アドビ、「Adobe MAX」報告会でiPhoneアプリ作成ツールなど紹介


 アドビシステムズは22日、米国で開催された「Adobe MAX 2009 North America」の記者向け報告会を実施した。報告会では、Flash関連の新機能などを中心に、今後のリリース予定などが説明された。

 「Adobe MAX 2009」は、2009年10月5~7日に米国カリフォルニア州ロサンゼルスにおいて開催されたデザイナー、デベロッパー向けカンファレンス。基調講演や350を超えるセッションが開かれ、「Adobe Flash Platform」など新製品に関する発表も数多くなされた。

 22日に実施された報告会では、DMO(ダイナミックメディア)部テクニカルエバンジェリストの太田禎一氏が「Adobe MAX 2009での主要な発表とできごと」と題して、イベントの全体概要を説明。また、デベロッパーマーケティングスペシャリストの轟啓介氏、米Adobe SystemsのRichard Galvan氏による製品説明やデモンストレーションも実施された。


太田禎一氏MAX 2009での主要な発表と事柄

Flash Platformのアップデートがポイント

最新のFlash Platform

 太田氏は、「Adobe MAX 2009」での1番大きなポイントについて、「Flash Player」や「AIR」を中心としたツール、サーバー、サービス群などからなる「Flash Platform」のアップデートであると紹介。続けて、現在β2版となるデベロッパー向け開発ツール「Flash Builer 4」とデザイナー向けの開発ツール「Flash Catalyst」が2010年上半期に正式版として発売を予定するほか、「Flash Platform」をクラウドから支えるサービスとして「LiveCycle ES2」もリリースを予定するとした。

 報告会では、「Flash Catalyst」と「Flash Builer 4」を使って、「レストラン検索のアプリケーションを作る」というデモンストレーションも実施された。デモを担当した轟氏は、「Flash Catalystは、IllustratorやPhotoShop、FXGファイルをサポートしており、プログラミングの知識がなくても、画像データをFlash Catalystに読み込めば簡単なオーサリングでき、ダミーデータを使ったデザインも可能である」と述べた。また、「Flash Builer 4」でfxp形式のFlash Catalystファイルを取り込めば、簡単な操作で検索アプリケーションを作成できるとした。


Flash Builder 4の特徴Flash Catalystの特徴Flash Catalystによるインタラクションデザインのデモ

「Flash Professional CS5」で「Application for iPhone」などを紹介

Flash Professional CS5のデモ

 Flashコンテンツの作成ツール「Flash Professional CS5」では、新たに追加された「Text Layout Framework」を使ったテキストテキスト編集機能の強化、デザイナーでもスクリプトを扱いやすくなる「コードスニペット」、「ActionScriptエディタ」の改善などを、Richard Galvan氏がデモを交えながら説明した。

 デモの中で関心を集めたのは、iPhone用アプリケーションとして出力できる「Application for iPhone」だ。出力オプションで、iPhone用アプリケーションの出力形式を選択して実行することで、iPhoneアプリケーションのファイル形式である「ipaファイル」に変換される。その上で、「iTunes」にファイルをドラッグ&ドロップすればアプリケーションの追加が可能になり、実機でのテストが簡単になるという。ただし、iPhone上にFlash Playerは搭載されていないため、Webブラウザ上では動作しない。Galvan氏は「あくまでもアプリとしての利用だ」という点を強調した。

 「Flash Professional CS5」の今後のスケジュールとしては、2009年中にパブリックβ版(英語版)を公開し、2010年上半期中に正式版をリリースする予定。また、「「Flash Professional CS4」のシリアルナンバーがあれば、β版でもiPhone用アプリケーションの生成が可能だという。ただし、デスクトップ環境とは異なるため、一部は動かない機能もあり、今後はAdobe Labs内にiPhone用アプリとして出力する際の注意事項が掲載される予定だ。なお、XMLベースのflaファイル(xfla形式)の仕様はオープンになるという。


Flash Professional CS5によるiPhone書き出しiPhone書き出し用のファイルタイプ設定App Storeへのサブミットも可能

Flash Player 10.1はモバイル対応を強調

Richard Galvan氏

 「Flash Player 10.1」の主な機能については、モバイル対応やGPUサポートの拡大、グローバルエラー処理、マイク入力への直接アクセス、「Flash Access 2.0(DRM)」対応、マルチタッチ&ジェスチャー対応などがあげられる。報告会では、この中でPC以外の環境にも対応した点が強調された。

 モバイル対応としては、AndroidやRIM、Windows Mobile、Symbian、Palm Web OSへの対応があげられる。アドビシステムズが主導する「Open Screen Project」には52社が参加しているが、ほとんどすべてのスマートフォンや機器、OS、チップセットメーカーが名を連ねており、各社代表からのビデオメッセージも紹介された。

 「Flash Player 10.1」は、どの環境でもすべて同一の機能が移植され、カスタマイズの予定はないという。機器によって操作性の違いはあるが、どの環境でも同じコンテンツが見られることを目指す。iPhoneへの実装について、Richard Galvan氏は「Adobeではなく、Appleに聞いて欲しい」と答えるにとどまった。

 このほか報告会では、「Adobe AIR 2.0」や「Flash for Digital Home」、「Flash Platform Services」のほか、AIRアプリの販売が可能な「SHIBUYA BETA」に関する概要説明が行われた。

 このうち、「Adobe AIR 2.0」に関してはWebKitの最新版をサポートしているため、Flashを使わずにHTMLやCSSだけで柔軟な表現が可能だという。また、画面をキャプチャすると、「Photoshop」が起動するなどの点が強化されている。

 なお、Richard Galvan氏は「SHIBUYA BETA」の由来に関して、「米国のFlash開発者たちは東京が好きで、特に渋谷の街が好き」とコメント。「渋谷にはいろんな店があるので、アプリを売るなら渋谷というイメージを持った。また、渋谷という言葉の響きが美しいから」と述べた。


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(すずまり)
2009/10/22 19:15