世界中の短波放送が聴ける! 3波対応のUSBラジオ
サンコー「USB短波/AM/FMラジオ」


 以前紹介したサンコーの「USB AM/FM RADIO」が進化した。従来のAMとFMに加え、短波放送の受信が可能な機能強化版「USB短波/AM/FMラジオ」が登場したのである。

 短波に対応したことで日本の主要なラジオ放送をフルカバー。さらには世界各国の放送局が運営する海外向けラジオ放送の受信が可能になる。PCをワールドワイドなマルチバンドレシーバーにするラジオリスナー注目の製品である。

パネル型のコンパクトなユニットに外部アンテナが付属

サンコーの「USB短波/AM/FMラジオ」。外部接続式のループアンテナも付属する。直販サイトでの購入価格は4980円

 透明なプラスチックに縁取られたユニークなデザインは、以前の製品と変わらない。本体に関して言えば、見た目の大きな違いは色だ。ホワイトから本製品では精悍なツヤ消しのブラックに変更されている。

 パネル中央には縦型の大きなインジケータランプが配置され、短波放送受信時にイエロー、FM受信時はグリーン、AM受信時はレッドに光る。パネルの裏にはPCと接続するミニBタイプのUSBポート、それにアンテナ接続用の端子がある。ボタンやスイッチなどはないシンプルな縦置きのパネル型ユニットだ。

 PCとはノイズ対策が施された付属の専用USBケーブルで接続する。このケーブルは約2mと十分な長さがあるので、本体をPCや蛍光灯など、ラジオの受信に悪影響を及ぼす可能性がある電気製品から遠ざけることができるだろう。

 「USB短波/AM/FMラジオ」は、本体単体で対応するすべてのラジオ放送を受信することができる点が特徴の1つだ。コンパクトなパネル型ユニットとケーブルだけであれば、気軽に持ち歩くこともできるだろう。しかし、場所によっては十分な感度が得られないことがある。そんなときに活躍するのが外部アンテナだ。

 製品には本体パネル裏のジャックに接続する短波、FM兼用のループアンテナが付属している。長方形のフレームに細長いケーブルを幾重にも巻き付けたアンテナだ。FM用よりも、むしろAM用として一般的なタイプだが、短波の受信を重視して採用されたのだろう。

 外部アンテナの威力は絶大だ。筆者の部屋は電波状況が悪く、本体だけでまともに受信できるのはAMのみ。FMは雑音が気になるし、短波に至ってはほとんど音声が入ってこないという状況だ。ところが外部アンテナを接続すると一変。FMはクリアなステレオ放送が楽しめるし、短波放送もしっかりと聴こえてくるのである。少々面倒ではあるが、やはりアンテナの常用をお勧めしたい。


フロントパネルの中央に縦長の大きなインジケータランプがある。FM放送受信中はここがグリーンに光るAM放送受信中のインジケータはレッド。短波ではイエローに変わり、ひと目でどの帯域を受信しているかが見分けられる

海外の放送が受信できる短波ラジオ

本体のサイズは96×111×41mm(幅×高×奥行)。重量約110g。一見するとラジオとは思えないシンプルなパネル型デザインだ

 周波数3MHzから30MHzの電波を短波と呼ぶ。本製品では3MHzから20MHzまでの短波放送が受信可能だ。中波のAM(日本では531KHz~1602KHz)と、超短波のFM(同76MHz~90MHz)の中間にあたる。この帯域ではNHKが海外向けの放送をしているほか、国内向けの広域放送では「ラジオNIKKEI(旧ラジオたんぱ)」が有名だ。

 AMラジオやFMラジオに比べると対応製品が限られているためか、短波放送の知名度は今ひとつといったところかもしれない。しかし、経済情報や競馬実況といった分野では高い人気を誇っている。短波放送が受信できるポータブルラジオは「株ラジオ」または「競馬ラジオ」と呼ばれることがあり、株式トレーダーやJRAファンの必須アイテムとなっているようである。

 短波帯の電波には大きな特徴もある。地球を取り巻いている電離層に反射されるのだ。この性質をうまく利用すると、直線では到達できない非常に遠く離れた放送局の電波を受信できる。条件さえ整えば、地球の裏側、例えば南アメリカのラジオ放送をダイレクトに聴くことが可能なのだ。

