アイ・オー・データ機器から、ICカードリーダーライターと子供向けフィルタリングソフトを組み合わせた「ぱそこんキッズサーフィン(USB2-NFC/KID)」が発売された。ICカードをかざすだけでフィルタリングのオン/オフを切り替えられるユニークな製品だ。その使い勝手を検証した。
■ 日常にとけ込んだICカードを活用したフィルタリング
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ぱそこんキッズサーフィン(USB2-NFC/KID)
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改札でピッ、コンビニのレジでピッ、自動販売機でピッ、とすっかり我々の生活に定着した非接触ICカード。カードやケータイとさまざまな形態で身の回りに存在し、会員証や身分証、電子マネーと、いろいろな用途に活用されている。
そんなICカードを、言わばパソコンの「カギ」として使ってしまおうというのが、今回、アイ・オー・データ機器から発売された「ぱそこんキッズサーフィン(USB2-NFC/KID)」だ。
カギと言っても、もちろん物理的なものではない。「ぱそこんキッズサーフィン」という名前からも想像できる通り、子供を対象としたPCの利用制限を行うためのカギとして使おうというのが、この製品だ。
同社が5月に発売したNFC対応のリーダーライター「ぴタッチ(USB2-NFC)」に、PCのペアレンタルロック機能を実現するソフトウェア「ぱそこんキッズサーフィン」、さらにインターネットのフィルタリングソフト「悪質サイトブロック for I-O DATA」が組み合わせられており、ICカードをキーにして、これらのソフトウェアの動作を制御することができるようになっている。
付属のICカードリーダーライター「USB2-NFC」。電子マネーやおサイフケータイのリーダーとしても使える
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付属するICカードをかざしたところ。保護者モードとキッズモードの切り替えに利用する
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なお、「ぴタッチ(USB2-NFC)」に添付されている「EdyViewer」(Edyのチャージや残高確認用ソフト)も本製品に同梱されているが、「精算快速!Lite」(交通系ICカードの対応の電車利用履歴ソフト)や「WAON TOOLBAR」は添付されていない。あくまでもフィルタリングを目的としたハードウェアとソフトウェアの組み合わせとなっている製品だ。
■ カードをかざすと保護者モードに
それでは具体的な使い方を紹介しよう。まずはセットアップだが、これは簡単だ。付属のCD-ROMからICカードリーダーライターのドライバをインストール後、USB2-NFCをPCに装着。さらに前述した「ぱそこんキッズサーフィン」と「悪質サイトブロック for I-O DATA」をインストールすれば良い。
アプリケーションのインストール後、最初にPCを再起動すると初期設定画面が表示されるので、ここでWindowsのユーザーとICカードを対応付けを行う。Windowsに登録済みのユーザーの中から、保護者が普段利用しているユーザーを選択し、ログオン用のパスワードを入力。「登録」ボタンをクリック後、画面のメッセージに従って認証に使いたいICカード、もしくはおサイフケータイをリーダーにかざす。
これで、ICカードとアカウントが関連づけされ、次回以降、ICカードをかざすことで、関連づけされたアカウントでWindowsを利用できるようになるわけだ。
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アプリケーションをインストール後、ユーザー登録を行う。Windowsに登録済みのユーザーとICカードを関連づけする
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インストール後のユーザーアカウント。「KidsSurfing」というユーザーが登録されるが、コントロールパネルからは参照できないようになっている
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なお、ICカードを利用するのは、保護者であるという点がポイントだ。PCに「ぱそこんキッズサーフィン」をインストールすると、Windowsに「キッズサーフィン」というアカウントが追加され、自動ログオンアカウントとして設定される。このアカウントは、子供が利用するための制限アカウントで、ログオン時間や利用可能なアプリケーションが限られている。つまり、普通にPCを起動すると、標準では子ども用の制限アカウントでPCが起動するというわけだ。
