初の萌えグッズ“猫耳イヤフォン”が大人気
サンコーレアモノショップ(後編)


偶然の産物!? ペンの形をしたカードリーダー

 マネージャーとしてさまざまな部門間の調整にあたっている萩澤さん自身も、数多くの商品を企画してきたアイディアマンだ。代表的な製品は、SDカードのスロットが4つも付いたペン型のカードリーダー「SDだらけのカードリーダーペン」。4ポート同時に読み込みが可能で、各ポート同士のデータ移動も簡単にできる。見た目はペンそのもので、もちろん実際に紙に文字も書ける。化粧箱のパッケージに入っており、替え芯なども付いているので、プレゼントには最適だ。

 「実はこの商品、本当はmicroSDカードがもっとたくさん挿せるものを作る予定だったんです。最近はmicroSDカードって安いですよね。だからついついたくさん買ってしまう。でも、小さいから紛失しやすいし、保管するのも大変だから、ケースみたいな感じでとりあえず全部入れておいて、しかもそのまま読み込むことができればいいよね、という内容で企画書を書いたんです。」

 「ただ、発注した先の中国の工場が、ペン型の色々なグッズを作るのが得意な会社だったんですよ。で、サンプルがペン型のグッズになっちゃったんです(笑)。見た瞬間、『おや?』という感じで。でも、まあ一応面白い商品だから良いか、ということになってそのまま売ることにしました。」(萩澤さん)

 当初、意図したものとは違うが、結果的にはかなりユニークな商品が完成した。いかにも中国の工場らしいエピソードだが、自由で柔軟な発想をするサンコーとは、かえって相性が良いのかもしれない。現在、萩澤さんが最初に企画したコンセプトの商品も開発中とのことなので、今後のリリースが期待される。

SDだらけのカードリーダーペン店の中にはユニーク商品がギッシリ


ズッシリと重いゴージャスな「金塊ハブ」

 萩澤さんが企画した商品でもう1つ話題となったのが「金塊ハブ」という商品。これは金塊の形をした8ポートUSBハブで、なんと重量が約2kgもある。

 なぜこんなに重いかというと、ハブを抜き差しするときにハブごと動いてしまわないようにするためだ。この重量のおかげで、片手でもUSBの抜き差しができてしまうというスグレモノなのである。しかもポート数は8個とかなり豊富だ。残念ながら現在は販売終了となってしまったが、かなり魅力的で存在感の大きい商品である。

片手でもコネクタの抜き差しが容易な「金塊ハブ」

 「私の場合、カードでもUSBでも良いんですけど、とにかくたくさん付くのが好きなんです。USBハブというと4ポートしかないものがほとんどだし、外付けHDDやプリンタなどを何台も付けるとすぐに足りなくなります。かといってハブを2つも3つも並べるとゴチャゴチャしてしまう。そこで思いついたのがこの商品でした。」

 「抜き差しするときにハブ自体が動くのも嫌だったので、重くしようと。最初はゴージャスに大理石にしようと思ったんですが、中国で大理石の価格を調べたところ、そんなに安いわけではありませんでした。で、ゴージャスというコンセプトのまま、重くても違和感のないものということで、金塊になりました。」(萩澤さん)

 中国の工場側も、日本でどんな商品が人気なのかという情報を知らないので、売れ筋商品の情報や、アイディアに対しては貪欲だという。海外とのやりとりは、サンコーの代表取締役である山光博康さんが中心となって動いているが、萩澤さん自身もアジアで開催されるトレードショーや展示会を視察したりと、情報収集には余念がない。

 「電車に乗っているときなんかも、四六時中、頭の片隅で商品のアイディアを考えていますし、それはどのスタッフでも同じだと思います。基本的にサンコーはこの手のユニークグッズが好きな連中が集まっている会社で、自分たちが欲しいモノを自分たちの手で探したり作ったりするというスタンスなので、アイディアを考えるのも苦じゃないですね。」(萩澤さん)



欲しいものを自分で作り出すのがサンコー流

 自分たちが必要としている商品を、自らの手で作り出す。そんな姿勢から生まれた商品の1つに、「iPhone 3G 可変式USBクレードル」がある。その名の通り、iPhone用のクレードルなのだが、この商品のユニークなのは、iPhoneに保護カバーをした状態でもそのままセットできる点だ。コネクタ部分が動くようになっていて、カバーをした状態でもしっかりと端子に接続できる。

