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第266回:サービスからはじまる「携帯電話とPCの融合」 Gmailを採用したKDDIの新ポータルサイト「au one」
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携帯電話向けとPC向けのポータルを一体化したKDDIの新サービス「au one」が9月27日から開始された。Gmailの技術を利用したau oneメールなどに注目が集まっているが、携帯電話とPCの世界の完全な融合にはまだ課題がありそうだ。
■ 「au」というブランドの偉大さ
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au oneのTOP画面
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「今まで知らなかっただけで、PCと連携できるサービスは意外に前から提供されていたんだなあ」。新たに開始されたau oneのサービスを実際に利用して、最初に感じたのはこんな感想だった。
たとえば、筆者は普段、打ち合せで向かう場所や乗り換え案内などをEZナビウォークで検索することが多い。そこで、常々、PCであらかじめ検索しておいて、その結果を後で携帯電話で見られれば便利だと感じていたのだが、今回のau oneでは、これが実現されている。
具体的には、PC用のポータルサイトの「乗り換え(チャネルのような番号で言うと3番)」を利用すれば、PCで入力した出発/到着駅などの履歴が携帯電話からも参照でき、ルートを「Myルート」に登録しておけば、携帯電話からも同じルートを即座に呼び出すことができるのだ。
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乗り換え検索やルート検索が可能なEZナビウォークのPC版。PCからの検索履歴やルートなどがリアルタイムに携帯電話にも反映される
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「さすが携帯とPCの融合」と感心したのもつかの間。よくよく調べてみると、PCとの連携はDUOGATEと呼ばれる従来のPC向けサービスですでに提供されていたサービスだった。また、EZナビウォークを提供しているNAVITMEの他キャリア向けサービスでも、PCからの検索結果を携帯電話で確認することは以前から可能だった。
というわけで、改めて考えさせられたのは、製品でもサービスでもそうだが「知ってもらってナンボ、実際に使ってもらってナンボ」ということだ。いくら便利なサービスでも、それをユーザーに知ってもらわなければ実際に使ってもらうことは難しいが、今回のau oneでは、「au」という、すでに確立されたブランドを利用し、さらにPCユーザーに馴染みの深い「Gmail」というブランドまでも併用することで、サービスの知名度を一気に向上させている。
実は、今回のau oneではフォトアルバムやブログ、お預かりデータなど、従来のDUOGATEのサービスの多くを引き継いでおり、サービスとしてはポータルの「DUOGATE」、PC向けISPの「DION」とauの「EZweb」を統合した形だ。
そもそもDUOGATEのコンセプトもau oneとほぼ同じだったことを考えると、ある意味ではサービスの再定義もしくは再構築と言うこともできるのだが、それを意識させることなく、「au one」という新しいサービスのように展開している。このあたりは、auというブランドの底力、そしてそのブランドをうまく利用するKDDIの戦略のうまさを実感させられる。
■ さらなる連携が望まれるau oneメール
では、実際の使い勝手を見ていこう。最も気になるのはやはり「au oneメール」だろう。これは前述したようにGoogleのGmailの技術を利用したサービスで「xxxxx@auone.jp」のメールアドレスをPCと携帯電話の両方で利用できる。
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Gmailの技術を利用したau oneメール。使い方はGmailそのものなので、慣れている人には便利
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サービス内容としてはGmailそのもので、画面イメージもほとんど同じだが、Gmailとは別のサーバーで運用されている。そのため既存のGmailのアカウントは利用できず、容量も2GBとなっている。
個人的には、これまでにもPCのメールをすべてYahoo!メールやGmailに転送して携帯電話から閲覧していたため、それと同じイメージで利用できるのがありがたい。もちろん、オーソドックスに携帯電話とPCの両方から使えるメイン、もしくはセカンドメールアドレスとして利用しても良いだろう。
ただし、au携帯電話から自動ログインできるなど、その利便性は高いものの、基本的にはWebメールなので、自動的に届く携帯電話のメールとは使い勝手は異なる。現状は未対応だが、将来的にau oneメールへの着信通知機能が搭載されるようになって欲しい。
