アイ・オー・データ機器から、HD-PLCを採用した高速PLCアダプタ「PLC-ET/M-S」が発売された。国内では2製品目となるHD-PLCの実力を検証してみよう。
■ 市場を先行するHD-PLC
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PLC-ET/M-S
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いわゆる「高速PLC」と呼ばれる規格には現在3方式が存在する。「Home Plug」「UPA」、そして「HD-PLC」だ。高速PLCの規格自体が国内で認可されたのが10月だったこともあり、そもそも市場に存在する製品が限られるものの、今回アイ・オー・データ機器からHD-PLCを採用した「PLC-ET/M-S」が発売されたことで、以前に本コラムで取り上げた松下電器産業の「BL-PA100KT」に続き、HD-PLC規格を採用した2例目の製品が他の規格に先駆けて登場したことになる。
と言っても、今回、アイ・オー・データ機器から発売された「PLC-ET/M-S」は、実質的には松下電器産業の「BL-PA100KT」と同等の製品だ。4~28MHzの周波数帯を利用したWavelet OFDM方式を採用し、理論上の最大速度は190Mbps(PLC間)、128ビットのAESによる暗号化と、基本的なスペックはBL-PA100KTと同じだ。
強いてBL-PA100KTとの違いを挙げるとすれば、本体カラーがシルバーからホワイトに、前面パネルの形状が半円形からスクウェアに変更されたこと。そしてLEDの配色(PLCランプがブルーからグリーンに)に違いがある程度だろう。
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PLC-ET/M-Sの背面
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上面にセットアップボタン
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松下電器産業のBL-PA100(左)とアイ・オー・データ機器のPLC-ET/M(右)。デザインなどに違いはあるが、基本的には同じ製品と考えて良い
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ただし、細かな点でアイ・オー・データ機器ならではの工夫もなされている。たとえば松下電器産業の製品ではペアで使う2つのPLCアダプタの関係を「マスター」「ターミナル」という言葉で表現していた。役割を考えれば適切な言葉ではあるのだが、誰にでもわかりやすいかと言われると、そうとも言いがたい。
これに対して、アイ・オー・データ機器の製品では「親機」「子機」と表現されており、本体の切り替えスイッチにもこの用語が記載されている。この親機、子機という表現は無線LANでも使われることが多いが、誰にでも直感的にわかる良い表現だと感じた。このほか、付属の取扱説明書も表現などがわかりやすく、より手軽な印象を受けた。
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背面のモード切替スイッチの表記が「親機」「子機」となっており、直感的でわかりやすい。初心者でも安心して利用できる
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もともとつなぐだけで使える手軽な製品ではあるが、松下電器産業の製品をベースに、より初心者でもカンタンに扱えるように工夫した製品と言えるだろう。
■ つなぐだけで利用可能
使い方は松下のBL-PA100と同様、あいかわらずカンタンだ。今回評価した「PLC-ET/M-S」は2台のPLCアダプタがセットになった製品だが、親機と子機のペアリングが出荷時に設定済みとなっている。このため、親機をルータやハブなどに接続してからコンセントに接続し、同様に子機を別の部屋のコンセントにつないでPCなどに接続すれば、すぐに利用できるようになる。
最近では無線LANなども出荷時に暗号化の設定などが済んでいることが多く、イーサネットタイプの子機などであれば事実上つなぐだけで利用可能となっているが、これと同等か、それ以上の使いやすさが実現されていると言って良いだろう。
なお、アイ・オー・データ機器では、PLCアダプタの発売記念として「PLC AAAキャンペーン」を展開中だ(2007年2月28日まで)。このキャンペーンでは、前述したように出荷時状態で設定済みの商品を発売するとともに、専用サポートダイヤルの設置、さらに専用ダイヤルを利用しても接続ができなかった場合に、2週間以内であれば購入代金を返金するサービスが行なわれている。
PLCの場合、設定と言っても本体のボタンを押して親機、子機のペアリングをやり直す程度とカンタンなため、接続できないというケースはあまり考えられないが、それでも心配ならこのキャンペーンを利用すると良いだろう。
