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第186回:巨大アンテナの存在感に圧倒
バッファローのハイパワー無線LANルータ「WHR-HP-AMPG」


 バッファローからIEEE 802.11a/b/gの同時通信に対応した新型の無線LANルータ「WHR-HP-AMPG」が登場した。最大の特徴は、従来モデルの2倍以上はあろうかという巨大なアンテナだ。従来から発売されてるハイパワーモデルとの性能を比較してみよう。





WHR-HP-AMPG
 製品写真を見たときも驚いたが、実際の製品を目の当たりにしてみると、今回登場した「WHR-HP-AMPG」の存在感は圧倒的だ。バッファローのAirstationシリーズは、昨年8月に発売された第3世代の製品から本体のデザインが一新され、小型でスリムな筐体に変更されたが、その小型の本体からアンテナが天高くそびえ立っている。

 もちろん、ここまで巨大なアンテナが搭載されたのには理由がある。以前に本コラムでIEEE 802.11b/g準拠の「WHR-HP-G54」をレビューしたが、今回のWHR-HP-AMPGもWHR-HP-G54と同様に電波の出力を強化したハイパワーモデル(Airstation Booster搭載モデル)となっており、無線LANの電波が強化され、家中の隅々まで届けることができるのが特徴となっている。従来のWHR-HP-G54がIEEE 802.11b/g準拠だったのに対して、IEEE 802.11a/b/g準拠となっていることからわかる通り、今回のWHR-HP-AMPGは言わばIEEE 802.11aを利用したいユーザー向けのハイパワーモデルという位置付けだ。

 といわけで、今回は従来のハイパワーモデルである「WHR-HP-G54」と新製品の「WHR-HP-AMPG」を比較しながら、その実力を検証してみたいと思う。


本体と比べて倍近い大きさのアンテナが特徴 従来モデル「WHR-AM54G54」との大きさ比較

背面にはLANポートを4ポート搭載 横置き時

 まずは電波の出力だ。今回の「WHR-HP-AMPG」は、従来のハイパワーモデルよりも2倍近い大きさのアンテナを搭載しているが、従来のモデルと比べて電波出力が大きく向上しているわけではない。同社ホームページの情報によれば、ハイパワーモデルではない従来モデルの「WZR-HP-G54」という製品をベースとして比較した場合、IEEE 802.11gで20Mbpsの通信が可能な距離は、従来のハイパワーモデル「WHR-HP-G54」が220mで210%アップで、今回のWHR-HP-AMPGは210mで200%アップと、ほぼ同等の性能となっている。つまり、電波の出力性能としては、従来製品(WHR-HP-G54)とさほど変わらないというわけだ。

 それもそのはずで、無線LANの電波出力は電波法によって定められており、一定のレベルを超えることは許されない。もちろん、今回の大型アンテナはハイゲインアンテナと呼ばれることから大型化のメリットがあるのは確かだが、「アンテナの大きさ=電波出力の強さ」というわけではないのは頭の片隅に置いておいた方がいいだろう。





基本性能は高いが速度はクライアント環境にも左右される

 では、実際の性能はどうだろうか? 筆者宅(木造3階建て)の1Fにアクセスポイントを設置して、3FでFTPによる速度計測をしたのが以下のグラフだ。比較対象として従来のハイパワーモデルである「WHR-HP-G54」も同条件で速度を計測した。

製品名 get/put WHR-HP-G54 WHR-HP-AMPG
IEEE 802.11g IEEE 802.11g IEEE 802.11a
Intel 2915ABG get 19.4Mbps 19.1Mbps 17.9Mbps
put 17.0Mbps 19.8Mbps 14.5Mbps
WLI-CB-AMG54 get 20.6Mbps 30.0Mbps 28.8Mbps
put 18.5Mbps 21.4Mbps 22.2Mbps
WLI-CB-G54HP get 23.6Mbps 20.0Mbps -
put 22.4Mbps 21.5Mbps -
※サーバーにはFedoraCore3をインストールしたPentium4 630、RAM1GB、250GB HDD搭載機を使用
※クライアントにはWindows XP HomeをインストールしたPentium M740、RAM1GB、HDD100GB搭載機を使用
※Windows XPのコマンドプロンプトからFTPで接続し、20MBのZIPファイルを転送した速度を計測



