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第5回:mixiを立ち上げたイー・マーキュリー代表取締役 笠原健治氏に聞く
[2004/11/25]
第4回:
「mixi」でソーシャルネットワークサービスを知ろう ~後編~
[2004/11/18]
第3回:
「mixi」でソーシャルネットワークサービスを知ろう ~前編~
[2004/11/11]
第2回:
ソーシャルネットワークサービスって、なにができるの?
[2004/11/04]
第1回:
ソーシャルネットワークサービスってなに?
[2004/10/28]
ソーシャルネットワークってなんだ?

~ネットで広げる友達の輪~

第5回:mixiを立ち上げたイー・マーキュリー代表取締役 笠原健治氏に聞く

 全5回の連載も今回で最終回となります。連載の締めくくりとして、日本のソーシャルネットワークサービスの先駆け、「mixi」を運営するイー・マーキュリー代表取締役 笠原健治氏のインタビューをお送りします。インタビューを通して、運営側から見たソーシャルネットワークサービスへの期待や現状をお伝えします。


国内最大級のユーザー数を誇る「mixi」

mixiについて熱く語る笠原氏。笠原氏は1997年から求人情報サイト「Find Job!」の運営を開始し、1999年には株式会社イー・マーキュリーを設立した
mixiでは検索機能が強化され、血液型や現住所、趣味などプロフィールの項目別ユーザー数を確認することができるようになった

――mixiのユーザー数が急激に増えているイメージがあるのですが、現在のユーザー数と増加率はどのようになっていますか?

笠原:ユーザー数は11月の時点で18万人を超え、1日に1,800人から2,000人が新たに参加してくださっています。よって1日の増加率は全ユーザー数の約1.01倍ですね。増加率は変化していないため、母数が大きくなるのに比例する形で、1日に増えるユーザー数も伸びている状態です。

――mixiにおける現在の男女比はどうですか?

笠原:男性が60%、女性が40%程度です。日記やコメントを書くことや友達とコミュニケーションを取るということは特に女性への需要が高いとも感じています。

たしかにmixiに参加していても女性が積極的に利用しているように見受けられます。ユーザーの年齢層はどのような状況でしょうか?

笠原:数字的に見ても、20歳代後半のユーザーが特に多いという結果が出ています。その次が20歳代前半、さらに30歳代前半と続いています。20歳代だけで約54%を占めていますね。

――20代後半のユーザーが多いということも影響しているかもしれませんが、mixiは落ち着いたモラルの高いコミュニティが形成されていると感じます。利用者が多く匿名性の高いコミュニティでよくあるような「荒れる」という要素も少ないですね。

笠原:そうですね。ユーザー数は18万人(11月15日現在)ですが、アクティブ率は非常に高いです。約70%のユーザーが2日以内にログインしており、実利用者数も多いと言えるでしょう。ページビュー数も1日1,000万ページビューを超え、1人当たりの平均ページ閲覧数は1日だけで50ページにも及びます。

 それだけ利用されているわりには、トラブルや荒れるというケースが少ないとよく言われていますね。その原因としては、実名性が高いということが挙げられます。ユーザーのトップページを閲覧することで、どのような日記を書いていて、さらには友人関係までもをすぐに確認できるということも荒れない理由と言えるでしょう。

 実際の知人から招待されることでmixiに入会するため、本名を公開していなくてもまったくの匿名ではありません。それまでの人間関係を持ち込む形で入会していますから。そうしたことから、行動に関しても心理的な抑制が掛かりやすいのではないでしょうか。本名ではないにしても、自分の仲間が周りにいて常に見られているというのも1つの要素でしょう。

 ほかに、規約で18歳未満は参加することはできないと規定していますが、この要素も少なからず影響していることでしょう。

――18歳未満は参加できないということについてはどのような理由で決まったのですか?

笠原:18歳未満の児童による出会い系サイトの利用を防止するために施行された「出会い系サイトに関する法律」に抵触する恐れがあることを考えた結果です。もちろんmixiが出会系サイトだと思ってはいないですし、そのような使い方は避けて欲しいのですが、法律的に当てはまると判断されてしまう可能性もあるからです。

――mixiは携帯電話からの更新は可能ですが、参加登録には対応していません。参加登録も含めて携帯電話のみでmixiを利用できるようにすることは考えていますか?