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キャンペーンによって、手厚いサポートが受けられる。ネットワークの設定にあまり自信がない人は活用すると良いだろう
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■ パフォーマンスや特性をチェック
パフォーマンスについて筆者宅で実際にテストしてみたのが以下の図版だ。木造3階建ての1階に親機を設置し、同一フロア、2階、3階のおもなコンセントに子機を接続。クライアント(Lenovo ThinkPad T60)から、LAN上のFTPサーバー(アイ・オー・データ機器「HD-GT1.0」使用)に対して20MBのファイルを転送したときの速度を計測している。
PLCのパフォーマンスは、コンセントの系統や家庭内で利用されている家電製品の影響などによって変化するため、詳しくは「他機器との組み合わせや分電盤の影響など特性を知ることが導入の鍵 松下電器産業の高速PLCアダプタ「BL-PA100」をテスト」を参照して欲しいが、若干の違いはあるものの、前回とほぼ同じ結果が得られた。
今回の計測では、同一系統のコンセントの場合で30~40Mbps弱、別系統のコンセントの場合で25Mbps前後の結果が得られた。今回は家電製品を併用したときの値を記載していないが、基本的に同一コンセントに接続された家電製品を稼働させた場合に若干のパフォーマンス低下がみられる特性も、松下電器産業の製品と同じと考えて差し支えない。
なお、当然だがアイ・オーの「PLC-ET/M」と、松下の「BL-PA100」の相互接続性も問題なかった。マスターに設定したBL-PA100にPLC-ET/Mを子機として接続することが可能なのはもちろんのこと、その逆に親機の「PLC-ET/M」に「BL-PA100」を子機としてつなぐこともできた。何らかの理由で増設用子機として同一メーカーの製品が手に入らなかった場合でも、それぞれの製品を代用の子機として利用することが可能だ。
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PLC-ET/MとBL-PA100をお互いに接続。当然だが問題なく接続できた
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■ IPv6を使ったオンデマンドTVも問題なく視聴可能
採用する技術も含め、松下のBL-PA100とほぼ同等製品のために、基本的に前回と同じような内容のレポートとなってしまったが、今回は1つ新たなテストを追加で実施した。それはオンデマンドTVを利用した映像再生だ。4th MEDIAやOCNシアター、そして今回テストしたオンデマンドTVなど、光ファイバーを利用した映像配信サービスではIPv6を利用する。これがHD-PLCで利用できるかどうかを検証した。
結論から言うと、PLC経由でも問題なくSTBからネットワークに接続し、映像を再生できた。今回のテストに利用したオンデマンドTVでは、ハイビジョンの映像(H.264 8Mbps)の映像も配信しており、この映像を再生するにはコンスタントに10Mbps前後の伝送能力が要求されるが、PLC経由でもコマ落ちなどの問題はまったく見られず快適に再生できた。
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PLC-ET/M経由でオンデマンドTVを利用。契約の関係でマルチキャストのTVサービスは検証していないが、ビデオサービスの映像は問題なく再生できた
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現状、光ファイバーを利用した映像配信は、一部は無線LANでの利用も可能なものの、通信環境によっては帯域が確保できない場合もある。このため、実質的に有線LANで利用せざるを得ず、STBを設置できる場所が限られていた。これに対して、PLCを利用すれば、コンセントがある場所ならどこにでもSTBを配置できるようになる。これは、利用者にとっても大きなメリットだが、映像配信事業者としても各部屋にSTBを設置してもらえるチャンスと言えるだろう。
同様にDLNAのような家電とPCとの連携なども、実質的な配線が普及の障壁となっていた。こういったインフラの問題がPLCによって改善され、いままで一般的でなかったサービスが広く普及してくれば面白い。
■ URL
製品情報
http://www.iodata.jp/prod/network/plcadapter/2006/plc-etm/
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・ 第224回:他機器との組み合わせや分電盤の影響など特性を知ることが導入の鍵 松下電器産業の高速PLCアダプタ「BL-PA100」をテスト
2006/12/26 10:53
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