■実験放送最終回だヨ!!
やっぱり今回も完璧にストリーミング音声配信記事である本連載。第7回のスタパバンド実験放送のコンテンツが出来上がったので、とにもかくにもぜひお聴きいただきたい。
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フォーマット:WMA(Windows Media Audio)
対応プレーヤー:Windows Media Player
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今回もイーレッツ株式会社奥川浩彦氏とカメラマンの若林直樹氏氏、編集1名の計4名で収録。奥川氏が本誌連載ブロードバンド百景のネタのため、近所の電話番号の伝送損失と線路長を片っ端から調べた話など、をお送りいたします。ちなみに奥川氏のブロードバンド百景はこちら。あわせてご覧ください。
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今回使った機材は、前回と同じだが、この実験放送の中では最も良い音で録音できると思われる機材だ。
まずはマイクとして、AKGのC1000Sと同じくAKGのC747。両方ともコンデンサマイクだが、C1000Sのほーは電池を入れれば外部ファンタム電源が不要になったり、アダプタを付けるとマイクの特性を変更できたりして、幅広く利用することができる。C747のほーは、楽器録音やスピーチ録音に特化した小型マイクで、小ささと音の良さを兼ね備えまくり。インターネットラジオ等の音声放送コンテンツを作るにはバッチグーの逸品だ。
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今回の録音風景。前回とメンバーも録音機材も一緒です
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マイクで拾った音をパソコンに入力するためのオーディオインターフェイスとしては、ローランドのUA-700を使用中。ステレオ録音・再生のUSB1.1対応オーディオインターフェイスで、多数のエフェクト機能を搭載し、マイクはダイナミックマイクにもコンデンサマイク(つまりファンタムの供給が必要なマイク)にも対応している。USB1.1対応オーディオインターフェイスとしては高級品だが、その分、機能・性能は非常に高い。
UA-700からの音は、自作のマシン───Pentium4 2.2GHzでメモリ1GBでHDD多量に録音。録音にはデジオンのデジオンサウンド3で録音・編集する。編集完了後、WAV形式ファイルで書き出して、Windows Media エンコーダ 9シリーズで配信用ファイルのWMAファイルへと変換している。
最初は地味な機材を使って録音していたが、実験放送(というかやはり実験録音かも!?)の回数を重ねるうち、「もっと音を良くしたい!!」という欲望が出てきて、新機材を次々と導入し、今回のような機材に落ち着いた。のだが、さて、このスタパバンド実験放送、実は今回で最終回となった。第7回で終了。
というのは、実験で収集したデータを元に新たな挑戦を開始するっていうかつまり、実験放送ではなくて本放送になることが決まった。ブロードバンドユーザーの方が増え、音声配信を余裕で受信できる人が多くなったってことで、音声のコンテンツとして独り立ちすることになった。近々改めてその放送開始をインプレスのWebサイト上でお知らせしますので、ぜひ、本放送、聴いてやってくださいませ!!