 まず注目したいのは、グラフで黄色で示した結果だ。これはクライアントにIntel製の無線LAN(Intel PRO/Wireless 2915ABG)を内蔵したノートパソコンでの計測結果だ。IEEE 802.11aの結果が若干落ち込んでいるが、新製品のWHR-HP-AMPG、従来製品のWHR-HP-G54ともに19Mbps強とさほど大きな違いは見られない。3Fで実効20Mbpsの値を示すこと自体、かなり優秀な結果ではあるが、前述したように従来製品と新製品の差はあまりないようだ。

 ただし、この結果はクライアントを変更するとまた違ってくる。グラフで緑で示した部分に注目してほしい。この部分は、クライアントに同じくバッファロー製のWLI-CB-G54HP(ハイパワータイプのIEEE 802.11b/g対応カード)を利用した場合の測定結果だ。このケースでは、新製品のWHR-HP-AMPGよりも従来製品のWHR-HP-G54の結果の方が若干ながら高速な結果が得られている。一方、グラフで青で示したWLI-CB-AMG54をクライアントに利用した結果では、従来製品のWHR-HP-G54に比べて、新製品のWHR-HP-AMPGの結果の方が圧倒的に速い。

 なぜこのようにクライアントによって結果が変わるのかというと、利用しているチップの違いが大きく影響しているからだと思われる。従来製品のWHR-HP-G54ではBroadcom製の無線LANチップを採用しているが、新製品のWHR-HP-AMPGではAtheros製の無線LANチップを採用している。このため、Intel製チップを採用したクライアントの場合は、異なるチップ同士であるため大きな差が出なかったが、Broadcom製チップを採用したWLI-CB-G54をクライアントに利用した場合は、高速化技術のフレームバーストが有効になり、同じBroadcom製チップを採用したWHR-HP-G54の結果が高くなる。一方、Atheros製チップを採用したWLI-CB-AMG54では、同様にSuperA/Gが有効になり、同じAtheros製チップのWHR-HP-AMGPの結果が高くなるというわけだ。

 要するに、WHR-HP-AMPGは通常の非ハイパワーモデルと比較すれば確かに長距離で高速な通信が可能だが、本当の実力を発揮させるためにはAtheros製チップを採用したクライアントが必要ということだろう。今回は、ハイパワーモデルのクライアント製品が間に合わなかったため、非ハイパワーモデルの「WLI-CB-AMG54」を利用したが、ハイパワー無線LANカード「WLI-CB-AMG54HP」も発売される予定となっており、WHR-HP-AMGPとのセットモデル(WHR-HP-AMPG/PHP)もラインナップされる。最近ではノートPCに無線LANが内蔵されるのが当たり前のようになっているが、より高速な通信環境を求める場合はセットモデルでの購入をおすすめしたいところだ。





電波が届くか不安という人におすすめ

 このように、クライアント環境にもきちんと気を配れば、WHR-HP-AMPGの性能はかなり優秀だ。筆者宅は木造住宅ということもあるが、WLI-CB-AMG54との組み合わせで3Fで実効30Mbpsの速度を実現している。クライアント側もハイパワーモデルの「WLI-CB-AMG54HP」に変更すれば、さらに高い速度での通信も可能と予想できる。

 基本的な機能も充実しており、AOSSで手軽に接続できることはもちろんのこと、スイッチでルーターモードとブリッジモードを切替えられる点など、使いやすさも申し分ない。唯一の欠点は、おそらく巨大なアンテナを採用したことによるデザイン上の問題だけだろう。IEEE 802.11aを高速な環境で使いたいというユーザーにおすすめできる製品だ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/w/whr-hp-ampg/

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2006/02/28 11:05

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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