笠原:実際、「携帯電話に招待メールが届いたのですが、参加登録ができません」というお問い合わせもいただいています。以前は、携帯電話では日記の書き込みと写真のアップロードのみに対応していましたが、現在では日記の閲覧やコメントの書き込み、コミュニティでもトピックを立てることが可能になりました。現在は、ここまでサポートしてどのような変化があるのか、様子を見ている状態で、それほど違和感なく利用できるのであれば参加登録からサポートして携帯電話だけで完結できるようにしてもよいと考えています。

――夜になると若干サーバーが混雑しているように見受けられますが、ユーザーが利用している時間帯はどのようになっていますか?

笠原:圧倒的に22時から2時の時間帯が多いですね。その中でも23時から1時の間は抜きん出ています。基本的に朝の7時から徐々にアクセス数が伸びていき、10時から19時までは一定を保っています。その後22時までは伸びる一方で、23時になるとさらに一段階上昇し、1時を超えると下降していくという状況です。大体このようなパターンが繰り返されていますが、平日と週末では平日のほうがアクセス数が多い傾向にあります。



私財を投げ打ってでも……。mixi開始までの道のり

Friendster
http://www.friendster.com/

mixiを始めるきっかけにもなった米国のソーシャルネットワークサービス。会員数は1,300万人を超える

――なぜmixiをはじめる事になったのですか?

笠原:昨年の10月下旬に米国のFriendsterに参加している社内のプログラマーからFriendsterのようなサイトを開発したいという話を聞きました。非常に流行っているし、日本には存在していないソーシャルネットワークサービスを運営してみてはどうですかという提案を受け検討に入りました。

 当時、社内では当社で手がけている求人情報サイト「Find Job !」で求職者(ユーザー)を集めることが大変という問題意識がありました。今後さらに成長していくにはトラフィックの多いサイト、もしくは多くのユーザーを獲得できるサイトを自社で運営する必要があると認識していたんです。そこで、米国のFriendsterをはじめとしたソーシャルネットワークサービスについての調査を行なったところ、ユーザー数が増加しているサイトが非常に多いということがわかりました。さらに、まだ日本にはないコンセプトでもあり、友人同士のコミュニケーションツールとして現存しているメッセンジャーやメールと同等のツールになる可能性があると感じたことがきっかけです。

――mixiを始めるにあたって苦労した点はありましたか?

笠原氏:社内を説得するのが大変でしたね。ソーシャルネットワークサービスが今までにない概念のサービスだったこともあり、的確な説明ができなくて、「はたして流行るのか?」「なぜ友人リストを公開するのか?」など、サービス自体についての理解がなかなか得られませんでした。

 そこで、ソーシャルネットワークを運営していた米Friendsterの取締役であるTim Koogle氏の「インターネット上であらゆるサービスが出尽くしたと誰もが感じている時に、今までのルール自体を変えてしまう企業が登場する。Frendstaerもその企業の1つだ。自分がそのサービスに関わっていることが感動的だ」という言葉を持ち出して、社内を説得しました。「今から始めることはまさにこういうことなんだ」ということですね。私自身もソーシャルネットワークサービスを利用した時に、インターネットを変えることができる、インフラ的になるサービスと感じました。

――なるほど。日本ではソーシャルネットワークサービスの存在自体を知っている人もまだまだ少なかったですからね。

笠原:当時は成功すると確信するまでには到らず、リスクは非常に高いと感じていたため、1年間運営を行ない、失敗してしまった時にはmixiの費用に関して私自身で持とうと考えていました。

 mixi開始直後に友達を紹介したユーザーには、Amazonのギフト券をプレゼントするというキャンペーンを行ないました。後から考えるとあまり成功したキャンペーンではなかったとは思っているのですが。このキャンペーンについても、mixiが半年もしくは1年以内に終了するようなことがあれば、この費用は自分個人で負担することを念頭に実行しました。常に自分でリスクを背負うことを考えていました。

 立ち上げの際には、だいたいこのくらいのユーザー数を獲得すれば成功かなという目標があったと思うのですが。

笠原:当初から今と同等程度のペースで増加していくだろうと考えていました。半年から1年で20~30万人、もしくは40~50万人まで増えればいいかなと。ただ、これは「このくらいまで増えればいいなぁ」というレベルで確信はないに等しい数字でした。最近はしっかり根拠立てて1年後のユーザー数を予測しており、今では確信の度合いが変わっています。



ユーザーの声を吸収し、mixiをより使いやすいものに

11月10日からmixiユーザーの声やおすすめコミュニティなどを伝える情報マガジン「mikly」を公開。イベントやオフ会のレポートも掲載されている

――mixiはこういうところが売りというのはありますか?

