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第282回:Windows Live メッセンジャーで050番号発信
「Windows Live Call by ドットフォン」を試す


 Windows Live メッセンジャー 2008から050番号によるIP電話発信が可能な「Windows Live Call by ドットフォン」のサービスが開始された。メッセンジャーから電話をかけられるようになるメリットはどこにあるのだろうか? サービスを実際に利用した。





メッセンジャー向けの050番号IP電話サービス

 「音声チャット、もしくは普通にIP電話を使えばいいんじゃないか」。正直、筆者も最初はそんな感想を持ったが、使ってみるとメッセンジャーと050番号IP電話の良いところがうまくミックスされている。1月22日に、Windows Live メッセンジャーの機能として追加された「Windows Live Call by ドットフォン」は、そんな印象のサービスだ。

 Windows Live Call by ドットフォンは、Windows Live メッセンジャーの電話機能として提供される050番号のIP電話サービスだ。「ドットフォン」という名前からもわかる通り、NTTコミュニケーションズ社が提供するIP電話網を利用したサービスで、月額210円の料金で050番号を利用した音声通話が可能になっている。


Windows Live メッセンジャー2008を利用して050番号を利用したIP電話(発信のみ)が利用できる「Windows Live Call by ドットフォン」
申し込みはWindows Live メッセンジャー経由でWebサイトにアクセスして行なう。加入者の情報とクレジットカード番号、オプションサービスの選択をすれば、十数分後には利用可能になる

 メッセンジャーもIP電話も身近な存在となっているサービスだが、この両者が合わさるとなかなかイメージがつかみにくい。そこで、まずは誰もが最初に思い浮かぶだろう疑問をQ%A形式でまとめておくことにする。
  • Q1:番号は割り当てられるか
    NTTコミュニケーションズ社の050番号が割り当てられる(加入時に自動割り当てのため選択はできない)

  • Q2:発信、着信ともにできるか
    基本的には発信のみで、メッセンジャーでの着信は不可。転送・留守番でんわサービスを利用することで割り当てられた050番号自体への着信はできる(詳細は後述)

  • Q3:かけられる番号は
    サービス内容はOCNドットフォンとほぼ同じ。一般加入電話や携帯電話への通話が可能。110にかけられないなど、050番号のIP電話ならではの制限も同じ

  • Q4:料金は
    月額基本料は210円。通話料はNTTコミュニケーションズおよび提携プロバイダーの050 IP電話サービスへは無料。一般加入電話とそれ以外の050 IP電話事業者へは3分8.4円、携帯電話へは1分16.8円、PHSが1分10.5円と1通話ごと10.5円で、国際電話は米国の場合で1分9円

  • Q5:必要な機器
    メッセンジャーの音声チャットと同じく、スピーカーとマイクを使用。ヘッドセットなどの利用が最適

  • Q6:申し込み方法
    Windows Live メッセンジャー 2008の電話ボタンから申し込みが可能

  • Q7:モバイル環境での利用
    無線LANやイー・モバイルなどでも利用可能。ただし、帯域が狭いと遅延することも(詳細は後述)





音声チャットなのか、IP電話なのか

 IP電話が利用できるメッセンジャーサービスとして最大の関心事は、やはりメッセンジャーの音声チャットと何が違うのか、通常のIP電話、もしくは同じくNTTコミュニケーションズが提供しているソフトフォンを利用した050IP電話サービス「ドットフォンパーソナル(V)」と何が違うのかという点だろう。

 まず、音声チャットとの違いから考えて見よう。音声チャットと比べて本サービスがデメリットとなるのはもちろん料金だ。Windows Live Call by ドットフォンの場合、同社のサービス同士、提携サービスとの通話なら無料だが、一般加入電話などへは料金がかかる。

 音声で話をしたい相手がメッセンジャーに登録されており、音声チャットができる環境が整っているのであれば、わざわざWindows Live Call by ドットフォンで通話する必要はない。

 では、メリットはどこにあるのかというと、相手の環境を意識しなくて済むことだ。メッセンジャーの音声チャットやビデオチャットの最大の障壁は、マイクやカメラといった機器が自分だけでなく、相手側にも用意されている必要がある。いくら話をしたい相手がメンバーに登録されていたとしても、相手のPCにマイクが繋がっていなければ使えない。

 これに対してWindows Live Call by ドットフォンは、相手の電話機に対して発信するので、当然のように音声での会話ができる。Windows Live Call by ドットフォン自体が電話サービスなので、当たり前と言えば当たり前なのだが、このように相手の環境を意識する必要がないのが音声チャットとの違いだ。


一般加入電話や携帯電話など、音声通話ができる端末宛てに電話をかけるので、音声チャットと異なり、相手の機器環境などを考慮する必要はない

 では、一般の050IP電話やソフトウェアとの違いはというと、ソフトウェアで利用できる点が挙げられる。機器が必要ないため、QAで紹介したモバイル環境でも利用できる。

 ソフトウェアを利用するという点では、OCNドットフォンパーソナル/パーソナルV、Skypeなどとも同等だが、広く普及しているWindows Live メッセンジャーをクライアントに利用できる点が最大の違いだろう。最新版(Windows Live メッセンジャー2008)へのアップデートは必要だが、ISPを問わず利用でき、すでにPCにインストールされている可能性が高く、すぐに利用できる。

 しかも、Windows Live Call by ドットフォンのサービスは、Windows Live IDに関連付けされているため、自分のPC以外であっても、Windows Live メッセンジャーを利用してサインインすれば電話サービスを利用することができる。ネットカフェなどのPCで利用するのは難しい可能性があるが、場合によっては友人のPCを借りて電話をかけるなどという使い方も可能だ。

