WIRELESS JAPAN 2008のネットワークコンファレンスでは、インテルの研究開発本部 ワイヤレスシステムグループ 主幹研究員 工学博士の庄納崇氏が、「モバイルWiMAXの最新動向と802.16mの標準化動向」と題し、モバイルWiMAXの動向や今後の展開について講演を行った。
■ IMT-2000に採用されたことで「国際展開が期待できる」
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インテルの研究開発本部 ワイヤレスシステムグループ 主幹研究員 工学博士の庄納崇氏
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庄納氏は初めに、インテルがWiMAXに注力する理由を説明。ノートPCの無線LAN搭載率が93%近くまで高まっているとのデータを示した上で、「インテルがCentrinoを発表したことで、ノートPCへの無線LAN搭載が急速化した」とコメント。7月16日に発表したCentrino 2はWiMAXに標準対応した初のプラットフォームであり、今後のモバイルWiMAX普及に期待を寄せた。
また、現状のモバイルブロードバンドサービスについても、「HSDPAでは7.2Mbpsのサービスもあるが、コアネットワークを含むネットワークアーキテクチャは音声中心であり、まだまだモバイルブロードバンドのインターネットには不十分」と指摘。「データ中心の新たなモバイルブロードバンドインターネットによって常時かつ高速なサービスが当たり前になることで、想像もできないような多様なデバイス、多様なサービスの展開が期待できる」とした。
2007年10月にはIMT-2000としてWiMAXが追加された点もアピール。庄納氏は「IMT-2000はいわゆる3Gであり、WiMAXが3Gファミリーとなったことで3Gの使う周波数を世界的に使えるという意味で大きな意味を持つ」とコメント。「これまでWiMAXでは2.3GHz帯、3.5GHz帯、3.5GHz帯、5.8GHz帯を追求してきたが、国際分配された帯域がないことがWiMAXにとって致命的に厳しかった」とし、「IMT-2000という国際的な枠組みで分配されている帯域を利用できることで、ヨーロッパやアジアへの展開も期待できる」とした。
WiMAXの商業展開は118カ国で305社に上り、2012年には201カ国538社にまで成長するとの調査データも紹介。2012年にはWiMAXのユーザーが1億3300万に達するとの見込みを示し、特にアジア地域での成長に期待しているとした。
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無線LAN搭載PCのシェアは急速に成長
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モバイルWiMAXがIMT-2000として採用
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2012年には1億3300万ユーザーとの予測
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WiMAX関連企業は2012年には201カ国538社まで増加と予測
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■ WiMAXフォーラムは会員数が急増し「強い興味を持たれている」
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IEEE 802.16eとWiMAXフォーラムの概要
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WiMAXの標準化にもリソースを費やしており、「WiMAXによるエコシステム構築のために世界的な投資活動を行っている」とアピール。日本でもUQコミュニケーションズに投資しており、「一緒にWiMAXをやっていこうと考えている」(庄納氏)。WiMAXの関連団体であるWiMAXフォーラムは、3年前は参加企業数が50程度だったのに対し、現在は10倍近い500社が参加。「WiMAXフォーラムは高い会費が必要だが、それでもこの会員数ということは強い関心を持たれている証拠」とした。
IEEE 802.16とWiMAXフォーラムの違いについても説明。「IEEE 802.16は物理層とMAC層の標準化という基本的な技術の部分だが、WiMAXフォーラムはIEEE 802.16の相互運用性を保証するための団体」とした上で、「WiMAXがキャリアサービスとして展開されてようとしており、レイヤ3であるネットワークのアーキテクチャについても標準化を行っている」とした。
標準化の流れとしては、まずIEEE 802.16による標準化作業が行われ、「激しい論争が繰り広げられる厳しい場であり、さまざまな仕様がオプションとして定義されるためにIEEE 802.16の標準規格は複雑になっている」とコメント。「この仕様だけでベンダーが製品を開発すると、お互いがつながるという相互接続性の確保が困難。そのためにWiMAXフォーラムで相互接続性を担保し、標準仕様を参照しながら相互接続性の確保に向けてさまざまな機能を入れ込んでいく」とした。
日本や米国でWiMAXに利用する2.5GHz帯はWiMAXフォーラムでも重要な帯域と位置付けており、「すでに2.5GHz帯では6つの端末と4つの基地局が製品化されている」とアピール。「相互接続性の確保により、どの端末の組み合わせでもつながる」とした。
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WiMAX標準化の流れ
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合計10製品がモバイルWiMAX認定商品としてリリース
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■ 次世代モバイルWiMAXは時速350kmで最大300Mbpsを実現
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モバイルWiMAXの今後の展開
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モバイルWiMAXの今後のロードマップについても言及。現状のモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)はRelease 1.0であり、通信速度ではリンクレベルで最大60Mbps程度を実現するが、Release 1.5となる「IEEE 802.16e Rev2」では125Mbps、Release 2.0の「IEEE 802.16m」では300Mbpsを実現できるという。
庄納氏は、先日デンバーで行われたIEEE 802に関する会合において「すべてのワーキンググループでもっとも参加人数が多かったのが802.16mであり、世界でサービスが始まっていないにも関わらずこれだけ参加者が多かったのは、それだけ関心を集めているということ」と説明。Release 1.5となる802.16e Rev2では新たにFDDをサポートした点を特徴としたほか、802.16eについては「いわゆる4Gと呼ばれるIMT-Advancedの標準提案として提出する予定」とした。
Release 2.0では時速350kmのモビリティや4×4のMIMO構成、複数のチャネルを束ねるマルチキャリアによる最大100MHz帯のサポート、複数電波の共存といった仕様が盛り込まれており、庄納氏は「時速に関しては最大500kmまでサポートできる」とコメント。Release 1.5は2009~2010年、Release 2.0は2011年に標準化予定とした。
最後に庄納氏は、W-CDMAの拡張規格であるLTEについても言及。「基本的な技術、特に物理層についてはモバイルWiMAXと90%以上共通している」とした上で、「すでにモバイルWiMAXはここに存在する技術だが、LTEはモバイルWiMAXに比べて2~3年遅れている」と指摘。また、「3Gの事業者が新たなネットワークを導入する際も、WiMAXとLTEではそれほど負担が変わらない」と補足した。
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モバイルWiMAX Release 2.0の概要
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3Gとの技術比較。3.9GがOFDMAをサポートしたことで「技術的には共通点が多い」
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■ URL
WIRELESS JAPAN 2008
http://www8.ric.co.jp/expo/wj/
インテル
http://www.intel.com/jp/
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(甲斐祐樹)
2008/07/22 20:58
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