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第347回:上下20Mbpsの実力は? 「WILLCOM CORE XGP」を試す


 4月27日からエリア限定サービスがスタートしたウィルコムの次世代通信サービス「WILLCOM CORE XGP」。今回、その評価用端末を入手することができたので、実際に速度を検証してみた。

上下対称20Mbps+マイクロセル

「WILLCOM CORE XGP」の評価機を使い、池袋や新宿、渋谷で速度を試した

 ウィルコムの「WILLCOM CORE XGP(以下XGP)」は、2.5GHz帯を利用する次世代PHSサービスだ。いわゆる、モバイルブロードバンドと呼ばれるサービスは、NTTドコモやau、ソフトバンク、イー・モバイルなどの携帯電話事業者によるデータ通信サービス、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAXサービスがすでに存在するが、これらに続く形で2009年4月からエリア限定の試験サービスを開始したのがXGPだ。

 最大の特徴は、上下対称で最大20Mbpsという通信速度だ。残念ながら、イー・モバイルが「HSPA+」による下り最大21Mbpsのサービスを発表したことで、同じ2.5GHz帯を利用するWiMAXだけではなく、イー・モバイルの後塵を拝することになってしまったが、それはあくまで下り速度の話だ。通信速度が上下対称のXGPでは、下りだけではなく、上りも最大20Mbpsの通信が可能となっており、「UQ WiMAX」の上り最大10Mbps(サービス側公称値)、イー・モバイルの最大5.8Mbps(HSUPA時)を凌ぐ速度を実現している。

 もちろん、一般的なWebサイト閲覧やメールといった利用では、上りに対する速度のニーズはまだまだ高くない。しかし、最近では外出先でPCを使っていると、上りの遅さが気になることも少なくない。例えば、外出先で資料を仕上げて送信する場合など、現状のモバイルブロードバンドサービスでは上りが遅くて時間がかかりすぎる。将来的に写真やビデオなどのデータをモバイルでも扱う可能性があることを考えると、この上り最大20Mbpsという速度は期待したいところだ。

 このような特徴にプラスして、PHSから引き継いだマイクロセルにより、通信の安定性が確保される点も期待できる。サービス開始は他社に比べて遅れを取っている格好だが、技術的には期待される点が多いサービスと言えるだろう。

 エリアに関しては、限定サービスということもあり、まだまだ未整備という印象だ。現状は東京山手線の一部の駅(新宿、渋谷、品川、新橋、東京、秋葉原、池袋)など、かなり限定されたエリアでの提供となっており、法人ユーザーへの貸与を開始した6月の段階でも、その周辺が若干拡充される程度となっている。

 ウィルコムの資料による予定では、以下のようなエリア拡大計画となっており、2009年度末でようやく東京23区や横浜、川崎、大阪、名古屋の中心部で使えるようになる程度で、あまり早い展開は期待できない。

・基地局および人口カバー率の計画値
基地局数 人口カバー率
2009年度末 1498局 3%(14%)
2010年度末 5361局 33%(41%)
2011年度末 1万1359局 57%(70%)
2012年度末 1万9972局 91%(92%)
※()内の%は他社で採用されている算出方法の場合の数値

 サービスエリアの充実は、ユーザーがサービスを選ぶ大きな基準となる上、ウィルコムがXGPの特徴として挙げるマイクロセルによる品質の高さも1つの条件ともなる。圧倒的なエリアを誇る携帯電話系サービス、速度と幅広い機器展開、強力なアライアンスで有利なWiMAX、マーケティングが巧みなイー・モバイルなどの攻勢をしのぎつつ、エリアをどう拡充できるのか。また、いかに魅力的な価格や内容でサービスを提供できるのかも注目されるところだ。

PCカードタイプの2端末を提供

 少々前置きが長くなったが、実際のサービスを検証していこう。今回評価用に提供された端末は、PCカードタイプの2製品だ。1つはNECインフロンティア製の「GX000N」、もう1つはネットインデックス製の「GX000IN」となる。

 それぞれサイズや消費電力などに若干の違いがあり、提供されるユーティリティソフトも異なるが、実質的にはどちらを選んでも大差はないだろう。


NECインフロンティア製の「GX000N」(左)とネットインデックス製の「GX000IN」(右)。見た目はほとんど違いはない

 ただし、今回のエリア限定サービスにおいては、NECインフロンティア製の「GX000N」のチューニングが間に合わなかった関係で、変調方式に256QAMを利用した通信ができるのはネットインデックス製の「GX000IN」のみに限られていた。256QAMによる変調は、XGPならではの特徴でもあり、最大20Mbpsという速度の前提ともなっている。後述するテスト結果に差があるのはその影響だ。

 また、カードの利用方法についても、現状は試用版ということでほぼ手動となっていた。NECインフロンティア製の「GX000N」は、付属のCD-ROMからドライバとユーティリティを個別にインストール。ネットインデックス製の「GX000IN」は同梱が間に合わなかったからか、同社Webサイトからユーティリティをダウンロードしてインストールした。

