米Googleがオンラインカレンダーサービス「Google Calendar」のベータサービスを公開した。オンラインカレンダーサービスは、さまざまな事業者によってサービスが開始されているが、Google CalendarはGoogleらしい堅実な作りと優れたインターフェイス、手軽な共有機能が特徴と言える。早速、サービスの内容を検証してみよう。
■ 本格的な普及を迎えつつあるオンラインカレンダーサービス
以前、本コラムで取り上げた「30 Boxes」もそうだが、ここに来てオンラインカレンダーサービスへの注目が高まりつつある。
中でも大きな注目を集めているのが、米Googleがベータサービスを開始した「Google Calendar」だ。現状は米国向けサービスでインターフェイスもすべて英語だが、日本語でのスケジュール登録が可能なことから、国内で利用しているユーザーも少なくないようで、Google Calendarの使用感などをレポートしているブログも多い。これまで検索エンジンとしてはもちろんのこと、ドラッグ操作できる地図サービス「Google Maps」、GB単位のWebメールサービス「Gmail」など画期的なサービスを提供してきた企業のサービスだけに、期待しているユーザーも多いのだろう。
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米Googleが開始したGoogle Calendarのベータサービス。海外向けのサービスだが、日本語でのスケジュール登録も可能
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実際、筆者も家庭内でのスケジュール共有や仕事のスケジュール管理などでオンラインカレンダーサービスを利用することが多い。しかし、家族や仕事上の付き合いのあるメンバーと効率的にスケジュールを共有し、しかも携帯電話からも使えるサービスとなると、現状、どのサービスも決め手に欠ける印象がある。
今回のGoogle Calendarは米国のベータ版サービスであるため、携帯電話からの利用という要件は今の時点では満たしていない。ただし、将来的に国内でサービス提供が開始されれば、他のサービスに比べて使いやすいものになるのではないだろうかという期待感が高い。
■ Googleらしいシンプルで優れたインターフェイス
実際にサービスを利用してみたが、まず感心したのはその使いやすいインターフェイスだ。あらゆる操作が直感的にできるようになっており、スケジュールの作成や変更などにストレスを感じることがない。
たとえば、スケジュールの作成について見てみよう。Google Calendarのページにアクセスすると標準ではWeekでカレンダーが表示される。ここから、スケジュールを登録したい日付の該当する時間の部分をマウスでクリックすると、イベントを追加するための吹き出しがポップアップ表示される。ここにイベントの内容を入力すれば、それだけでイベントを作成できる。
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カレンダーをクリックするとポップアップが表示され、手軽にイベントを登録できる。また、ドラッグでのスケジュール変更など直感的な操作も可能だ
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しかも、登録したイベントはマウスでドラッグ&ドロップで操作できる。たとえばイベントの開始時間を1時間早めたければ、登録済みのスケジュールをマウスで上に2コマドラッグするだけで時間を変更できるとうわけだ。日付の変更なども同様にドラッグ&ドロップ操作でき、専用のスケジュール管理ソフトならまだしも、Web上のオンラインスケジューラーでここまで手軽なインターフェイスを実現したのには感心した。
また、「30 Boxes」ライクな自然文によるスケジュール登録にも対応している。「Quick Add」というリンクをクリックすると、イベントを入力するためのダイアログがポップアップ表示されるので、ここに「打ち合わせ 14:00 4/27」などと入力すれば、該当する日時にイベントが登録される。
このほか、イベント登録時に「Where」部分に住所を入力しておけば、それがGoogle Mapsと自動リンクされ、該当する地図を手軽に表示できるようにもなっている。ベータ版サービスながら、かなりの完成度で非常に使いやすい印象だ。
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30 Boxesのように自然文によるイベント登録にも対応。慣れると素早くイベントを登録できるようになる
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Google Mapsとの連携も可能。Where欄に住所を入力しておけば、その場所へのリンクが自動的に作成され、地図を手軽に表示できる
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■ スケジュール共有方法は3種類
このように使いやすいインターフェイスを備えるGoogle Calendarだが、やはり気になるのは、スケジュールの共有がどのような形態で実現できるかだ。この部分が使いにくいと、いくらインターフェイスが優れていようと個人的には使う気になれない。
結論から言えば、共有機能はかなり強力だ。Google Calendarでは複数の形態でスケジュールの共有が可能となっており、現状、インターネット上で提供されている他事業者のオンラインカレンダーサービスが採用しているさまざまな共有方法に対応している。具体的には以下の3形態での共有が可能だ。