では、保護者が制限なしにPCを利用したい場合はどうすれば良いのかというと、登録したICカードをリーダーにかざす必要がある。PC起動時にかざしておけば自動的に保護者モードでログオンすることができ、キッズサーフィンアカウントで起動後、カードをかざせば、ユーザーのログオフ/ログオンによって保護者モード(登録したアカウント)へと自動的に切り替わる。
要するに、「カードなし→キッズモード」、「カードあり→保護者モード」という使い分けになっている。
■ 素早い切り替えでストレスなし。自由度は比較的高い
実際に使ってみると、ユーザーの切り替えもスピーディでなかなか快適だ。カードをかざせば、さっとキッズモードが切り替わり、すばやく普段の環境で保護者がPCを利用できる。
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ICカードをかざすと保護者モードで起動、もしくは切り替えることができる
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アカウントを切り替えているだけと言われればその通りなのだが、ICカードによってパスワードの入力などをしなくても済むのは非常に楽だし、スピーディだ。
ただし、本製品はアカウントによって制限レベルを切り替えることが目的であり、キッズモードにしたからといって特別なデスクトップが表示されるわけではない。基本的に保護者モードと同じデスクトップが表示され、スタートメニューなどの表示も準ずる。子供にWindowsのUIに慣れさせるという意味では、これが妥当だろう。
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デスクトップは基本的に同じものを利用する
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また、切り替えは、ユーザーの切り替えではなく、ログオフとログオンによって行われるため、キッズと保護者どちらからの切り替えでもセッションは維持されない。このため、切り替え時にアプリケーションを起動している場合などは、これらを保存しておかないとデータが失われる可能性があるので注意が必要だ。
肝心の制限についてだが、大きく3つの項目を制限できる。
- インターネット接続制限
- プロキシの設定
- 初期URL(ホーム設定)
- 標準では「http://junior.auone.jp」に設定
- URLフィルタリング
- 悪質サイトブロック for I-O DATAを利用
- 強(小学校低学年)、推奨(小学校高学年から高校生)、弱(高校生以上)の3段階設定
- 接続可能時間の制限
- PC利用制限
- 利用制限時間
- 曜日、時間、連続利用時間で指定可能
- 夏休みなどの例外期間を設定可能
- 利用制限時のメッセージや動作(自動ログオフ)なども設定可能
- アプリケーション設定
- 起動可能アプリケーション指定
- カスタマイズ支援
- スタートメニューやデスクトップの変更(アイコンの作成や削除)
制限は大きく分けて3つ。インターネット接続、利用時間、アプリケーションを設定することができる
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設定としては必要十分といった印象だが、比較的自由度が高いのが特徴だろう。標準設定では利用時間などは制限されていないので、子供の年齢や利用環境によって制限を設定しておくと良い。
インターネット接続に関しては、「悪質サイトブロック for I-O DATA」によって、なかなか確度の高い制限が実現されている。ブラックリスト形式のため、通常のURLに対しては普通にインターネット接続できるが、アダルトサイトや掲示板などの一部のサイトにアクセスしようとすると、きちんとブロックされる。
推奨の場合、ゲームサイトなどにはアクセスできるものの、オークションはアクセス不可といったように、各レベルによってアクセスできるサイトが決められているので、このあたりも考慮してレベルを決めると良いだろう。
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インターネット接続に関しては、「悪質サイトブロック for I-O DATA」の設定も可能。制限レベルとアクセス時間を設定できる
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推奨レベルに設定した場合、オークションなどへのアクセスも制限される
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■ バッファローと対照的なコンセプト
このように、ICカードで手軽にフィルタリングをオン・オフできるのが特徴の製品だが、個人的にはバッファローの「ぱそこんキッズキー」と同じジャンルながら、製品の方向性が異なる点がもっとも興味深かった。