笠原:まず、運営側のコンセプトは身近な人とのコミュニケーションが取りやすいサービスを提供するということです。メッセンジャーほど時間の拘束はしないけど、mixiに書いておけばちゃんとそれが伝わります。自分の友人であったり、友人の友人であったり、自分と同じ趣味や興味を持ってる人とコミュニケーションを取ることが可能で、新しい情報を交換したり交流を深めることができます。このようなコンセプトを実現させるためにもコミュニケーションが取りやすいインターフェイスを追求しています。

 他にはユーザー数が多いということもあって、コミュニティが盛り上がっているということでしょうか。様々な書き込みが集まるコミュニティは価値も高いと思います。ユーザー数が伸びているというのはひとつの強みですね。

――mixiには多くの機能が搭載されていますが、お気に入りの機能や開発を進めていく上で思いついた機能などはありましたか?

笠原:トップページでマイミクシィの最新日記や自分が書いたコメント、コミュニティのトピックなどの更新情報が一覧で表示される機能でしょうか。初期の頃は日記を書いたときにマイミクシィ一覧に「NEW」マークがつくというだけで、友達の更新状況を知るには不便という意見が多かったのです。これは改善するべきだと思ってはいたのですが、どのような見せ方が良いのか決定的なアイデアが浮かびませんでした。ある日mixi内で私自身が管理している「希望・要望」のコミュニティで良いアイデアを頂き、この機能を実現しました。私自身もmixiの運営を開始した初期の段階から様々な要望を丁寧にすくい上げることを行なっており、ユーザーの声を積極的に取り入れています。

――そういえばユーザーが企画したオフ会にも頻繁に参加なされていますよね。

笠原:ソーシャルネットワークのセミナーや、個人的な繋がりからユーザーの方とは度々お会いしていたのですが、多くのユーザーの方と初めて触れ合ったのはKanda News Network(http://www.knn.com/)の神田敏晶さんがmixi内で企画された「渋谷IT系夜遊び倶楽部オフ会」ですね。そこでmixiユーザーの方から直接熱い声を沢山頂きました。自分の周りだけではなかなか見えていなかった「実際にユーザーはどのように使っていてどう思っているのか」ということが理解することができたというのは大きな収穫でした。

 イベントやオフ会に関しては、聞いた話や自分で参加した時にも思ったことですが、普段から日記やコミュニティでコミュニケーションしているため初対面という気がせず元々古くからの知人と感じることがあります。このようなことからイベントやオフ会がより盛り上がるケースが多いようですね。これもmixiの利点だと思います。



データの遅延までも楽しむユーザー達。思いもがけない使い方に驚愕!

あるユーザー同士がmixiの足あと機能を利用してアクセス数を競い合うというイベントを行なった。その後、イベントの敗者が野球グローブ並のジャンボロースかつ食べるという罰ゲームオフ会も開催されている

――今までmixiの運営を行なってきた中で、変わった使い方をしているなぁという思いもよらない驚きはありましたか?

笠原:一定の制約の中で様々な使い方をして楽しんでいる、もしくはアピールしている場面は沢山見てきました。例えば、「足あと」の数で競争するとか、あるコミュニティではジャミラ(ウルトラマンに登場する怪獣)の姿になった自分の写真を公開するというものもありましたね。コミュニティを見るとジャミラ姿の写真ばかりが並んいたのには楽しませて頂きました(笑)。

――Tシャツを頭から被って顔だけ出してジャミラ! というmixi内イベントですね(笑)。

笠原氏:他には、トップページに表示される参加コミュニティの画像がランダムに動くということを利用して、縦横斜めに「7」の画像を揃えてスクリーンショットを公開するという遊び方もありましたね。