この方法は言わばYahoo!カレンダー的な共有方法だ。Google Calendarでは標準で自分用のカレンダーが1つ作成されるが、このカレンダーに共有するメンバーを追加することで、自分のカレンダーを第三者に公開することが可能となる。
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自分のカレンダーを第三者に公開することが可能。共有したいユーザーのアカウントを登録すれば、そのユーザーが自分のカレンダーを参照することが可能となり、登録したイベントが相手に表示されるようになる
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Google Calendarでは、標準で作成される個人用カレンダーに加えて、新たにカレンダーを作成できる。この機能を利用して、他のユーザーと共有専用のカレンダーを作成するのがこの方法だ。使い方としてはgooカレンダーに近いと言えるだろう。
たとえば、「清水家」という家族用のカレンダーを作成し、共有メンバーに家族のアカウントを追加しておいたり、取引先やプロジェクトごとにカレンダーを作成して、個別に共有できる。作成したカレンダーは標準のビューでシームレスにスケジュール(個人用と共有用の両方を重ねて表示可能)表示できるため、複数カレンダーを作成した場合でもイベントの管理は容易だ。
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プロジェクトや仕事など用のカレンダーを新たに作成し、ほかのユーザーと共有することもできる。作成したカレンダーは左側の「Calendars」に登録され、表示/非表示を制御可能。標準ではすべてのカレンダーが1つのビューにシームレスに表示される
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最後はカレンダーに登録したイベントを共有する方法だ。カレンダーにイベントを登録後、詳細設定画面でイベントを共有したい相手のアカウントを「Guest」として追加する。これにより、そのイベントだけをほかのユーザーと共有できる。30 Boxesのタグと同じような考え方だ。
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Guestとして他のユーザーのアカウントを登録すれば、イベントごとに共有するユーザーを設定することも可能
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このように3形態の共有方法が利用できることで、Google Calendarでは、ニーズによって柔軟にスケジュールを共有できる。たとえば、家族など親密な間がらのメンバーとは個人カレンダーそのものを共有し、すべてのスケジュールを共有するのが手軽だろう。
これに対して、仕事上の付き合いがあるメンバーや特定のプロジェクトでスケジュールを共有する必要がある場合は、共有カレンダーの作成が適している。共有カレンダーなら、プライベートなスケジュールと仕事のスケジュールを区別しながら特定のイベントだけを手軽に共有することができる。最後のイベントの共有は、スポット的にスケジュールを共有する必要がある場合に利用すると便利だろう。
もちろん、複数の共有方法が存在するということは、どの共有方法をどういった場面で使えばいいかをユーザー自身でよく考える必要があるということでもあるが、うまく共有方法を使い分けることができれば、かなり強力なツールとなり得る。
このほか、登録したイベントについて共有しているユーザーと簡単なディスカッションしたり、Google Calendarユーザー以外にもパーティなどの案内を送付し、出欠を取るといった機能も利用可能だ。PCから利用するサービスとしては、現状もっとも柔軟で使いやすいサービスと言えるだろう。
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ほかの相手とイベントについてディスカッションしたり、出欠を取ることもできる。非常に多機能で使いやすいサービスだ
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■ 日本語版サービスの開始が待ち遠しい
以上、ベータ版サービスが開始されたGoogle Calendarを実際に利用してみたが、サービスとしての完成度はかなり高い印象だ。現状の米国版サービスでも日本語の利用は可能だが、やはり携帯電話との連携ができないと、日常的な利用には不便なシーンが多い。なるべく早く、国内でのサービスが登場してほしいところだ。
ただ、Googleがここまで強力なサービスを開始するとなれば、国内の他の事業者も黙ってはいないだろう。Google Calendarの登場によって、Yahoo!カレンダーやgooカレンダー、So-net Calendarなど、国内のポータルサイトやISPが提供するオンラインカレンダーサービスが刺激を受け、より使いやすいサービスになってくれることも同時に期待したい。
■ URL
Google Calendar(英文)
http://www.google.com/calendar/
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2006/04/25 11:00
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