 今から30年ほど前、短波ラジオで海外の放送をキャッチするBCLというホビーが流行したことがある。ただ聴くだけでなく、放送局に受信報告書を送るとベリカード(QSLカード)と呼ばれる証明書が返送されてくるという楽しみもあった。ところが、季節や時間帯によって受信できる局が異なるだけでなく、太陽の活動などによってもコンディションが左右される。レアな放送局のカードを手に入れようと、日夜ラジオに向かうマニアも少なくなかったという。

 実は短波が受信できるのならばと、このラジオで海外の放送を狙ってはみたのだが、筆者の部屋は鉄筋のマンションに取り囲まれた厳しい環境。なんとか音声らしきものをとらえることはできたものの、残念ながらまともに聞き取れるレベルには至らなかった。室内のキャビネットにクリップで挟み付けたアンテナでお手軽に楽しめるほど甘くはなかったようである。

 とは言え、米国の「VOA」や英国の「BBC」をはじめとして、短波を全世界に向けて放送している局は各国にある。その国のラジオ放送にリアルタイムで触れるのは国際感覚を養えるという点でも魅力的だ。基礎的な単語だけを使い、ゆっくりと話してくれる英語放送などもあるそうで、語学学習に役立てることもできるだろう。もう少し時間があればアンテナの設置場所などを工夫し、ぜひとも聴いてみたかったところである。


USBケーブルとアンテナケーブルはそれぞれ約2m。PCなどから離れた場所に設置すればノイズを最小限に抑えられるだろう四角いフレームにケーブルを巻き付けた短波、FM対応ループアンテナ。中のプレートを折り曲げるとスタンドになる

ラジオ受信ソフトはWEBページから入手する

 このUSBラジオのパッケージにはCD-ROMなどのメディアが付属していない。受信用のソフトはマニュアルに記載されたURL、またはサンコーレアモノショップの製品情報ページから入手することになる。というと面倒そうではあるが、ファイルサイズは1.3MBほどしかない。ブロードバンド環境では、それほど時間もかからずにダウンロードできるだろう。また、インストール自体もすぐに完了でき、ひょっとしたらCD-ROMをセットするより手早く簡単かもしれない。

 受信ソフトのウィンドウはメタリック系のカラーを多用したミニコンポ風だ。受信周波数を表示するディスプレイの下に操作ボタン、スライド式ボリューム、アイコンが並んだ扱いやすさ重視のデザインだ。選局は短波、FM、AMそれぞれ100局のプリセットが可能。MP3形式とWAV形式に対応した録音再生機能に加え、開始時刻、終了時刻、周波数を指定するタイマー予約録音機能を搭載している。


製品情報ページからダウンロードするラジオ受信ソフト。それぞれの操作ボタンが大きくて扱いやすい。動作も軽快だ。対応OSはWindows Vista/XP短波、FM、AMをそれぞれ100局分登録できるプリセットボタンパネル。右下のアイコンをクリックすると表示される

タイマー予約録音機能を搭載。PCの電源が入っている必要はあるが、聞き逃したくない番組の録音に便利だ地域による周波数設定のほか、オートスキャンの感度レベル、録音ファイル形式や音質などが指定できる

 筆者個人としてはオートスキャンの感度を3段階に調整できるのが有り難かった。場所によっては各局の電波が入り乱れ、スキャンが役に立たない場合があるのだが、感度を落とせば主要な局だけを素早く見つけることができるからだ。

 PC用ラジオチューナー最大のメリットは、聴いていて気になった番組を即座に録音できるという点ではないだろうか。PCなら長時間の連続録音が可能なほか、録音時間は実質上無制限。MP3形式で記録すればストレージ容量の圧迫は気にならない。

 音声データは繰り返し再生できるし、携帯音楽プレーヤーに転送するなど、幅広く応用が利く。音楽やトークを聴くだけでなく、情報収集や学習に大きな威力を発揮するのである。インターネットでの番組配信も良いが、やっぱり生の電波を受信したい、そんなラジオファンにお勧めしたいアイテムだ。


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(斉藤 成樹)
2009/12/2 06:00