具体的に比べてみると、以下の表のようになる。ハードウェアや細かな仕様の違いはさておき、キーの所有者に関してはアイ・オーが保護者なのに対して、バッファローは子供となっている。PCのUIもアイ・オーはWindowsのインターフェイスを継承するが、バッファローはキャラクターを利用した専用のインターフェイスだ。
インターネット接続に関しても、アイ・オーはブラックリスト形式を採用するが、バッファローは標準では「Yahoo!きっず」へのアクセスしか許可しないホワイトリスト形式となる(iフィルターの利用も可能)。
製品名 |
ぱそこんキッズサーフィン |
ぱそこんキッズキー |
メーカー |
アイ・オー・データ機器 |
バッファロー |
デバイス |
非接触ICカード |
USBキー |
キーの所有者 |
保護者 |
子供 |
キーの動作 |
非装着時 |
子供モード |
保護者モード |
装着時 |
保護者モード |
子供モード |
PCの制限方式 |
デスクトップ |
通常Windows |
専用UI |
利用アプリケーション |
ホワイトリスト |
ホワイトリスト |
インターネット接続制限方式 |
ブラックリスト |
ホワイトリスト |
フィルタリングソフト |
製品 |
悪質サイトブロック for I-O DATA |
iフィルター |
有効期限 |
1年 |
90日 |
ここまで対照的というのもなかなか興味深いが、個人的にはバッファローの製品の方がエンターテイメント性が高く、小学校低学年の利用に適していると思えるのに対して、今回のアイ・オーの製品はもう少し上の年齢層に適しているという印象を受けた。
実際、将来的なPCスキルという点でもWindowsのインターフェイスに慣れておく方が好ましく、ブラックリスト形式のフィルタリングも、基本的な善悪の判断をある程度子供にゆだねることができるため、実際にインターネットを利用した調べ物などをするときにも利便性が高い。
我が家の娘は小学2年生だが、勉強にも遊びにも興味の幅が広がってきたため、まれにYahoo!きっずのみのアクセスでは調べ物にしろ、情報収集にしろ物足りないこともあり、もう少しインターネットアクセスの自由度を高くしながら、安全性を確保したいという考えることも多くなってきた。
その点、「ぱそこんキッズサーフィン」では、ある程度の自由を与えつつ、安全性を確保することができるようになっている。もちろん、自由度が高いということは、それだけ保護者側のスキルや責任も問われることになるわけだが、子供の年齢が上がっていく段階で、保護者としてこのリスクは引き受けざるを得ないだろう。
■ キッズキーで親しんで、キッズサーフィンで大人に
以上、アイ・オー・データ機器から発売された「ぱそこんキッズサーフィン」を実際に試してみたが、機能と手軽さが両立したなかなか完成度の高い製品だ。同梱の悪質サイトブロック for I-O DATAを1年間利用できること、さらにUSB2-NFC自体を電子マネーなどのICカードに利用できることを考えてもお買い得感は高いと言えそうだ。
唯一、気になったのは、キッズモードで許可できるアプリケーションはプログラムベース(exe指定)となるため、Windowsの設定周りの許可を与えることができない点だ。たとえば壁紙やマウスの速度は自由に変更できるようにさせたいといった場合でも、現状は設定を許可できない。
PCを利用するうえでの基本操作をマスターさせるという意味では、最低限の設定が出来た方が好ましい。このあたりが改善されると、教育用としての用途も広がるのではないだろうか。
ただ、個人的には、今回の製品が登場したことで、子供のPC利用を3段階のフェーズで考えるのが良いのではないかと感じた。
すなわち、幼稚園から小学校低学年までの初期段階では、楽しみながらPCを使えるバッファローの「ぱそこんキッズキー」で親しみ、低学年から中学生の段階でアイ・オー・データ機器の「ぱそこんキッズサーフィン」で安全性を確保しながらPCのスキルを身につける。そして高校生以上の最終段階で制限のないPCを利用するといったイメージだ。
この場合、物理的なPCも、保護者のPCの間借り(ぱそこんキッズキー)から、保護者との共有(ぱそこんキッズサーフィン)、そして自分専用のPCという3段階になるので、理想的なPCの使い方ではないかと考える。
いずれにせよ、大切なのは、保護者が製品の特性を理解し、子供に合わせて使い分けることにあるのは確かだ。無闇に製品に頼るのではなく、子供の年齢や環境などを考慮して、どの段階で、どのような制限をかけるのが適してるのかをよく考え、そして場合によっては家族で相談しながら決めるべきだろう。
■ URL
ぱそこんキッズサーフィン
http://www.iodata.jp/prod/mobile/nfc/2008/usb2-nfckid/index.htm
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2008/08/05 11:09
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