープンしたのは2006年の3月のこと。それまでの佐藤さんは、イベント運営会社に勤めるサラリーマンだった。レトロゲームは佐藤さんにとってはまったくの趣味で、開業当時はこれで商売になるという見通しはあまり持っていなかった。

 「中学生までは親の教育が厳しくて、あまりゲームはできませんでした。その反動のためか、『ゲームがやりたい!』という思いをすごく持っていて、大学生になってから一気にのめり込みましたね。」(佐藤さん)

 社会人になってからもレトロゲームへの情熱は冷めることなく、ショップをオープンしたのもその延長だった。

 「最初は自分の部屋でやっていました。そのころは会社を辞めて、書店でアルバイトをしながら通販サイトを運営していたんです。正直いって、最初はお小遣い稼ぎになればいいな、というくらいの気持ちしかありませんでしたね。でも、3ヶ月後くらいにはすぐに売上が伸びてきて、『これは少し本腰を入れたほうがいいかな』ということで本業にしました。」(佐藤さん)

 最初のころは、あちこちの古物店に声をかけてゲームソフトを買い集めた。

 「レトロゲームというと、ふつうの店では不良在庫として扱われるほど売れない商材なんです。それでも買い取りの希望者は来るので、店としては困ってしまう。そういう店にお願いして譲ってもらいました。」(佐藤さん)

 もともと佐藤さん個人がファミコンゲームには目がないので、同じようにレトロゲームを買い求める客との会話は弾んだ。カセットの品質にもきめ細かく気を配る佐藤さんの姿勢も評価されて、少しずつ人気が高まっていった。

2万点の在庫を擁するファーストドアの配送拠点オフィスには貴重なソフトがストックされている

品質に徹底的にこだわることでマニアの要求に対応

 佐藤さんが仕事の拠点としてオフィスを構えたのは2007年の4月。スタッフが増えるに従って、売上も順調に向上していった。ただ、商売の規模が大きくなるにつれて次第に問題も出てきた。

 「実際に本業として真剣に取り組むと、キズがあったり、ゲーム内容がお客さまの思っていたものと違うものだったりと、細かいご指摘をいただくことがよくあります。そのような事態は最初は想像もしていなかったので、オープン当初は本当に胃が痛くなりましたね。しかし、逆にそこでご満足いただけるようなサービスを提供すると喜ばれるものです。」

 「最初に趣味の延長でやっていたころは、レトロゲームが好きな者同士ということで、お客さまにもつい友だち感覚でお付き合いしてしまうこともありました。でも、そのような甘い考えではいけないのだということに気付きました。」(佐藤さん)

 スタッフが増えつつあった一時期は、端子クリーニングなどの品質管理が甘くなっていたこともあったが、現在は作業行程をしっかり管理したり、商品を出荷する際には在庫の中でもっともきれいなものを抜くようにしたりと、ノウハウを確立させた。現状では、品質面でのクレームはかなり少なくなっているという。

 今年の7月には倉庫も構えて、オフィスも再び移転して新たなスタートを切った。趣味を仕事にしてしまうと、純粋に楽しめなくなり、情熱が薄れてしまう人も多いが、佐藤さんのファミコン好きはまったく衰えていないそうだ。

 「レトロゲームの魅力は、単純なので複雑なことを考えなくて済むところだと思います。遊んでいると時間を忘れてしまう、没頭できる楽しさを味わえるのがポイントですね。あとは昔に戻れるところ。遊びながら、昔一緒に遊んだ友だちのことを、ふと思い出したりできます。そういう点も魅力ですね。」

 「オープン当初は、まだ自分が遊んだことのないゲームがたくさん入荷しきたので、楽しくて仕方なかったですね。それは今でも同じで、自分の中では四六時中、遊んでいるような感覚で、楽しみながら商売をしています。」(佐藤さん)

攻略ガイド本も豊富に取りそろえているファミコン関連の雑貨も買える

メンテナンス用品やゲーム機本体も販売

 「ファミコンデパート」では、バックアップ電池の単品販売も行っている。佐藤さん自身もディープなファンということで、ユーザーの気持ちはよくわかる。電池販売を始めたのは、1ユーザーとして必要なサービスだと思ったからだ。

