「ネットワークTVボックス BRX-NT1」は、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」シリーズ向けに発売されているオプションユニットだ。HDMIなどで接続することで、インターネット経由で提供されている動画配信サービスをBRAVIAで視聴できる。その使用感をレポートしよう。
■ 1台で複数の動画配信サービスをまとめて楽しめる
BRX-NT1は、ソニーの液晶テレビブランド「BRAVIA」向けに提供されているオプションユニットだ。「ネットワークTVボックス」という名前の通り、ネットワーク経由で提供されている映像配信サービスを受信するためのユニットで、同社の「eyeVio」、USENの「GyaO」および有料サービスの「ギャオネクスト」、「アクトビラビデオ」「オンデマンドTV」「クラビットアリーナ」「G-CLUSTER」などのサービスを利用できる。
通常、これらの動画配信サービスを利用するには、対応テレビを利用するか、レンタルや購入などで別途専用の受信ユニットを用意しなければならないが、BRX-NT1なら、複数のサービスに1台で対応できるというわけだ。
ソニーのネットワークTVボックス「BRX-NT1」。BRAVIA向けのオプションユニットで、インターネット上の動画配信サービスを利用できる
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筆者宅の場合、テスト目的ということもあり、リビングのテレビに4th MEDIA、オンデマンドTV、ギャオネクストの受信機が接続され(必要に応じてつなぎ直している)、さらにケーブルテレビのJ:COM用のチューナーが接続されるという、もはや収集のつかない状態になっている。
こんなケースはあまりないもしれないが、BRX-NT1を利用すれば、少なくとも複数の受信機をつなぐなどという面倒からも解放される。また、「動画配信サービスを楽しみたいが、どのサービスを選んで、どんな機器をそろえればいいのかわからない」という場合でも、複数のサービスに対応しているBRX-NT1であれば、ハードウェアを先に揃えてあとからサービスを選ぶ、ということも可能だ。
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オンデマンドTV、ギャオネクストのチューナーとBRX-NT1。複数のサービスに対応しているのでチューナーを統合できる
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動画配信サービスは統合の方向へと進みつつあるが、利用者からすると、まだまだ複数のサービスが乱立してわかりにくいのは事実だ。これをハードウェアの立場から解決しよいうというのが、このBRX-NT1ということになる。
■ 難航が伺える各社サービスへの対応
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ギャオネクスト
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とは言え、このBRX-NT1を実際に使ってみると、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、他社を巻き込んだサービスとしてネットワークで提供する、というモデルがいかに難しいものであるのかがよく理解できる。
それはサービスへの対応にかなり難航している状況からもよくわかる。BRX-NT1が発売されたのは昨年の11月末だが、その時点で実際に利用できたのは前述した対応サービスのうち、アクトビラビデオなどごくわずか。発売から3カ月ほどが経過した現在は、eyeVio、ギャオネクスト、アクトビラビデオ、GyaOが正式サービスとして利用可能だが、クラビットアリーナはプレオープンの試験サービス中となっており、オンデマンドTVに至っては度重なる延期でまだサービスは開始されていない(現状は1月中旬開始予定)。
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オンデマンドTVは現時点でサービス未提供
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クラビットアリーナ
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アクトビラ
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GyaO
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BRX-NT1の最大の特徴は複数のサービスに1台で対応できる点だが、これが完全に実現するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
ユーザーとしては単純に「早く対応して欲しい」という感想を持つところだが、他社のサービス、それも統一された規格のないバラバラなサービスと連携するハードウェアやソフトウェアを開発するというのは、相当な苦労があるのだろう。
■ BRAVIAリンクでハードウェア連携は問題なし
一方、ハードウェアとしての連携機能はかなり良くできている。たとえば物理的な設置では、BRX-NT1は付属のスタンドを利用して独立させて設置することも可能だが、もう1つ付属する透明のアタッチメントを利用することで、BRAVIAシリーズの背面に引っ掛けるようなイメージで取り付けることもできる。
付属のアタッチメントを利用することで、BRAVIAシリーズの背面に装着できる
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また、HDMIでBRAVIAと接続することで、BRAVIAに付属のリモコンでシームレスにBRX-NT1を操作することも可能だ。残念ながら筆者が所有しているBRAVIA(KDL-20J3000)は対応モデルではないが、BRX-NT1側のリモコンでBRX-NT1とBRAVIA本体の両方を操作できるようになっており、あたかもテレビの一機能のような感覚でBRX-NT1を利用できた。
