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第211回:ISPフリーで利用可能な050番号電話サービス
フュージョン・コミュニケーションズ「FUSION フォンP'(ピース)」


 フュージョン・コミュニケーションズの「FUSION フォンP'(ピース)」はISPフリーで利用可能な050電話サービスだ。ソフトウェアフォンとしてさまざまな付加機能が搭載されているなど完成度も高い。現在提供中のトライアルサービスを利用した。





So-netからソフトウェアの提供を受けて開始

So-net フォンP'
 今回取り上げる「FUSION フォンP'」は、So-netとフュージョンのコラボレーションによって実現されたサービスだ。その名の通り、ベースとなるのはSo-netが提供している050番号を利用したIP電話サービス「So-net フォンP'」だが、So-netからこのソフトウェアとSIPサーバーの提供を受けることで、フュージョンがサービスを提供している。

 フュージョンと言えば、さまざまなISPにIP電話サービスを提供する巨大なIP電話事業者であり、ここがISPからソフトウェアとSIPサーバーの提供を受けるというのは、一見、逆のようにも思えるが、それだけSo-net フォンP'のソフトウェアが魅力的ということなのだろう。詳しくは後述するが、確かにこのサービスで利用されているソフトフォン、およびサービス内容は完成度が高い。

 もちろん、フュージョンがSo-net フォンP'のソフトウェアを利用することは、So-net側にとっても魅力的だ。現状、So-net フォンP'の利用にはSo-netの回線が必要になる(050番号利用時)。つまり、So-netだけで提供している限り、自社会員以外にサービスを利用してもらうことができないが、フュージョンに採用してもらえれば、他社ISPユーザーにもサービスを利用してもらうことが可能になる。

 実際、今回のFUSION フォンP'では、フュージョンの「Multi-Gatewayサービス」を利用することでISPフリーが実現されている。具体的には、050番号への着信をサーバー側からクライアントのソフトウェアに転送したり、ソフトウェアからの発信をサーバーへと転送する相互転送によって、実質的に050番号を利用した発着信を実現している。

 同様の仕組みは、03番号を利用したソフトフォンなどでも採用されており、言わばIP電話とインターネット電話のハイブリッドのような仕組みだが、これによって回線を問わず電話サービスを利用することが可能だ。FUSION フォンP'はインターネットに接続できる環境であれば、ISPはもちろん場所も問わずに利用できる。





トライアルサービスは通話料のみで利用可能

 早速サービスについて見ていこう。現状、FUSION フォンP'は本サービス前のトライアルサービスとなっている。このため、今のところは初期費用や月々の基本料が無料で、通話料のみで利用可能だ。通話料は一般加入電話への通話が全国一律3分8.4円(税込み)と一般的なIP電話とほぼ同等で、FUSION フォンP'やFUSION IP-Phoneとの通話が無料となっている。

 ただし、前述したようにFUSION フォンP'は、So-net フォンP'と密接な関係を持っているが、So-net フォンP'が利用するIP電話網はフュージョンではなくNTTコミュニケーションズとなる。このため、「フォンID」と呼ばれる「xxxxx@ph2.so-net.ne.jp」のような形式のユーザーID宛への通話は無料で可能だが、050番号への通話は課金対象となる点に注意が必要だ。

 サービスへの加入はホームページから手軽に行なえる。FUSION フォンP'のホームページから、必要事項を記入して申し込むと、その場で接続用のIDやパスワード、電話番号が割り当てられる(クレジットカードが必要)。その後、FUSION フォンP'のソフトウェアをダウンロードしてインストールし、ログインすればすぐに利用可能となる。


FUSION フォンP'の申し込みはホームページから可能。現在はトライアルサービスとなるため、初期費用および月額基本料は無料で利用できる

 なお、So-net フォンP'では050番号をユーザーが選択することが可能だが、FUSION フォンP'では番号の選択はできず、自動的に割り当てられる番号になった。また、利用するソフトウェアもSo-net フォンP'とほぼ同じだが、So-net フォンP'の待ち受け画面に表示される天気予報やニュースなどは、FUSION フォンP'の画面には表示されなかった。このあたり、電話サービスの提携はできていても、コンテンツの利用までは完全に提供できていない模様だ。





通話品質は良好。魅力は付加機能

専用番号(フォンID)による通話の場合、会話中にBGMを流したり、拍手や笑い声などの効果音を再生できる。実際に使ってみるとなかなか面白い機能だ
 さて、肝心の通話品質だが、筆者が試した限りではまったく問題なかった。一般加入電話や携帯電話から050番号に電話をかけると、「インターネット経由でおつなぎします」というアナウンスが流れるものの、そう言われなければまったくわからないほど非常にクリアな音質で通話できた。