■まとめと反省
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AKG C747。マイクの使い方や録音テクニック以前に、良いマイクを使うだけで音が良くなる! ということを痛感
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スタパバンド実験放送を制作するにあたって、結局は七回録音して七回サウンド編集して七回ストリーミング配信をしたことになるが、その中で“拙者に見えたもの”をまとめて告白していきたい。
まず、超良く見えたのは、マイクについて。何度か書いたが、結局やっぱりぶっちゃけた話、高品位なマイクを使用すると録音される音も高品位になる。マイクの使い方や録音テクニックの以前に、単に良いマイクを使うだけで、音が良くなる。
乱暴で俺的視点だけからの話になるかもしれないが、まずは自分の目的に合う中で最も良いと思われるマイクをズギャッと買っちまうのが吉だ。そして、それを使う。と、何しろまずは感動がある。ええっこんなに鮮明な音が録音できるのかーッ!! みたいな。これまで録れなかった音のディテイルが非常に美しく録音できて、もう嬉しくてたまらねえわけですよ。
しかし、そういう高品位なマイクは、その性能の良さがもたらす面倒もある。例えばコンデンサマイクは湿気に弱いので、保管時は除湿剤を用いるなどしないといけない。音をよーく拾ってくれるので、録音現場にあるノイズもしっかり録音されちゃう。C747に関して言えば、PHSやPDCなど電波でつながる電話っていうか携帯電話類が出す電波をモロにノイズとして拾ってしまう。要するに、そういう問題を克服するための工夫やテクニックが必要になる。
でも、そーゆー問題は解消していきゃぁいいんですな。防湿庫使うとかエアコン使うとか、防音のための工夫をするとか、ケータイやコードレスホンの電源切るとか。面倒ではあるが、その面倒を行なえば音質的感動があるわけですな。
一方、お手軽に使える安価さだが性能的にはイマイチなマイクには、それら問題は案外起きなかったりする。ラクして使える。のだが、音質的な感動っつーのはそうそう味わえるモンじゃない。感動は映画や音楽でするからいーやって話でもなくて、要するにマイクが原因でコンテンツのクオリティが頭打ちしている=あーもーなんだかな~というストレスが発生しているのだ。そういうマイクを使った時点で、既に超えられないし打ち崩せないしどーにもならない障壁が絶対にある。悲しい。
そして、録音というコトになると、多くのケースでマイクは音の入り口であり最初で最後の音質決定機材。録音野郎なら周知だと思うが、基本的には、悪い音は決して良い音に変身してくれない。だからマイクには思い切って奢ろう!! と思うわけだ。
で、拙者の行為を反省すると、いくつものマイクを取っ替え引っ替え試してきたわけだが、安く上げようなどと考えず、マイクという存在をナメずに、最初からC747などを買っときゃ良かったなぁ、と。実は「マイクのイマイチさは編集テクニックでカバー!!」なんてなコトを考えていたのだが、カバーできやしませんでした。機材にはそれぞれの限界っつーものがあるのダ、と痛感した拙者。
■最初からUSBタイプに……
他、見えたものと言えば、パソコンのオーディオインターフェイスっていうかマザーボード内蔵のサウンドチップ・回路やPCI接続のサウンドカードは、結局、いろいろ面倒だということ。そして、マイク等の外部機材を使ってパソコンへ音を録音するなら、USBオーディオインターフェイスが何しろ便利で快適だということ。
要はノイズの問題。パソコンにマイクを接続する時点で、ていうかそれ以前に、パソコン本体内にあるアナログ回路にノイズが入ってしまう。ケースバイケースだが、悪いケースだと、何を録音しようが必ず聞こえるジジジジとかズズズズとかいうノイズが混入してしまう。
これを克服するには、音の情報をデジタルのカタチでパソコンに入力するしかない。で、お手軽で現実的なのが、USB接続のオーディオインターフェイスだ。このテのインターフェイスの場合、インターフェイスとパソコンの間をUSBケーブルで接続する=そこを流れる情報はデジタルデータとなる。また、パソコン上ではデジタルデータとして記録される。ので、PCI接続のサウンドカードとか内蔵サウンド機能などのように、マイク接続部(アナログ回路)で外部ノイズを拾うっちゅーことがない。
てなわけで、パソコンから出ちゃうノイズ、あるいは録音時になーんかデフォルトで入っちゃうノイズが気になる場合、手っ取り早くUSB接続のオーディオインターフェイスを導入するのが吉。
