いよいよ本連載も最終回です。この連載において毎週ブログについて記事を書いていく中で、私の「ブログ」というものの捉え方、考え方も少しずつ変わってきました。
単純に言葉の意味でいえば、連載第1回にも書いた通り、「ブログ」は「Web上に日々つけられていく記録」というような意味で、ニュース、企業サイトの新着情報、オンラインショップの新製品情報、日記など、継続的に更新されていくWebページ全般を指す言葉になります。
それはそれとして、こんにち私たちが何の前置きもなく「ブログ」というときには、RSSやトラックバックといった機能がついているもの、と考えていいでしょう。今回はこの「ブログ」とは何なのか? ブログで新しく何ができるようになり、Webがどう変わるのか? ということを改めて考えて、連載のまとめとしたいと思います。
■使いやすいサイト管理ツール
第1回でも強調したのが、この「ツール」としての面です。ブログツールは使いやすく、できあがるサイトは高度に洗練されています。ページデザインの面ではテキストを中心にしたシンプルな構造で、新しい情報が上に表示されることによって、効率よく情報を見せることができます。
また、過去の記事はアーカイブとして自動的にまとめてくれたり、記事ひとつひとつにパーマリンク(ずっと変わらないURL)が設定されていることで、その記事の情報を参照するときにリンクを張りやすくなっていたりと、書き手にも、その情報を参照する人にも便利なシステムになっています。
■見つけやすく、提供しやすい、新感覚の情報交換システム
従来の「ホームページ」と違い、ブログの記事は非常に見つけやすく、書き手にしてみれば見つかりやすい、情報を提供しやすい構造になっているといえます。「見つけやすさ」のひとつは、シンプルなHTMLが検索エンジンに評価されやすく、上位にヒットしやすい、ということにもなります。また情報が提供しやすい理由のひとつとしては「ツールが使いやすい」ということも挙げられるでしょう。
もっと大きな理由としては、RSSとアップデートping、ブログポータルの働きが挙げられます。RSSを使うことでブログの記事の概要を収集したり加工することが簡単になり、アップデートpingをブログポータルに向けて送ることで、最新のデータがすぐにブログポータルの新着リストに載ったり、検索用のデータベースに登録されます。
そして、次の「知を連結し、組織化するシステム」ということとも重なるのですが、積極的なほかの記事の参照(リンク)やトラックバックによって、価値のある情報は必然的にWebの中で目立っていくようなシステムができあがっています。これは、書き手からすれば今までのホームページよりもずっと「やりがい」があるシステムだ、ともいえるでしょう。
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News&Blog Search β
http://news.drecom.jp/
ニュースやブログの記事を収集し、関連するものをまとめて表示する検索サービス。記事中に使われている単語や文章の共通点を解析して、関連する記事を見つけ出す。こういった新しい検索サービスが普及していけば、興味を持つことがらに関する記事を多数見つけることができ、また興味を持つ多数の人に見つけてもらえるようになる
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未来検索livedoor
http://sf.livedoor.com/
キーワードを入力することで、300万件以上のブログの記事から記事を検索できる。検索結果のRSSをRSSリーダーに登録しておくと、RSSリーダーで見るたびに最新の検索結果が見られる。また、「アラート」機能を設定しておけば、新しい検索結果が見つかったときにメールで通知してくれる。このように、ブログの記事をすばやく見つけるためのサービス。書き手からしてみれば、注目度の高いものについてブログに記事をかけば、確実に多くの人の目に止まることになる
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■知を連結し、組織化するシステム
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ありがとBLOG
http://arigato.cocolog-nifty.com/
「ありがと」という言葉をコンセプトにしたブログ。コメントやトラックバックで寄せられた「ありがと」エピソードをもとに、コンテンツが作られていく。もともとココログにあるトラックバック企画「トラックバック野郎」のコンセプトが「トラックバックを集めること」とすれば、こちらのコンセプトはまさに「知の組織化」。集まったエピソードは、多くの人を暖かい気持ちにしてくれるはず
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「知」というのはちょっと気取ったいいかたになりますが、トラックバックによって関連情報を次々と連結していき、情報を組織化できる、というのもブログの大きな特徴です。たとえば前回のインタビューでは「レシピの記事に、自分が料理した感想や、これから作る人へのアドバイスがトラックバックされるようにしたい」という話がありました。
これなどは、「組織化された知」の典型的な例です。ただレシピを見るだけでなく、それを実際に作った人の感想や、農家から自慢の野菜についての情報、上手に作れる調理器具や調味料の情報なんかもがトラックバックされたりして、それらの情報もまとめて見られるようになるでしょう。野菜の情報には産地の地域情報・観光情報がトラックバックされて……というように関連情報が次々と連結されていくことで、インターネット上に大きなイモヅル式データベースができあがります。
従来、情報と情報を組み合わせて新しい情報をつくりだす「編集」という行為は、誰かひとり(またはひとつの会社や編集部)の意思に基づいて行われるものでした。これに対して、トラックバックで作られていく「組織化された知」は、多くの人の意思、思惑が組み合わさったものです。ブログによって、これから今までとは違う「編集」の形が生まれるのかもしれません。
■ブログの使われ方は、これから決まっていく?
ブログは既に多くの人に普及していますが、みんなが使いこなしているかといえば、まだまだだと感じられます。とくに今回挙げた「新感覚の情報交換システム」として欠かせないRSSを活用している人は少なく、アップデートpingや「知を連結し、組織化するシステム」の主役となるトラックバックについても、おそるおそる使っている人が多い、というのが現状です。
ですから、ブログとは新感覚の情報交換システムだ、知を連結・組織化するシステムだといってみても、実のところ、そのように使いこなしている人はごく少数、というのが現状です。
◇参考:gooリサーチ 他人のBlogにトラックバックをつけたことがある人は21.5%
http://research.goo.ne.jp/Result/0406cl02/01.html
現時点では、よほどヘビーなブログユーザーや仕事で大量のブログをチェックする必要のある人でもなければ、RSSの便利さをそれほど感じられないでしょう、それに、ぜんぜん知らない人にいきなりトラックバックを送るのは、普通の感覚ではどうも気が引けます。
しかし、RSSはこれから対応サイトが増えていくことで、どんどん多くの人が使うようになるでしょう。そしてトラックバックなどのコミュニケーション機能については、これから「普通の人」がブログをする比率が高くなることで、普通の人向けのコンセンサス(または多数派の流儀)ができあがっていくのではないかと予想しています。
インターネットが「実名で使うもの」からいつのまにか「匿名のもの」に変わっていったように、「Webページ」ではなく「ホームページ」という言葉が定着したように、日本人の感覚に合ったトラックバックやコメントの使い方が、だんだん広まっていくと思います。アメリカからやってきた「ブログ」は、これから時間をかけて日本人の中に馴染んでいくのでしょう。そんな大きな動きを眺めながら、私はこれからも個人としてブログを楽しんでいきたいと思います。
日々あちこちのブログを見ていると、本連載をきっかけにブログを始めた、という方のブログを拝見することもあり、とても嬉しく思います。この連載が、ひとりでも多くの方にブログの楽しさ、素晴らしさを伝えられることを願っています。今までお付き合いありがとうございました。
(2004/06/25)
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