 もちろん、メリットの裏返しがデメリットとなり、たとえばすでにSkypeを利用しているというのであれば、わざわざWindows Live メッセンジャーをインストールする方が面倒とも言える。通話料はほぼ互角と考えて良いが、SkypeはSkypeInを利用した着信ができるのが最大のメリットだ。

 ただし、サポートなどを考えると、Windows Live Call by ドットフォンのアドバンテージも高く、このあたりは用途次第で甲乙付けがたい印象だ。





転送・留守番でんわサービスの契約は必須

 Skypeとの比較でも紹介したが、Windows Live Call by ドットフォンの現状の最大の課題は着信にある。

 現状のサービスは発信は可能だが着信には対応しておらず、割り当てられた050番号に電話をかけても、「おかけになった電話番号は通信できる機器などが接続されていないか、通信できない状態のためかかりません」とアナウンスされる。

 個人的に使う電話なら構わないのだが、仕事の用事で取引先などに電話をかけ、相手が折り返し電話をしたときなどに、このメッセージが流れると、さすがに印象が悪い。

 個人的には、最初から着信できないサービスなのに、あたかも契約者側に問題があるかのようなメッセージが流れることに非常に疑問を感じる。せめて、「この番号は発信専用のサービスのため、ご確認の上お掛け直し下さい」くらいの気の利いたメッセージを流せないものだろうか。

 まあ、この点は改善されることを期待して、とにかく現状では相手からコールバックされたときの対策だけは考えておく必要がある。現状、この対策としての解は、オプションとして用意されている「転送・留守番でんわサービス」を利用するしかないだろう。

 転送・留守番でんわサービスを契約すると、050番号にかかってきた電話をほかの電話番号に転送したり、留守番電話センターで受け、メッセージを録音、着信や録音したメッセージをメールで通知することができる。

 いずれもブラウザを利用して設定ページにアクセスすることで設定可能となっており、たとえば転送の場合、最大4番号まで宛先を登録でき、その中から転送先として1番号を選ぶという形式になる。


オプションの転送・留守番でんわサービスを利用すると、050番号への着信を他の番号に転送したり、センター側の留守番電話で応答しメッセージを録音。メールで通知することができる


 転送先の番号は一般加入電話や携帯電話を指定できるが、この場合、転送に電話代がかかる。もしも、無料で転送したい場合には、同社、もしくは契約プロバイダーなど、無料通話先として指定されている050番号によるIP電話の番号を利用すると良いだろう。

 一方、留守番電話サービスを有効にすると、設定するとかかってきた電話を無条件にセンター側で受け、相手からのメッセージをセンター側で録音することができる。録音したメッセージはセンターの番号に電話をかけることで確認できるが(暗証番号の入力が必要)、メールで通知することもできる。

 設定ページでは、3つまで同時に通知するメールアドレスを指定することができ、各メールアドレスごとに、すべての着信を通知するかメッセージがある場合のみ通知するか、さらにメッセージがある場合に録音ファイルを添付するかどうかを設定できる。

 添付される音声ファイルはwav形式となっており、携帯電話で受けるのは難しいが、PCであればメールでメッセージまで確認できるので、用件を聞いたら、すぐにWindows Live Call by ドットフォンで折り返し電話をするといった使い方が可能だ。携帯電話では着信通知のみを、PCでは音声ファイルも受信と、両方を組み合わせて利用すると便利だろう。


通知サービスを利用したときに送られてくるメール。設定によっては、メッセージのWAVファイルを添付することもできる

 この転送・留守番でんわサービスは月額210円のオプションサービスとなっているが、2008年12月までは無料で利用できる。サービスとして着信ができないのはもちろんだが、常にオンラインであるとは限らない以上、コールバック対策として、このサービスの利用は必須と言える。個人的には標準サービス化すべきだと思えるが、忘れずに加入しておくことをおすすめする。

 なお、これもできれば設定ページに記載しておいてくれるとありがたいのだが、留守番電話サービスで通知するときに利用される送信元のメールアドレスは「mc-info@com-voip.jp」となる。携帯電話のフィルタリングサービスを利用している場合などは、このドメインを忘れずに許可しておこう。





モバイル環境でも利用可能

 最後に気になるモバイル環境での利用について触れておこう。外出が多い人の場合には、公衆無線LANや定額制のデータ通信サービスなどを利用して、外出先でも使える電話として利用したいと考えている人も少なくないのではないだろうか。

 このような環境での利用については、正直なところ帯域次第だ。イー・モバイルのデータ通信カード(3.6Mbps版)を利用して、Windows Live Call by ドットフォンから携帯電話(au)に電話をかけるテストしてみたところ、場所によってはPC側でしゃべった音声が、携帯電話で聞こえるまでに、数秒のタイムラグが発生した。

 また、これもPCのソフトフォンの宿命とも言えるが、音声の品質に関してはマイクとスピーカーの設定にかなり左右される。特にマイクに関しては、音量をうまく調節できるかどうかが、聞き取りやすさを左右する大きなカギとなるだろう。

 以上、、Windows Live Call by ドットフォンを実際に試してみたが、個人的には転送・留守番でんわサービスを標準サービス化すべきだと思うが、ソフトウェアを利用するIP電話サービスとしては、手軽でなかなか悪くないサービスだと感じた。

 ただ、そもそも音声通話がそこまで必要か? という議論もあり、わざわざ加入する人がどこまでいるかは難しいところだろう。最近では、インターネット接続環境はあるものの、固定電話はないという人も増えているので、もしかするとそういったユーザー層に受け入れられる可能性はありそうだ。


関連情報

URL
  サービス情報
  https://506506.ntt.com/ipphone/wlc/

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2008/02/19 10:57

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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