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ローランド UA-700。USB 1.1接続で、同時にパソコンに録音できるのは2チャンネルまで。しかしUA-1000が発売されれば、同時3チャンネル以上録音が可能になる
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だが、USB1.1接続の製品だと、普通一般ほとんどの製品の場合、ステレオ=2チャンネルの録音しかできないのが残念。例えばUA-700には多数の入力コネクタがあるが、同時にパソコンに録音できるのはステレオ。マルチトラックサウンドソフトを使っても、一度に2チャンネル分しか音を取り込めない。もうすぐローランドからUA-1000というイケまくりの製品が出るそうなので、同時に3チャンネル以上の多チャンネル録音がしたい場合は、そちらを狙うのが正しい。っていうか拙者も現在UA-1000を狙い中である。
ちなみに俺の場合、自作機に少々高機能なサウンドカードであるSound Blaster Audigy Platinumをインストールしている。性能自体には満足しているが、マイクを接続して録音すると、どーしても非常に小さなノイズが入ってしまう。使用環境によってはノイズ混入を防げるケースもあると思うが、俺の環境ではどーにもならなかった。ケーブルにアルミホイルで皮膜したり、アース取ったり、あるいはスロットやベイの位置を変えてみたりしたのだが、玉砕。結局はUSBオーディオインターフェイスを使ったら一瞬で問題解決。最初からUSBオーディオインターフェイス使っときゃ良かったなぁと思った次第だ。
■ソフトに頼っちゃイケマセン
録音・編集指針にも反省がある。前述のマイクやオーディオインターフェイスの話とも絡むが、結論から言えば「編集でどうにかしよう」と思ったのが苦労の始まりであった。
マイクで拾える音のレベルが低い→サウンド編集ソフトでどーにか克服!! 音質がいまひとつ→サウンド編集ソフトで音質向上!! なーんかノイズが入っちゃう→サウンド編集ソフトで撲滅!! 会話内容や流れがイマイチ→サウンド編集ソフトで編集して聞きやすく!! 今時のサウンド編集ソフトは非常に高性能・高機能なので、「たいてーの支障はサウンド編集ソフトで乗り切れるゼ!!」と考えていた拙者である。
サウンド編集ソフトやプラグインソフトの機能を使えば、確かに音質改善やノイズ低減ができ、会話の一部を切り貼りしてより聞きやすい内容にすることが可能だ。録音レベルが低ければ、ゲインを上げる処理をする。音質がイマイチならイコライザー等を使って処理する。ノイズが目立つところは各種フィルタ類で目立たなくする。会話途中で話が脱線したり、不要な声が入っていたり、話の順序が逆なら、音声のカット・コピー・ペーストでテキスト的に編集する。どれも実際にできるし、実験放送の序盤の回ではやっていることだ。
しかし現実は甘くなかった。
まず、そーゆー音声加工処理をすると、かなり時間がかかる。俺が使っているマシンは、Pentium4 2.2GHzでメモリ1GB、サウンド編集のための領域として40GB程度が空いた7200回転のHDDを用意している。のだが、例えば1時間の長さ(44.1KHz/16bit)の音声ファイル全体にノイズ除去とか音質変更の処理をすると、短くて数分、長いと十分以上待たされることになる。またそういう処理は一度で済むわけではなく、何度かやり直すことになる。音声のカットやコピー・ペーストはラクに進むだろと思ったらこれもまた大間違いで、一部分のカットや入れ替えでも数分待たされたりする(デジオンサウンド3の場合だが)。
この実験放送の録音は、一回につきだいたい1~1.5時間の録音をしている。で、そのうち不要な会話などをカットして、最終的に30分程度にまとめる。わりとダラダラ会話しているので、面白いカモと思われる部分だけを抽出するとそんなモンなのだ。
さておき、1時間チョイの録音素材から、30分程度のコンテンツへと編集していくのだが、最初はこの作業に6時間くらいかかっていた。編集作業自体は手慣れたモンでけっこー速いゼと自負しているものの、途中の処理における待たされ時間がすっげぇ長い。現在編集中っていうよりもむしろ、現在処理待ち中という感じの6時間程度だと言えよう。
また、6時間くらいかけた編集なのに、編集結果は比較的に惨憺たるものに。まず、音質を変えるようなフィルタを多用すると、全体的に違和感が生じる。プロの人が上手にやれば違和感ナシとなると思うが、シロートがやると「あっココはいじくったな」というのがモロバレの違和感が出まくり!! 会話の編集も同様で、やっぱり話し声ってのは連続したモンなんですな、途中の一部分を切ったり、順序を逆にしたりなんかすると、その人物の心情的滑らかさがオカシクなっちゃって、「この人のテンションってヘンじゃない!?」みたいな印象になってしまう。……まあ、実験放送に出演している人は、聴取者にとってさほどなじみ深い(声の)人ではないので、そのあたりはバレていないような気もするが。
