“新生GyaO!”開始、Yahoo! JAPANとの相乗効果で黒字化目指す
(左から)ワーナー・ブラザース テレビジョンの小田充日本代表、GyaOの川邊健太郎代表取締役社長、マイクロソフトの大場章弘執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 |
ヤフー子会社の株式会社GyaOは7日、従来の「GyaO」と「Yahoo!動画」を統合し、無料動画配信サイト「GyaO! Presented by Yahoo! JAPAN」と、有料動画配信サイト「GyaO!ストア Presented by Yahoo! JAPAN」を開設した。
無料の「GyaO! Presented by Yahoo! JAPAN」で配信するコンテンツは約1300番組。映画では「チャーリーとチョコレート工場」や「ハリー・ポッターと賢者の石」など、ドラマでは「フレンズ シーズン5」や「ER救急救命室 シーズン5」など。
また、アニメでは「時をかける少女」や「幽☆遊☆白書」など、音楽では「GLAY」の8月に日産スタジアムで行われたライブ映像などを配信する。なお、「GyaO! Presented by Yahoo! JAPAN」の視聴にはマイクロソフトのWebブラウザ用プラグイン「Silverlight」が必要となる。
有料の「GyaO!ストア Presented by Yahoo! JAPAN」では配信するコンテンツは約1400番組。テレビ局との連携により各局の映像作品を視聴できることを特徴としており、「フジテレビ On Demand」や「TBSオンデマンド」のほか、テレビ朝日の参入も予定している。開始当初は、「フジテレビ On Demand」の番組を販売。視聴にはWindows Media Player9以上が必要で、決済はYahoo!ウォレットに対応する。
GyaO! Presented by Yahoo! JAPAN | GyaO!ストア Presented by Yahoo! JAPAN |
■映像の力でネット社会に新たな価値を生み出す
GyaOの川邊健太郎代表取締役社長 |
7日に開催された記者発表会では、株式会社GyaOの川邊健太郎代表取締役社長が“新生GyaO!”の展開について説明した。
川邊社長は、YouTubeやニコニコ動画がユーザー数を伸ばす中で、GyaOとして今後どのように展開するのかを議論した結果、「コンテンツホルダーと協力し、映像の力でネット社会に新たな価値を生み出すとこが我々の方針」だと話した。「テキストや静止画が中心だったネットを、映像でバージョンアップしていきたい」。
「『映像』という言葉を意識的に使うようにしている。『動画』という言葉は、素材や投稿サイトのイメージが強く、ともすれば違法なコンテンツも含めて動画というイメージが定着している。我々は、今後もパートナーから提供され、権利処理されたコンテンツによって利益を出していく上で、プロが作った『映像』作品を扱うことを強く意識していきたい」。
テレビ局との連携も強化する。「日本において映像コンテンツを多く持っているのがテレビ局。4日には資本提携も発表しているが、テレビ局にはより深いサービスを提案していきたい」とのこと。なお、「フジテレビ On Demand」や「TBSオンデマンド」が、GyaO!でも配信するメリットについては、「GyaO!は総合的な映像サイトであり、多くのユーザーに自社のコンテンツを見てもらえることが利点」(GyaO!宮本直人取締役COO)とした。
株式会社GyaOのビジョン | テレビとの連携強化 |
■ユニークユーザー数2000万人目標
新しいロゴ |
GyaOによれば、従来のメインユーザーは30~40代だったという。今後はそれまでの層も押さえつつ、メインターゲットを20代に設定する。それに合わせ、ロゴも親しみやすく丸みを帯びたデザインにリニューアル。調達する映像も新たなターゲットに合わせるという。
さらに、サイトデザインも変更し、シンプルな構成にした。川邊社長は、「GyaO単独で展開していたころは、ポータルサイトの役割もあったが、Yahoo! JAPANに統合されたことで、ポータルはYahoo! JAPANがあるため、GyaOは映像の情報に絞った。作品のイメージを前面に出すようにした」と説明する。
ビジネスモデルについては、1~3話を無料の「GyaO! Presented by Yahoo! JAPAN」で、それ以降を有料の「GyaO!ストア Presented by Yahoo! JAPAN」で配信する流れを作りたいという。また、Yahoo! JAPANとの各サービスとの連携も図る。「例えば、Yahoo!グルメでGyaO!にある料理番組の紹介などが考えられる」。
Yahoo! JAPANの各サービスとの連携については、トップページの「Yahoo!サービス」に「GyaO!」のメニューが加わったほか、各種映像コンテンツを紹介する「Yahoo!映像トピックス」からの誘導も図る。川邊社長は、「Yahoo! JAPANとの相乗効果により、GyaO!のユニークユーザー数を早期に1000~2000万人にしたい」と述べた。
GyaO!のターゲット | Yahoo! JAPANとの相乗効果 |
■2010年早期に単月黒字目指す
広告商品について川邊社長は、「テレビと同じ広告を流すだけでは、広告主のニーズに合わない。TVとPCではユーザーの視聴形態が異なる」として、従来の手法を見直し、インターネットならではの広告をクライアントに提案するとした。
具体的には、Silverlightの特徴を生かした広告枠「インタラクティブビジョン」を展開。再生画面の下などにマウス操作に反応するバナー広告を設置する。また、トップページジャックとして、ページ上部や背景に広告を掲載する。さらに、広告に合った映像作品の特集を組んだり、ターゲティング広告なども行う。
売上目標は非公開だが、収益については、現状で広告が7割、課金が3割のところ、「この比率を数年後には半々にしたい。まずは、2010年早期に単月黒字を目指す」とした。このほか、ユーザーが増えると、回線やサーバーのコストが大きくなるため、「ただ人が増えればいいわけではない。広告や課金、ユーザー数、インフラのバランスを取っていきたい」とした。
新しい広告商品の提案 | インターネットならではの広告 |
■パートナー各社もコメント
記者発表会では、パートナー各社も登壇した。株式会社ムービーゲートの原田学代表取締役専務(角川映画株式会社 部長)は、「角川映画は『GyaO』に初めて邦画を提供した。新生GyaO!が、VOD市場に大いに役立つことに期待している」と話した。
ワーナー・ブラザース テレビジョンの小田充日本代表は、「今後はショートコンテンツも提供していきたい」とコメント。「米国では、テレビドラマシリーズのスピンオフ作品などをインターネットで配信している。そういったコンテンツも検討したい」とのことだ。
マイクロソフトの大場章弘執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長は、Silverlightについて説明した上で、「マイクロソフトでは、クラウドの流れをパートナーと推進したいと考えており、その中でSilverlightで重要な存在」だとコメント。「GyaOとヤフーには早い段階からSilverlightを利用してもらっている。映像だけではなく、今までになかった広告なども実現する」とした。
ワーナーのブランデッドサイト | SilverlightとYahoo!、GyaOの歩み |