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対応テレビを利用すればHDMIのリンク機能によって1つのリモコンでシームレスな操作が可能。筆者宅のBRAVIA(KDX-20J3000)は非対応機種だが、リモコンの操作切り替えボタンによってテレビもBRX-NT1も1つのリモコンで操作可能
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なお、BRX-NT1はBRAVIA向けのオプションだが、HDMIもしくはD端子を搭載したテレビであれば、他社製の製品でも利用可能だ。もちろん、前述した背面への設置やシームレスなリモコン操作は不可能だが、通常の外付け機器としてであれば問題なく利用できる。
どこまでニーズがあるかはわからないが、ギャオネクストとオンデマンドTVの両方を楽しみたいという場合などは、受信機を1台に統一できるメリットがあるので、他社製のテレビでも利用する価値はありそうだ。
■ サービスごとの操作性の統一感にも難あり
実際に使ってみると、ソニー製品ならではのXMB(クロスメディアバー)形式のメニューから各種サービスを選んで利用できるようになっており、手軽に操作できる印象だ。GyaO NEXTのようにサービスへの登録が必要なケースもあるが、オンラインで手軽に登録できるので手間もかからないだろう。
クロスメディアバー(XMB)による操作で各サービスを手軽に選べるようになっている。オンデマンドTVのチャンネルサービスやeyeVioなどにも対応している
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GyaO NEXTやオンデマンドTVの利用にはサービスへの登録が必要。GyaO NEXTはオンラインで登録できる
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ただし、サービスの内部の操作性に関しては若干の改善の余地はある。メニュー画面などは既存サービスとほぼ同じで、たとえばギャオネクストなどは専用チューナーと同じ画面が表示されるのだが、いかんせん利用しているハードウェア、特にリモコンが違うため操作に違いが生じる。
たとえばギャオネクストの専用ハードウェアでは、リモコンの「戻る」ボタンを押すことで、選択した画面から前の画面に戻ることが簡単にできる。ところが、BRX-NT1だと、リモコンの「戻る」ボタンが利用できない。
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ギャオネクストではリモコンの「戻る」ボタンで前の画面に戻れないため、画面上のナビゲーションを利用して前の画面に戻る
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せめて前の画面に戻るためのボタンが画面上にでもあれば良いのだが、ギャオネクストのユーザーインターフェイスは、前の画面に戻る操作をリモコンの「戻る」ボタンでの操作のみしか想定していないためにそれすらもできない。このため、BRX-NT1からギャオネクストを表示して前の画面に戻るためには、画面左下に表示されている階層ナビゲーションのリンク(いわゆるパンくず)を使って戻るしかない。
この「戻る」ボタンの仕様は、クラビット・アリーナなどでも同様なのだが、こちらは「戻る」操作をリモコンの緑ボタンに割り当てるなどの工夫がなされている。とは言え、使い慣れた「戻る」ボタンでの操作ができないのはストレスを感じてしまう。
こういった統一性の欠如は、やはりサービスを提供する側とハードウェア、ソフトウェアを提供する側が異なることによる連携の限界を感じてしまった。
■ 今後の改善が不可欠
以上、ソニーのネットワークTVボックス「BRX-NT1」を実際に利用してみたが、現段階では一般的におすすめするのは少々難があるという印象だ。すべてのサービスが開始されていないというのが何より大きな欠点だが、サービスごとの操作性なども改善されないことには、肝心の映像を見るまでの操作が面倒でならない。
また、このような製品の登場を機に、サービスを提供する側にもぜひ1つ検討して欲しい点がある。複数受信端末利用時の負担軽減だ。現状、ギャオネクストやオンデマンドTVでは、複数の受信端末を利用する場合、各受信端末ごとに契約が必要で料金も通常通り課金されてしまう。
もちろん、受信端末ごとに配信コストがかかる以上、2台目以降は無償で、というわけにもいかないだろう。しかし、今回のBRX-NT1のように市販の受信端末を購入した場合、さらには将来的にテレビに受信端末の機能が当たり間のように内蔵されるようになってきた場合、すべての機器でサービスを利用できるようにするのに多額の料金を支払わなければならなくなってしまう。
2台目以降の受信端末の料金を割り引く、1契約で2~3台の受信端末を設置できる料金プランを用意する、さらには設置台数ではなく同時利用の台数を制限するプラン(たとえば4台設置でも同時にサービスを使えるのは1台のみ)など、複数の受信端末が存在することを想定した料金プランも検討して欲しい。
また、既存の受信端末からの切り替えも面倒な点だ。今回ギャオネクストを既存の受信端末からBRX-NT1に切り替えようとしたところ、既存端末での契約を解約し、BRX-NT1などの新しい受信端末で新規にサービスに加入し直す必要があるとの回答を得た。個人的な受信契約自体は存在するのだから、端末の切り替えだけを電話などで手軽にできるようにならないものだろうか?
いずれにせよ、このような製品が家電メーカーから登場したことは歓迎すべきことだが、サービスとの連携という点でまだまだ改善の余地がある。将来的な普及には、このような操作性や事務処理などの改善が不可欠だろう。
■ URL
製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/bravia/products/BRX-NT1/
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2008/01/22 11:10
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