 インストール後、PCにカードを装着すれば準備は完了だ。ユーティリティを起動し、「接続」ボタンをクリックすれば接続が確立される(ネットインデックス製のユーティリティは、接続先の登録も必要)。カードがネットワークアダプタとして認識される点、ユーティリティで接続する点などは、WiMAXとほぼ同じと言えるだろう。

 なお、今回提供された端末はPCカードタイプとなるため、PC側にCardBus対応のPCカードスロットが必須となる。最近はネットブックなどを中心に、PCカードスロット自体が姿を消しはじめている。将来的にはUSB接続型のアダプタも用意されるはずなので、サービス開始の際にはUSBの端末を使うのが一般的になるだろう。


ネットインデックス製のGX000IN装着時のデバイスマネージャ。ネットワークアダプタとして認識される ネットインデックス製の接続ユーティリティ。接続/切断/終了ボタンがある程度のシンプルな構成。なお、試用版では接続先の登録が必要だった NECインフロンティア製のユーティリティ。こちらもシンプルな構成

最大速度は他のサービスを圧倒

 パフォーマンスに関しては、なかなかの実力だ。主要駅で速度を計測してみたのが以下のグラフになるが、その前に試用環境について若干補足しておこう。端末はWindows XP/Vistaに対応しているが(Windows 7ではネットインデックス製のみエラーでインストール不可)、今回はウィルコムが推奨するWindows XP SP3を利用し、さらにMTUやRWINなどのパラメーターも調整してから速度を計測した(MTU:1500、RWIN:13万1400)。

 WiMAXに関してはUQコミュニケーションズの資料でMTU1400以下が推奨されているので、この値を設定しているが、RWINに関しては共通となるため13万1400で計測した。なお、Windows Vistaを利用した場合は、TCP/IP関連のパラメータは自動調整となるため、値が変わる可能性がある点もあらかじめ断っておく。


新宿、渋谷、池袋の各駅前で速度を計測。参考としてUQ WiMAXとイー・モバイル(下り7.2Mbps/上りs384kbps)の値も計測した。PCには富士通「FMV-LOOX R/A70(Core 2 Duo SL7100/RAM4GB/HDD120GB/Windows XP Professional)」を使用した。計測値は、「speed.rbbtoday.com」で5回計測した平均を記載している

 結果を見ると、ネットインデックス製のカードを利用した場合の値が優秀だ。下りに関してはWiMAXの方が高速な場合もあるが、下りで6〜7Mbps前後、上りで5Mbps前後の速度が実現できている。上下対称のメリットが出ていると考えられるが、後述するGX000Nの場合、上りの速度があまり高くないことを踏まえると、256QAMのメリットが出ているとも考えられる。

 一方、NECインフロンティア製のGX000Nを利用した場合、下りも若干劣るが、上りが1Mbps前後とあまり高くない。前述した通り、こちらのカードは256QAM対応が間に合わなかったことが原因と考えられるが、この結果はこの結果で、電波状況が悪く256QAMが使えなかった場合の値と考えれば良いだろう。

 続いて、屋内やビルの谷間でのテストを実施してみた。高層ビルの前やビルの中、さらにビルに囲まれた場所などで計測したのが以下のグラフだ。ビルの中などでもエリア内なら問題なく通信できている。


きちんとエリアに含まれている場所であれば、ビルの中、ビルの谷間などでも問題なく通信できる。これなら、喫茶店などで使っても問題なさそうだ

新宿南口をしばらく歩いたところにある小田急サザンタワー。1階のロビーの中でも問題なく通信できた 新宿西口のヨドバシカメラの前。前後左右がビルに囲まれているが、こちらも問題なく通信できた

 最後に電車内での通信も試してみた。小田急線の新宿駅で停車中の場合、かなり速い速度で通信できたが、さすがに移動をはじめると速度が低下。さらに2駅ほど通過したところで圏外になり通信が途切れた。エリアが整備されていない以上、電車での利用というのは、まだ無理がありそうだ。

 とは言え、実際に使ってみた印象としては、他のサービスよりも速度の安定性が高い点に感心した。同じ場所、もしくは少し場所を移動して計測したとしても、さほど速度にばらつきが発生しない。現状は利用できるエリアは限られているのものの、エリア内であれば比較的場所を問わず高速な通信が可能となっており、小さな“穴”があまりない。このあたりはマイクロセルの恩恵と言おうか、やはり安定性という点での魅力は大きいだろう。

この1年が勝負

 以上、ウィルコムの次世代サービス「WILLCOM CORE XGP」を実際にテストしてみたが、規格としての実力は非常に高いと言える。特に上りが速いことと安定性が高いことは大きな魅力になるだろう。外出先から写真やビデオを送る、大きなサイズのプレゼン資料を送るなどといった使い方にも躊躇なく利用できる。そういった意味では固定回線の置き換えとしての魅力も高そうだ。

 ただし、問題はエリアだ。この半年で大きくエリアを拡大しつつあるUQ WiMAXでさえ、まだ常用するとなるとエリアが狭いことが問題になる。XGPの場合、品質という特徴を生かすにはマイクロセルによる濃密なエリア展開が不可欠と言える。この1年でそれがどこまでできるかがサービス普及のポイントとなるだろう。


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2009/6/23 11:00  

清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ

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