【WIRELESS JAPAN 2009】
WiMAXは「IEEE 802.16m」でさらに高速化、インテル庄納氏


インテル研究開発本部ワイヤレスシステムグループ主幹研究員の庄納崇氏

 「WIRELESS JAPAN 2009」のワイヤレスコンファレンスでは23日、インテル研究開発本部ワイヤレスシステムグループ主幹研究員の庄納崇氏が「4Gに向けたモバイルWiMAXの進化」と題し、現在のモバイルWiMAXをさらに高速化する「IEEE 802.16m」についての講演を行った。

 庄納氏はまず、「モバイルWiMAXはMIMO-OFDMAを採用した最初のグローバルスタンダード。モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)とLTEでは同じ『MIMO-OFDMA』と呼ばれる技術を基礎としており、モバイルWiMAXは2005年には標準化を完了しているが、LTEはその頃にようやく標準化作業を開始した」と語り、モバイルWiMAXがLTEに対して先行していると説明。また、モバイルWiMAXの後継技術「IEEE 802.16m」の標準化も終盤にさしかかっており、2012年ごろにはIEEE 802.16mの商用サービスも開始される見通しだとして、次世代の通信規格でもモバイルWiMAXが先行しているとした。

 「IEEE 802.16m」は、現在のモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)をさらに高速化し、最大300Mbps以上の通信速度を実現しようという通信規格。現在、IEEEの802.16ワーキンググループとWiMAXフォーラムで標準化作業が進められているが、既にドラフトは8割方できあがっており、2010年5月には標準化が完了する見通しだという。

 庄納氏は、今後のモバイルWiMAXのロードマップについて、2010年には現在のモバイルWiMAXに改良を加えた「モバイルWiMAX Release 1.5」により、最大通信速度が現在の2倍程度に向上すると説明。そして、2012年にはIEEE 802.16mが「モバイルWiMAX Release 2.0」として登場することで、さらなる高速化が実現されるとした。IEEE 802.16mでは、現状のモバイルWiMAXとは異なる技術を用いるものの、両者は併存できるように考えられており、現在モバイルWiMAXを展開している事業者もスムーズに802.16mに移行できるという。

IEEE 802.16mの標準化作業は既にドラフト作成の段階に入っており、2010年5月には標準化が完了する予定だというモバイルWiMAXのロードマップ。IEEE 802.16mは「モバイルWiMAX Rel 2.0」として2012年に商用化の見込み

 また、IEEE 802.16mは第4世代携帯電話(4G)にあたる「IMT-Advanced」の通信規格としてもITUに提案すると説明。「IMT-Advanced」の要求条件を上回る規格として、IEEE 802.16mは最大通信速度は300Mbps以上、時速350kmの移動中でも通信が可能な規格を目指して、標準化が進められているとした。

 庄納氏は、「WiMAXは携帯電話では無いと言う人もいるが、モバイルWiMAXも2007年に3G(IMT-2000)の規格になっている」と語り、「IMTの規格になることで、IMT用に割り当てられる周波数帯がグローバルで利用できるようになるメリットは大きい」と説明。IMT-2000では、10以上の提案の中から最終的に6つの規格が規定されたが、IMT-Advancedでは、IEEE 802.16mと、LTEの後継となる「LTE-Advanced」の2つが有力な規格になるという見通しを語った。

 また、現在のシミュレーションでも、既にIEEE 802.16mはIMT-Advancedが要求している数値を上回っているという。2.5GHz帯のシミュレーションでは、セクタースループットが約49Mbpsとなり、「現状のモバイルWiMAXと比較して、約3.5倍のスループットが、2012年には実現できると考えてほしい」と説明。さらに、複数の周波数を束ねて最大1Gbpsの通信速度を実現するためのマルチキャリアのサポートや、IEEE 802.16mとWiFiを同時利用するための技術なども、IEEE 802.16mの規格に盛り込まれていく予定だとした。

 庄納氏は、「真のモバイルインターネットには進化が必要だが、レガシーなネットワークの進化には限界がある」として、進化を実現できるのはデータセントリックな技術であるWiMAXだとコメント。WiMAXは技術的に先行しており、2012年にはIEEE 802.16mによる高速サービスも実現できるとして、講演を締めくくった。

最大通信速度は100Mbps以上、時速350kmの移動中でも通信可能な規格を目指すIMT-Advanced(4G)の規格としても提案していく
シミュレーションの結果。モバイルWiMAXと同様の「Microcellular(UMi)」におけるセクタースループットは48.59Mbpsで、現状のモバイルWiMAX(約14Mbps)の3.5倍WiFi(802.11)やBluetooth(802.15)と同時利用するための技術も規格に盛り込まれる予定

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(三柳 英樹)
2009/7/24 11:23