 ただし、ソフトフォンの場合、回線状況などよりも、利用するマイクやスピーカーなどの種類や性能の方が音質に大きな影響を与える。できればヘッドセットやUSB接続の電話機型スピーカーマイクなどを利用すると良いだろう。また、050番号サービスであるため、緊急通話や「0120」「0570」などの特殊な番号への通話はできない点にも注意が必要だ。

 このように品質も良好なFUSION フォンP'だが、個人的に気に入ったのはソフトフォンならではの特徴がきちんと搭載されている点だ。これまでの一般的なソフトフォンは、単に通話できるだけの製品が多かったが、FUSION フォンP'にはさまざまな付加機能が搭載されている。

 基本的なところではUSBカメラによるテレビ電話なども可能だが、ほかの製品ではあまり見られない機能として、音楽と効果音の利用が可能となっている。たとえば通話中にBGMとして音楽を流すことができたり、拍手や笑い声などのボタンを使って会話中に効果音を鳴らすことなどができるようになっている。この機能は残念ながらフォンIDによる通話(フォンP'ソフトウェア同士の通話)でしか利用できないのだが、特に効果音などは使ってみると非常に面白い機能だ。

 このほか、いずれもフォンIDによる通話でしか利用できないが、4人までの同時通話、文字チャット、写真などのファイル共有なども可能となっており、電話のクライアントソフトというよりは、インスタントメッセージソフトとして使っても便利な機能が搭載されている。親しい友人や離れた場所に住む家族などとのコミュニケーション手段、ちょっとしたテレビ会議的な利用にはなかなか便利そうだ。

 中でも個人的に気に入ったのはTELサーチと呼ばれる機能だ。これは、厳密にはブラウザのアドイン機能なのだが、FUSION フォンP'と一緒にPCにインストールされ、ブラウザの表示メニューから選択することで利用可能となる(標準では無効になっている)。何ができるのかというと、要するにブラウザの画面内に電話番号が記載されている場合、これを自動的に探し出してハイライト表示できる。さらにハイライトされた電話番号をクリックすると、自動的にFUSION フォンP'の通話先に電話番号が入力され、後は通話ボタンを押すだけで電話をかけられるようになっている。


TELサーチを利用すると、ホームページ上に記載されている電話番号をハイライト表示し、クリックすることで簡単にFUSION フォンP'から電話をかけられる。次々電話をかけたいときなどは非常に重宝する

 たとえば、何かの集まりや会合などの幹事となったとき、インターネット上のグルメサイトで店を探し、そこに記載されている電話番号から電話をかけるということがよくあるが、このような場合でもFUSION フォンP'とTELサーチを使えば、手軽に電話をかけることができる。忘年会シーズンなど、なかなか予約が取れない場合などでも、ヘッドセットを使って次々電話すれば非常に重宝しそうだ。

 もちろん、これらの機能はSo-netフォンP'で実現されている機能を受け継いだものだが、こういったソフトフォンならではの具体的な使い方が提案され、そのメリットが実感できるというのは高く評価したいところだ。個人的には、これまであまりソフトフォンを実用的だと思ったことがなかったのだが、確かにこういった使い方ができるとソフトフォンも便利だと実感させられた。





基本料が安ければPCにインストールしておく価値はある

 このように、FUSION フォンP'は単なる電話ではなく、インスタントメッセンジャーと050電話サービスをうまく融合させ、PCで音声と映像によるコミュニケーションを手軽に楽しむことができるツールだと言える。本家となるSo-net フォンP'では、電話による占い(占い師とテレビ電話やチャットで相談できる)、BGMや効果音のダウンロードサービスなどといった充実したコンテンツも提供されており(利用にはSo-netのIDが必要)、コンテンツサービスとしての発展も期待できる。

 まだトライアルサービスであるため、料金など正式サービスの詳細は発表されていないが、FUSION フォンP'の基本料金が数百円程度と安ければ、独自コンテンツの利用や前述したTELサーチでの利用などを目的に加入しても悪くないサービスだと言える。今後は、さらに独自のサービスを提供し、単なる電話ではない存在感を示してくれることを望みたいところだ。


関連情報

URL
  FUSION フォンP'
  http://phonep.fusioncom.co.jp/

2006/09/12 10:55

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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