 最近では、あまり良いことではないのですがmixiのデータベースが5分から20分遅延を起こして書き込みから表示までに時間がかかることが何度かありました。その時に、あるユーザーが「データ遅延を起こしている間に俺のことをけなしてくれ」という日記を投稿されていて、それを見たユーザーがコメントに悪口を書いていくのです。データ遅延の影響で書き込まれた瞬間には何も見えない状態ですが、5分後10分後には悪口が一気に表示されるわけです(笑)。このような制約までもを楽しんでくれたことには驚きました。

――ちなみに、mixiをきっかけに結婚したという方はいらっしゃいましたか?

笠原:社員の友人がmixiで知り合った人と結婚することになったという話を聞いています。まあ、露骨に出会い系目的では使ってほしくはないのですが、mixiで普通にコミュニケーションを行なう中でイベントやオフ会に参加し、自然な流れでこのような話になっていくのはとても良いことだと思っています。



データの遅延までも楽しむユーザー達。思いもがけない使い方に驚愕!

――mixiユーザーが企画しているイベントがかなり多いのですが、運営側として公式なイベントを開催する予定はありますか? 例えば何万人突破イベントなどがあるのではと期待しているのですが……。

笠原:そういえば12月末にも100万人を超えるという試算を出していた方がいましたね。そこまでいってしまうとシステム的に困るのですが(笑)。実際のところ、日々の増加率は気にしていますが人数的なこだわりはあまり持っていないですし、そこまで気にしていません。むしろ「mixiを使っていて楽しいよね、安心感や信頼感があって居心地がいいよね」と思って頂けるかということのほうが気になりますし、重要だと思っています。

 現在mixiはβサービスという形で提供していますが、いずれは正式サービスに移行する予定です。その時に何かできればと思っているのですが……検討中です(笑)。

――楽しみにしています。では、最後にmixiへの思いを一言お願いします。

笠原:まだまだユーザーの皆さんのニーズに答えられていない部分もありますのでそういった部分を1日でも早く実現したいと思います。サービスとしてのクオリティを高めていろんな人に使ってもらえるようになりたいですね。

――お忙しい中ありがとうございました。

◇   ◇   ◇   ◇

 今回インタビューを受けてくださった笠原氏は、1ユーザーとしてもmixiに参加しています。日記やコミュニティを利用してユーザーの声を拾い上げるのはもちろん、イベントやオフ会にも参加してユーザーの意見を聞くなどの活動もされています。このような活動は運営側の顔が見えやすくなるという効果もあり、mixiでは運営側とユーザーの距離が非常に近くなっていると感じました。

 もしかしたら、笠原氏自身がmixiというソーシャルネットワークサービスの特徴を最大限に活用することで、mixiをより良いサービスへと進化させていると言えるかもしれません。同時に、ソーシャルネットワークの効果的な使い方を提示しているようにも思いました。また、「ユーザー数を増やすことよりも、安心してコミュニケーションできる場を提供していくことが重要」という言葉は、mixiユーザーにとってなによりも嬉しく感じられるのではないでしょうか。

 この連載を通して、ソーシャルネットワークサービスの「人間関係を構築する社交的な場所」という意味を感じていただければ幸いです。蓋を開けてみれば、決して難しいものでも堅苦しいものでもありません。招待メールが届いたら、あまり堅苦しく考えずに気軽に参加してみるといいのではないかと思います。

 すでにソーシャルネットワークへ参加したという方もいると思いますが、「友達との交流が活発になった」、「旧友に出会うことができた」、「新しい友達ができた」などなど交友関係を広げるツールとして手放せないものになっていたら嬉しい限りです。それでは最後に、皆様とソーシャルネットワークサービスでお会いできることを楽しみにしております。

(2004/11/25  取材・執筆:西野滋仁)

□株式会社イー・マーキュリーが運営する「mixi」
http://mixi.jp/


西野滋仁(にしの しげひと)
オンラインゲームで真っ直ぐに敷かれた人生のレールから飛び出し、5年の歳月を個人サイトの運営につぎ込み、インターネットこそ我が人生と言い切る若干26歳。現在、ソーシャルネットワークサービスで人間関係の再構築に奮闘中。
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