しかし、機材を変えたり、編集の方針を変えたりしたことで、苦労および違和感を低減させることができた。
まず機材を良くしたことで、その待たされ時間を短縮することができた。例えばマイクやオーディオインターフェイスを良くしたら、音質自体が向上したり録音できるレベルを高く設定できるようになったので、サウンド編集ソフトによる音質やレベルの処理が不要になった=それにかかる待たされ時間が激減した。
また、無理に編集することも抑えた。以前は、会話内容をより的確にかつ聞きやすくすべく、話の途中の非常に細かな部分を地道に編集しまくっていた。そうすると、ある程度は会話内容がスッキリするが、声のつながりに違和感が出る。ので、その違和感をフィルタ類によって加工して……と一部分の編集がさらなる編集処理を呼んで時間がかかる原因になっていた。ので、あまり細かい部分にこだわらないことにし、少々気になる部分でも“会話のニュアンスをよりリアルに伝えるためのライブ感”として強引に納得し、そのまま残す方向にした。
そしたら、編集頻度が減ったので、当然、編集にかかる時間も、編集時の待たされ時間も減った。以前は6時間くらいかかっていた編集作業も、最近では3時間程度に!!
ていうか流れるようでありかつ聞きやすい会話を録音するには、やっぱり原稿を用意するなり喋るコト自体の練習をするなりしなきゃイケマセンな、シロートなんだし。そのよーな部分をサウンド編集ソフトでどうにかしようというのが間違っとりました。反省。
■スタパバンドも最終回だヨ!!
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本放送化決定により、スタバパンドは連載終了。また本放送で再見!!
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突然だが、本連載記事ことスタパバンドも今回で最終回なのダ。
なぜ最終回なのかと言えば、正直申しまして、もうネタがなくなっちまいました、ブロードバンド系に関して、拙者環境において。
この連載は、ISDN(1B)の64kbps、ADSL、FTTHと、俺の通信環境が良くなっていく状態を、わりとリアルタイムで記事としていた。実際にそーゆー通信環境になると、何が良くてどこが問題なのか!? みたいな話を中心に。例えばADSLはノイズがどーだのリンク切れがあーだの、FTTHはルータがコレでプロバイダーがソレだとどーなった、みたいな話をやってきた。
しかしFTTHにしてみたら、コレが意外や意外、何も問題なくなっちゃったわけです。通信速度的に十二分に快適だし、通信回線としてトラブルもほぼ皆無。当たり前の話ではあるが、そういう快適な通信環境においては、だいたい何をしようが快適なのだ。
テレビ電話してみましたヨ!! 快適だヨ!! 当たり前だよFTTHだし>俺。動画を多量にダウンロードしましたヨ!! 速いヨ!! 当たり前だよFTTHなんだから>俺。IP電話しましたヨ!! 便利だヨ!! そりゃFTTH環境でやりゃぁトラブルねーだろーよ>俺。と、結論的に「FTTHだから快適!!」という記事になるわけである。
1,000万回線のブロードバンド環境のうち、ほんの一握りのFTTH回線の話は、環境としては(現在の)理想に近いが、話としては「それはFTTHだから当たり前だよネ」というつまらねー結論になりまくりなのである。また、今後しばらくは、拙者の通信環境がFTTHよりもスゴく良くなるという予定も……全然ない。
わかりましたよ拙者は。通信環境における結論を得ちゃったとゆーコトが。そして、結論を得ると、通信環境向上のための試行錯誤が不要になり、不要になると読者様に提供できる“役立ちそうな通信環境向上話”もなくなるのだ、と。
てなわけで、通信環境的に飽和したので、通信環境上々試行錯誤記事でもあったスタパバンドはサクッと終了っス。長らくご愛読いただきましてありがとうございました。……もしかしたら何か通信環境的変化があったら出現するかもしれませんので、またいつか、ネット上のどこか、サーバ内のどこかのディレクトリでお会いしましょう!! さよなら~!!
□スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
(2003/06/26)
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