 「iPhoneのクレードルは、最初はすでにあった商品を輸入したのですが、保護カバーが付いているとうまく刺さらないことが仕入れてからわかりました。それじゃダメだということで、オリジナル商品を作ることにしたんです。これを使えば、クレードルにセットするたびにカバーを外すような面倒なことはしなくても済みます。」(萩澤さん)

 ユーザーからのリクエストも受け付けている。Webサイトの上部メニューから「探しモノ」というコーナーをクリックすると、問い合わせメールのフォームが表示される。「こんな商品があったらぜひ買いたい」という声を書き込んで送れば、もしかしたら実際に商品化されるかもしれない。

 「リクエストはけっこうな数が来ますよ。ただ、コストとの兼ね合いで実現が難しいケースが多いですけどね。実際に商品化した例はまだありませんが、お客さまからのリクエストの傾向を参考にして、要望が多いジャンルの商品を発売したことはありました。」(萩澤さん)

 サンコーが企画したオリジナル商品としては、カチカチ音がしない静音設計の「サイレントマウスEX」も、深夜にPCで作業したい人などに人気だ。このほか、ビジネスマンが商談の状況を記録するためにボタン型のカメラを買ったり、美容院の人がお客の頭皮をチェックするためにマイクロスコープを購入したりと、幅広い層の客がサンコーを利用している。

 ときにはアイディアが真似されて同じような商品が他社から発売されることもある。もともとはサンコーが独自に企画した商品にもかかわらず、他社から同じコンセプトの商品がリリースされたのを見て、扱うのをやめた商品もあるという。

 このようなレアモノにこだわる姿勢は海外からも高く評価されており、海外から問い合わせが来ることもある。欧米が多いのかと思いきや、中国や韓国からの問い合わせも少なくないそうだ。売れ筋ランキングの2位に入った「VONIA骨伝導イヤフォン」も、海外から注目されている商品の1つである。

 「『VONIA骨伝導イヤフォン』は、骨伝導と空気伝導を組み合わせたハイブリッドのイヤフォンなんですが、音の聞こえ方がちょっと不思議なんです。海外メディアの人が来て、『こんな商品はウチの国にはない』と驚くこともありましたよ。」(萩澤さん)

「iPhone 3G 可変式USBクレードル」カチカチ音がしない「サイレントマウスEX」


スタッフ増で今後は商品リリースがより活発に

 カードリーダーから骨伝導イヤフォンまで、幅広い商品を扱っているサンコーだが、現在の話題はなんといっても「猫耳イヤフォン」だ。この商品、いったいどんな人に人気なのだろうか。

 「当店の客層を見ると、以前は男女比が9:1くらいでしたが、最近はUSBにつないで温めるスリッパや手袋などをリリースしたことで、冷え性の女性などが購入するようになったりして、8:2くらいになってきています。ここでもう少し女性客を増やそうという目的で作ったのが『猫耳イヤフォン』だったのですが、実は男性にもけっこう売れています。」

 「ただ、これからは女性客もどんどん開拓していきたいとは思っています。秋葉原という街自体、カップルで来る方が多くなってきていて、当店にもカップルが多く訪れます。でも、せっかくカップルで来ても、今だと男性のほうが購入するかしないかで終わってしまいます。女性向けの商品を増やすことで、お連れの女性の方にもアピールできればいいかな、と思っています。」(萩澤さん)

 今後については、「今の路線をいかに崩さないように頑張っていけるか」がポイントだと萩澤さんは語る。

 「とにかく“サンコーらしさ”を失わないようにしたいですね。良くも悪くも、『ああ、やっぱりサンコーだよね』と言われるような商品を出し続けていきたいです。」

 「スタッフの人数も設立当初より倍くらいに増えているので、これからは商品点数も増えていくと思いますよ。良い商品を思いついたり、発見したりしてから輸入して販売に至るまでのプロセスというのは、それなりの時間がかかりますが、スタッフが増えたことで短縮されますからね。今後もどんどん新しい商品をリリースしていきたいです。」(萩澤さん)

 最近では、隠れたユニーク商品をピックアップする「アキバの怪しい電気街からコンニチワ」というコーナーや、実際に商品を購入した客に使い心地などを取材した「ユーザーレポート」など、新たなコーナーが増えつつある。

 「目指しているのは、世界一のレアモノショップです。夢は大きく、ナンバーワンよりもオンリーワンを目指して走り続けたいですね。」(萩澤さん)

「アキバの怪しい電気街からコンニチワ」ユーザーレポート

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2009/9/4 11:00  
碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース・コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。