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携帯電話からau oneメールを表示。自動ログインができるため手軽に利用できるが、携帯電話のメールの代わりとはしては力不足。PCメールの参照に使うのが便利
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また、携帯電話のメールアドレスに届いたメールを自動的にau oneメールにも保存(もしくは転送)できるようになれば、au oneメールをメールのアーカイブ先として利用することもできるだろう。Gmailの技術によって強力な検索ができるので、過去のメールをすべて保存しておいて、後から検索して探すなどという使い方ができるようになると便利そうだ。
■ 完全な一体化までの課題は残る
このように、今回の「au one」は、携帯電話とPCの一体化を目指したサービスであるが、実際に使ってみると「一体化」までには、まだいくつかの課題がありそうな印象を受けた。
たとえば、今回のサービスでは、電子書籍サービスの「au oneブック」、携帯ショッピングの「au Shopping Mall」のサービスをPCからも利用可能だが、できるのは商品写真や商品情報の閲覧のみで、PCから実際に商品を購入することはできない。商品を購入するには、画面に表示されているQRコードか、URLをメールで転送して携帯電話からアクセスして利用する必要がある(オークションはPCからも出品、入札が可能)。
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ショッピングなどのサービスでは、PCからは情報の参照のみが可能。購入はQRコード、もしくはメールによるURL通知で携帯電話から行なう必要がある
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このあたりはシステムの整備待ちということなのかもしれないが、製品の写真をPCの画面で見て、欲しいと思ってもすぐに買えないというのが実にもどかしい。おそらく将来的には携帯電話からもPCからもシームレスに使えるようになるのだろうが、商品写真を目の前に「お預け」と命令されているような印象だ。
ただし、改めて携帯電話向けのショッピングサイトをPCで利用してみると、携帯電話の小さな画面とPCの情報量の多い画面とでは、やはり商品に対する訴求力が大きく違うということを実感できた。このため、商品写真だけPCで見るという方法も十分に考えられるだろう。
であれば、もう少し方法を考えた方がよさそうだ。たとえば、ショッピングサイトで商品を選び、それを買い物リストのような形で登録しておく。そのリストを携帯電話とPCの両方で共有するという手もあるだろう。こうすれば、時間のあるときに携帯電話で欲しいものを物色。あとで気になる商品の写真をPCで閲覧。さらにPCで似た商品を探して買い物リストに追加。最終的に携帯電話で買うという1つのストーリーが作れる。
もちろん、理想は携帯電話でもPCでも同じサイトを使って、同じ決済方法で購入できることだろうが、今のままでも、買い物リストのような「検討する」というワンクッションを間に挟むだけで、シームレスな印象を与えることができるはずだ。
もしくは、完全に携帯電話を主役にしてしまうのも手だ。これには技術的な開発が不可欠だが、たとえば携帯電話の画面を必要なときにテレビに映し出せるようになれば、気になる商品をじっくり見たいときだけ、画面をテレビに映すといったことができる。今回のau oneはPCの世界との一体化が目指されているが、将来的には家電との一体化なども視野に入れるとサービスの幅も広がるはずだ。
■ 携帯電話の世界をPCや家電に
このように、KDDIの新サービス「au one」を実際に利用してみたが、現状はau oneメールのようなPC主導の世界と、「au Shopping Mall」のような携帯電話主導の世界がとりあえず「同居」しているという印象のサービスで、「融合」と呼べるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
このような融合は「FMC」と呼ぶこともできるが、個人的にFMCというと、どうしてもインフラの統合を思い浮かべてしまう。しかし、これまでのPCと携帯電話のサービスがそれぞれ独自に進化してきた状況を考えると、au oneのようなそれぞれのサービス、もしくは文化と言っても過言ではないが、この融合こそ重要だと言えるだろう。
ただし、サービスの融合となると、携帯電話、PC、そして家電と、その世界がその主導権を握るのかも大きな問題になる。今回のau oneは携帯電話がその主役となるというKDDIのメッセージと受け取ることもできるが、PCの世界、家電の世界からも融合を目指した試みが始まるだろうと考えると、今後、どの世界が覇権を握るのかが注目されるところだ。
■ URL
au one
http://cp.auone.jp/
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2007/10/23 11:00
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