 トップページの左メニューの下部に「ファミコンメンテナンス用品」というカテゴリがあり、ここをクリックすると商品紹介ページが表示される。「ファミコン電池交換用タブ付コイン電池」と名付けられたこの電池は、交換しやすいようにタブを付けた状態で販売している。

 交換の際は、カセットを開けたり、基盤に付いている電池を半田ごてで熱して取り外したりする必要があるが、ふつうのコイン電池と違ってタブが付いていると作業しやすく、電子工作に不慣れな人でもコツさえあれば可能だ。また、「自分で交換するのはどうしても無理」という人のために、電池交換サービスも受け付けており、これを利用すれば、他店で購入したカセットや、コレクションとして保存してあるカセットの電池を新品に替えられる。

 このほかゲームソフト以外の商品としては、メンテナンス商品として接点のクリーニング剤や、ファミコンのコントローラを使って操作する「ファミコンコントローラ操作フィギュア『ゴルフVer[マリオ]』」、「ファミコンコントローラ型名刺ケース『Iコン』」といった商品もそろえている。

 さらに、ゲーム機本体も扱っている。ファミコン本体の中古品のほか、互換機も幅広く取りそろえており、コントローラの中古品も豊富だ。オリジナルのファミコンに手を加えて、AV端子経由でテレビにダイレクトに接続できるようにした商品もある。

 佐藤さんによると、ハードの販売ではほとんど利益が出ていないそうだ。

 「本当はもう少し高い値段で出しても売れるとは思うんですが、やはり幅広い人にレトロゲームを楽しんでほしいという思いがあります。ハードと一緒にゲームも買っていただきたいので、ハードはあくまでもゲームソフトを買っていただくお客さまへのサービスのようなものと考えています。」(佐藤さん)

 互換機ではなく、オリジナルのファミコンで遊びたいという要望は、生産が終わって長い年月が経った今でも多い。互換機だと音質がオリジナルと少し異なるし、コントローラのボタンの押し具合もオリジナル機と違う場合があるからだ。

 「ファミコンデパート」ではゲーム機本体の中古を売る場合は、必要ならばオーバーホールを行ったり、ボタンゴムなどの消耗部品を交換したりしている。ソフトだけでなく、ハードの品質にもかなりこだわっているのだ。

交換しやすいタブ付きのコイン電池ゲーム機本体の中古や互換機も販売

いずれは海外のユーザーに向けた取り組みも

 ファーストドアは、「ファミコンデパート」のほかにも、ゲーム周辺機器パーツを扱う「ゲームツール」や、ラインストーンと呼ばれる人造ダイヤのショップ、色が付いたコンタクトレンズの店など、多彩な通販サイトを展開している。

 「ファミコンデパート」もこのような多角経営の中の1つではあるが、佐藤さんの趣味がもっとも色濃く出ているサイトともいえるだろう。最近では、買い取りサイト「ゲーム買取ドットコム」もオープンした。5点以上で買い取りの送料が無料になるので、ゲームやDVDを大量に持っている人は要注目だ。買い取りの振込手数料も無料で、これもマニアにはうれしい配慮といえる。

 「ファミコンというのはソフトが多くて、いろいろなジャンルのゲームがそろっていて、幅広い世代の愛好家がいらっしゃいます。そういうファミコンの文化を、ぜひ世界に向けて発信していきたいですね。当社は別事業で海外にもいくつか拠点がありますので、将来的にはそういうところに在庫を置いて、海外のお客さまにもゲームを提供していきたいと思っています。」(佐藤さん)

 趣味の延長として始めた「ファミコンデパート」は、ファミコン好きの佐藤さんならではのこだわりが詰まったサイトとして、数多くのファンに支えられながら成長してきた。今後、このサイトが世界に向けてどのようにファミコン文化を発信していくのかが注目される。

買取専門サイト「ゲーム買取ドットコム」ゲーム周辺機器の専門店「ゲームツール」




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2009/11/27 06:00  
碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース・コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。